トリスティンで暮らすルイズちゃんは魔法使いの女の子!
 得意な魔法は爆発。苦手な魔法は他全部。そもそも爆発魔法なんて無いのだけれど。

 あらすじなんて無くても良いじゃない。あらすじなんて無くても良いの。
 開いてしまってから「このSSはヤバイ」、そう思ったなら360度回って全力疾走すれば良いと思います。


※元はにじファンに投稿したモノを微調整してArcadiaに投下した系のアレです。

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 知ってる人は知っている。
 知らない人は、知らないね。

 だいたいそんな感じ。

 個人的評価は高いんだ、このSS。
 内容なんて無いよ、勢いが大事なのさショートストーリーにはな……!!

 投げっ放せ、とりゃーっ!

(本編とは何ら関係のない、作者の心情)



古の命、魔法使いの元へ。

 

 とある世界の、とある場所。

 丁寧に整地され、くるぶし程の高さで整えられた草原に、大勢の人が集まっていた。

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール―――」

 

 

 人々は肩から布を垂らし、その手には人それぞれで形の差はあるものの、棒を持っていた。

 それは、この世界において貴族の証であるマントと、魔法使いの象徴である杖。

 此処に集う少年少女、そしてその監督者たる男は皆等しくマントと杖を身に付けている―――故に、全員が貴族であり、魔法使いだ。

 

 ここは、貴族が魔法使いとしての知識や経験を学ぶ為の施設の敷地、名前は国立トリスティン魔法学院。

 ハルケギニアと人々が呼称する世界の中でも、貴族意識が最も高い国家、トリスティン王国の魔法学校だ。

 

 

「――宇宙の果てのどこかにいる、私の僕よ。

 神聖で、美しく………そして強力な使い魔よ。

 私は心より求め、訴えるわ――――――我が導きに応えなさい!」

 

 

 そして、この学院で学ぶ次代の貴族達には2年次になると、『使い魔召喚の儀』というイベントが待っている。

 これはその名の通り使い魔を召喚する儀式であり、使い魔とは主である魔法使いに付き従い、主を外的から守り、主が求める物を探し出し、そして時には主の代わりに行動する存在である。

 

 故に、既に召喚を終えた生徒達は必然、自身の傍に魔獣を従えていた。

 おどろおどろしい化生、尋常ではない巨体を誇るの虫や動物、英雄譚に登場しそうな幻獣などなど……彼ら魔法使いにとって使い魔は『己の写し身』でもあり、そして貴族たる彼らは強く、気高く、そして美しい使い魔を持つ事に他者よりも優越感を持つ。

 

 貴族とは強弱はあれど、誰もが己がプライドに生きる者達……特にこの国では。

 技量を、容姿を、財力を競い。そして誇り、そして優越に浸る。己が自信が強固であれば強固である程に、貴族は貴族として振る舞える。自分が貴族であると、自信を持って宣言出来るからこそ、貴族足る風格が現れると信じているからだ。

 

 

 

 ――そして今、今代の生徒の中。最後の1人が召喚の儀を行っていた。

 

 絹糸の様にやわらかな桃色の髪を風になびかせ。

 小柄ながらも威風堂々と二本の脚で地面に立ち。

 桜色の一対の瞳には確固たる意志を秘め。

 そして右手に持ったタクト型の杖を力いっぱいに振りかざし。

 使い魔を、己が半身を、己の写し身を呼びだそうと心の内に潜む超常の力――即ち、魔力を全身から立ち昇らせていた。

 

 魔力は目に見えないエネルギーだ。

 物理現象外に存在しているのか、はたまた未知の法則か。兎に角、人間の可視外であるが故に、周囲で彼女の召喚が終わるのを待っている学生達は感知する事が出来ないだろう。

 

 しかし、人間の知覚法は視覚のみでは無い。

 触角、味覚、嗅覚、聴覚を合わせた全五感がある。そのどれもが魔力を感じ取る事は出来ない。

 

 ―――しかし、魔法使いである彼ら自身も、それどころかこの世界の誰もが知らぬ事だが。魔力を持つ者には魔力を感知する事ができる。

 それは自身の魔力が大きければ大きい程に強くなり―――故に将来の実力者達、つまり一定以上の魔力を持つ者達は彼女の放つ膨大な魔力波を、うっすらとではあるが感じ取っていた。

 それは興味や畏怖、好意といった形で意識へと伝わり、今も尚杖を振りかざす1人の少女へと意識や視線が向けられる。

 

 一方で、その魔力を感じ取る事が出来なかった者達は常日頃から簡易な魔法―――それこそ彼らが幼少の頃に成功させた魔法すらも失敗させる少女を指し、こう呼んでいた。

 

 ―――『ゼロ』のルイズ。魔法が使えない、使える魔法の数が『ゼロ』のルイズ。

 

 

 

 使い魔召喚の魔法、サモン・サーヴァントの呪文を唱え、その度に失敗して爆発を起こす。

 失敗した事に対する己の不甲斐無さに、周りから向けられる冷笑と呆れを含む視線への悔しさに。成功しない魔法への怒りが積もる。

 

 彼女は、かつて母に、そして姉に教えて貰ったのだ。

 ――魔法を使う時は、呪文を唱えるのでは無く、心で唱えるのよ……と。

 

 その言葉を心に留め、諦めや疲れといった感情を押し流し、希望を掴むべく杖を振り続ける。

 

 

 そして、何度も。幾度も繰り返し、視線を向けていた者達もとうとう視線を逸らし始めた頃。

 怒り、悲しみ、悔しさ。様々な感情が積りに積り、膨大な感情を処理しきれず少女の眼元に涙すら浮かび始めた頃。

 

 そして、長い時間を己が背後で付き添ってくれていた監督者たる教師が動いた時。

 そろそろ切り上げて、諦めても良いんじゃないかと声を掛けられそうになった時。

 

 どれが切っ掛けだったのか。あるいは全てか。

 少女の精神へと掛かる負荷(ストレス)が限界に達し、彼女自身すらも何もかもを投げ出しかけた。全てを諦めて、放棄したくなった。

 

 今まで誰よりも努力してきた。その自負はある……が、その努力すら無駄となってしまう。

 これからもずっと無駄になるというなら、ここで諦めた方がずっと良いのではないだろうか?

 

 そんな言葉が脳裏を駆ける中。ふと、彼女の脳裏には優しい笑みを浮かべた姉の顔が浮かんだ。

 

(ちぃ姉さま………)

 

 ――がんばって、誰よりも頑張り屋さんなルイズなら、きっとできるから。

 

 ……………――――――――ッ!!!

 

 ギリッと奥歯が割れる程噛み締める。

 誰よりも大好きな姉の言葉が届いた。幻聴だとしても、妄想だとしても、確かに届いた。いや、実際に届くはずが無いのだから妄想なのだろうけども、それでも確かに『届いた』。

 

 生まれつき体が弱く、部屋から殆ど外に出る事すら無い儚げな姉は、しかし心は誰よりも強かった。

 彼女は今、この時も、遠く離れた家の自室で自分の事を心配しているだろう。此処で諦める訳にはいかない。

 

(それに、私はこの魔法学院で凄い魔法使いになるって決めたのよ。そしてちぃ姉さまの病気を治すんだから………!)

 

 それは幼き頃のたった1人、自分だけの誓い。

 誰に言うでもなく。

 父や、母や、友人―――そして姉本人にすらも知られていない己の信念。

 

 その決意が、降り積もった負の感情を反転させた。

 ……莫大な負(マイナス)が、正(プラス)へと変わる。

 

 

「私を誰だと思ってるのよ…………

 誇り高きトリスティン王国が貴族、ラ・ヴァリエール侯爵家の三女!

 ―――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなんだからぁ!!」

 

 

 周りの生徒達が。 

 雑談に興じ、初めから意識すら向けて居なかった者達ですら、彼女へと一斉に視線を向けた。

 本人達は突然の大声に気を取られて視線を向けたと思っているのだろうが―――実際には違う。

 

 それは、先程までとは一線を画す魔力の胎動。

 たった僅かな量の魔力しか持たず、魔力の知覚能力が低くとも、思わず反応してしまう程の強大な魔力波。

 そんな物を浴びせられれば、誰であろうと意識を向けてしまう。向いてしまう。

 

 ――そして、その莫大な魔力は『世界』という壁を越え、『時間』という壁を越え、たった1つの存在と彼女を繋ぎ、導く。

 

 魔力波に耐えきれなかった空間そのものが爆発し、砂埃を撒き上げて視界を遮る。

 これまでの爆発では精々地面が抉れる程度であったが、それとは比べ物にならない程の威力を秘めたそれは大地を抉り、隕石でも落下したのではないかという程のクレーターを残す。

 地中に埋まっていた石なども粉砕し、砂粒へと分解して吹き荒らした。

 

 

 そして、誰もが見る事が出来ない砂嵐の中。

 突如現れた宙に浮かぶ銀板(召喚の門)から、其が現れた。

 

 

(馬の………幻獣?)

 

 

 ………………砂埃が風に流され、そして晴れる。

 

 

 

 ―――初め、それは馬に似た姿をした幻獣……ユニコーンやペガススだと思った。

 

 大地を踏みしめる突き立つ柱のような雄々しい7対の脚。

 細長く……しかし重力に負ける事なく真っ直ぐと力強く伸びる胴体。

 他者を威嚇し、突き刺す槍のように背中から突き出すトゲ。

 胴体から伸びる首の尖端には何もかもを飲み込んでしまいそうな口が開く。

 そしてバランスを取る為に揺れる尾は短いながらも太く、肉々しい。

 

 

 それは、この場に集う、誰もが見た事の無い生き物だった。

 離れた学舎の塔からこっそりと見守っていた、膨大な知識を持つ賢者すら知らぬその姿。

 それどころか、この世界の誰もが知らないその存在。

 

 

 ただ、その中で1人。

 たった1人。召喚者たる桃髪の少女だけは感じ取っていた。

 

 漸く現れた己が半身への理解か、それとも召喚による繋がりか。或いはただの思い込みか。

 しかし、確かにその生物から莫大な生命力を感じていた。脈動する命。弱肉強食の世界で生き抜き、戦い、逃げ、隠れ、そして傷を癒して何度でも立ち上がる。そんな生命の波動を感じ取っていた。

 

 他の貴族には、魔法使いには解らないだろう。

 この中でただ1人。魔法使いでありながら魔法が使えず、出来そこないと揶揄されながらも「いつかきっと」という願いと意志の元に、諦めずに『弱い心』と戦い続けた彼女だけが理解できる意志。

 

 誰もが動かない中、ゆっくりと。しかし確実に近付く。

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

 五つの力を司るペンタゴン……このものに祝福を与え、我の使い魔となせ―――」

 

 

 大幅に遅刻しながらも、漸く現れた己が使い魔……いや、相棒へと近付き、彼女は口付けをした。

 使い魔(相棒)となった、いや少女の半身として生まれ変わったと言うべきだろうか。その細長い身体に紋様(ルーン)が浮かび上がり、ブルリと1つ身じろぎをする。

 

 己が使い魔となった証を確認する。

 

 

「もう……遅いわよ、どんだけ遅刻したと思ってるの? もっと早く来てよね……」

 

 

 責めるように、しかし確かに優しさを秘めた声で。

 涙を拭きながら声を掛ける。

 

 

 ――違う、こんな事が言いたいんじゃない。

 

 

「………これからよろしくね、私の半身。

 私の名前はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。貴方のご主人様……いえ、生涯の相棒。

 

 ―――――貴方の名前は?」

 

 

 どう見ても、少女の目の前の生物は喋りそうにも無いが、彼女はそうは思わない。

 喋る事が出来る……と確信にも近い感覚を得ていた。

 

 結論から言うと、其――いや、彼は喋る事は出来なかった。声を放つ為に必要である声帯……あるいはそれに近い器官が身体に存在しなかった為だ。

 しかし、意志を伝える手段は音声だけでは無い……テレパシーとでもいうべき思念通話を用いて、主へと声を、意志を、己が名前を伝える。

 山男のように低く、しかし少年のように気軽で、それでいて知識を蓄えた老人のような思慮深さを見せる『音では無い声』で。

 

 

『僕は……僕は大海に沈むモノ。

 死肉を貪る者(スカベンジャー)……幻の名を冠する者、ハルキゲニアさ』

 

 

 




あとがき。

 ハルケギニアにハルキゲニアが召喚されたようです。

 至る所にあふれる嘘設定と捏造設定。

●本作におけるハルキゲニア君の設定
 ハルキギニア
 約5億年前の地球(古生代カンブリア紀)に存在したと言われる、海底生物。
 本来5~30ミリメートル程度のサイズ。

 ……が、それは海底での話なので、本作では地上に出た為に莫大な水圧から解放され、馬かそれ以上のサイズにまで肥大化。
 本来ならば身体を抑えて居た水圧から解放された為、巨大化と同時に細胞壁が耐えきれず破壊され、全身から水分が抜けて死ぬのですが。
 ……ルイズの莫大な魔力が注ぎ込まれる事によって謎進化を遂げて不思議な事に地上でも存在できています。ご都合主義。

 ちなみに、脚生えたナマコ的な軟体生物なのに地上で重力に負けないのも、勿論ルイズの魔力で強化された結果。


 私はハルキゲニアの頭がホース状の方って事にして書きました。
 場合によって、そっちは尻なんですけど……
 要するに、Wikipedia先生の所に張ってある画像の右側が頭として書いてます。このSSではそういう事にしといてください。


 ハルケギニアにハルキゲニアとか、見た事無いけど誰かやってるはず。むしろ数年前にやってるはず……ですが、つい書いてしまいました。

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