魔法師が魔法を使うとき、基本的に協力することはない。
よくアニメなんかで見る<協力合体技>なんてものは使うことはできないのだ。
1人1人魔法を発動させるときに必要なサイオンの周波数が違う、つまりこのサイオンを合わせて1つの技を使おうとするとサイオン波同士で
これと同じように1人で2つのCADを使う場合でも、熟練者以外の者は安定した周波数のサイオン波を出すことはできず、結果としてその微妙な差が大きなうねりになり、魔法は発動されない。
たとえ2つのCADから魔法をタイミングをずらして撃ったとしても、辺りには前の魔法の波が大きく残っていることがあるためCADを2つ使いこなすことは相当な熟練者でなければ難しいとされている。
しかしこれはとらえ方を変えると、1人で2つのCADを使うこと以外にも当てはまるのではないか?
たとえば近くで魔法を発動した人がいればそのサイオン波は辺りに広がる、それは結果として周りの人の魔法発動に少なからず影響があるはずだ。
長々と考えているが、結局何が言いたいのかというと…
グループでの実習とかホントマジでなくなってくれないかな…
無理かな?
無理だよな…
「……比企谷さん、私たちと組まない…?」
現実逃避している俺の前に救いの手が差し伸べられた。
北山だ。
横には光井も引っ付いている。
どうでもいいけどこの二人いつも一緒にいるな…
幼馴染っていうのはそういうものなのだろうか?
俺にはいないからわからん…
「お、おう…けどいいのか?」
少し声につまりながら答える。
「???…なにが?」
Oh,北山のやつはホントに何もわかっていないようだ。
この時期(新学期の最初のうち)は新しい友達(笑)と友好関係(笑)やお互いのキャラ(笑)を形成する大事な時期だ。
そんなこと話考えていると北山の口から驚きにの一言が。
「私、比企谷さんのこと知りたい」
なんてことなさげに言う北山
「は!?」
「雫!?」
と、突然何言ってるんだ、こいつは!?
同じくほのかも目を剥いて驚く。
……ほのかさん、何であなたは顔が赤くなってるのでせうか。
「同じグループになればまた魔法をしっかり見ることができるだろうし…」
その一言を聞いて光井はうれしいような残念なような微妙な顔になる。
っていうかこういう顔できるやつってホント器用だよな…
百面相ってやつか…
「そ、そうよね、……ビックリした、雫ってそっち方面に疎いから本当に驚いたよ…」
最後のほうのセリフは、俺には聞こえたが北山には聞こえてないようだ。
「………………」
クールになれ,
kool…じゃあなかったcoolになるんだ…。
よし、落ち着いた。
こんなの中学の頃の罰ゲーム(もちろん俺が罰ゲームを受けたわけではない)で慣れてるはずなのに…
ガチの天然って怖い…
いや、キャラの天然も怖いけど、別の意味で…
………どうしてこうなった。
もう一度言う、
ド ウ シ テ コ ウ ナ ッ タ ! ! !
「比企谷さん、何でもいいから魔法撃ってみて…」
「でもいいんでしょうか?そんな簡単に人の魔法を見せてもらっても…」
「まぁほのか、実際気になるのはほのかも同じなのでしょう?」
………ホントしつこいようだけど、もう1回だけ言ってもいい?
え?ダメ?
現実受け入れろって?
現実が俺を受け入れてないのにどうやって受け入れろっていうんだよ…
よってそれは無理な相談だ。
どれくらい無理かというと牛乳に相談するレベル。
……実際にそんな奴いたら完全におかしい人なのだが。
「うん、じゃあほのかの許可も得たってことで…比企谷さんお願いね…?」
あ、あれ?俺の許可はいつ得たのだろうか?
っていうか本気で周りの目が痛い。
目に攻撃力があったら俺の体は穴だらけだろう。
いや、現状で胃に穴が開きそうなのだが…
わー存在が認識されるってイイナー
どうしてこんな状況になったのかというと…
ことの発展は多くの人に誘われていた司波のやつに北山が残り1人ということで声をかけたことから始まった。
なんと司波は先に誘っていた人たちを押しのけて北山の誘いにのったのであった。
おかげで俺は針のむしろです。
ちなみにグループ内でも「さっさと魔法使えや!」的な感じで針のむしろです。
はぁ家に帰りたい…
でも帰っても小町いない…(2度目
「はぁ…ったくしかた「司波さん!せっかくだし僕らの班と合同でやらない?」」
諦めて初歩的な魔法を使おうとすると、話をさえぎられてしまった。
俺の話をさえぎるというとあの女教師だと思うのだが、聞こえてきたのは男のそれだった。
岩手県の県庁所在地だった…
あ、字が違うか、あっちは盛岡、こっちは森岡か…
ってかこいつホント気づいてないのかよ…
司波のやつは思いっきりいやな顔してるじゃあねえか。
たぶん女子に毛嫌いされたこととかないんだな、だからわかんないのか。
なにそれ?爆発しろ!
「ねぇ比企谷さん早く~」
こんな時でも北山は平常運転だ。
ほのかは相変わらずあたふた。
司波は…
司波は…?
ゾ ク リ !
ナニアレコワイ
何で笑顔があんなに怖いの?
ここ最近の森岡の態度についに堪忍袋の緒が切れたのだろうか…
しかもなんであの笑顔を見て森岡たちは普通に会話できるの?
鈍感ってうらやましい…
「わかりました、幸いちょうど教師の皆様も今日は自由にしていいと言っていますし、対戦形式でしませんか?」
そう、今日は初めの授業ということで魔法を使おうがなにしようが自由な時間なのだ。
「うん、それでいいよ、形式は4対4でいいかな?」
「ええ、ですが怪我などさせてしまっては危険ですので、魔法を当たった人はその時点で負けということにしましょう」
悪魔で(誤字ではない)にこやかに会話をする司波…
この状況で司波の顔を見て恐怖しない人間は森岡と北山だけだ。
森岡と同じグループのやつも、光井だって軽く震えていた。
「じゃあ作戦会議をしますので開始は3分後でお願いしますね」
優雅に頭を下げ、光井、北山、俺を呼び寄せる司波。
ふぇぇ、怖いよ、小町助けて~
そして行われる作戦会議
司波の立てた作戦内容のほうもかなりえげつない方法であったが最後解散ぎわにはなった言葉はそれ以上に恐ろしかった…
恐ろしすぎて内容を忘れてしまうほどだ…。
俺は覚えてない、司波が
「これで昨日お兄様を貶した報復を合法的にすることができる……」
なんて言っていたことなんて…
これから起こるであろう悲劇に、加害者から被害者に向けて、合唱…
風の刃が迫る…
いや、直撃しても吹っ飛ぶだけなのだから空気の塊といったほうが正しいのかもしれない。
それを俺は魔法で自分の体の運動能力を上げて避けていく。
司波は同じように避け(こっちは魔法を使っていないため素の運動能力)、北山は空気の塊を作って相殺、光井は光の反射を利用して相手から見える自分の位置をずらしているようだ。
相手は4人とも同じ技を開始直後に放ってきた。
それは当たり前といえば当たり前のことである。
風系の魔法は基本的に術式の構築が早く、技の発生も早い。
だからこういうような初撃で決着するような戦いにおいて大きなアドバンテージなのだ。
そんな中われらが氷の女王(絶壁じゃあない)が提案した作戦はまず30秒間の徹底防戦だった。
---そして30秒が終わり、恐怖の時間が始まった---
「皆さん、行きますよ!」
さぁ、お兄様を馬鹿にした愚かな人たちには少し痛い目にあってモライマショウ…
1人がそれぞれ1人を相手にするということは事前にグループ内で決めていたため私の標的……相手である森崎君にのほうを向きCADを構える
使う技は先ほど彼らがが使っていたものと全く同じ魔法。
それをタブレット型のCADを操作して3連発で放つ、3発ともあたらずにそのまま後ろの壁を振動させた。
彼は安心したようだ。
私はまた3発連続で放つ、後ろの壁を振動させただけだった。
彼は少し余裕を取り戻したのか、自信に満ち溢れた顔になってそのまま風の塊を飛ばしてきた。
私はまた3連発、そのうち1発は彼の魔法と当ったが相殺どころか私の魔法を一瞬でも止めることはできていなかった。
相変わらず後ろの壁が揺れる。
彼は眼を剥いた。
何か言っているようだが私にはまったくもって興味のないことだった。
また3連発、壁が揺れる。
彼の顔はついに恐怖がにじみ始めていた。
3連発…壁が揺れる
3連発…壁が揺れる
3連発…壁が揺れる
サンレンパツ…カベガユレル…
こわ!?こわ!?コワッ!?
なにあの人ホント怖い…
もちろんこれは先ほどまで自分に向けて魔法を放っていた名前も知らないクラスメイトのことではない。
味方のはずの少女に俺は心底恐怖を抱いていた。
やめて!もう森何とか君のライフはゼロよ!
ちなみに30秒逃げ切った後の作戦は各個撃破だった。
仮に先に敵を倒したとしても絶対にほかの人の手助けはしない。
あと、絶対に負けられない。
司波のやつに「負けたらどうなるかわかってますよね?」なんて最高の笑顔で言われた日にはうれしすぎて体が震えてくるレベルだ(白目
そんなこんなで俺たち3人は遠目に司波の戦い(一方的な虐殺ともいう)を見ていた。
……もちろん勝ったよ?
俺だってまだ死にたくないもん。
授業は残り4分
森なんとかのやつはこの4分間をどれくらいの長さに感じてるのだろうか?
少なくとも司波は怒らせてはいけないことを心に刻み、気持ちを無にして前方の魔法戦を眺めつづけた。