俺は真実の月を世に戻すため。
輝夜はそれを阻止するため。
永夜は返される。
東方希望録、始まります。
俺の目の前に浮遊する少女。長い黒髪。まさに貴族っといった感じの着物。
「誰?」
「…夜月、白狼だ。」
もう何度も繰り返した自己紹介。そろそろバリエーションがいるかな?
「どこから来たの?」
「この幻想郷の湖の先にある紅い館、紅魔館から。間違っても、月からじゃない。」
「……じゃあなぜここに?」
「…偽りの月を本物に直すためだ。」
「そう…貴方は私に月に帰れって言うの?」
少し目を潤ませる輝夜。だが、俺にはその嘘は通用しない。
「……いいや。月の奴らは決してここには来れない。」
「……嘘ね。」
「いいや。本当のことだ。」
「信じられない。」
「そうか。なら。」
俺はスペカを取り出し、輝夜に向ける。
「力づくででも信じさせる。」
「クスッ…やっぱりそこに行き着くのね…」
「……らしいな。」
「私がかつて出した五つの難題。貴方はいくつ解けるかしら?」
「……あんまし頭は良くねえが、やれるだけやってやるよ!【力剣符 パワーソード】、【盾符 ドラゴンシールド】、【翼符 ドラゴンウィング】。……さあ、ショータイムだ!」
俺史上初の、月という星一つを賭けた戦いが、始まった。
「【剣撃符 絶力破】!」
「【難題 竜の頸の玉】。」
俺は剣を乱暴に振ってできた衝撃波を飛ばす。
向こうはスペカからでた弾を飛ばす。
俺の飛ばした衝撃波はいくつかの弾を消して消える。
「ちぃっ!流石に弾が多すぎるか!?」
「ふふ、どうしたの?」
「っくそ、余裕かましやがって。」
『白狼。お主、我から見ても霊力が切れかかっておるな!?無茶をするな!』
「…悪い。んなこと言ってらんねえんだよ。あとで、説教とかはまとめて聞くから、だから、今は…力を貸してくれ。
『っ……よかろう。しっかりと、異変を終わらせるのだぞ?』
そう言って、創世者は霊力のリソースを分けてくれる。ああ。俺は先祖からして、恵まれてたな、と、今更ながらに思う。
既に俺の中の霊力は空だ。だから創世者に頼った。これは俺自身の力不足。
『渡しきったら、もう我が目覚めることはない。我は元々、霊力だけの存在だからのう。なあ、白狼よ。お主は、万能の希望になる必要はないのじゃ。自分の欲を持て。願いを持て。意志を持て。我が認める。お主はお主の心のままに、生きるのじゃ。』
突然の創世者の告白に、俺は。
「……は?ちょっと待て、目覚めることはない、だと!?おいやめろ、だったら受け取らねえぞ!今すぐ、霊力を送るのをやめろ!」
『白狼。短い間ではあったが、実に楽しいものだったぞ。願わくば、お主の次の世代からは、鳥のように、自由に生きる者たちであらんことを…』
霊力が湧いてくる。そして、創世者の体が薄く消えていく。声も遠くなっていく。
「おい!まてよ!いま、あんたを失ったら、俺は…」
『白狼。お主はもう、
「創世者ッ!………くっそ…なんだよ…ふざけんなよ…わかったよ。俺は、俺の生きたいように生きてやる!まずは、この狂乱を終わらせる!」
「何!?この濃密すぎる霊力…!」
俺は創世者より受け取った霊力を解放する。
「【
ガシィン!と見えない鎖で輝夜を縛る。
「きゃ!?何これ…鎖?」
「これで終わらせる。【剣撃符 絶力剛炎破】。」
いつもの倍ぐらいの炎を灯した剣から大きな衝撃波が放たれる。それは抵抗のできない輝夜に向かって飛んでいき…
「きゃあああ!?」
「……ふぅいー。」
……終わった。これで、月は元に戻って、みんなも、笑っていける…
「そう、夜を止めていたのは、貴方だったのね。」
「ッッ!?」
ぞくり、とした。煙が晴れ、そこから現れたのは、夥しい量の弾幕。
「【永夜返しー丑三つ時ー】。」
「っな!?ぐっ!?」
とっさにドラゴンシールドで防ぐ。が、すぐに壊される。そして、またすぐに多くの弾が俺を襲う。
「ぐ、が、あああっ!?」
「次よ。【永夜返しー寅の三つー】。」
とめどなく襲いくる弾幕。
「ぐ…く、【
再び眼に霊力を流し、俺の目の前に空気の盾を"創る,,。
数十秒経ち、輝夜が最後のスペルを使う。
「【永夜返しー夜明けー】…」
そこから、俺の記憶はない。意識を失った俺の体は、果たして最後のスペルを防ぎきったのか、それとも、失った時点で俺は地に落ちたのか。真相を語らない輝夜以外、真相は誰も知らない。
…で、結局、異変はどうなったのかというと。
永夜異変の首謀者は、俺、夜月白狼、ということになっている。他にもやった奴はいるが、そんなのは些細なことだ。別に問いただすようなことはない。
本題だった月のことも、元どおりになっている。月から使者が来ることもなく、今は永遠亭のものも、幻想郷に慣れつつある。人里にて、医者のようなことをしているらしい。
で、俺にとっての本題の、創世者のこと。
やはり目覚めてからというもの、創世者の声どころか、気配すら感じなかった。つまり、消えたのだ。本当に。
「……俺のせいだ。あの時、全部自力でやってれば…」
俺の涙は、真新しい枕を、ジワリと湿らせていった。
永夜異変、解決。しかし、代償として失ったものは大きい。
はい、というわけで永夜抄編終了&創世者さんオールアップです。あとはもう出てきません。…が、需要があれば、過去編としてなんとか出番をあげたいのですが…
取り戻した日常。けれど戻らない先祖。
俺は失意のまま、1日を過ごす。
次回、東方希望録
犠牲から生まれた日常。
立ち上がれ、もう一度。
感想、評価、お待ちしてます!ではでは!