愛すること。愛されること。
形は違えど、それは尊いこと。
たとえその果てに、逃れ得ぬ別れがあるとしても。
東方希望録、始まります。
「くらえ!【絶力剛炎斬】!」
「【クラッシュ】!」
剣と鉄槌が交差し、剣が"壊れる,,。
「チィッ!【パワーソード】!」
「アハッ!アハハッ!アハハハハッ!」
黒兎の笑いは大きくなり、どんどん正気には見えなくなってくる。
「黒兎ォォォォ!」
「はははッ!楽しい!楽しいよ白狼ッ!」
創世眼で"不壊,,の性質を付与し、パワーソードを振るう。
右上から左下へと振り下ろす。
「アハッ!」
黒兎はひょいとかわし、ハンマーで反撃してくる。
「アハッ…アハハッ、アハハハハッ!くっはははははははははッ!」
黒兎は止まらない。鉄槌を振るい続ける。こっちは限界が近いってのに!
「【絶力…轟炎斬】ッ!」
剛より強い轟を使う。霊力に気なんて使ってられない。全力全壊だ。でなければコイツには勝てない。
「くらえ!」
上から右下へ振り下ろす、と見せ掛けて左へ振る。
「ッ!?ぐぁっ!?」
パワーソードは黒兎の体を右肩から腰にかけて切り裂いた。裂け目からは血が流れていた。
「ぐ…あ…はは。斬られちゃった。白狼、やっぱり本当は強かったんだね。」
「……そうだな。俺も最近、フランに気付かされたよ。」
「……また、あの子かい?白狼、この戦い中ずっとだよね。」
黒兎の目が、フランを見る。
「………」
そして、黒兎の動きが止まる。
「……?」
警戒はそのままに、俺は黒兎の様子を見る。
「うん。そうだね。その方がいいかな、
そうして黒兎は、呼んだ。絶対なる破界者を。
元々赤い目はさらに赤く染まり、黒兎の体を濃密な霊力が覆う。
「『っく。くは、くはははははは!』」
「!?く、黒兎…なのか…?」
「『いいや?俺は子兎じゃねえよ。』」
明らかに違う口調。そして仕草。それによって理解する。こいつは、黒兎ではない。
「!白狼!気をつけて!そいつは…何か違う!さっきまでの黒兎とは、根本的なものが!」
「……ああ。わかるぜフラン。こいつは…黒兎の…朝日家の祖先…」
「『大正解。俺が、お前の祖先、
そう言って、破界者は、両手を広げ、悪い笑みを浮かべた。
「『こっからは俺が相手だ。子狼。』」
「…」
破界者は鉄槌を構え、俺もパワーソードを構える。
地を、蹴る。右足を一歩。しっかりと踏みしめ、剣を振りかぶり、思いっきり振り下ろす。ガキンッ!火花を散らし、弾き合う。
「『!"壊れねぇ,,な。ハッ。なぁるほど。"創った,,な?ルールを。』」
「っ!(バレた…)」
しかしまあ、バレて当然だと思い直す。相手は俺の先祖、
(つまり、次にアレと打ち合えば、ルールが"壊される,,ッ!)
「『ルールを"壊され,,たらまずい…そう考えるよな。』」
「ッ!」
破界者は目にも留まらぬスピードで接近し、ハンマーを振り下ろしてきた。
「くっ!【ドラゴンシールド】!」
「『甘えんだよ!』」
破界者は俺が盾を"創った,,瞬間にハンマーを止め、後ろ蹴りで盾ごと俺を吹き飛ばした。
「ぐあっ!?」
ドザァッ!と地に叩きつけられた俺は咳き込み、上にいる破界者を見据える。
「『おいおい。もう終わりかよ!チッ…つまらん。おい、子狼。
破界者は心底つまらなそうにそう言った。その、言葉は。
「ーーーーッ!」
俺の中の火を、炎のように燃えたぎらせるのには十分だった。
「……めたんだ。」
「『あ?』」
「誓ったんだ。俺は自由に生きるって。過去に囚われることも、生まれた家に囚われることもせず、自分の思うままに生きるって!それを!その誓いを!お前に"壊されて,,たまるか!!終わらせてやる!もういない創世者とお前の宿命も、俺自身と黒兎の約束も!今、ここで!」
「『!…そうか。先に逝きやがったか、バカ兄が。………………ハッ。上等!」
俺は切れていた創世眼を再び起動し、体に残っている霊力全てを呼び起こす。破界者も、同じように力を解放する。もう割と周りはボロボロだ。そろそろ紫が異変だとか言って止めてきそうだから、早めに終わらせないと。
「【
剣に霊力を流し込み、赤き炎を灯す。
「『【クラッシュハンマー】。【絶壊衝】。』」
向こうも、ハンマーに霊力を流し込み、肥大化させていた。
「『いくぞ子狼。これでジ・エンドだ。』」
「……フィナーレだ。」
同時に距離を詰め、互いの獲物をぶつける。
「『馬鹿正直に打ち込んだなバカめ!』」
パリン、と嫌な音がする。おそらくルールが"壊された,,音だろう。
「【
新たに"不壊,,のルールを"創る,,。しかし今度は一瞬でパリン…
「なっ!?」
「『はははははは!そう何度も同じモンでどうにかなるわけねぇだろ!もらったぁ!」
そうして、今度はパワーフレイムソード本体が"壊され,,……るということはなく。
ギリギリギリ……
「『な…なぜ"壊れない,,!?確かにルールは"壊した,,はずっ!』」
「ああ。確かに"壊された,,さ。ルールは、な。」
「『!?まさか…』」
俺はニヤリと笑う。
「ああ。概念だけで"壊される,,なら、そうならないように物質でどうにかすれはいい。どっかの聖杯戦争みたいな、宝具のようにな!」
「『な…ならば物質を"壊す,,モードに……』」
「遅いッ!【絶力…轟魔炎斬】ッ!」
奴が力を一瞬緩めた瞬間、一気に霊力を解き放ち、態勢を崩し、剣の炎を紫色に変化させ、"魔,,の性質を付与した斬撃、"絶力轟魔炎斬,,で、破界者の右肩から腰にかけてを切った。
「『ぐわああああああああ!』」
破界者はその場に崩れ落ちた。ハンマーもすでに消え去っている。
「やった!やったよ!白狼が勝った!」
後ろで見ていたフランが喜びを露わにする。まあ、ギリギリのまさに死闘だったし。
「『ぐ…………俺たちの負けだ。子狼。とっとととどめを刺せ。』」
どかりと座り、目を閉じる破界者。…いつの時代の武士だこいつは…
「……嫌だね。」
「『………は?』」
俺の言葉に、破界者はポカンとした顔をする。まあ、見た目黒兎なんだが。
「嫌だ、断ると言ったんだ。言ったろ?俺はもう宿命とか、うんざりなんだよ。縛んな。邪魔くせえ。」
「『ふ、ふざけるな!そんな事が認められるとでも思っているのか!?』」
破界者は犬歯をむき出しにして怒っていた。
「だから、認めるとかそういう話じゃないっての。……ああもうめんどいなあ。俺は、誰も殺したかねえんだよ。」
と、簡潔に言った。破界者はもう何も言わなかった。ただ、その代わりなのか、
「でもね、それじゃあ、
「「!!」」
今度は、黒兎が出てきた。
「ねえ、白狼。本当に、僕を殺したくない?」
「……たりめーだろうが。俺とお前は……その…親友なんだから。」
少し、顔を背けて言う。これでもし違うとか言われたら物理的に穴"創って,,入るまである。
「アハッ。嬉しいなあ。うん。僕もそう思ってる。…そっか、できない、か。じゃあ、仕方ない。」
「え?」
妙に物分かりがいい。何故だろうか。
「じゃあさ、白狼。最後に、その剣、構えて見てよ。」
「あ?なんで?」
「いや、これから
……少し怪しいけど、黒兎の頼みだし、と、俺は剣を中段に構える。足もしっかり広げて。
「……うん。やっぱり、白狼はかっこいいな。」
黒兎は何か小さく呟いて、
ザシュッ………
「………は………?」
とん、と地を蹴り、自分の心臓まで届くぐらい深く、黒兎は剣に身を貫かれた。スペルカードなしで"創った,,この剣は、殺傷能力がある。もちろん戦いの最中だって、絶対に殺めることのないように気を配っていた。だが、その努力は無に帰す事になる。
「ゴプ……」
黒兎は血を吐き、そして、にへら、とわらった。
「おい……おいッ!テメェッ!何やってんだよ!?」
直ぐに体を横たわらせ、厚い布を"創り,,、血が出てくる場所を抑え、止血を試みる。が、血は止まらない。
「あ……は。前に…言わなかったっけ。白狼のできないことは……僕がやるからって……」
もちろん記憶に残っている。互いに交わした約束だ。思えば、約束事の多い関係だったと思う。
「だからって……だからってこれはねえだろ!?なんで!?」
「そんなに……怒んないでよ。僕だって、死ぬのは怖いんだよ?」
「だったら自分から死にに来るようなことすんじゃねえよ!」
俺の声も、顔も、涙でグッシャグシャだった。
「でもね、仕方ないんだよ。白狼は、世界を統べるんだから。」
「んなもんいらねえよ!んなもんの為に…お前は…破界者は!」
「泣かないでよ。僕は、君の中で生き続けるんだからさ。君の中での僕が、どういう存在なのか、知る事ができないのが、少し残念だけど…」
「おい…?おい!クッソ!止まれ…止まれ…止まれってんだよォーーッ!」
「……もう、何も見えなくなってきちゃった。…近くにいるかわかんないから、もう、いいか。」
そう言って、黒兎は、今までのどこか嘘を含んでいたような笑みをやめ、安らかそうな顔をして。歌うように、囀るように言った。
「白狼。夜月白狼。静かな、決して自分からは輝こうとしない白い月。僕は、そんな君に憧れた。近くにいたいと思った。君は気づいてなかっただろうけど、僕はずっとそう思ってた。僕が、
「!!やっぱり…」
小さく、俺の喉から声が漏れる。だけど、もう、黒兎の耳には聞こえていなかった。
「僕の、前の名前は朝日…狂華。君とは別のクラスで、生活していた。」
声は、だんだんと弱々しくなっていく。
「あは、冷たい。これが死ぬ直前、なのかな。僕が"壊して,,きた人たちは、みんなこれを味わったのかな。……怖いなあ。隣に、白狼がいてくれたら、こんな冷たさ、なんてことないのに。ああでも。いたら、こんなこと言えないよね。」
そうして、黒兎は。
「僕……ううん。私、朝日狂華は。夜月白狼のことを、愛しています。」
………
……………
…………………
黒兎は。いいや、狂華は。こうして、死んだ。奇しくも狂華の体を貫いたのは、外の世界の時と同じ、パワーソードであった。
………はい。というわけで、黒兎対白狼、決着です。【追想】を読んでくれた方はご存知だと思いますが、黒兎……いえ、狂華ですね。狂華は本当に白狼の事が大好きです。許されるなら、某AST(最近精霊になったけど)のような事だってやります。…5割ほど盛りました。
戦いは終わった。だからと言って、傷痕は消えない。
時は無慈悲に流れゆく。新たな力を得た俺は、
次は進まなければならなかった。
次回、東方希望録。
白狼と未来と愛する事
さあ、ショータイムだ。