閻魔。死んだ人間を裁く存在。その者には嘘、偽りが全く通じないとされる。手には笏を持ち、死んだ者の逝く先を決める。その夜。俺たちはそいつと出会う。
東方希望録、始まります。
で、夜になった。日頃から"創って,,おいた霊力回復薬(俗に言う兵糧丸)を食べ、外に出ておく。
「おや、お出かけですか?」
門番をしていた美鈴に声をかけられる。
「あ、美鈴。まあね。フランに館の外を見せるって言ったから。」
「ああ、なるほど。だからこの時間に。」
「うん。でないと危険だしね。」
と、お互いにこやかに話す。と美鈴が彼方を見つめ、目を細める。俺もそっちを見つめ、密かに戦闘態勢を整える。
大きな鎌を持つ赤髪の女性と、その隣で笏を持った少女。
「貴方が夜月白狼ですね?」
「…まあ、そうっすけど、貴女は?」
おそらく鎌を持った女性は少女の部下なのだろう。少女しか喋らなかった。
「申し遅れました、今代の創世者。私は四季映姫・ヤマザナドゥです。わかりやすく言うと、閻魔です。」
と、普通の人なら腰を抜かす様な事をさらりといいやがった。
「ヒュウ。まさかの閻魔とはね。この人生でどんだけ超常の奴に会ってんだか。」
妖怪に始まり、妖精、魔女、吸血鬼。そして終いにゃ閻魔だ。
「…どうも今代のは大分ゆるい様ですね。」
「おや、こういう創世者はお嫌いですか?」
「いえ。少なくとも、常にふざけている者よりはマシです。多少の融通がきいたほうが好ましい。」
「…へえ。貴女は俺のご先祖を知ってるって訳ですか。…で、目的はなんすか?俺、これから約束があるんすけど?」
と、笑みを浮かべつつ言う。映姫も笑って、
「あまり時間は取らせません。いいたいことがあっただけですので。」
「ふぅん。で、その内容は?」
「そう。貴方は少し、自分に自信がなさすぎる。」
そう、言い放った。
「……へぇ。俺にそんなこと言って、何をさせたい?」
「いえ。何も。私はただ、貴方たちのこれからに数多くの善行があるようにと、忠告しているに過ぎません。」
「忠告にしては、だいぶ踏み込んだことを言うのな、閻魔ってのは。」
俺が言うと、映姫の眉がピクリ、と動いた。
「…そうですね、小町。」
「はいはい。わかってますよ。…さあ、構えな白狼とやら。お前の実力、あたいが確かめてあげるよ!」
と、大鎌を構え、小町、と呼ばれた少女が言う。
まあ、時間があるなら、それでもよかったんだが、
「残念。時間切れだ。」
「え?」
「白狼から離れて。【禁忌 レーヴァテイン】。」
ゴウッ!と炎剣が振られ、二人揃って飛ばされる。
「これから私と白狼はデートなの。邪魔しないで。」
と、今度は顔を赤くすることなく言った。
「行こ、白狼。」
「あ、ああ…【翼符 ドラゴンウィング】。」
フランの怒りに触れた二人に少しだけ同情しつつ、俺はフランとともに夜空へ繰り出した。
「……すいませんねぇ映姫様。ちょっと、油断してました。」
「いえ。私も少なからずそういうところはあったので、お互い様です。…それにしても…吸血鬼との逢瀬ですか…少しは、自分に素直になってきているのでしょうね。」
「……映姫様?」
まるで母親のような顔をする映姫に小町が声をかける。
「いえ、なんでもありません。行きましょうか、帰ったらキリキリ働いてもらいますからね、小町?」
「ゲェッ!?忘れてなかったんですかぁ!?」
「忘れるわけがないでしょう。さあ、観念して働いてもらいますよ!この異変、元はと言えば…」
この二人は、これが平常運転らしい。
「わぁ…白狼、これが外、なんだね。」
「ん、まぁな。…どうだ?初めて、じゃないけど、ゆっくり外が見れて。」
「うん。とても満足。白狼や魔理沙、咲夜達は、こんな綺麗なものを見てたんだね。」
少し手を伸ばせば、肩を抱ける距離。とても位置的には近いが、ヘタレでウブな俺にはとても遠かった。それを知ってか知らずか、フランは手を握ってきた。
俺はそれを見ると、
「嫌…だったかな?」
「……バカ言え。好きな人と手ェ繋げるんだぞ?嫌なわけねぇよ。」
そんな会話をしつつ。綺麗に半分の月を見上げる。
そうか。今夜は。
「"半分の月がのぼる空,,か。」
「?白狼?」
「ん、なんでもねぇよ。さ、冷えるといけねえ。今度、また来よう。」
「うん。それじゃあ、約束。」
「おう。」
そうして、俺とフランは指切りをして、さも当然のように、手を繋いで館へと帰っていった。
ってなわけで初デート回でした。それと申し訳程度の花映塚要素。
フランは準備を整え、白狼の元へ向かいます。そこで白狼と映姫が臨戦態勢。長くなる、というか邪魔だったため、フランは二人を退けたわけです。
ある日、いつも通りの日常を送っていた俺たちに、毎日のように繰り広げられる宴会が開かれる。ま、つっても俺未成年だし酒飲めねえんだけどな!
次回、東方希望録。
酒飲む鬼
未成年飲酒、ダメ絶対。