奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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注意)今回は日露戦争とその前後の日本に関わる史実の話に触れる部分があります。
後、多少仕方ないとはいえ当時の価値観や思想、社会に関わることがあるのでご注意を
後、雪風から見た米軍提督の話も出てきます。


第5話「祖国への誇り」

「それではこの時間に実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 先ほどから失敗続きでへこみそうになっている私はそれでもこれ以上の失点を重ねまいと二時間目の授業に専念しようとした。

 このままでは私を信頼してくれた更識さんたちに面目が立たない。

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 とその矢先に織斑さんはそう言った。

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ」

 

 と織斑さんは「クラス代表」について説明しだした。

 

 本当にそのままの意味ですね

 

 私は織斑さんの説明がそのまま過ぎたので心の中で笑った。

 どうやら、「クラス代表」と言うのは駆逐隊における旗艦を務めるようなものらしい。

 私も第十六駆逐隊では旗艦をやったことはあるが、あれは中々疲れるものだ。

 その私がまさか、後に一国の海軍の総旗艦まですることになるとは思いもしなかったが。

 

 ま、今回は関わらない方向でいきますか……

 

 私は説明を聞きながら目立たないためにも無関係であろうと思った。

 さすがにこれ以上、自ら目立つようなことは避けたい。

 今回の件ではまさか、私の護衛対象が関わるとは思いもしないし。

 と私が方針を固めていると

 

「はい!織斑くんを推薦します!」

 

 ………………え?

 

 と一人の女生徒が挙手して私の護衛対象に白羽の矢を立てた。

 それを耳にして私は耳を疑った。

 

「私もそれがいいと思います!」

 

 さらにそれに同調した女子がその案に乗った。

 名指しされた本人はと言えば、まるで自分じゃない誰かが推薦されたと考えているのか、いや、考えようとしているのかのん気にしていた。

 

 いやいや……!?推薦されているのはあなたですよ!?

 

 私は彼の図太さあるいは現実逃避の才能に呆れながら気づけと念を送った。

 しかし、まったく彼は理解していない。

 そんな彼に現実を直視させたのは

 

「では、候補者は織斑一夏……

 他はないか?自薦他薦は問わないぞ」

 

 私たちの担任であり、護衛対象の姉である織斑さんだった。

 

「お、俺!?」

 

 そう、あなたです!

 

 そんな近親者であり、担任の彼女の発言にようやく事の次第に気づいたのか本人が驚きのあまりに席を立ち上がった。

 そんな彼のことを周囲の生徒たちが熱い期待が込められた眼差しを向けている。

 

 さっきの彼の醜態を目にしておきながら、よくそんな身勝手な期待ができますね……

 

 私は彼に勝手な理想像を押し付けている彼女たちに既に慣れているとはいえ呆れた。

 彼の二時間目におけるあの様子から彼が「IS」に関しては初心者どころか基礎知識のないど素人なのは明白なことだ。

 「IS」自体が初心者にも扱いやすい兵器なのは十分理解はできたが、基礎知識もない人間が再来週までに各クラスの代表に挑むのは無謀だろう。

 同時に二時間目の彼の態度には私はイラついていた。

 これは私にも言えることかもしれないが、私と彼はほとんど裏口入学でこの学園に入学している。

 この学園の倍率はとんでもないものだ。

 それは同時に死に物狂いで勉強してこの学園に入学できなかった人間がいることを意味している。

 そのことに対して、自覚がない彼に対して私はむかついている。

 だが、それ以上に私はそんな彼を単なる好奇心で選んだクラスの大多数の人間にも憤りを感じている。

 私は織斑さんに今回の是非を目配せで確認してみると彼女は強い意志を示した。

 

『私の弟の場合は自分の置かれている状況に気づけば安心できるが、あいつはそれを自覚するまでが本当に時間がかかる。

 後ろから尻を蹴り上げるようにしないとまず気づかん。だから、そう言ったことを自覚させることも含めてそう言ったプレッシャーをかける必要があるからそういったことをやらせる必要があるのだ』

 

 なるほど……これが彼に対する発破と言うことですか……

 

 私は織斑さんの反応と彼女の弟さんの様子を見て織斑さんのあの言葉の意味がなんとなく理解できた。

 今なら、彼女がどうしてあそこまで実の弟に対して辛辣だったのか理解できた気がする。

 私も不知火姉さんと「お姉ちゃん」にはしっかりと躾けられたものだ。

 特に不知火姉さんは自分以外の陽炎型の上の姉妹がいなくなった後は私のことを陽炎型における新しい二番目の「姉」として厳しく教育していた。

 そんな姉を持ったことで私はなんとなくだが、織斑さんの気持ちも理解できる。

 そして、彼女は目線をそのまま弟さんに移して

 

「織斑。席に着け、邪魔だ。

 さて、他にはいないのか?いないなら無投票当選だぞ?」

 

 と件の本人には着席を促し他に意見がないかを確認した。

 

「ちょ、ちょっと待った!俺はそんなのやらな―――」

 

 徐々に外堀が埋まっていくことに焦りを感じて彼は必死に反論してなんとか「クラス代表」に役を免れようとするが

 

「自薦他薦は問わないと言った。

 他薦された者に拒否権などない。

 選ばれた以上は覚悟しろ」

 

 それを問答無用と織斑さんは却下した。

 今回の件で彼女の「姉」として、さらに「教師」としての決意は固かった。

 私自身としては勝手に持ち上げられた彼に対しては同情はしているし、彼を身勝手な理由で推薦した女生徒たちには反感を持っている。

 だが、きっかけはともかく織斑さんの判断は間違いではない。

 多少、強引なのは否めないが。

 そもそも、私が彼を護衛するのは私のことを保護してくれた織斑さんへの恩義もある。

 なら、私は彼女の意に従おう。

 

「い、いやでも―――」

 

 多少どころではないが釈然としない所もあるが私は一先ず、彼のやる気に火が着くことを祈って傍観を決め込もうとするが

 

―バン!ー

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 甲高い声をあげながらその決定に異を唱える人物が現れた。

 

 オルコットさんですか……

 

 その異論を発した人物は先ほど、織斑さんの弟さんに絡んでいたイギリスの代表候補生であった。

 私のミスで彼女が私の護衛対象にどんな感情を抱いてるのかは解らなかったが。

 

 まあ、色眼鏡で選んだりしたらそうなりますよね……

 

 彼女の反発も理解ができた。

 私自身、現段階ではオルコットさんの方が彼よりも「クラス代表」に適格だとは思っている。

 恐らくだが、このクラスの中で最も実力があるのは彼女だろう。

 私は彼女の言い分に興味を抱いて耳を傾けようとした。

 

「そのような選出は認められません!

 大体、()がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!」

 

 ………………は?

 

 だが、一瞬で私の頭からはそんな興味は失せた。

 

「わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえといおっしゃるのですか!?」

 

 彼女の言っていることの意味が解らない。

 確かに自分の実力が認められないのなら、それは屈辱だろう。

 だが

 

 なぜ「男」がクラス代表なだけで恥を感じることになるんですか……?

 

 彼女は「男」がクラスの代表になる。

 ただその一点だけで反発しているのだ。

 あまりにもくだらな過ぎる。

 

「実力からいけばわたくしがクラス代表になるのは必然。

 それを物珍しいからと言う理由で―――」

 

 そんな彼女に対して戸惑いと多少なりの苛立ちを抱いているとようやく、自分を売り出す気になったらしい。

 しかし、

 

極東の猿(・・・・)にされては困ります!」

 

 はあ……?

 

 彼女は今、物凄く聞き捨てならない言葉を発した気がして私は耳を疑うが

 

「わたくしはこのような島国(・・・・・・・)までIS技術の修練に来ているのであってサーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

 61センチ酸素魚雷を叩き込んであげましょうか?

 

 どうやら、聞き間違いじゃないらしい。

 オルコットさんは完全に日本を下に見ている。

 私のいた世界にも交流が少なかったことで互いの理解が進んでいないことからお互いの国を見下すことはあった。

 欧米にはびこる白人至上主義もその典型でもあったが日本でも白人を見下すこともあった。

 例えば、日露戦争後では今までの欧米の不平等条約等からの積み重なった怨みもあったことから欧米国家に勝ったと言うことから民間人が白人に対して尊大な振る舞いをすることはあった。

 また日露戦争後に起きた「日比谷焼き討ち事件」の発端は賠償金を貰えなかったことだがその際に腹を立てた我が帝国の人々はなぜか政府だけでなく交渉の仲介役をした米国に対してまでも敵対感情を持ってしまい米国側もその影響で日本に反感を持ってしまい一時的に欧米からの日本の評価は軍事力はともかくとして他の点では下がったことがあったのを金剛さんに教えてもらったことがあった。

 その金剛さんはその話をあの「伝説の戦艦」に聞かされたらしいが。

 ちなみにその「伝説の戦艦」はと言うとさすがに現場復帰は無理だったので大戦中は本国で艦娘たちがなるべく無茶な作戦に巻き込まれないようにと後方勤務をしてくれていた。

 もちろん、政府や軍、さらには民間の慈善団体の人々は武士道や己の信念から敵であるロシア人兵士すらも助けたり日露戦争には日本の誇りと品性が確かにはあった。

 私はこの世界の日本(・・・・・・・)の人間ではない。

 しかし、ある程度は「この世界」の歴史を学んだ。

 どうやら、この世界と私たちの世界の大きな違いは「世界大恐慌」があるか「深海棲艦」が現れたかの違いらしい。

 あの誇り高き帝国がなぜ多くの過ちを犯したのかは理解できなかったし悲しさと虚しさがあった。

 それでも私は「日本」が侮辱されるのは怒りを感じる。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

 ようやくある程度は察していたが彼女の本音が見えてきた。

 ただ今の彼女のその言葉には肯けない。

 むしろ、祖国の名を冠するこの国を侮辱されて彼女を殴らない自分を褒めたいところだ。

 今の私が自制心を保っていられるのは護衛任務を私に託した更識さんの信頼があるからだ。

 

 ここは耐えるんです……更識さんの面子のためにも……!

 

 私は更識さんのためにも頑張ろうとした。

 だが

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体―――」

 

「………………」

 

 その言葉で私の堪忍袋の緒がぷちんとキレた気がした。

 いや、むしろ、「ブチっ」が正確だろう。

 ここまで日本を馬鹿にした人間はいないだろう。

 あの個人的に日本嫌いのハルゼー提督でも、個人的に日本人嫌いなだけであって話は分かる相手であったしここまでひどくはない。

 後、なんだかんだで女子供には紳士的だったし部下には優しかったし。

 ニミッツ提督やスプルーアンス提督が色々と折衝材になったのも大きいとは思うが。

 だが、オルコットさんとは初対面であるのも大きいとは思うが怒りしか感じない。

 もちろん、彼女が年齢相応の未熟な所もあるのが原因だから仕方ないとは思うが既に我慢の限界だ。

 そして、私の口から彼女への怒りが放たれそうになった時

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。

 世界一まずい料理で何年覇者だよ」




アメリカの提督たちも個性的でかなり好きです。
日本嫌いのハルゼー提督も日本人は嫌いでしたが日系アメリカ人に対しては差別はしてないのがかなり印象的なんですよね。
あと、アイスクリームの行列の話や「おい、小僧。俺はそこまで年齢を食ってないぞ」とかのエピソードがハルゼー提督と言う銃後と戦場を弁える人間を表していると思います。
もちろん、ニミッツ提督やスプルーアンス提督も尊敬しています。
ニミッツ提督は三笠が戦後いいように扱われていた時に米軍兵士に怒りを感じて、三笠を保存するのに力を尽くしてくれましたし戦前も戦時中も戦後も日本に対する価値観を変えなかったのがたとえ私が日本人じゃなくてもニミッツ提督を知ったら尊敬していたと思います。
後、ニミッツ提督は戦史研究を得意としていて戦時中のほとんどの展開を全て予想していたらしいです。
スプルーアンス提督は知将でありながらも硫黄島攻略後の本土大空襲に対して愕然としたり、大和の最後の戦いでは最初はほとんど意味のない艦隊決戦で大和に引導を渡そうとしましたが「将」としての判断を下したのは人間らしいと思います。

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