奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「で、どうしてアタシたちはこんな風にこそこそしてんのよ……?」
「当たり前でしょう?
そもそもただでさえ会うのが気まずい相手なのですから顔を合わせるのも無理でしょう?」
「で、結局は何の案もなしにここに来てるって……」
「考えなしもこうまでくるとは……」
訓練がない、いや、正確には明確な答えを出たことが出来ていないことから天龍さんに止められていることもあり、俺たちは訓練がない放課後の中、その難題の原因である更識のいる格納庫にいる。
何故、俺たちがいるかと言えば
「敵を知ることが大事でしょ!?」
「いや、敵って……」
「言葉の綾よ」
鈴が『ジッとしているのも癪だから相手のことを探ろう』と言ったからである。
鈴からすると更識のことをよく知らないのだから、それよりも何かしらの情報を手に入れようと思ってのことらしい。
一理あるけど、何か嫌な予感がするんだよな
確かに鈴の言う通り、情報の一つや二つは必要だろう。
けれども、この行動はリスクと隣り合わせだ。
相手の情報を得るということはそれだけ相手にばれるかもしれないということは一昨日のラウラとのほほんさんの尾行で教えられた。
しかも、今回はする相手とは交友関係どころか、険悪な関係だ。
ばれたら間違いなく一波乱だ。
と言っても、鈴の言う通り何もしないってのもな……
だが多少のリスクを負ったとしてもこのまま何もしないでいるよりはマシかもしれない。
「来ましたわね……」
「あの子が例の……」
「暗いね」
「やはり、ああなるか……」
俺たちが不安を抱えながら待っていると件の人物が到着した。
更識は前にも増して思いつめた表情を浮かべており、それに対して俺とラウラは罪悪感で胸を締め付けれた。
「一人でやっているのね」
「驚きましたわ」
「そっか、会長って……」
「一人で専用機を完成させたな」
「え!?マジかよ!?」
一人で黙々と専用機と向き合い、恐らくは自分の力で開発途中であろう自機を完成させようとしているのを見て、俺以外のISに詳しい面々は会長のとんでもない実績を話し出した。
まさか、ISを一人で開発している人間がいるとは思わなった。
そんなの束さんぐらいしか思いつかないぞ
俺の考える限りは「IS」一機を作るにはそれなりの施設や開発チームが必要なものだと思っていた。
そんなことを度外視出来るとすれば発明者である規格外な人物である束さんぐらいだ。
しかし、まさかそこに会長という例外がいるとは思わなかった。
「大変ね。
そういうお姉さんがいるなんて」
「鈴?」
「どういうことだ?」
黙々としながらも鬼気迫る表情で作業を続ける更識を見て、鈴は憐れみを込めた表情で言った。
「……あの子、多分だけどお姉さんのこと意識してんのよ」
「え!?」
「どういうこと!?」
鈴の口から出てきた更識の心中を推測した発言に俺たちは耳を傾けた。
「会長って一人で「専用機」を開発させてるじゃない。
多分、会長がやったことを自分でもやってみたいって思ってるのよ」
「!」
「もしかすろと、比べられて育ったりしたのか?」
鈴の考えから俺は思いついた。
千冬姉という俺からすると親がいない中でも、俺を守り育ててくれたという姉としても尊敬すべき姉がいるが、世間からすると「世界最強」という一面が一般的なイメージの方が強い。
そんな姉を持つ俺のことを「世界最強の弟」とみる人間もいなくはなかった。
しかし、あくまでも弟ということで更識は違った。
良くも悪くも「IS」は女しか使えない。
その事から非常に癪だがまともに比較されることなく俺は育つことが出来た。
少なくても、俺の周りの人間は今まで俺と千冬姉を別の人間と見てくれていたが、更識は果たしてどうだっただろうか。
姉がいる弟妹でも……
こんなにも違うのか……
姉を恨んだり妬んだりする。
そんなことを俺は考えたこともなかった。
けれども会長の妹は違った。
姉が妨害していることもあるが、それでもすれ違っている。
やっぱり、過保護なのもいけないんだよな
良くも悪くも俺は千冬姉に見守られてきた。
厳しくもあるが、人としての当たり前のことに関してはああしろこうしろとは言われてはこなかった。
だから、反発が生まれなかったのだろう。
それと会長……
不器用すぎますよ
加えて、会長は自分が妹を守っていることをちゃんと話していない。
どんなに話しても言い訳にしか聞こえないのかもしれない。
千冬姉ですら、言葉がなくても分かりやすい行動を見せているのに会長はそれすらも表に出してない。
はっきり言えば、会長がどれだけ妹を大切に思っていてもあれじゃ心が伝わっておらず、亀裂が生まれる。
会長の願いとは本当の意味で真逆の道を進んじまうよ……
既に会長は妹に任せることを決めている。
しかし、その選択を委ねる中で更識は会長への反発心が邪魔をして、本当の意味で彼女が選びたいと思う道を選べなくなる。
本当のことを知らないまま後で悔やむ様な選択だけはして欲しくない、
「……!
誰か、来たよ」
「むっ!
布仏か!?」
更識が黙々と作業を続けていると、格納庫に誰かが入ってきた。
その人物をラウラはのほほんさんだと考えた。
「え、あれって?」
しかし、入ってきたのは予想外な人物だった。
その人物は足音を殺してゆっくりと更識へと近づいて行った。
「……簪ちゃん」
「!」
その人物は更識の、いや、自分の妹の背後に立つと意を決して声をかけた。
その声に更識は一瞬、ハッとするとと共に同時に同様する姿を見せたが、すぐに嫌悪感を纏った。
「……会長」
それは彼女の姉である生徒会長だった。