問題児と大地母神の夫が異世界から来るそうですよ? 作:らんらんタワー
「・・・・・」
「・・・・・」
「――――――――♪~」
上から順に、十六夜、衛、サラトガとなっている。
十六夜と衛が互いの顔をじっと見つめており、そこに衛に頭を撫でられて尻尾をブンブンと激しく振っているサラトガがいるという混沌とした空間が出来上がっていた。
肝心のツッコミ役である黒ウサギはこの恐ろしい固有結界のようなものに影響されてなのか、固まっていた。他の女性二人と少年一人もまた然。
しかしそこで十六夜がこの雰囲気を打ち破りに出た。
「声の渋いおっさんだと思ってたあんたが、まさかこんな短時間でケモノっ娘を陥落させてるとはな」
「それには少し語弊があるな。決して私はサラトガのことを(恋愛的に)堕としていないし、怪我をしていた彼女を治療しただけにすぎないぞ」
「それでもワンころがあんたに惚れる材料になったんじゃないのか?」
「衛様に陥落させられる・・・・。イイですね///」
「そこ、妙な発言するな」
十六夜が口を開いたと思ったら、そこから吐き出される女性に対する恋愛的な要素の数々。
衛はすかさず十六夜の発言に異議を唱えるが、このことの当事者でもあるサラトガは満更でもない様子で衛の右腕をホールドする。
普通の男性なら発育段階なのかどうかは定かではないにしろ、女性の母性の象徴が当たっていれば何かしらの感情を抱くはずだが、衛にそういった感情は一切湧かない。
彼としては生涯を誓い合った相手はキュベレただ一人なのだから。
だが端から見れば、顔が整っている美男子と美少女の組み合わせであり、身長的に差が幾分かあるものの十分絵になっている。
この光景を絵として留めていたいが、私のセンスでは不可能だ by作者
「あ、あの・・・・。えっと・・・・どうしましょう?」
「うーん。そういえばさっき来る途中にサラトガに聞いた事が気がかりでしょうがないんだが」
「ふぇ?・・・・あっ、確かにウサギがいるコミュニティについて何か知ってないかと聞かれましたね」
「そうそう。やっぱり俺としては、これから行動するために入るコミュニティの情報は知らなくちゃいけないからな」
三人の応酬を見ていた少年―――――――ジン=ラッセルが困惑した声で衛に話しかけるが、衛はサラトガとの会話に入り聞く耳を持たなかったが、それを見かねた黒ウサギが慌てて衛とサラトガの会話に乱入し、黒ウサギのコミュニティ――――――ノーネームの置かれた状況を説明する。
ここに来て衛は初めて黒ウサギが召喚した直後の四人を品定めするような目で見てきたことの理由がわかった。
”魔王”という存在により、コミュニティが滅ぼされて”ノーネーム”となってしまったことを、そしてコミュニティ復興のために強力な
「・・・・・・」
その場に訪れる沈黙。衛としては、彼らのコミュニテの復興は自身が元の世界に戻るための必要十分条件となりうるので何とか協力してあげたい思いである一方、自身は黒ウサギたちのコミュニティを滅した”魔王”と同じではないにしろ、同じ部類に分類されることをサラトガに小声で告げられたことを気にして、葛藤に駆られていた所であったため話をする余裕がなかったのだった。
といった雰囲気の中、ジンが何とも言えないような表情で話し始める。
「え、えっとですね・・・・。立ち話もなんですし、今日はコミュニティに帰りませんか?」
「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら”サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと、この水樹の事もありますし」
黒ウサギの言葉に四人は首をかしげて聞き返す。
「”サウザンドアイズ”? コミュニティの名前か?」
「YES!”サウザンドアイズ”は特殊な”瞳”のギフトを持つ者たちの群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「ギフト鑑定というのは?」
「もちろん、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事です。自分の力の正しい形を把握していた方が引き出せる力はより大きくなります。皆さんも、自分の力の出所は気になるでしょう?」
黒ウサギは四人に同意を求めるような感じで話す。
個々に思うところがいくつかあるのか知らないが、衛とサラトガは別に、といった様子で考えを巡らせる。
まあ結局拒否する声はなく、メンバーは”サウザンドアイズ”に向かう。
衛とサラトガ、黒ウサギ以外の三人は興味深そうに街並みを眺めていた。
「桜の木・・・ではないわよね? 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずないもの」
「いや、まだ真夏ってわけじゃないだろ? 気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「・・・・・? 今は秋だったと思うけど」
「季節・・・といえばあの森には四季がありませんでしたね。まあ冥府も対して変わりませんけど」
三人は、ん?と首をかしげ、サラトガは自身の過去の記憶に浸り始める中、黒ウサギは笑いながら説明をした。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「へぇ? パラレルワールドってやつか?」
「近しいですね。正しくは立体並行世界論というものなんですけども・・・・・今からこれの説明を始めますと一日二日では説明しきれないのでまたの機会に」
黒ウサギは肝心なところで話しを曖昧にし、振り返ってまた歩き出す。
「(季節・・・か、ハデスの奴と初めて接触した時は春だったが、最終決戦はその三ヵ月後・・・・夏だな。どうにもギリシャに長くいると感覚が狂う)」
「(しかし先ほどは持っていなかった水樹とやらを持っていると言うことは十六夜辺りがギフトゲームで手に入れたな。俺のギフトがどんな物かは大体予測は付くが、キュベレとの契約が影響してる可能性もあるな)
衛は気を取り直してまた一人考えを巡らせ始めようとしたが、その行動を黒ウサギは振り返って前方を指差した。
どうやら”サウザンドアイズ”とやらについたらしく、商店の旗と思わしき物には蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神が記されていた。
しかし今はもう夕暮れ時。割烹着の女性店員が看板を下げ始めた。
するとそこにすかさず黒ウサギが滑り込みでストップをかけにいく。
「まっ」
「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやってません」
容赦ない一撃で、黒ウサギのストップは効果を示さなかった。
黒ウサギは悔しそうに店員を睨みつけるが、相手は大手の商業コミュニティだけあってこの手の客の対応にも慣れているため、あっさり伸された。
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を閉め出すなんて!」
「文句があるなら他所へどうぞ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎなのですよ!」
「なるほど、”箱庭の貴族”であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいですか?」
「・・・・うっ」
店員の一言によって言葉が詰まる黒ウサギ。
「(これも”ノーネーム”とやら故の不利なところの一つか)」
チョンチョン「ん?」
「(衛様。ここ”サウザンドアイズ”はノーネームはお断りの店なんです)」
「(なるほどな)」
やはり名無しはよく思われないのか、これからの行動にも”ノーネーム”と言う名前が縛りを加えてくるのだろう。現に今の状況がそうだ。
「俺達はノーネームというコミュニティなんだが」
「ほほう。ノーネームですか。ではどこの”ノーネーム”様でしょうか。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
十六夜がノーネームと普通に返答してしまったが、そのあとの店員の返しで黒ウサギは心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟く。
「その・・・・あの・・・私達に旗はありま」
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」
「きゃあ―――――――――・・・・!」
哀れなり黒ウサギ。黒ウサギは店内から飛び出してきた白いナニカに抱きつかれ、少女と共にクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹っ飛んでいった。
ボチャン。そして遠くなる悲鳴。
十六夜は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。
「・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスでもあるのか?なら俺も別バージョンで是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
結構マジな顔でそんなくだらないやりとりをする二人。
一方そんな二人を尻目に黒ウサギを急襲した白髪の少女は彼女の胸に顔を埋めてなすり付けていた。
「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いのかここが良いのか!」
「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」
黒ウサギは白夜叉と呼ばれた少女を無理やり引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。
しかし投げられた先には衛がおり、そのまま衝突するかと思われたが・・・
「衛様に気安く近づかないでください。この変態太陽」
「ぐほうッ!?」
サラトガが衛の前に立ち、白夜叉をサッカーボールのように蹴って十六夜に機動を変える。
「てい」
「ゴバァ! お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとか何様だ!」
「十六夜様だぜ、以後よろしく和装ロリ」
ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜を見ながらサラトガは、はぁとため息をついてまた元いた衛の後ろに戻る。
そしてこのカオスな状況に呆気にとられていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に話しかける。
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。この”サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」
冷静な声で釘を指す女性店員。正直こんな変態少女がオーナーってちゃんと経営できているのだろうか。
そんな会話の間に、濡れた服やミニスカートを絞りながら水路からあがってきた黒ウサギは複雑そうに呟いた。
「うう・・・・・まさか私まで濡れる事になるなんて」
「因果応報・・・・かな」
『お嬢の言う通りや』
悲しげに服を絞る黒ウサギとは対照的に濡れてもそれを気にしない白夜叉は十六夜たちを見回してニヤリと笑った。
「ふふん、お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元まで来たということは・・・・遂に黒ウサギが私のペットに!」
「なりません! どういう起承転結があったんですか!」
ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。何処まで本気なのかわからない白夜叉は笑って店に招く。
「まあいい、話があるなら店内で聞こう」
「よろしいのですか? 彼らは旗を持たない”ノーネーム”のはず。規定では」
「”ノーネーム”だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」
女性店員に睨まれながら暖簾をくぐった五人と一匹。それからある部屋に障子を開けて入った。
「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」
障子を開けて招かれた場所は香のような物が焚かれており、風と共に五人の鼻をくすぐる。
そして上座に腰を下ろした白夜叉は、大きく背伸びをしてから彼らに向き直る。
「もう一度自己紹介しとこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている”サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな、コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやってる器の大きい美少女と認識しといてくれ」
「はいはい、お世話になってますよ、本当に」
黒ウサギにしては珍しく投げやりな言葉で受け流す。そんな黒ウサギの隣で耀は首を傾げて問う。
「その外門、って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ、数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者たちが住んでいるのです」
「つまり、七桁、六桁と数字が若くなればなるほど修羅神仏が跋扈する人外魔境、バケモノの巣窟になっていくと」
黒ウサギの説明を簡単に言うと、箱庭には七桁の階層があって数字が若くなるほど中心、人外魔境になっていくのだ。
黒ウサギの描く上空から見た箱庭の図を見た四人は、
「・・・・超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」
うん、と頷き合う三人の反応に黒ウサギはガクリと肩を落とすのだった。
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は”世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ―――――その水樹の持ち主などや、今はその男に従っている
白夜叉の言葉に黒ウサギは物凄く驚いた顔で声を上げる。
「
「え、えっと・・・。それを言われると恥ずかしいと言うかなんというか」
「サラトガ・・・・、あんまり溜め込むなよ」
「あの・・・いやその、うう・・・・」
サラトガはその時のことはあまりよく思っていないのか、黒歴史に近い何かのようだ。
そんな黒歴史を掘り返されてもじもじしているサラトガに、その意味を理解しているのか分からない衛が自覚無しで追撃を入れる。
ちなみに衛の黒歴史は厨で2な病気を発病し、痛い言葉を中学生時代に連発していたことだ(現在もカンピオーネだから結構痛いと思われる言葉は連発しているのだが)
「しかしのぉ・・・・、どうやってこの厄介極まりない魔王を降したのか」
「別に珍しいことはしていない。ただ彼女を助けた後にギフトゲームをして勝っただけの些細なことだ」
「いや魔王とのギフトゲームを些細なことというのはさすがにだな・・・・」
「衛様、魔王とのギフトゲームは普通ならば苦戦は強いられてあたりまえなのです。ただ私は衛様に・・・その・・・・」
「あー・・・・、もうよい。大体察することができた」
魔王とのギフトゲームを些細なことで片付ける衛も感性を疑うが、サラトガは完全に衛に、ほの字なので白夜叉はそれに気付いて何か腑に落ちたのか、言うことだけ言ってうんうんと一人で頷いていた。
先ほど驚いて少し放心していた黒ウサギは、魔王を降して隷属させた衛に対してキャーキャーと黄色い声を上げながら喜んでいた。
衛の口調は、普段は普通と言うか冷静キャラみたいな感じですけど、いくつかある条件に引っかかるとアグレッシブな感じに変わります。(簡単に纏めると口調ブレまくるかもしれないから勘弁してちょうだい)