艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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はい、本当に遅くなりましたがようやく続きが書けました。
最近はヤンこれ物のネタばかり思いつくので、ついそっちに夢中になりがちに……
こっちも、徐々にペースを上げていきたいと思ってます。





第87話 海上の激闘! 空母ヲ級改を撃破せよ

 

 

 

場所は鎮守府より遠く離れた海上。 トラック泊地とタウイタウイ泊地に所属する艦娘たちに混じり、提督である正也と幸仁は漣たちと共に深海棲艦が侵攻している場所へと向かっていた。

 

 

「はあ、やれやれ… まさかウチらの事気づかれてたとはな。 あの伊月提督って人、ほんとに鋭いね」

 

「何言ってんだ。 お前が中庭で長月と戦って、攻撃一つ受けない所を見れば誰だっておかしいと思うだろ」

 

「うぐっ…」

 

 

幸仁に正論を飛ばされ、正也もばつが悪そうに声を漏らす。 痛いとこを突かれ、正也からは返す言葉もない。

そんな正也を見やりながら、隣にいた漣はため息交じりに正也に声をかける。

 

 

「まあ、過ぎたことを気にするなんてご主人様らしくないですよ。 それより今は、目先の敵へと意識を向けてください。 敵の戦力が分からない以上、ご主人様たちにも頑張ってもらわなきゃなんですから」

 

「…ああ、分かった。 そんじゃ、いっちょ気張っていきますか!」

 

 

漣の言葉に正也も前を向き、手元の槍を握りなおす。

水平線の向こうに見えてきた敵艦隊を睨みながら、正也たちは各々の武器を構えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、こちらは鎮守府の近くにある海岸。

そこでは海から陸地へとやってきた深海棲艦達を、伊月提督率いる艦娘たちが迎撃にあたっていた。

 

 

 

 

 

「てやー!!」

 

 

長月は小柄な体から放たれる鋭い蹴りをリ級の顔面に炸裂。

側頭部に直接蹴りを叩きこまれよろめいたところを、長月は主砲を向け吹き飛ばした。

 

 

『司令官、こっちはどうにか迎撃しているよ! 数が多いのがちょっと面倒だけどね…!』

 

 

陸地へあがろうとしていたイ級を押し戻しながら、皐月は陸地で深海棲艦と交戦する伊月提督へと声をかける。

わざわざインカムを使って連絡しているのは、皐月のいる砂浜と伊月提督のいる陸地からは若干距離があるため、普通に声を上げただけでは聞こえないからだった。

 

 

「ああ、確かに敵の数は多い。 だが、さっきお前たちを威圧してきたあの提督に比べれば、大した相手じゃないだろ?」

 

『うん… 一瞬だったけどあの人さ、「動くなっ!!」といわんばかりにこっちに視線を向けるんだもん。 長月たちよりあっちにびっくりしちゃったよ』

 

「なるほど。 それでお前らも動くことができなかったんだな」

 

『うーん… 動けなかったというより、動かない方がいいと思った…かな? あの人の目、僕たちを威圧しているというより、動かない方がいいと警告しているようだった。 だから、僕たちもここはあの人に従った方がいいと思って出なかったんだ』

 

「……そうか」

 

 

短い返事と共に、伊月提督は皐月との対話を切り上げる。

 

 

 

 

 

(力で敵わないではなく、素直に従った方がいいと思った…か。 相手を屈服させるのではなく従属させるあたり、あっちの男も思った以上の大物だな……)

 

 

先ほど会話した兄の方、中峰幸仁。

トラック泊地の提督である正也もそうだが、向こうも改めて油断ならない男だと伊月提督は感じた。

 

 

 

 

 

「司令官、後ろっ!!」

 

 

トンファーを手に共に戦っていた睦月が声を上げる。

彼女の視線の先、伊月提督の背後には戦艦ル級が腕の艤装を振り上げそのまま伊月提督へと叩きつけようとしている。 が…

 

 

《…ッ!?》

 

 

ヒュッ! という風切り音と共に勢いよく上がるル級の腕。

艤装を振り下ろすより早く、伊月提督が一瞬でル級の腕をたたき上げ、そのまま振り向きざまに左手の拳を勢いよく振り上げる。

がら空きになったル級の懐から、伊月提督は強烈なアッパーカットをお見舞い。

避けるすべもなく、顎に直撃を受けたル級は声を上げることなくそのまま大の字に倒れこむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっけぇー!!」

 

 

漣の構えた主砲から砲弾が放たれる。

砲撃の目標、空母ヲ級に被弾し、ひるんだところを

 

 

「ナイス漣! くらえー!!」

 

 

漣の先陣に出ていた正也が特攻し、槍をヲ級へとむける。

ヲ級の頭部に槍の先端を突き刺すと、柄のボタンを押しそのまま砲撃。

先端から出た砲弾は爆散しながら被り物のようなヲ級の頭部を吹き飛ばした。

 

 

 

 

「蹴散らせ! 獅子奮刃!!」

 

 

正也より少し離れた場所では幸仁が両手の刀を携えながら突っ込み、通り過ぎざまにいる深海棲艦達を次々切り裂いていく。

近場にいた者は成す術なく幸仁に切り倒され、かろうじて斬撃を免れた者は幸仁への反撃を試みるが、

 

 

「邪魔よっ!」

 

「その艦、もらったー!」

 

 

幸仁の後続である叢雲と利根の連撃にやられ、赤城と霧島の二人も遠方にいる敵を撃ち沈めていった。

飛び掛かってきた駆逐イ級を槍で薙ぎ払い、正也は幸仁たちと合流し辺りを見渡す。

 

 

「どうにかこっちが押してるね。 これなら、なんとかなるかな?」

 

「いいや。 現状こっちが有利に見えるが、物量は向こうの方が圧倒的に上だ。 このままじゃ、俺たちが押し切られるのは時間の問題だぞ」

 

 

幸仁の言う通り、確かにこっちは敵艦を捌いているが、倒したはずの場所にはまた新たな深海棲艦が現れ、隊列を整えながらこちらへと進撃を繰り返す。 まるで、ゾンビの大群を相手にしているかのようだった。

 

 

「うぐっ、本当だ…! だとすりゃ、一体どうすれば…!?」

 

 

新たな敵が湧いて出る光景に正也も思わずたじろぐが、対する幸仁の方は動揺を見せない。 刀を握りなおし、正也に背中を預けたまま答える。

 

 

「簡単だ。 敵がこうして軍を率いている以上、こいつらを指揮する司令塔がいる。 そいつをつぶすことができれば、連中も烏合の衆と化す。 そうなれば、こっちも勝ちの目はあるぞ」

 

「おお、なるほど! ……それで、その司令塔ってどうやって見つけるの?」

 

「…少しは戦術について勉強しろ。 大体こういう場面じゃ、司令塔にあたる奴は後方にいるって相場が決まってる。 そのうえで、連中の頭目にふさわしい奴っていうのもな。 赤城、見つけたか!?」

 

 

幸仁は耳元で会話できるよう調節した無線機に声をかけると、無線を通じて赤城が幸仁へと報告した。

 

 

『はい、提督! 今お二人がいる海域より北にフラグシップクラスと思しき空母ヲ級が一体。 ですが…』

 

「…どうした?」

 

『…ですが、司令塔である空母ヲ級は他のフラグシップと違って目元が青く光っており、纏うオーラも強く不気味です。 提督、くれぐれもご注意を……』

 

「なるほど、フラグシップ改か…… こいつは、少し骨が折れるな」

 

 

正也と幸仁は赤城が示した方角に目を向ける。

多くの深海棲艦に阻まれてよくは見えないが、確かに奥の方に青いオーラを纏った空母ヲ級が一体佇んでいる。

恐らく、あれが司令塔とみて間違いないだろう……

 

 

「うへ…… まだこんなに随伴艦がいるなんて。 このままじゃ、アイツの元にたどり着く前にウチ等がやられちゃうよ」

 

「………」

 

 

正也の言う通り、二人の眼前には新たな深海棲艦達がバリケードのように固まり、進行を妨げている。 いくら二人が強くても、多勢に無勢。 周りで戦っている皆を放ったまま突撃するのはあまりに無謀というものだった。

攻めようにも攻めあぐねるこの状況。 幸仁は何か方法がないかと考えていたが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如放たれた砲撃が間をさえぎる深海棲艦達を豪快に吹き飛ばした。

二人が目を丸くしていると、先ほど砲撃を放った二人の艦娘が正也と幸仁に声をかけてきた。

 

 

 

 

「行ってください司令官さん! ここは私たちが請け負います!!」

 

「とはいえ、流石にこの数相手じゃと時間稼ぎが関の山じゃ。 早いとこ頼んだぞ、提督よ」

 

 

突破口を切り開いた艦娘、羽黒と利根の言葉に正也と幸仁は漣・叢雲と顔を合わせお互い頷きあう。

そして、そのまま突撃し一気に空母ヲ級改の元へと向かっていった。

空いた穴を埋めようと他の艦も行く手を阻もうとするが、

 

 

「邪魔しないでっ!」

 

「沈みなさいっ!」

 

 

敵の急所を狙った漣の砲撃と、的確に相手を仕留める叢雲の雷撃に返り討ちにあい、正也と幸仁はついに空母ヲ級改の元に到達することができた。

空母ヲ級改も二人に気づいたらしく、武器を向けてくる二人へ大量の艦載機を展開。

その艦載機を見た幸仁は、一瞬攻撃を躊躇した。

何故なら、彼にはその艦載機に見覚えがあったからだ。

 

 

 

 

 

(あれは、南方棲戦姫が使っていた艦載機と同じものか!? なら、このまま突っ込むのはまずい!!)

 

 

 

 

 

幸仁は足を止めると、隣にいた正也に声を上げる。

 

 

「止まれ、正也! あの艦載機は下手な攻撃じゃ落とせない。 俺が焼くからお前は……!!」

 

 

だが、幸仁が声をかけるより早く、正也は艤装の槍を携えながら空母ヲ級改へと特攻を仕掛け、空母ヲ級改もまた、正也を迎撃すべく杖を正也に向け突撃の指示を出していた。

 

 

「…あのバカッ! くそ、こうなったらあいつが行く前に俺が艦載機を焼くしか…!!」

 

 

悪態をつきながら、幸仁も急いで刀で焼き切ろうとしたとき、

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

突然自分のはるか上空を奔る艦載機。 その艦載機は真っすぐに空母ヲ級改の元へ向かい、そのままたこ焼きのような丸い艦載機を次々撃ち落としていった。

幸仁はその光景に困惑の色を隠せない。 あれは一体だれが放った物なのか? 少なくとも、自分や正也のいる泊地の艦娘達のものではない。

艦載機にばかり気を取られる幸仁だったが、すぐにそんなことを考えている場合ではないことに気づく。

正也の方に意識を戻すと、正也はすでに空母ヲ級改と交戦していた。

 

 

「打ち抜け! 百花槍乱!!」

 

 

正也は素早い突きを何度も繰り返し、空母ヲ級改を追い詰めていく。

ヲ級改も杖で正也の槍撃を捌きつつ、どうにか一機だけ艦載機を出して至近距離で放つが、

 

 

「甘いっ!」

 

 

正也は自分目掛け飛び掛かってきた艦載機をジャンプでかわし、そのままヲ級改の頭上に飛び上がる。

そのまま前方宙返りをするように正也は身をひねり、がら空きになっているヲ級改の背中へと槍の矛先を向けた。

 

 

 

 

 

「穿てっ! 弓針突き!!」

 

 

正也が放った槍がヲ級改を貫く。 防止のような頭部分を串刺しにされたヲ級改は、そのまま何も言わず倒れこみ静かに消滅していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也と幸仁は、漣たちと共にクルーザーを止めてある港にいた。

時刻は夕方で空高く昇っていた太陽は、もうすぐ西の水平線へ沈んでいき、代わりに薄暗闇が空全体へ広がろうとしていた。

あの後、司令塔を倒した二人は漣たちと共に残存艦を撃破し、どうにか勝利することができた。

伊月提督も、自分の艦娘たちと共に正也たちを見送りに来ており、二人は伊月提督と挨拶を交わした。

 

 

「今日は、こちらの頼みを聞いてもらってありがとうございました。 おかげで、いろいろと参考になりましたよ」

 

 

正也がにっこり笑っていると、伊月提督もフッと笑みを浮かべる。

 

 

「それについては気にするな。 こっちも助太刀してもらって、助かったからお相子だ。 それに、こんなことでよければまた来てくれ」

 

「お心遣い、感謝します。 では伊月提督、俺たちはこれで失礼します…」

 

 

正也と幸仁は伊月提督と握手を交わすと、クルーザーに乗り込み泊地へ向け出発。

そのまま鎮守府へ戻り、艦娘たちも夕食を取りに食堂へ向かい、伊月提督が一人鎮守府の玄関に佇んでいると、

 

 

 

 

 

「よお、一葉。 注文通りやってきたぜ」

 

「ああ、お疲れ。 協力ありがとうな、レキ」

 

 

伊月提督の鎮守府に所属する者の一人、戦火レキは軽い口調で伊月提督へと声をかけた。

実は、空母ヲ級改との戦いで幸仁が見た艦載機。 あれは伊月提督の知り合いが操っていたもので、自分たちが海沿いの深海棲艦達を迎撃している間、助っ人として正也たちの方へ向かうよう指示していたのだ。

 

 

「にしても、頬に艦載機を潰してもらうだけでよかったのか? 何だったら、俺が直接加勢しに行けばよかったんじゃ…」

 

 

ぼやくようなレキの言葉に、伊月提督ははっきりと返事をする。

 

 

「いや… それについては、お前たちの素性を明かさないためにもこうしたほうがいいだろう。 何せ、向こうもただ者ではないみたいだからな」

 

「ああ、それについては同感だ。 お前の睨んだ通り、あの二人はただの人間じゃない。 お前以外の人間が深海棲艦を倒すなんて光景、俺も初めて見たよ」

 

 

正也と幸仁が深海棲艦と戦っている姿を遠巻きに確認していたレキは、肩をすくめながら言う。

 

 

「やはり……か。 まさかとは思ったが、本当だとは…」

 

 

呻くように呟く伊月提督。 しかし、レキの話は終わりではなかった。

 

 

「それより、俺が気になった事はもう一つある。 さっき話した二人が戦っている海域から離れた場所で、ル級とタ級の姿を見かけたんだが、そいつらどうも様子が変だったんだ」

 

「…どういうことだ?」

 

「そいつら、艤装は展開してたものの、二人の様子を遠巻きに見るだけで戦おうとはしなかったんだ。 まるで、二人を偵察するのが目的で、戦うつもりは最初からないって感じだった」

 

「そうか……」

 

「どうする? 今からでも追いかけるか?」

 

「……いや、流石に今からじゃ間に合わないし、何より現状では分からないことが多すぎる。 ひとまず、俺たちはいつも通り活動することにしよう」

 

「分かった。 また何かあったら言ってくれ」

 

「ああ、すまんな」

 

 

持ち場へ戻っていくレキの背中を見送り、伊月提督は空を見あげる。

茜色に染まっていく水平線を見つめながら、彼は誰にでもなくひとり呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「トラック泊地の中峰正也。 そして、タウイタウイ泊地の中峰幸仁か。 あいつら、思った以上にデカいことに首を突っ込んでるみたいだな…」

 

 

 

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