俺はもう、それは終わったと思っていた。俺だけとなった夜月家と対を成す、朝日家。その末裔とのしがらみは。でも、あんなのは序章に過ぎなかった。あの時きっちりやらなかったから、今回のことが起こった。
東方希望録、始まります。
紅き館、紅魔館。秋という過ごしやすい季節になろうと、ここは変わらずの紅さを誇っていた。まあ、年中無休でそんなのはやっているのだが。
「はあ。ま、平和なのはいいことなんだけどな。」
「どうしたの、白狼?」
その一室、俺の部屋にて、フランは俺の膝の上に座り、本を読んでいた。
「…いや。なんでもねーよ。ただ、今日は
「あの日……?」
今日は、11月10日。アイツが、世界を"壊し,,始めた日だ。あの一週間の間も、俺は休むことなく、モノを"創り,,続けていた。家から先祖が"創っていた,,霊力回復薬を学校に持ってきて、片っ端から飲んで、"創って,,を繰り返していた。だから、気づかなかった。日本以外の国が、15日の時点で滅んでいたなんて。そしてそれが、
(あの黒兎のせいだなんてな。)
「………ろう、白狼!?」
「!わ、悪い、ぼーっとしてた。」
「…大丈夫?ここのところずっとそんな感じじゃない?それに、あの日って…白狼、随分と隠し事、多いんじゃない?」
「…ああ。そう、だな。悪い。」
「別に謝って欲しいわけじゃないんだけどなぁ…」
と言いながら、フランは俺の膝から降りて、向かい合う。
「私達、相思相愛なんだから。相談くらい、乗るよ?」
と、俺の目を真っ直ぐ見て言うんだから、照れて視線を逸らしてしまう俺。いかに希望といえど、経験してないことはどうしようもない。
「いや、大丈夫だ、問題ない。」
「そのネタ教えたの白狼だし。それ、ほとんど大丈夫じゃない時に使うんだよね?」
「うっ…」
いつもはネタを覚えるの遅いのに、これだけは直ぐ覚えたのだ。…そんなに使った覚えないけどなあ。エルシャダ◯ネタ。
「さあ、キリキリ吐きなさい!一体何を隠してるの?」
フランに、悪意はない。だって、知らないのだから。俺が過去に一度、人を殺していることなど。
「いや、マジでなんでもないから、うん。」
と、どうにかしてフランを引きはがせないか、そう思った時。
ピシリ、と何かが"壊れる,,音がした。
「「ッ!?」」
俺とフランは驚き、スペカを反射的に取り出す。
その音はだんだんと近くなり。
パリィィィンッ!と、ドアを"壊した,,。
「え…私と…同じ…?」
「な…どうして、お前が…?」
その、犯人は。太陽の黒点のように黒い髪。そして、兎のように赤い目。少し小さな体。そして、手には武器でありそうな鉄槌。
「やあ、久しぶりだね、白狼?」
「なんで…なんでテメェがここにいる!?」
そいつの、名前は。
「朝日…黒兎!」
「どうして僕がここにいるのか、か。まあ、簡単さ。僕はあの世界で最後の人間だったからね。もう誰も僕を覚えている人間なんていない。だから、幻想入りしたのさ。」
「な…」
そんなはずはない、とは言えなかった。俺は八雲紫に連れてこられたという特殊な状況だったが、本来は皆に忘れ去られ、幻想入りする。忘れ去られる、ということは、誰もそいつを覚えていないということ。故に。
「そう。来れないわけはないよね?」
「っ……」
「アナタ…誰?白狼の知り合い?」
と、フランが黒兎に問う。
「知り合い?そんな他人に近い存在じゃないよ僕は。
「ふぅん。当の本人はそんな顔してなさそうだけど?どうなの白狼?」
フランはあくまで、事実確認がしたいらしい。
「…まあ、友達だとは思ってる。」
「…アハッ。相変わらずの照れ屋さんなんだね白狼は。」
俺に続けた黒兎の言葉に、フランは顔を顰め、
「アナタ…異常よ?何をどうしたら今の白狼が照れてるように見えるのかしら?」
と毒を吐く。黒兎は、目だけギョロリとフランを見て、
「白狼、誰こいつ?白狼のこと知ったように言うけど?」
「アナタこそ。親友なんて、嘘じゃない。」
バチリ、と視線同士での火花が散った音がした気がする。
「へえ。黙ってるならそのままにしとこうと思ったけど、予定変更。"壊して,,やる。」
「アナタも"壊せる,,の?じゃあ、"壊さないと,,。」
「ったく。表に出てからやれ。ってか、黒兎。俺の目の前で…」
俺は霊力を解放し、パワーソードを"創り,,、黒兎に向ける。
「もう2度と誰かを"壊せる,,と思うなよ?」
「…アハッ。やっぱり、白狼も"選ばれた,,んだね。先祖さんに。」
「「ッ!?」」
黒兎が俺たちが驚いたのを見て笑う。
「アハッ。僕が知らないとでも思った?僕も、"選ばれた,,っていうのにさ。」
「な…じゃあ、お前、あの時に…?」
俺の行き着いた推理を、黒兎は。
「うん。多分白狼の考えてる通りだよ。僕はあの時に、僕の先祖、
「白狼と、同じ…!」
「そうだよ?だから、僕と白狼の間に君が入る余地は無い。僕は白狼のことならなんでも知っているよ?身長は170丁度で、体重は52.5。視力は裸眼だとD.Dで、メガネをかけるとB.C。誕生日は今から一週間後の11月17日。好きな色は青で、好きな動物は猫。嫌いなものはバッドエンドと、誰かが理不尽な死を迎えること。他にも色々と、ね。」
プライバシーのプの字すらない完璧なプロファイリングだ。
「気持ち悪いわ。アナタ。」
「でも、君はここまで知らない。白狼愛が足りないよ。」
「……はあ。俺は先に外に出る。約束を果たしたいなら来いよ黒兎。フランも、手ェ出すな。」
「「え?」」
俺は二人に構うことなく外に出る。二人もとりあえず言い争いをやめ、ついてくる。
「【
俺は能力の極限、創世眼を使用し、空間を"創る,,。普通に戦ったら、色々なものが"壊れて,,しまう。それは避けなければならない。
「白狼?なんで空間なんか…」
「フラン。こいつは君と違って、"壊す,,時に"壊したい,,モノに触れる必要がある。大きな違いがあるとすればそこだ。だが、フランは概念や、空間、時間といった、目に見えないモノを"壊す,,のは苦手だろ?だが、奴は違う。俺がこの眼を使うとそういうあやふやなモノも"創れる,,ということは、同じく"選ばれた,,アイツは同じものを壊せるんだ。」
「だったら、こんなのを"創った,,って…」
「いいや。この空間に"壊れない,,というルールを"創った,,。
それに。アイツは俺のいうことは聞くからな。」
と、その辺で。
「相談は終わったかな?白狼。」
「ああ。あの時の続きだ。そして。これで終わりにする。」
「アハッ。いいよ、その眼。鋭くて、冷ややか。あ、そうそう。あの時の約束。一つ追加したいんだ。」
「……なんだ?」
「……〈勝って、生き残った方が、"世界,,を統べる。〉」
その一言を聞いた瞬間、一瞬、思考が止まった。どうして、それを知っているのか。それは、夜月家にしか、伝わっていない筈なのに。
「君の先祖さんが言ったのかな?でも。抜け道はいくらでもあるんだよ?いかに
「……どういうこと?"世界,,を統べるって。白狼?」
「……"世界,,ってのは、"創造,,と"破壊,,から成り立っている。何をするにしても、何が起こるにしても、万物は何かを"壊して,,、何かを"創る,,。つまり、その二つを司る眼を手に入れた、そいつは。"世界,,を統べているに等しい。」
「うんうん。その通り。よく調べてるね、白狼。」
「お前…!」
「さあ、やろうか、白狼。」
黒兎は鉄槌を取り出し、構える。俺も、パワーソードを構える。
「僕は、君を"壊して,,、世界を"創り,,変える!」
因縁を終わらせる為の戦いが、始まった。
げ、気づけば3000字行ってる!?書いててなんでこんなに長くなってるんだとか思いました。
ついに始まった二人の戦い。
苛烈を極めたその先に立つのは。
次回、東方希望録。
知らなかったことabout白狼。
さあ、散華の時間だよ?