終わって。
「ただいま。みんな。」
「白狼!?」
戻って最初に見たのは、霊夢の般若顔だった。
「あーんーたーねー!なんであんな危険なことしたの!?下手したら戻ってこれないかもしれないのに!なんで見ず知らずの奴を助けられるのよ!」
すごい剣幕で迫ってくる霊夢。俺は。
「危険とかどうとか、そんなん考えてる暇なかった。それに、見てたら助けたくなったんだよ。そこに知り合いかどうかなんて関係ないだろ。」
と平然と答える。霊夢は頭に手を置き、
「はぁ…異常よ。あんたは普通の人間じゃないわ。それを続けてたら、いつか"壊れる,,わよ?」
「壊れねーよ。俺が最後の希望だからな。」
笑って答える俺に毒気を抜かれたのか、霊夢は再びため息をつき、
「ま、無事に戻ってきてよかったわ。死なれたら寝覚めが悪くなるとこだったし。」
というふうに締めた。
「!戻っていたか。白狼。…どうなった?」
どうやらここは地下室らしい。そこに入ってきたのはレミリアと咲夜、美鈴、パチュリー…と黒いドレスみたいな服に赤い髪をした悪魔の少女がいた。
「ああ、レミリアか。…終わった。無事にフランの心の狂気は封印したよ。鍵はフラン自身が持ってる。」
「…大丈夫なのか?それは。」
「阿呆。お前の妹だろ。お前の家族だろうが。他ならぬお前が信じてやらなくて誰がこいつを信じるんだよ。」
レミリアの懸念を蹴っ飛ばす。
「っ…そう、だな。」
「ったく。制御できない能力…ね。」
「白狼?」
俺のつぶやきに、霊夢が尋ねる。
「ん?ああいや、なんでもねえよ。それより、異変はどうなったんだよ。」
俺の問いに答えたのは、レミリアの後ろにいた咲夜。
「もう終わっています。霧は晴れて、眩しい太陽が照っています。」
「…そうか。」
俺はようやく終わった戦いに安堵し、緊張の糸を切る。すると、力が抜け、立てない。見かねたパチュリーが俺の体に触れ、調べる。
「…あなた、いくら今代の創世者だからって無茶し過ぎよ。霊力がもう空っぽじゃない。」
「…ま、もともとのスペックはカスだからな、俺は。」
「まあ、あの骨の脆さから気づいてはいましたけど…」
パチュリーと美鈴の指摘に、俺は悪態もつかず認める。
「あんたって…」
霊夢も呆れて、あまり何も言えなくなっていた。
「ま、なんにせよ、これで一件落着だな。」
こうして、紅霧異変は終わりを告げた。
………で。
「本当に良いのか?…その…俺が紅魔館に住むなんて。」
「主である私が良いと言っている。遠慮するな。むしろしたら血を吸って吸血鬼にしてやる。それとも、こう言ったほうがいいか?『フランの為だから』と。」
「…それは卑怯だろ。…ああ、わかったよ。よろしく頼む、レミリア。」
「白狼がうちに住むの!?わーい!」
俺は、紅魔館に住むことになった。まあ、幻想入りしてからというもの、寝てないし休んでない。どの道一泊はしなければならなかったのだが、レミリアの厚意(否定権なし)により、ここに住むことになったのだった。で、そんな俺の立場だけれど。
妖精メイド<小悪魔=咲夜<パチュリー=俺<レミリア=フラン
こんな感じになった。一番下でないからびっくりだ。
さらに言えば咲夜よりも上だというのが。…考えるだけで怖くなってくる。空き部屋の一つを貰い、そこのベッドに寝転がる。
「…ま、こっからここに慣れていけってことか。」
小さく笑い、まぶたを下ろす。余程疲れていたのか、すぐに眠ることができた。
ここは、何処だろうか?"和,,といった感じの屋敷。板張りの道場らしき場所。その中心に、俺は立っていた。周りには何人もの人がいた。全員、一人残らず何処か傷…それも致命傷を負っていた。その中の一人が言った。
「捧げよ…捧げよ…」
それに同調するかのごとく、他の人も続く。
「「「捧げよ…捧げよ…」」」
「「「自分の全てを…希望に…」」」
「「「捧げよッ!捧げよッ!」」」
「「「我が一族!此れのみが家訓なり!」」」
「「「自らを捨てよ。我欲を捨てよ。貴様の命、それは救う為のみに存在するもの。貴様の希望を、他人の為に捧げよッ!」」」
「な…んだよ、これ…ッ!?」
一言で言えば、異常だった。これが、歴代創世者たちなのだろうか。それに、この方々の言う家訓。
"他人の為のみに生きよ。,,
利他主義、というやつなのだろう。"希望,,であるために、利他主義であれ、と彼らは言っているのだ。そろそろ五月蝿いな、そう思った時。
『静まれ、愚か者ども。』
「「「ッ!?」」」
厳格な声が響いた。人の波の、その向こう側。そこに立っていたのは、
「
「夜月白狼。待たせたな。」
「いえ。そんなに待っていませんよ。」
周りの人を気にも留めないこの会話。
「「「初代様…おお…最も強き希望…」」」
『黙れと言った。』
創世者が腕に霊力を込め、一閃。それだけで、彼らは霧散した。元々存在などしていなかったかのように。
『すまんな。騒がしくて。やれやれ。これだから中途半端な後継者は。』
創世者は深くため息をつき、本題に入る。
『さて、本題に入ろう。白狼よ。お主に、我の全てを渡そう。』
「全て、ですか。また重そうなものですね。」
『まあそう警戒するな。受け取って困るものではないぞ?』
「今更ですね。俺が元の世界でこの
俺が少し彼を睨む。
『…確かにな。それは悪いことをした。だが。ソレのおかげであの少女と出会えた。そう考えてはくれんかの?』
「…それを言ったら終わりでしょうに。そこであの子は卑怯ですよ。」
創世者の指摘に俺は言葉を濁す。
『…さっきも言ったが、お主の能力を最大限使うためには創世眼が不可欠。それは既に与えた。』
「ですね。元々チートなのに、さらにチートになるとは思いませんでしたけど。」
『希望として在るためには、誰より強くなければならんからのう。ま、割り切ってくれ。で、あと渡したいものなのじゃが。』
「もう手一杯なんですけど?」
創世者の言葉に俺は遠回しに拒否る。
『安心せい。これはただの考え方じゃ。別に守らなければならんものでもない。むしろお主の代で無くして貰いたいくらいのものじゃよ。』
「それある意味っていうか普通に呪いですよね。俺別に正義の味方になりたいわけじゃないんですけど。」
『なんなら再現しても良いぞ?』
「嫌ですよ。俺は聖杯戦争とかには参加しませんから。」
互いに冗談を言い合えるほどには緊張感もなくなってきた。
『で、その考えなんじゃが、お主は先程聞いておる。』
「ああ。あの利他主義ですか。」
『まあ、それを極限まで上げたものじゃのう。しかし、我はそれを無くしたい。』
「…は?家訓なら、あんたが始めたことでしょう。何故に?」
『過ちじゃった。』
懺悔するかのように。後悔していると言った風に、彼は言った。
『そんな破綻した考え、すぐに壊れるとわかっていた。それなのに、そうしなければ暴走するからと、我は後に続く者たちに我欲を捨て去る事を創世眼の継承条件にした。何人もが捧げた。何人もが希望となった。そして、何人もが後悔し、死んでいった。その亡霊たちが、さっきの奴らじゃよ。』
「自分で沼に引き摺り込んで置いて愚か者扱いしたんすか…」
『…死してなお、あんな恥を晒しておったからの。死後は解放されるはずなのじゃ。創世者の義務からは。我を除いての。』
「………っあー!洒落くせぇし面倒くせぇ!」
突然大声を出した俺に創世者は驚き、語りを止める。
「つまりあんたは、俺に一族のふざけた考えを払拭して欲しいんだろ?…やってやるよ。自由に生きろってんだろ?言われなくても、自由に生きてやる!いいか、俺はただ理不尽な悲劇が嫌なだけだ!それを覆す為にこそ、この能力を使ってやる!あんたも安心して、俺の中で見てろ!」
俺がそう宣言すると、創世者は笑って。
『ああ。安心したわい。お主は我をいともたやすく超えるのう。これなら安心して託せるというものじゃ。ほれ、頭を出せ。』
ちょいちょい、と腕で俺を呼ぶ創世者。
「あんたの声で頭を出せって言われたらあの暗殺者みたいなんだよなあ。」
そういいつつ、歩み寄る。創世者は俺の頭に手を置き、
『継承せよ。我は創世者。根源より、今代へと全てを託す者。全ては全ての幸せの為に。』
その言葉と共に、俺の体に光が降り注ぐ。それと同時に意識も薄れていく。
『しばしの別れじゃ。その力で、多くの者達が救われん事を』
その言葉で再び俺の意識は暗転した。