『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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取り敢えずは受信したので…


第一話 大江山の鬼 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…ッ……はぁッ……!!」

「早く走ってメリー!!」

「全く、何でこうなってんだ!!」

 

 夜の山の林道を走る将樹ら秘封倶楽部の面々。その後ろを追い掛けるのは三メートル程の身長は有り、下着代わりの動物の皮を腰付近に巻きこん棒らしき物を持ち頭には2本の角が生えた男達が追っていた。

 

「待てやゴラァッ!!」

「久々の人間じゃッ!!」

「食い尽くしてやるァァァッ!!」

 

 将樹達は現在、鬼と呼ばれる存在に追われていたのである。

 

「ったく。結界の先に鬼達がいたのは予想外過ぎるだろ!!」

「でも取り敢えずは逃げないと!!」

「だがその前に……反撃だ!!」

 

 将樹は走りながら舌を出しパチパチッと火花が散る。

 

「『壁』『壁』『壁』『壁』『壁』『壁』!!」

「うぉッ!?」

「な、何だこりゃ!?」

 

 鬼達の前に六枚の壁を出現させ鬼達を激突させる。

 

「それ走れ!!」

「ま、待って……ッ」

「蓮子!! メリーの手を引け!!」

「分かったわ!!」

 

 将樹は先に二人を逃がす。その間に鬼達が壁を破壊して将樹の前に姿を現す。

 

「へへへ……」

「逃がしゃあしないぞ」

「……『圧』」

『ッ!?』

 

 その瞬間、鬼達は地面に倒れたり、腕を交差し骨がバキバキッと折れたりした。

 

「ガッ!?」

「な、何だこの人間は……!?」

「悪いな……人間じゃない者には容赦はしないぞ」

 

 将樹はそう言って舌を出して召喚する。

 

「『凍』」

 

 そして将樹は鬼達を凍らせたのである。その後、先に逃げていた蓮子とメリーに追いついたのである。

 

「怪我はしてないか?」

「えぇ、何とかね」

「でも……鬼がいたわね」

「あぁ……」

 

 汗だくであるメリーの言葉に将樹は頷く。将樹ら三人がこうなったのも蓮子のある一言から始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼とかいるのかしら?」

「……蓮子、何に影響された?」

 

 いつもの喫茶店に集まった将樹に蓮子、そしてメリーは蓮子の言葉に視線だけを向ける。

 

「ほら、京都に鬼とかいるじゃない? 東京とかはそう言った伝承を聞かないからね」

「鬼……あぁ、大江山の鬼か」

「大江山?」

 

 将樹の言葉にメリーは首を傾げる。

 

「あぁ。昔も昔、大江山には鬼の伝説があるんだ」

 

 将樹はそう言ってスマホを操作し地図アプリで大江山の場所を見せる。

 

「京都の中心からは少し遠いわね」

「少しでは無いがな」

「だから今度の連休に行ってみない?」

「……ちょっと待て。行っても良いけど、大江山は最寄りの駅から遠いぞ。タクシーとか使うのか?」

「え、将樹君は免許無いの?」

「いやあるけど……成る程、ドライバーね」

「アハハハ、正解〜。だから、ね? ね?」

「……はぁ〜」

 

 将樹に頼み込む蓮子にメリーは溜め息を吐く。まぁ将樹もそんな事だろうと思い首を縦に振るのである。結局、将樹はレンタカー(安い軽)を三泊四日で借りて京都の市内から大江山の麓でもある大江町に向かったのである。その後、大江山の鬼の交流博物館を見学したりしつつ鬼嶽稲荷神社に参拝しようと車を走らせる。

 辺りは既に夕刻に近く、何とか無料駐車場に入り三人はライト(1600ルーメンはする強力ライト)を各自持ち、将樹は念の為とリュックサックを持ち神社に向かうのである。

 

「まぁ山だから暗くなるのはアレだが……」

「うーん、やっぱ雰囲気はあるなぁ……」

 

 流石に女性を先頭には行かせずに将樹が先頭を歩く。もう少しで神社に到着する時、メリーはふと草むらに『ナニカ』を見つけたーー結界の境目だった。 

 

「蓮子!! 将樹君!!」

「どうしたのメリー?」

「境目を見つけたわッ」

 

 メリーはそう言って近くまで行って将樹と蓮子を誘導する。

 

「じゃあ行くわよッ」

「あ、おい。少しは準備ってのを……」

 

 蓮子は二人の手を繋ぎ、メリーの誘導で境目に飛び込むのであった。そして展開は先程の通りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何とか……逃げ切れた……かな……?」

「……かもな……」

「………………………………」(喋る余裕が無いメリー)

 

 あれから開けた場所に出た三人は取り敢えずは休息し上がっていた息を整えていた。それでも三人は大量の汗をかいていたが仕方ない事であろう。

 

「取り敢えずは汗を拭け二人とも」

「あ、ありがとう」

「………えぇ……」

 

 取り敢えずは汗を拭く三人。将樹はふとある方角を見た。

 

「………………」

 

 将樹は何かを見た後、リュックサックからコンパスを取り出し方角を見る。その様子に気付いた蓮子が将樹に声をかける。

 

「どうしたの将樹君?」

「……マズイかもしれんな」

「あの方向……福知山市内なんだが……灯りが見えないんだよな」

「灯りが……?」

「山だから多少暗くてもある程度は見える筈だが……全く見えん。蓮子、今は何時か分かるか?」

「え、今は……一時四三分過ぎかな……え? 一時四三分? ……え? この時間って……」

「……俺達が神社に行こうとしていたのは夕刻だ。そして境目に飛び込んで鬼に追われていたとしても時間は30分そこいらの筈……」

「……ごめんなさい将樹君、あまり事態が読み込めない……というよりもそう思いたくないのだけれど……?」

「え、え? どういう事?」

 

 顔を青ざめるメリーに蓮子は慌てるが将樹はメリーも思っているだろう言葉を口にした。

 

「まぁ……メリーの思っている通りだが……恐らく、俺達は境目を通して過去の大江山にタイムスリップした……可能性があるというわけだな……はぁ……」

「……えぇぇぇぇッ!?」

「蓮子、星をよく見てみろ」

「そんな、確かに時間はそうかもしれないけど……あれ?」

「おっと」

「ッ」

 

 膝から崩れた蓮子に将樹が受け止める。その拍子に蓮子は頬を赤らめるが暗かったのでメリーと将樹には気付かれなかった。

 

「体力の消費が激しいから一先ずはもう少し休息しよう。明け方になれば道も分かるだろ」

「そ、そうね」

「えぇ、そうしましょう」

 

 そうして三人は取り敢えずの休息を取る事にするのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何? 人間の侵入者だって?」

「そうなんだよ姉御。けど追っていた奴等、凍らされて死んでいたんだッ」

「ッ……ほぅ、死んでいた……ねぇ」

「あぁ。皆、凍死していた。こりゃ只事じゃないぞ姉御」

 

 大江山の山奥にある洞窟、そこの中では宴会をしていた女の鬼に他の鬼達がそう言う。

 

「……へぇ……萃香が京に行って、華扇もどっかに行っているこの時に……人間がねぇ……」

 

 女の鬼はニヤリと笑みを浮かべ、まだ酒が残っていた赤く大きな盃をクイッと上げて酒を飲み干す。

 

「カァーッ。なら久しぶりに私が相手してやろうかね」 

「あ、姉御が行くんですかい!?」

「あぁ、お前らじゃ無理だろうな。他の鬼達には三人の人間を探すだけに留めろ。下手こけばやられるぞ?」

「ッ」

 

 女の鬼の貫く視線に報告に来た鬼は息を呑む。姉御が出れば久しぶりの戦いになるだろう。この山(大江山)も形が変わるかもしれない。

 

「さて、探しに行きな。私も適当なところをぶらつくよ」

「は、はい!!」

 

 鬼達は慌てて洞窟を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……明けるな」

「今は5時32分かな。ギリギリ見えるね」

「ふわぁ」

 

 腰を下ろして休息をしていた将樹らは山に陽の光が差し込んできた事で動く準備をしていた。取り敢えずは麓に降りるか、境目を見つけて戻る事を優先したのである。持ってきていた栄養調整食品を二人に渡して軽い朝食を取りつつも将樹は周囲を警戒していた。

 

(来るか……いや気配とか分からんな……やっぱ素人だからなぁ……)

 

 高卒の時に軍に入るかは悩んだが取り敢えず大卒までと選んだのは微妙だったかもしれない。戻ったらサバゲーとかにでも手を出すかと思っていた時、ズシンと地面が揺れた。

 

(まさかッ)

 

 ハッと将樹が森の方を見た瞬間、何かが飛んでくるのが見えた。

 

「伏せろッ!!」

『ッ』

 

 咄嗟に将樹はそう叫び、二人を押し倒す。その瞬間、ズシンッ!! と地面が大きく揺れた。何かが飛んてきたその土等が将樹に当たるがぽろぽろと零れるので特に痛みは感じない。揺れが収まり将樹が顔を上げると将樹らから約10メートル程に大きく穴が空いたのがあり、その穴からのそっと金髪ロングであり頭に一本の赤い角を生やした女性が登ってきた。手首には手枷が付いてあり、下駄を履き足首も足枷が付いていた。そして左手には赤くて大きい盃を持ち、肩と胸をはだけた赤い帯の着物を着用した何処からどう見ても女の鬼であった。

 

「お、ぶらついた先にいたのかい。こりゃ手間が省けたねぇ」

「……どうやら鬼の仲間とお見受けするが?」

「そうさね。丹波国、この大江山一帯を支配する酒呑童子の配下、星熊童子たぁ私の事だね」

「酒呑童子!? 平安の時代じゃない!!」

「蓮子は黙ってて」

 

 驚く蓮子にメリーはそうピシャリと言う。対して星熊童子は気にせずに盃に酒を注ぎ一口飲む。

 

「如何なる理由があろうと……この山に入ったんだ……私の遊び相手になってもらうよッ」

 

 星熊童子はそう言って将樹に笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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