魔法科高校の比企谷君 再投稿   作:sazanamin

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やはり俺の魔法は間違っている

 「ごめんなさいね、あのまま何事もなかったみたいに皆を返すと周りからの目があるからね……少なくとも何人かは注意したってことにしなくちゃいけないのよ」

 

 生徒会室を目指す廊下で、申し訳なさそうに会長は言った。

 って言うかそういうことは言っちゃダメだろ……

 

 「いいえ、大丈夫ですよ。こちらこそ事態の収拾をしてくださってありがとうございます」

 

 お礼を述べたのは司波。

 結局こいつは最後まで何もしなかったが……

 

 「まさか魔法まで使おうとするなんて予想外でしたね」

 

 「……まったく」

 

 同調をしたのは光井と北山。

 お前らは呼ばれていなかったはずだが……

 まぁ別に来ても問題はない、とは会長談

 北山の奴はいつの間にいたのだろうか  

 

 「そもそも俺は止めようとしただけですよ?なんで呼びだすのを森……え、えっと森山にせずに俺にしたんですか」

 

 「だってあの子面倒くさそうじゃない、私だって暇じゃあないのよ?」

 

 そりゃあ生徒会長は忙しいとは思いますが…… 

 そんなこんなで話をしているとすぐに生徒会室の前についた。

 

 「幸い今は誰もいないからゆっくり話でもしながら少し時間をつぶしましょうか」

 

 おい、どうした。

 生徒会長ってのは忙しいんじゃなかったのか……

 

 「そうですね、俺も聞きたいことがありますし……」

 

 そう言って司波は俺の方に向いた。

 

 「まぁ好きな所に座っていいわよ、じゃあ親睦会と行きましょう……」

 

 会長がそう言って奥の方の席に着いた。

 俺はなんとなく手前の一番端の席に腰掛ける。

 司波の奴は俺の隣に座る続いて光井、北山

 1年4人が横に座り向き合って3年の会長が座る形となっていた。

 

 「じゃあ比企谷、おまえがさっきやっていたことについてだが……」

 

 何のこと?と、とぼけることは簡単だ。

 だが結局北山と光井には教えるという約束(一方的だが)をしていたため、いっそここで言ってしまった方が楽だろう。

 

 「ああ、俺の魔法はちょっと特別でな……北山、光井、ここでもう話しちまうぞ?」

 

 「……うん」

 「わ、分かりました」

 

 よしじゃあ、と思い説明しようとすると会長が「ちょっと待って」と制止をかけてきた。

 

 「……どうしたんですか?」

 

 「それってあーちゃんも気になっていたはずよ、呼んであげましょうよ」

 

 そういえば質問を連発されたうちの一つに入ってたような気がするな……

 

 「じゃあ会長お願いします」

 

 「任せて!」

 

 何故かドヤ顔をして張り切った様子で端末をいじる。

 今のうちにションベンでもしとくか……

 

 「じゃあ俺はちょっとトイレ行ってくるわ……」

 

 そう言って立ち上がると隣の司波も一緒に立ちあがった。

 

 「俺も行こう」

 

 何こいつ?

 ホモなの?

 俺にそっちの趣味はないぞ!

 

 「場所は解るわね?」

 

 「はい大丈夫です」

 

 そう言って俺たちは廊下に出た……

 

 「なぁ……比企谷」

 

 そしてすぐに司波の方から話しかけてきた。

 

 「ん?どうした」

 

 「深雪……妹はクラスではどんな感じなんだ?」

 

 何言ってるんだろうかこいつは。

 まだ学校が始まって2日目なのにそんなこと気にしていたら限がないぞ……

 って言うかシスコンかよ……ホモじゃなくてよかった。

 トイレに入り便器の前に立ちながらそんなことを思う。

 だが聞かれたことには答えなければならない。

 

 「悪いな、実際に話したことがないから分からん。まぁトップカーストにはいるんじゃないか?」

 

 「トップカースト?……ふ、教育現場をヒンドゥ教のカースト制を使ってあらわしたのか、面白い考え方だな……」

 

 え?学校カーストって有名じゃないの?

 まるで俺が生み出したみたいになってんじゃねーか……

 

 「俺は先に行くぞ、じゃあな」

 

 ボッチはトイレも早いのだ。

 なぜならトイレにはよく人(しかも上位カーストの奴ら)がたまる。

 ちょっとはトイレを見習って流れを良くするべきだ。

 だから授業が終わったら速攻でトイレに行ってやつらが侵略してくる前に教室に戻るのだ。

 中学時代の俺の生態より抜粋

 

 「ああ、分かった」

 

 司波の奴は待ってくれとか言わなかったので遠慮なく先に生徒会室に俺は戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの、比企谷君……、えーっと」

 

 俺の前には茶髪ショートの小柄な女性が一人、かれこれ2分たつ。

 

 「これは一体どういう状況なんだ?」

 

 もどって来た司波はそう俺たちに問いかける。

 いや、俺が聞きたいわ、

 急に「ごめんなさい」とか中条先輩が謝って来たから「何がです?」って返したらこんな感じだ……

 

 「あーちゃんは昨日暴走してしまったことを謝ってるんだと思うわよ?」

 

 「は、はい。かいちょ~ありがとうございます」

 

 できればそのフォローはもう少し早くしてほしかった。

 ちなみに北山と光井は2人で話していた。

 

 「はぁ、早く帰りたいんでさっさと始めましょうか」

 

 うんざりしながら、そう声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「じゃあ比企谷、さっきお前がやったのはなんなんだ?」

 

 「簡単だ、ただ魔力の塊をひたすらぶつけただけだ。こうするだけで魔法ってものは発動しなくなる」

 

 魔法のもとである魔法式はなかなか融通の利かないものである。

 発動する前には必ず魔力をためる必要がある。

 そのたまる魔力をより大きい魔力の塊をぶつけることによって根こそぎ吹き飛ばす。

 これが俺のやったことの正体だ。

 ≪術式解体≫のように高度な魔法式が必要ないが魔力を吹き飛ばせるだけの魔力差がないと全く持って意味がなくなってしまう。

 そのため吹き飛ばせるだけの魔力差があるんだったら魔法の無効かなんてせずに別の魔法を使い圧倒したほうが早いという何とも見せ場のない魔法だったりする。

 

 「待て、じゃあお前は魔法を発動したということか?」

 

 「ああ、そうだ」

 

 「だが魔力の乱れが全くと言っていいほど無かったぞ……!」

 

 「それは試験監督の教師が言っていたのと同じです」

 

 「雫が言っていたのも」

 

 「……うん」

 

 会長以外が一気に食い気味で同調をして質問を重ねる。

 

 「ちょっと皆落ち着いて……」

 

 こんな時に止めに入るのは流石生徒会長と言うものだろうか……

 

 「まぁぶっちゃけて言っちゃいますと俺はBSの魔法師です」

 

 「BS魔法師って基本的に普通の魔法は使えないんじゃないですか?」

 

 中条先輩は首をひねらせながら言う。

 

 「そんなこと俺に聞かないでください、何事にも例外はあるってことじゃないですか?」

 

 「そうよあーちゃん、日本でも何件か……世界ではそれこそ何件も報告はされてるわ……確かにそうとう珍しいことだけど」

 

 BS魔法、魔法として技術化される以前の異能、つまり「超能力者」による先天的な超能力が、現代魔法学ではこう呼ばれている。

 

 「つまり俺は『魔法の存在に気付かれない』と言う魔法隠蔽スキルを持って生まれたんだ」

 

 「そんな魔法……だがそれならさっきのことにも説明がつく。俺が異変に気付いたのはあいつの身体の周りのサイオンが小刻みに震えていたからだ」

 

 何こいつ?

 魔力なんてもの見ることができんの?

 ちなみに魔力=サイオンだ。

 基本的には魔法に関係するものはサイオンと呼び、一般人は魔力と呼ぶ。

 ちなみに俺が魔力と言ってるのはなんとなくでしかない。

 

 「まるで魔法を発動しようとしているのにサイオンがたまらないといった感じだった」

 

 「俺のこの魔法は魔法式から溜めた魔力まで全てを隠蔽しようとする。だから森口の魔力を吹き飛ばした俺の魔力は認識できないんだ」

 

 「それって……」

 

 「実践だったら最強……」

 

 光井の言葉に北山が続ける。

 まぁ確かに全く察知できない魔法なんて相手からしてみたら悲劇でしかないだろう。

 だが実際はそううまくは行かない

 

 「そんなことはない、俺はこの魔法のせいでAランク以上の殆ど魔法は発動することさえできない」

 

 「情報を隠蔽するには高度すぎる魔法式だからな……魔法ごと隠蔽する、という感じか……」

 

 だからなんで司波はそんなに察しがいいんだ?

 魔法が高度すぎるとせっかく変えた事象すら隠蔽しようと元の状態に戻してしまうのだ。

 何故か低級魔法では事象の隠蔽は起らない。

 つまり炎を出す上級魔法を発動してもその炎も無かったことにされる一方、火を出す下級魔法では途中のプロセスは分からないのに火が出たという事象だけが結果として残るのだ。

 

 「今思ったのだけどそれってよく考えたらおかしくない?」

 

 「何がですか?会長」

 

 中条先輩が尋ねた。

 

 「だってBS魔法って言うのは魔法が確立されていないときからあるものでしょ?『発動した魔法を隠蔽する』なんて魔法そのもの(・・・・・・)が無ければ成立しないものじゃないかしら?」

 

 「そのことのついては知らないです」

 

 ありのままの回答をする。

 そういえばそうか……これ(・・)は本当に何なんだろうか……

 

 「BS魔法……『超能力』も進化をしているってことか……」

 

 感慨深く司波はつぶやいた。

 

 「なんか他に質問はありますか?」

 

 「じゃあ一つだけ確認……本当に魔法師の家系じゃないの?」

 

 そう聞いてきたのは北山。

 俺がこの問いに対してできる答えはただ一つだった。

 

 「ああ」

 

 組織の奴らに何度されてきたかわからない問に対して俺は何度したか分からない回答を返したのだった。

 

 

 

 


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