『言霊使いと幻想郷』   作:零戦

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第三話 教授に日輪畑

 

 

 

 

 

 

 

「……アイツらは今頃、東京か……」

 

 将樹は大学の廊下を歩きながらそう呟く。時は春の季節であり、桜もそろそろ芽生える頃であった。

 蓮子とメリーの二人は蓮子の実家がある東京に彼岸参りに行っていた。二人は京都ー東京間を53分で繋ぐ卯酉新幹線『ヒロシゲ』に乗って東京に行ったのだ。

 この『ヒロシゲ』は『神亀の遷都』(日本の首都機能が東京から京都へと移っている)が行われてから大量の人間が東京と京都を行き来する必要が生まれた。

 東海道だけでは直ぐに交通インフラに限界が来てしまったのだ。その為、時の政府は急ピッチに新しい新幹線の開発に取り掛かったのだ。

 そして完成したのが卯酉新幹線『ヒロシゲ』である。この卯酉新幹線の特徴は全て地下で行われている。つまりは地下新幹線であったのだ。

 そのルートはすべて地下を通過する。そのルートは直線的に作られているが、一方であえて回避したルートもある。それは富士山だ、富士山の真下に新幹線を作る予定だったが霊峰富士という事もあり少しルートはズレた樹海の真下に作られたのだ。

 ただ、樹海には古くから良くない言い伝えが多く、樹海の真下を走るというだけで新幹線の運行や乗客数に影響が出てしまうかも知れない。そう考えられ樹海の真下を走っているという事は一般には明かされなかったのである。

 そんな卯酉新幹線である。まぁ将樹からしたらあまりそこまでの興味は無い。というよりも将樹は蓮子から誘われていたがバイトが抜けれなかったので東京に行くのはやめたのだ。

 

「ま、たまには蓮子も向こうで羽を伸ばすだろ……まぁメリーもいるから秘封倶楽部の活動をしそうだけど」

 

 そんな事をボヤキつつも廊下を歩いていると、とある部屋から一人の女性が出てきた。見た目は殆どが赤の色の服で統一されたかのような服装でありマントを羽織っていたがマントも赤である。

 唯一と言っていいのがマントの黒い裏地がアクセントである。何せ髪の色も赤なのだ。怪しいかもしれないが将樹もその女性が誰なのかは知っていた。

 

(岡崎教授……だったかな……)

 

 岡崎夢美、18歳ながら飛び級で院も卒業しており比較物理学を専門にしている。ただ、あまりにも高度過ぎるのでついていける者は数人しかいない。なお、蓮子はついていける模様である。

 その岡崎教授とたまたま視線が合ってしまった。向こうもそれ程気にしていなかったつもりだが、将樹を見て端と脚を止めたのだ。

 

「あら……貴方もしかして近藤君かしら?」

「……良くご存知で……」

「そう警戒しなくても良いわ。宇佐見さんから話は聞いているのよ」

「蓮子から……ですか?」

「えぇ、面白い能力を持った子を秘封倶楽部に入れたと自慢していたわ」

(アイツ……変な事言ってないだろうな……?)

 

 思わずそう思ってしまう将樹である。

 

「まぁ私もそれに近い関係者……という事になるわ」

「関係者……では岡崎教授も能力をお持ちで?」

「残念ながら私にそういった能力は無いわ。私個人は欲しいけどね」

「成る程……」

「私は重力・電磁気力・原子間力の全ての力が統一原理によって説明されているけど、それに異を唱えようとしているわ。私は統一原理に当てはまらない力を『魔法』と称しているの」

「……『十分に高度な科学技術は、魔法と区別できない』と同じですか?」

「アーサー・C・クラークもそう言っているのだから可能性は0では無いわ」

「『欠点がなければ、あなたも、私も、存在しないだろう』という言葉もあるので『魔法』もあると?」

「……良いわ、良いわね将樹君。持っているからこそ肯定出来てしまうわね」

「蓮子がいつも言っていたので耳にタコですよ」

 

 笑みを浮かべる岡崎教授に将樹は肩を竦める。

 

「それでもよ。是非とも今度、研究を共にしてほしいわね」

「蓮子の許可が下りれば……と留めておきます……が、自分のお願いを聞いてくれるのなら何時でも宜しいです」

「あら、それは何かしら?」

「………………………蓮子に守る力を与えてもらいたいのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 あれから夢美は自身の教授室に戻り紅茶を飲んでいた。それを夢美の助手でもある北白河ちゆりは見ていた。

 

「どうしたご主人? さっきからボーッとしてるぜ?」

「ん、いや……何でもないわ」

 

 ちゆりの言葉に夢美はそう言うが、夢美は将樹との会話を思い出しながら紅茶を口に含み喉を潤す。

 

『宇佐見さんに守る力を……? どういう事かしら?』

『そのままの意味です……蓮子は多少、興味を持った事には何かしらの真実を得るまで暴走する癖みたいなのがあります。自分がその時にいれば、蓮子とメリーを守る事は出来ます。ですが、今回みたいに蓮子とメリーが二人で東京に行った時……メリーが境界の裂け目を見つけてしまったらどうします?』

『……宇佐見さんなら行くわね。そしてマエリベリーさんも付いていくでしょうね』

『120パーそうなります。自分と出会った時も化け物に追われていましたからね。そうなると自分がいない時を考慮するとやはり蓮子に自身とメリーを守る力が必要だなと思いまして……』

『成る程、理には叶ってるわね……良いわ、宇佐見さんには折を見て守る力を与えましょう』

『ありがとうございます』

 

「……あの子も苦労するわね……」

「何か言ったかいご主人?」

「いえ、学会の奴等をギャフンと言わしめる研究をしないとね」

「ぎゃふん」

 

 取り敢えずそう言ってきたちゆりに夢美は置いてあったパイプ椅子でちゆりを叩くのである。

 それはさておき、将樹は蓮子とメリーが帰ってくるまではバイトをしたりしていたがたまたま京都の郊外に用事があり、前回大江山で使用した軽を運転する事になる。

 

「お、レンゲ畑か……」

 

 大阪湾に注ぐ淀川沿いを走行している時に今は珍しいレンゲ畑を見つけ思わず車を止める。カメラは持っていないがケータイには写真機能があるのでレンゲ畑を撮って蓮子とメリーにでも見せようと思ったのだ。

 

「もうちょい角度を……」

 

 ケータイを構えレンゲ畑を撮ろうとした瞬間、景色は暗闇になったのである。

 

「ッ」

 

 膝から地面に崩れ落ちた将樹、顔を上げるとそこはレンゲ畑ではなくーーー辺りは一面の向日葵畑であったのだ。

 

「……………」

 

 前後左右、将樹の車は無く淀川沿いの道路も無く何処かの山の麓にある向日葵畑であったのだ。

 

「……まさか、彼処に境界の裂け目があったというのか?」

 

 裂け目が見えるのはメリーだけ……成る程。こうも人が簡単に消えれば神隠しに近い形であろう。

 

「しっかし……一面の向日葵畑だな……」

 

 将樹は向日葵畑を歩くが咲いている向日葵は多かった。将樹が思っている以上の面積にて向日葵は咲いていたのだ。

 取り敢えずは畑から出ようと歩く将樹であるが、小川の近くにまで出た時、小さな家を見つけた。

 

「ラッキーなんだが……どうも怪しいけどなぁ……まぁ行くか」

 

 将樹は警戒をしつつ家に近づき、ノックをしようと右手を扉に向けようとした時だった。

 

「あら……泥棒さんかしら? 花泥棒なら……殺すしかないわね」

「ッ」

 

 後ろからの声に振り返った瞬間、将樹は右腹に激しい痛みを感じた。右腹を見れば白の日傘の先端である石突が突き刺さり、日傘の中頃まで右腹に喰い込んでいたのだ。

 

「ゴッ!?」

 

 将樹はそのまま下がり、日傘を抜く。空いた右腹からボタボタッと大量の血が出てくる。

 

「いき……なり……は勘弁…だな……」

「あら? まだ喋れるのね。並の人間では無さそうね」

 

 将樹を日傘で刺した女性ーー癖のある緑の髪に真紅の瞳、白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着用し、その上から同じくチェック柄のベストを羽織っていた。だが、今は白のカッターシャツにも将樹の血が付着し白の日傘も真っ赤に染まっていた。

 

「泥棒…では無いのは確かだ……迷子だ……」

「そう、興味は無いわね。だから……この世から去ねッ」

「ッ、『凍』ッ!!」

 

 日傘で振り被った女性だが、将樹は能力を発動させ女性を凍らせたのである。しかし、氷漬けになった女性はバキバキッと氷を破壊し氷の中から脱出したのである。

 

「冷たいわね……」

「『圧』ッ!!」

 

 続けて『圧』を加えて女性を地面に倒させるが、女性はググッと『圧』に逆らい立ち上がろうとする。

 

「『圧』『圧』『圧』『圧』『圧』『圧』ッ!!」

 

 将樹は連続攻撃で女性の動きを封じようとするが女性はその力に逆らい将樹に近づく。

 

(ならッ!!)

 

 将樹は先手必勝とばかりに女性に走り出す。しかし、血を流していた将樹は中程で脚を蹌踉めいたのである。

 

「あッ……」

 

 将樹は倒れる寸前、右手を伸ばした。その時、ムニュッと『ナニカ』に触り倒れる寸前だった将樹は強く握ってしまう。

 

「なーーーッ!?」

 

 将樹が触ったのは女性の胸であり、触られたと認識した女性は一気に顔を真っ赤に染めた。しかも地面に倒れようとしていた将樹はその重力に逆らえず女性を押し倒したのである。

 

「あッ……」

「〜〜ッ、馬鹿ッ!!」

「ゲフゥゥゥッ!?」

 

 女性の右ストレートは将樹の左頬に命中、将樹はそのまま気絶するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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