暁の水平線に、優しい希望の歌を   作:ダストブロワー(缶)

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2話目をすかさず投下していくスタイル。
なお続きは書いてないので次回は時間がかかるかもしれない模様。


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 さて、現状は右も左も前も後ろも見事なまでに水平線である。こういう場合、どちらに行けば陸なのか、残念ながらそんな知識はない。精々、水が温かいからコレ黒潮かな程度しか知らないのだ。

そうだ、太陽の向きから方角を、と思い天を見上げたが太陽は中天にかかっており、この方法も駄目なようである。どだい俺に海上サバイバルを想定した知識なんかあるわけがないのだ。

 

 仰向けに浮かびながら考える。耳元にちゃぷちゃぷとした音が心地よいが、いつまでもこうしているわけにもいけないか。とりあえず日本海にせよ太平洋にせよ、西に行けばアジアのどこかには付くだろう。面倒事は陸についてからは考えればいいさ。まぁ肝心の西がわからないんだけども。

 

 ああ、そうだ。せっかくなのでローレライ・システムを起動させて探知範囲を広げてみようか。上手くすれば商船かなにかを見つけられるかもしれない。陽が傾くまで空を眺めるのも良いけれど、あの女(あのひと)が好きだったように、ただ海を感じてみるのも悪くはない。

 

使い方は知っている。厳密にはナーバルの能力ではないこの力だが、艦むすの不思議パワーか故か、ナーバルの記憶からそれを再現して使うことが出来るようになっている。もしあの子(パウラ)に会えるなら『君の力のおかげで助かったよ。ありがとう』だなんて言ってみたいものだ。

 

目を閉じて体から力を抜く。自分の輪郭がジワリとぼやけて海に溶け込んでいくようにも感じられる。不思議と怖いとは感じなかった。風を受け波があり海流がある。月に引かれ潮が満ち、そして引く。暖流と寒流が織りなす温度層はオーロラのような無数のひだを生み出し、美しい様相を見せる。あちらに魚群があり、こちらにはそれを追いかける魚がいる。そっちにいるのはクラゲかな。もっと深く探せば自然が作った芸術的な岩や、へんてこな進化をした深海の生き物も見つけれるかもしれないが、今回はお預けだ。

意識を海の表層へ、広く広く、浅く浅く。なにかが見つかればいい。見つからなければその時はその時考えよう。

 

「見つけた。けど、なんだコレ。」

 

 思わず独り言がこぼれる。というのも、感知野の端に水面を進む航跡を見つけたのだが、それがどうにも小さい。およそ人一人くらいの大きさの航跡が5つ。うち4つは先頭のものよりもさらに一回り小さい。船ならば喫水線以下の船足があるはずなのにそれがない。

まるで水上を滑っているようだ(・・・・・・・・・・)。妙ではあるが、今はそれ以外に陸へのヒントがないし追いかけてみようか。それ以前にこの航跡が陸へ向かっている保障もないのだが、それはそれ、今は考えないでおこう。

 

「よっ……っとと。

 ナーバル、抜錨……は違うか。出撃します!……なんてな」

 

 体を起こし海面に立つ。艦むすの基本機能として出来ることのようだ。違和感は結構ある。例えるなら、車に乗った経験なんてないのに乗り方を体が覚えているような感じ。

 波を立てる足元をみて気づく。あの航跡、もしや艦むすか。なるほど艦むすなら人程度のサイズであの航跡も納得である。となると是非とも合流したいな。

 

 

 

さて、夕方である。航跡を追っていたのだが、ついに見失ってしまった。言い訳をさせてもらえるなら、潜航艇と艦艇の速度差を考えていただきたい。いくら感知野が広かろうと、彼我の速力差的に振り切られるのは自明であるのだ。

というか無理、頑張って走っても差が縮まらないどころか引き離されるんだもの。それにこの身体小さすぎるんだって。どうみても10歳あるかないか程度の体つきしかないし、艦むすとして上乗せがなければほんと子どもと変わらない身体能力なのだ。

 

そんな体にパウラと同じボディスーツとブーツ、背中にナーバルの艦橋のような物を背負い、両上腕に装甲がついて、大腿側部に魚雷が2本が俺の全艤装である。ついでに顔はわからないが髪色が黒なのは確認した。なお、ちゃんとついている(・・・・・)ので(艦むすに性別があるのならば)男である。強制性転換だなんて冗談で済まないことになってなくて心底安心したのをよく覚えている。……というか忘れられそうにない。軽くトラウマである。

 

 そうこうしているうちに陽が落ちた。陸は見えないし航跡は見失うし、なんだかどうでもよくなって倒れこむように海へ飛び込む。そして目が覚めた時と同じように仰向けに浮かびあがった。満点の星を眺めながら、どうしてこうなったんだろうと考え、すぐに考えるだけ無駄だと悟り思考を閉じる。暗く静まり返った海は、まるで魂が吸い込まれそうな不思議な魔力を発しているように感じられた。

 

 早いところ寝てしまおう。艦むすの体は1日2日寝なくとも大丈夫だと告げているが、そこまでして陸やあの航跡などを探すだけの気力はなかった。やり残したことがあった気がする。やりたかったこともあった気がする。思い出せないが家族に友人もいただろう。気づけば波の音を伴奏に、あの子(パウラ)が歌っていた椰子の実を口ずさんでいた。歌詞は覚えていないので、なんとなくのメロディだけ。

 身を任せている海水とは異なる、熱い雫が瞼の裏から溢れて頬を濡らすが、努めてそれを無視する。でないと、思い出せもしない故郷に心惹かれて、二度と立ち上がれなくなる気がするから。――結局、眠りに落ちるその時まで涙は止まってはくれなかった。

 

 

 

 

 

 マルロクマルマル。起床し軽く体をほぐす。赴任してからこっち、書類仕事が多いせいで少し体が硬くなっている。まだ20代だが、ランニングを日課に取り入れることを頭の隅で考えておく。手早く着替え、洗面所で顔を洗い、朝食を受け取りに食堂へ。このパラオ泊地鎮守府はまだ出来て間もないことに加え、北方海域での情勢の不安定さが噂されたため、給糧艦の間宮や伊良湖は配属されておらず、代わりに補給艦速吸がそれらの業務を取り行ってくれている。

 

「やぁ、おはよう」

 

「あ、提督さん。朝御飯出来てますよ。

 おかずはシャケか目玉焼き、どちらか一品持って行ってくださいね」

 

「いつもありがとう。助かる。

ふむ、それじゃあシャケの方を貰っていくよ」

 

「いえ!食事も速吸の補給任務だと思ってますので大丈夫です!はい。

 あ、食器はいつも通りお昼にお願いします」

 

「ああ、了解した」

 

食堂を出て自室へ向かう。赴任してしばらくした頃は面倒がって執務室で食っていたが、秘書艦の龍驤にこっぴどく叱られてしまったので、それからはちゃんと自室か食堂で食べるようにしている。小腹がすいた時のためにこっそりと缶詰を机の下に隠してはいるのだが。たぶんまだバレてないはずだ。食べたらちゃんと換気しているしな。

 

「おー。提督、おはようクマー」

 

 自室へ向かう途中、前回の遠征に引き続き今回の演習でもで旗艦を務めた球磨と鉢合わせした。時間の余裕はあるし駆逐艦たちの様子を少し聞いておくか。

 

「おはよう。今日の朝飯はシャケの切り身か卵焼きかが選べるみたいだぞ。

それはそれとして、駆逐艦の子たちはどうした?姿が見えないが」

 

「シャケ!クマ的にはそれは見逃せないクマ。

あの子達なら昨日が大変だったから、まだ部屋にいるクマ。こっちくる前に声かけたら返事したから、そのうち起きてくると思うクマ」

 

「そうか。演習明けで体調を崩したりしてないか出来れば見てやってくれ。

 あと、演習の報告書はヒトマルマルマル(10:00)までに提出を頼んだぞ」

 

 やはりまだ駆逐艦たちに今回の演習での相手は厳しかっただろうか。もう少し簡単な遠征や近海任務を行って練度を高めるべきかもしれないな。ついでに球磨に報告書のことで釘を刺しておくことを忘れない。

 

「駆逐艦の面倒を見るのは了解したクマ。

 だから、報告書はもうちょ~っと後にならないクマ?ゆとりをもった行動が大事クマ!」

 

「あまり遅れると後で龍驤に怒られるのは私なんだがなぁ……。

 まったく、じゃあ、ヒトサンマルマル(13:00)だ。午後一で処理するからそれまでに持ってきてくれ。これ以上は譲らんぞ」

 

「さすが提督、話がわかるクマ!そうと決まればクマはごはんクマー」

 

「やれやれ、調子いい奴だなぁ……」

 

走り去っていく球磨を見送り、自室で食事をとって、マルハチマルマル(08:00)。定刻通り執務を開始する。龍驤には艦載機の訓練を兼ねた鎮守府周辺の定時警戒を命じているので、マルキュウマルマル(09:00)ごろに秘書艦業務を開始してもらっている。

 

大本営からの資源受領書にサインをし、現在の備蓄資源量を確認。新しく届いたり更新された任務の一覧を仕分け、別々の箱にとりあえず仮置きしておく。早朝に帰港した伊58(ゴーヤ)からの報告書も忘れずに仮置き箱へ。艦むすの入渠の記録を見直し、入渠や補給、整備に漏れがないかチェック。次回の遠征の候補をざっくりと出しておき、午後に開始予定の近海の作戦計画書をすぐに読み直せるよう引っ張り出しておく。この作業をするだけで随分と仕事がしやすくなる。着任したばかりの頃は、書類を探そうとして机の上がヒドイことになった挙句チェック漏れが見つかるなど散々だった。人間は学ぶのだ。

 

「龍驤や。入るでー。んでもって、おはよぉさん」

 

 軽いノックと共に龍驤が入ってくる。

 

「おう、おはよう。定時警戒はどうだった?」

 

 この定時警戒、最初は少しでも熟練度を稼げればと思い始めたのだが、意外と馬鹿に出来ないところがある。敵艦の早期発見に加え、たまに開発資材やら資源を見つけたりと地味に鎮守府運営に役立っている。戦闘機搭乗妖精さんの腕も最近では上がってきており、最初期のように着艦・発艦に失敗して海ポチャすることはなくなった。海であっぷあっぷしている妖精さんは見ていて和むのだが、戦闘中にそんなことになったら目も当てられないからな。それと艦載機再配備の資源消費。ほんと資源消費。

 

「そうそう、それな。ちょっち聞いてや!いつも通り500㎞範囲をやってたんだけど、西北西に哨戒に出した子が500kmぎりぎりでなんや見っけてな?潜水艦やったら困るさかい、もうちょい寄って確認したんよ。そしたら人?っぽいのが浮かんでたみたいやねん。」

 

「ふむ、深海棲艦ではないのか?」

 

 今のご時世、『海』で『人型』であれば、悲しいことに要救助者ではなく深海棲艦をまず真っ先に疑わねばならない。海上航路は寸断されており、旅客船などは瀬戸内海などの本土近海以外は就航していない。貨物船で十分な人数の艦むすが護衛についてようやく、なのだ。

 

「今見た目割れとる深海棲艦ってさ。なんかしら装備持ってるか、そもそも人型しとらん奴ばっかりやろ?やとするとパッと見で装備とかはついとらんかったらしいから違うと思うなぁ。……まぁ、装備全部外した深海棲艦の可能性はあるかもしれないけどさ」

 

「逆に、艤装を喪失した艦むすの可能性もあるか。」

 

「うん、そうなんよ。ここの工廠で艦むすが建造できるようになるん、まだ先になるんやろ?だったらダメ元で回収しに行ってもいいと思うんや。使える手は多いにこしたことないで?それに、もし深海棲艦ならちゃんと撃沈しとかんと安心できんし」

 

 どうするか。と言ってももう8割がた回収作戦の実行を決めているので悩むのは編成である。現在この鎮守府には艦むす12名が在籍しているが、その内、艤装を装備し出撃可能な艦むすは10名で、速吸・明石は艤装がないため出撃不可である。もし仮に艤装があったとしても艦種の関係上あまり出したくはないのだが。

出撃できる10名は艦種で見れば駆逐4、軽巡2、重巡1、軽母1、水母1、潜1である。だが我が鎮守府唯一の潜水艦、伊58(ゴーヤ)は今日の早朝オリョール海漸減作戦から戻ったばかりなため、少なくとも今日、可能ならば明日までは休ませてやりたい。よって候補から除外する。そして万が一ここを強襲された場合、部隊を引き戻すまで時間を稼ぐ必要があるため、単艦での戦力が高い重巡『青葉』も同様に出撃候補から除外。

 

「なぁ、司令官。で、どないするん?」

 

「……よし、回収作戦を実施しよう。

今回発見した人型を今後作戦中は『洋上浮遊物‐甲』と仮称。マルキュウサンマル(09:30)をもって第三種戦闘配置。イチマルマルマル(10:00)に艦隊編制を発表するから食堂に集まってもらおうか」

 

「了解や。んじゃちょっち皆にこのこと伝えてくるわ」

 

「ああ、よろしく頼む。

 伝え終ったらその人型の浮遊物についてわかってる範囲で情報を出してくれ」

 

 

 

「もう、急に第三種配置で呼ぶなんて。やっぱり司令官は私がいないとダメねっ」

 

 ふふんと胸を逸らしながら、先頭を歩く雷が楽しげに話しはじめる。本当は今日の午前中は休みの予定だったのだけど、龍驤さんから『ちょっち司令官から任務があるさかい、食堂に集合や!響らにも伝えといて!』って言われたので部屋から食堂へとんぼ返りすることになった。今は時間まで提督の到着を待っている段階ね。

 

「でも最後まで寝てたのは雷」

 

 くすくすと微笑みながら響が茶々を入れる。雷はしっかりものだけど、朝はちょっと弱いのよね。

 

「うぐっ、でもあの時はまだ配備命令出てなかったし!」

 

「今回の演習は大変だったし、仕方ないのです」

 

 うんうん頷きながら言ってるけど……電、それはフォローになって……るような、なってないような。結局ねぼすけって言っちゃってるような……。むむむ。

 

「それはそれとして響、雷、電。今日のはなんの作戦だと思う?

 私たちが招集されたところから、私は敵の駆逐級でもいたのかなって思ってるんだけど」

 

 私としては、休みの予定の私達が呼ばれたってことは、またはぐれて侵入してきた敵艦を発見したから迎撃ー!だと思うのよね

 

「私は、そうだな。またドラム缶とか木箱とか、資源が見つかったんじゃないかと、思う。自慢するわけじゃないけれど、ここで一番燃費が良いのは私達だろう?」

 

「なるほどー、電も資源の回収だとおもうのです!」

 

「そう?じゃあ私は敵艦がいた方にするわ。だって資源ならこんな急がないと思うしね」

 

「それも、そうか。あ、午後の訓練に間に合わせるために今から出発するというのはどうだろう」

 

「たしかにね。まぁ、どんな任務であっても一人前のレディーとしてしっかりこなして見せ――って、司令官きたみたいよ」

 

さぁ、どんな任務でもかかってきなさい!この暁が一番なんだから!

 

 

 

皆がそろっていることを確認し、皆から一段高くなるように木箱の上に乗る。

 

「では、作戦内容の通達及び艦隊編制を発表する。

 今回の任務は今朝の定期警戒で発見された『洋上浮遊物‐甲』の回収・保護、あるいは破壊である。」

 

 予想通り『回収するのに破壊?』『どっちクマ?』などのざわめきが聞こえる。

 

「疑問はあると思うが、まずは続き説明するぞ。今朝見つかった『洋上浮遊物‐甲』だが、その形状が人型をしていることが報告された。発見した妖精さんの言葉を要約して列挙すると『人型だった』『小さかった』『体は黒かった』『艤装はついてない』『艤装みえなかっただけかも』などだ。

このことから、『洋上浮遊物‐甲』が艤装を失った艦むすか、極めて軽装備の深海棲艦かがはっきりしない。また、仮に艦むすだった場合、救護・救命の必要があるため確認に時間をかけるのは得策ではないと判断したため、早期に作戦を開始することとした。この時間が休みだった諸君にはすまないと思っているが、よろしく頼む。

 

では、編制を発表する。まず今朝方戻ったばかりの伊58、及び速吸、明石の3名は作戦より除外する。第一艦隊、旗艦を龍驤とし、球磨、暁、響の4名、第二艦隊、旗艦を千歳とし、多摩、雷、電の4名とする。

メンバーからわかると思うが、せっかくなので空母機動部隊を編制してみた。今後、このような機動部隊での出撃も十分考えられるため、回収任務だと思って侮らずに事に当たってほしい。

編制に入っていない青葉だが、万が一ここが襲撃された場合に備え鎮守府で作戦終了まで第二種配置で待機してもらうことになる。また、『洋上浮遊物‐甲』が深海棲艦だった場合の増援として出てもらうことも考えられるから準備は万全にな。

 

では、現時点を持って総員第二種戦闘配置。ヒトマルサンマル(10:30)に第一艦隊出撃、ヒトフタサンマル(12:30)に第二艦隊出撃、各艦隊の作戦時間は4時間とする。近海ではあるが深海棲艦には十分警戒した上で回収・捜索活動を行ってくれ。以上!」

 

『了解!!』

 

 集まった皆の敬礼に返礼する。ざわざわと活気づき、艤装の確認や隊列についてなど話す様子が聞かれる。

さて今回の件についても新しく報告書制作しないといけないしそろそろ執務の続きに――

 

「提督、報告書の提出の延長を申請するクマ!」

 

 ――球磨はぶれないなぁ……。

 

「そういうと思ったよ。じゃあ、今日中にな。」

 

「よっし!提督、ありがとクマー」

 

 出撃が決まっているのに気を落とすような事をさせたくないと思い甘く接してしまうのは、はたして良いのか悪いのか……。まぁ皆が笑ってすごせるなら、今はこれでいいか。俺は直接戦えないんだ。このくらいの苦労、どうってことないさ。

 

 

 

 

 

 目が覚めたら日は既に高かった。航跡を発見してから今日で3日、この海のど真ん中に投げ出されてからだと5日目となる。あれから、航跡の向かった方角に少しずつ進んでいるが、今のところなにも発見は出来ていない。

 さて今日はどれくらい眠っていたのだろう、どれくらい流されたのだろう。疲労の為か、日に日に意識を保てる時間が短くなってきている気がする。そのくせ、相変わらず見える景色は360°水平線で、陸の気配は微塵も感じられやしない。とりあえず起き上がろうとしたが、昨日に比べて更に体が馬鹿みたいに重い。直感的に燃料が不足していると悟った。どう足掻いたところで潜航艇のスペックでは燃料も馬力もなにもかもが不十分というわけか。結局立ちあがれなかったのでそのまま仰向けで海に浮かぶ。

 

戻る場所も進むべき先もわからない。深海棲艦と戦うという本能にも似た使命はあるが、それだって『他に何もやることがなければ』やろうかな程度だ。『人類を守る』という艦むすの願いは消えそこなった人格のせいで上滑りしてしまっている。守るべきものなんて俺にはないのだからさもありなん。いっそ完全にナーバルであれれば、あるいは記憶をすべて持っていられたなら『守ること』に多少はモチベーションでも沸くのだろうが、現状だとただ綺麗なお題目も並べられているだけのような気分でしかない。神様がいるのならなんだってこんないい加減な仕事をしてくれたんだと問い詰めたい。

 

 目を閉じる。瞼越しにじんわりと太陽の暖かさを感じる。訳が分からないまま海に投げ出されてもう5日目。肉体的には燃料など艦むすとして活動するための物資が、精神的には孤独感と喪失感と虚無感の合わせ技で、色々と限界が近い。さっき目が覚めたばかりなのに、もう頭にもやがかかり、思考を保つことが難しい。

 

 すこし高い波を被った気がした時にはもう、意識をとどめようと必死に繋ぎとめていた思考の紐は、俺の手にはなかった。

 

 

 

 

 

「あっかん!こら不味いで!」

 

 現時刻はヒトサンヒトマル(13:10)。艦載機で周囲を探し続けてようやく『洋上浮遊物‐甲』を発見。深海棲艦やなくて、ほぼ艦むすやろうってわかったのはええ、同時に起き上がろうとしとるのも確認できたからまだ生きとるのもわかった。

 けど、今のはあかん。波にのまれて上がってこんのは最悪や!

 

「な、なにクマ!?」

 

「うわぁ!何よ急に!?」

 

「波にさらわれて浮かんでけぇへん!

皆!うちはほっといてええ!九七式案内に飛ばすさかい急いで急いで!」

 

 せっかく見つけたのに目と鼻の先で沈まれるなんて、そないなことあってたまるかい!急いで準備を済ませ、発艦させる。頼むで……!

 

「なっ!良いわ、響、これ持ってて!」

 

「暁!ああもう、すぐに追いつくから!」

 

 暁が響に装備していた魚雷発射管や砲などの艤装をぽいぽいと投げ渡していく。

 

「最大戦速で行くクマー!」

 

「響、艤装は移動しながら持ち替えるで!うちらもはよう行かんと」

 

「うん、わかってる。急ごう」

 

別方向に飛ばしてる艦載機に集合場所の変更を指示しながら出来る限り急いで向かう。艦載機に乗ってる妖精さんから伝わってくる感じでは、理由はわからないけど沈み方はゆっくりしているみたいやし、間に合うはず……いや、間に合わせるんや!

 

 

 

急いで現場へ到着したら、頭から爪先までびしょ濡れで、そのうえ曳航ロープを体にぐるぐる巻き付けた暁が、顔を真っ青にしながらも笑っていた。

 

「ふ、ふふ……このくらいへっちゃらなんだから!」

 

隣には艤装から曳航ロープを伸ばし、件の艦むすをお姫様抱っこしている球磨が。

 

「まさか……暁、海、潜ったんか?」

 

 いくらウチらが人の形しとる言うても、潜水艦でもない艦が艤装つけたまま潜るなんて聞いたことないで!一回沈んでるウチらからしたら、海に潜るなんてトラウマや。それを……。

 

「妖精さんに頼もうって思ったんだけど、間に会わなかったら困るじゃない!一人前のレディーとして、人命救助を考えた結果よ!ロープもあったしね」

 

「まさか潜るとは思わなかったクマ……。飛び込んだ時は心臓止まるかと思ったクマ……。

 びっくりしたクマー」

 

 そない言うても……。暁が強がって笑ってるのはバレバレ。顔色も悪いし、けど、なんや。凄いかっこええやないか。

 

「さすがやね。うん。さすがや。

 よっしゃ!司令官に電文打ったらすぐ帰るで!周辺警戒はウチに任しとき!」

 

「そうね。濡れてるの気持ち悪いし、早く帰りましょ!」

 

 

 

鎮守府が見えてくる頃に、響にこっそりと話しかける。

 

「なぁ、響」

 

「うん?なんだい?」

 

「……暁、えらいかっこいいな。めっちゃ怖いやろうに、艦むすが海潜るなんて……凄いで」

 

「ふふっ……。だろう?

 なにせ私の自慢のお姉ちゃんだからな」

 

 

 

港では鎮守府の全員が待っていてくれた。回収した艦むすは幸い命に別条はないらしい。とりあえず明石が入渠させて、意識が戻り次第提督とウチ、それと暁で事情を聴くことに決められた。さてさて、キミはいったい何者なんやろうね?

 

 

 

 

 




社会人のみんな、お仕事お仕事~!(RJ感

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私は学生ですが国家試験があるのでこれ書いてるときとFGOしてるとき以外は基本的に参考書とにらめっこです。艦これは資材回収するくらいしか……

初課金10連でウラドおじさまが出ました。ジャンヌ、玉藻、ウラド+デオンくんちゃん。我がPTここに完成セリ。やったぜ。種火しか回してないから宝具強化が遠いんじゃよ。
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