艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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いやー、本当に久しぶりの投稿です。
今回はヤンこれ単発物と合わせての投稿だったので、滅茶苦茶遅くなりました…
次はもうちょっとペース上げたいけど、艦これもしたいからまた遅くなりそうです…





第86話 お前たちは何者だ?

 

 

 

「んと… 伊月提督、これは…?」

 

 

ウチことトラック泊地提督、中峰正也は現在困惑している。

事の発端はウチと兄ちゃんの扱っている艤装を見てもらうという話で、伊月提督のいる鎮守府へとやってきた。

伊月提督のところでは明石さんや工廠長のように特別な艤装を作っているらしく、ウチ等の艤装を見てもらうついでに向こうが作っている艤装を確認して今後の対策を練っていこうというのが目的だった。

現に深海棲艦達を裏で仕切っている人物、櫟谷葬壱は戦艦棲姫に仲間内に自分の思考を送るテレパスのような能力を、装甲空母姫には方向感覚を狂わせる特殊な霧を操る能力などを与えていた。

そう言った能力に対処する術を少しでも知りたくて、ウチはここへ訪れたのだ。

しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、食ってくれ。 ちょうど昼時だし、そっちの歓迎とさっきのお詫びの意味も兼ねてな」

 

 

ウチ等が今いるのは鎮守府の食堂。 そして、目の前に置かれていたのはトラック泊地でもよく食べられていた料理、カレーだった。

その食欲をそそる湯気と香りにウチもごくりと生唾を飲み込むが、いかんせん本題を忘れるわけにはいかない。

 

 

「えと… 伊月提督? 食事はありがたいんだけど、ウチ等は装備を見てもらうつもりでここへ来たんだよ。 だったら、まず工廠とかに行くべきじゃ……」

 

「腹が減っては戦は出来ぬ、って言うだろ。 工廠の連中もそろそろ休憩時間に入るだろうし、俺たちもまずは腹ごしらえをしてからにしよう。 点検ならその後でもできるぞ」

 

「あっ、はい…」

 

 

伊月提督の言葉にウチもただ生返事を返すことしかできない。

とはいえ、辺りを見回すとここに所属しているであろう艦娘たちもみんな食事をとり始めている。

ここはひとつ、伊月提督の好意に甘えるのが吉か。

 

 

「ほらご主人様、せっかくですし食べましょうよ。 漣もお腹ペコペコなんですから~」

 

「向こうの好意で用意してくれたんだ、ここはご相伴に預かるとしよう。 正也、先に食いな」

 

「うん… そいじゃ、いただきまーす」

 

 

二人に勧められるままにウチは手元のスプーンを手に取ると、カレーを掬い上げそのまま口に運ぶ。

そして食べると、

 

 

 

 

 

「…うわ、うんまー!! なにこれ、すっごいうまい!!」

 

 

本当においしい。

それ以外の感想が出てこなかった。

この時だけは自分のボキャブラリーのなさが悔やまれる…!

ウチは今まで食べたことのないカレーへの感動と己の無力さに体を震わせていると、

 

 

「おお、そう言ってもらえればアイツも喜ぶよ」

 

 

そう言って、伊月提督は厨房から料理を持ってきた艦娘へ視線を向ける。

これほどの料理を作れる相手はそうはいない。

いたとしても、鳳翔さんや会ったことがないけど大鯨って子かな?

ウチは一言お礼を言おうとそちらに顔を向けると、

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の作ったカレー、そんなにおいしかったですか? そう言って頂けると、気合・入れて・作った甲斐がありましたー!」

 

「うぇっ!?」

 

 

そこにはウチの言葉に顔を綻ばせる艦娘、戦艦比叡の姿があった。

彼女がこのカレーを作った。

その事実にウチは度肝を抜かれ呆然とする。

何せ、ウチの知っている比叡という艦娘はメシマズなんてレベルじゃないほどの殺人料理を作っているからだ。

それこそ、以前ウチに見せてくれたカレーは紫色でドロドロした何かで、あれはもうカレーという名の暗黒物質(ダークマター)だったから。

 

 

「……よし、それじゃ俺達も食べるとしよう」

 

「そうですね、ご主人様が食べても大丈夫みたいでしたし」

 

 

ウチが驚いている横で兄ちゃんと漣も食事をとり始める。 だが、

 

 

「……おい、ちょっと待て」

 

「何です? ご主人様」

 

「二人とも、これ作ったのが比叡だと知っててウチに食わせたな……!」

 

「さあ、なんのこったよ?」

 

「嫌ですねご主人様ってば。 そんな訳ないじゃないですか~」

 

 

睨み付けるウチに対し兄ちゃんはすまし顔でスルーし、漣は笑顔でとぼける。

嘘つけ、ウチが伊月提督と話をしてた時二人ともちらりと厨房の方見てただろ。 ウチは知ってんだからな…!

毒味役をさせられたことに怒りを感じたウチだが、その怒りも二口目のカレーを食べた途端きれいさっぱり忘れていったのであった。

 

 

 

 

 

 

昼食を終え、ウチ等は腹をさすりながら人心地つく。

周りを見ると、他の皆も昼食のカレーがうまかったのか満足げな顔をしている。

このままのんびり昼寝でもしたいところだが、当初の目的を忘れるわけにはいかない。

ウチはそろそろ工廠に向かおうと伊月提督に声をかけようとすると、

 

 

「さて、そんじゃ腹ごしらえも済んだことだし、そろそろ工廠へ行くとするか」

 

 

伊月提督の方から話を切り出してくれた。

まあ、そのおかげでウチから話を出す手間は省けたが。

ただ、それでウチ等も行こうとしたとき、伊月提督は話を続ける。

 

 

「ちょっと待った。 悪いが、二人とも皿を片付けるのを手伝ってくれないか? 今は厨房も洗い物で忙しいから、代わりに下げてほしいんだ」

 

「ふぇっ? 別に、いいですけど」

 

「………」

 

 

突然の申し出にウチは素っ頓狂な声を上げ、兄ちゃんは何も言わず伊月提督を見ている。

 

 

「お前たちはそっちの艦娘達を連れて先に行ってろ。 こっちの二人は俺が後から案内する」

 

「…分かった。 では工廠へ案内する、ついてきてくれ」

 

 

長月を筆頭としたここの鎮守府の駆逐艦たちは、漣たちを工廠へと案内していく。

 

 

「ご主人様……」

 

「そんな顔するなって。 心配しなくても大丈夫だ、漣」

 

「アンタは……」

 

「すぐに行くから、先に行っててくれ。 叢雲」

 

「………」

 

 

一瞬不安げな顔を見せる漣に、ウチは笑って頭をなでる。

叢雲の方は何かを訪ねるように兄ちゃんを見たが、兄ちゃんの顔を見ると何も言わずその場を後にしていった。

他の艦娘たちも食堂を去っており、残ったのはウチと兄ちゃん、そして伊月提督の三人となった。

 

 

「そんじゃま、ウチ等もこれを片付けて早いとこ漣たちと合流しようか」

 

 

ウチはそう言って皿が置かれたテーブルへと向かっていったが、ウチの進む先に

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

伊月提督が立ちふさがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「単刀直入に聞く。 お前らは何者だ?」

 

「えっ? それって、どういう……?」

 

 

開口一番に出た伊月提督の言葉。

それがどういう意味か理解できず、ウチは困惑することしかできなかったが…

 

 

「なるほど、そういうことか」

 

 

ウチに代わって、隣にいた兄ちゃんが返事を返してくれた。

 

 

 

 

 

「わざわざこんな食事会を行ったのは少しでも俺たちの警戒を解くため。 叢雲たちを先に工廠へ案内したのは他の艦娘たちにこの話を聞かせないための人払いと、最悪の事態を想定してあいつらを引き離し俺らの戦力を分散させる。 大方そんなところか?」

 

「やれやれ… お前も食えない奴だな。 それを知っていながら他の連中には言わなかったんだから」

 

 

兄ちゃんの言葉を聞いた伊月提督は、まるでイタズラがばれた子供のように笑みを見せながら笑う。 もしかして、最初からウチ等は伊月提督に探りを入れられてたってこと……?

 

 

「まあ、大体そんなところだ。 一応、あの食事会はそっちの歓迎を兼ねてたのは本当だったんだがな」

 

 

そう言いながら、伊月提督はおどけた様子で肩をすくめる。

それを聞いて、今度はウチが伊月提督へと問いかけた。

 

 

「…いつ、気づいていたんですか?」

 

「お前が正門で長月と暴れていた時だ。 あいつは俺の艦隊の中でも古参で、砲撃だけでなく肉弾戦も得意としている。 だが、お前はその長月の攻撃を一度も受けずに躱していた。 普通の人間にそんな芸当はまず無理だ。 そして…」

 

 

話を一区切りして、伊月提督は視線をウチから兄ちゃんへ向ける。

 

 

「眼鏡のアンタ、騒ぎを聞きつけて駆けつけてきた皐月達を威圧して足止めしていただろ。 まあ、そのおかげで騒ぎが無駄にでかくならずに済んだから、そこは礼を言っておくぜ」

 

「…気づかれてたか」

 

「まっ、あいつらもそれなりに強いんだが、それを気迫で抑え込んでる時点でお前ら二人ともただの人間じゃないって確信したんだよ」

 

 

じわり… じわりと徐々に殺気を放つ伊月提督。

ただ立っているだけなのに、冷や汗が止まらない。 これが、強者が扱える一種の気のコントロールというものなのか…!?

 

 

 

 

 

「さて、説明はこの辺にして改めて聞かせてもらおう。 お前たちは何者だ? 返答次第では、こっちも手荒い返事を返すことになるぞ」

 

 

眼光を鋭くしながら、伊月提督はウチ等を睨み付ける。

さすがにこれは、このまま黙っていては大変なことになる。 できれば話したくはなかったが、流石に打ち明けるしかないか!?

ウチが内心そう判断しようとしたとき、突如伊月提督が携帯している無線が鳴り出す。

伊月提督は渋い顔を見せながら無線を取ると、無線から長月の声が流れてきた。

 

 

 

 

 

『大変だ一葉! 先ほど、深海棲艦の大群がこちらへ向かっているとの報告があった。 戦艦や空母の数も多く、かなりの規模だそうだ!』

 

「何だって!? なら、こっちもみんなに通達して迎撃に向かうぞ」

 

『あっ… そ、それが……』

 

 

無線越しに聞こえる、長月の歯切れの悪い返事。 「どうしたんだ?」と、伊月提督が訝しむと、

 

 

『別の海岸線からも深海棲艦が侵攻している。 向こうほど規模は大きくないが、奴らは二手に分かれて進軍しているんだ』

 

「そういうことか、クソッ! 流石に敵の規模が把握しきれていない状況で、下手に戦力を割くのはリスクがでかい。 どうするか…!」

 

 

歯ぎしりしながら伊月提督は打開策を考えている。

確かに、敵が内陸まで進攻しているのなら一刻も早く迎撃に向かわなければ危険だ。

かと言って、海から向かってきている連中は大規模だと聞いているし、陸地に向かった連中に戦力を割けば向こうの敵を抑えきれない。

なら、一体どうするか?

そんなの考えるまでもない。 何せ、解決策なら既にあるんだから。

ウチは兄ちゃんに視線を向けると、何も言わずただ無言で肯定の意を示すように頷く。

ウチは急いで伊月提督へと駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伊月提督は内陸の深海棲艦を迎撃して! もう一方はウチ等の艦隊が引き受けますから、伊月提督も急いでそっちの艦娘たちに指示を出してください!」

 

「なっ…! だ、だが…」

 

「今は迷ってる場合じゃないでしょ! 鎮守府の子達や海岸に住んでる人たちがどうなってもいいんですか!?」

 

「………」

 

 

ウチの提案に伊月提督は一瞬戸惑う様子を見せていたが、何か考えてたのか少しの間瞳を閉じ、すぐに開くと、

 

 

 

 

 

「…分かった。 なら海の方はそっちに任せた。 俺たちも向こうを片付け次第すぐに加勢に行くから、それまで持ちこたえろ!」

 

 

そう言うと、伊月提督は無線片手に食堂を飛び出しウチ等も急いで外へと駆け出した。

建物を出て海へ向かうべく港まで来ると、そこにはすでに艤装を展開した漣たちが待っていた。

 

 

「い、いつの間に来てたんだ…?」

 

「長月って子が、『お前たちの司令官が港に向かった。 すぐに行ってくれ!』って教えてくれたんですよ。 それとご主人様…」

 

「なんだ…?」

 

「あの伊月提督って人、ご主人様の事に勘づいてましたね。 食事の時も、あの人ご主人様の事注意深く見てましたから」

 

「…みたいだな。 さっき、食堂でそのことについて問い詰められたよ」

 

「じゃあ…!」

 

「ただ、その話はあとだ。 今はこっちを片付けるぞ!」

 

 

ウチはリングに意識を集中し、手元に艤装の槍を出現させる。

兄ちゃんの方も艤装の刀を展開し、既に出撃の準備を整えていた。

 

 

 

 

 

「行くぞ皆―! 深海棲艦を迎撃して、伊月提督の鎮守府を守るんだー!!」

 

「了解です。 駆逐艦漣、出るっ!!」

 

 

掛け声とともにウチ等は一斉に眼下の海へと飛び出す。

こうして、中峰艦隊と伊月艦隊との共闘戦線が幕を上げたのであった。

 

 

 

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