東方希望録、始まります。
「……………。」
「…悪いことしちゃったわね。髪もボサボサ。白目向いてるし。汗も出てた。余程のことなのね。まだ14、5歳のはずなのに。一体何があったっていうのよ…」
俺は、アリスに介抱され、ベッドに寝かされていた。まあ、髪がボサボサなのは寝癖と探索時の風圧。白目は寝てる時は瞼が閉じ切らないからである。…紛らわしいな。
「…綺麗な髪…手入れしたらもっと綺麗になるのに…」
アリスが一人、白狼の頭を撫でていると、不意に、アリスの頭の中に声が響いた。
『礼を言おう、人形使い、アリス・マーガトロイド。』
「ッ!誰!?」
いきなり頭の中に響いた厳かな声に驚き、周りに上海、そしてもう一体の人形、蓬莱を展開する。
しかし声は、
『怯えるな。魔法使い。我は創世者。夜月白狼の先祖である。』
「白狼の…?」
『左様。我が一族は希望の一族。その能力、"ありとあらゆるものを創造する程度の能力,,により、多くのモノを救い続けてきた。』
「万物創造……そんな大きな力が白狼に…?」
信じられず、白狼を見る。もう落ち着き始めている俺は、すーすー、と寝息を立てていた。
『魔法使いよ。お主はかなり深くまできている。昏き深淵まですぐだ。お主が地雷と言った、白狼の世界での話。』
「っ!やっぱり、余程のことがあったのね。」
『うむ。聞くか?今なら戻れる。元々、お主には関係のないことじゃ。今戻れば、好きな人形作りに没頭できる。お主が深淵を覗き込めば、お主もまた、深淵に覗かれる。』
アリスは、そんなことを言われて止まる少女ではなかった。
「聞かせて。この子は多分、一人でその過去を背負ってる。そんなの酷すぎる。」
アリスがそう言うと、創世者はフッと笑い、
『では、少年の話をするとしよう。別に星の内海、物見の台から聞かせるわけではないが。ある意味神の祝福に満ちた物語だ。』
そう言って、創世者は語り出した。
地面は少し、湿り始めていた。
運動神経皆無。顔はそこそこ。アニメや特撮が大好き。好きな食べ物はハンバーガーやマグロの刺身。嫌いなものはバッドエンドと誰かが死ぬこと。あと蜘蛛も嫌いだった。
どこにでもいるような少年。それが、夜月白狼と言う少年だった。
生まれは九州、熊本の天草。4歳で熊本市へと移った。そこで幼稚園に入ったわけだが。
〈はっ。見ろよこいつ!シラガ生えてるぜ!〉
〈ジジイじゃん!〉〈ギャハハハハハ!〉
周りは黒髪ばかり。その中で唯一の異色の髪なのだ。元から出ている杭。打たれないわけがない。少年は泣いた。やり返そうと思った。親が言い聞かせ、止めた。
ある日、少年の身体能力がバレた。無論、バカにされた。子供とは良くも悪くも正直だ。考えもせずに行動する。純粋。だからこそ、最も残酷なことを残酷と知らずに行える。
小学生になった。
入学してからは皆がある程度少年の扱いに慣れ、銀髪のことも、身体能力のことも触れなくなってきた頃。能力が発現した。思ったものを"創り出す,,能力。白狼は真っ先に親に報告した。
使い方、心構えを教えられ、それをしっかり守った。
学校では、やはりというか、嫌がらせが多発した。幼稚園が同じだった者はしなかったが、小学校で初めてあった者から、暴力や罵詈雑言をぶつけられ、毎日のように泣いた。先生が来て、向こうが謝り、それを許す。そんな生活を6年間続けた。部活はバスケをやった。幼稚園の時から一緒だった子に誘われたからだ。
中学。ここが、最も重要な三年間となる。
入学する頃には、能力の扱いに慣れていた。しかし、少年の心は磨り減っていた。毎日毎日浴びせられる罵倒。先生も割と冗談なのだろうで済ませる。誰一人、少年の心を想う者はいなかった。少年は思った。
「ああ。なーんだ。俺って価値ねぇんじゃん。」
それを、親に言うわけにはいかなかった。そんなことを言えば、面倒なことになる。そんなの、
中学になっても、少年に対する風当たりは強かった。そんなある日、バレた。少年の能力が。翌日、皆の態度が一変した。
教室のドアをラノベを片手に開ける。すると足元に手が見えた。驚き、前を、教室全体を見る。
「!?」
クラス全員が、土下座していた。
〈おねがいします!殺さないで!〉〈今までのこと、謝るから!〉〈友達になるから!〉〈優しくするから!〉
〈〈〈殺さないで!〉〉〉
今まで、少年を傷つけてきた子供達は、白狼が剣を"創り,,、さらに"創った,,泥人形を斬り倒しているのをクラスの誰かが見たらしい。それを見てから、クラスの者は皆、これまでのことで復讐されるのではないか、と。それを聞いた少年は、
「は?なーんで俺がそんなめんどいことしなきゃならんのだ?別に、気にしてねーよ。今までのがお前らの人に対する接し方なんだろ?珍しいとか、違うからってそれを揶揄ったり、人の欠点あげて笑ったり、何も言わねぇからって殴ってみたり。それがお前らの友情ってやつなんだろ?いいじゃん。やれよ。ほら。俺の目の前で、俺以外にやってみろよ!」
少年の今まで我慢していた分が一気に放たれた瞬間であった。しかし、誰一人として、他の者に少年にやったことをした者はいなかった。
「できねーならやるな。」
少年はそれだけ言って、席に座った。
その翌日から、少しずつ関係が修復され、少年も笑うようになっていった。少年は、お人好しだった。無類の。
「持つよ。」
「ん?ここ?ここはね。」
「ん、わかった。やるよ。」
頼まれたことを断らない。そして自分で無理なことしか頼まない。面倒だからと投げなかった。つまり、"創造,,の依頼も。
少年の霊力全てを持っていく。けれど、少年は、
「俺が、役に立ってる…はは。なんだ。簡単なことだったんだ。」
笑っていた。頼られることが、喜びだった。けれど。崩壊は早かった。日に日に、依頼する人が増えていった。もう少年のキャパシティを超えたものになっても、構わず来た。
創って、創って、創って、創って、創り続けて。気づけば世界は、少年の名前しか聞こえなくなっていた。
「うるさい。…うるさい。………うるさいうるさいうるさい!」
少年は家に帰り始めた。依頼を全て
そうして、幻想入りした。
『これが、白狼の過去だ。』
「…何よ、ソレ。私なんかより、ずっと辛いじゃない。」
『それは違う。魔法使いよ。人の過去は少なからず辛さ、悲しみを纏うもの。そこに優劣はない。』
「それでも!こんなのあんまりじゃない!なんで、なんで誰も気づかなかったのよ?白狼が限界だって、助けてっていってたのに!」
アリスは叫ぶ。その時。
「う…」
『「!!」』
うっすらとだが、俺は目覚めた。
「…知らない天井だ…」
と、まあおきまりのセリフを吐いて、俺は起き上がる。
「っと。よく寝た…かな?」
「白狼!?大丈夫なの?」
アリスが心配してくる。俺は笑って、
「大丈夫だ、問題ない。」
『それは大丈夫なやつではなかろうに…』
「白狼…聞いたわ。貴方の過去。」
「そっか。んじゃ、俺はそろそろ行くよ。」
「あら、そう。またね………って、そんな訳ないでしょ!?待ってよ!」
「えぇー?だって迷惑かけちゃったし。異変も解決しないとだし。」
そんな俺のナチュラルに自分より他を優先した態度にアリスは言った。
「なっ…貴方ねぇ!なんでそこまで自分を後回しにできるの!?もうそれ病気よ?……ちょっとは自分を気にかけなさいよ。」
とアリスが言う。
「いやあ、気にかけてはいるよ?」
「嘘。だったらもっと誰かに頼ってる。」
「………いいんだよ。俺のことは。今はただ、
「その中に、白狼は入ってるんでしょうね。」
アリスの鋭い問いに、俺は。
「もちろん、入るよ。」
嘘をついた。そうでもしなければ、話してくれなかっただろうから。
「…はあ。わかったわ。異変のこと、少し教えてあげる。だから、絶対に解決しなさい。」
「…ん、わかった。」
そう言って、アリスは今回の異変について知っていることを教えてくれた。
「それじゃあ、行ってくるよ。」
「ええ。終わったらまた来なさい。今度はお茶くらいならいれてあげるから。」
「楽しみにしとく。それじゃ。【翼符 ドラゴンウィング】。」
俺はアリスと別れ、また大空へ飛び立った。
春のかけら、春度が降ってくる大元に。
おうふ。やっぱり多くなってしまった。
アリスから情報をもらい、目的地を定めていく白狼。次に出会ったのは新たな妖精と音楽家!?
次回、東方希望録、
超幻想級の音楽家
さあ、ショータイムだ!