どうも、メガネ愛好者です。
現在は原作から二年前ほどの時代です。
それでは。
どうも、モノクロウサギという者です。
現在私は……小さな個室にて、厳しそうな雰囲気を醸す女性と対面しています。
「……まさかここまでとはな」
「すいません……」
軽く溜息を吐く目の前の女性、申し訳なさで思わず頭を下げてしまいます。
机を挟んで対面している光景は、さながら警察に事情徴収を受けている重要参考人または犯人みたいですね。彼等の気持ちがわかったような気がします。
さて、何故私がこのような状況に陥っているのかといいますと……まぁ私が原因であることは間違いないですね。誠に面倒を掛けさせてしまいすいませんでした。
——時は数十分前まで遡ります——
あの後、リンドウさん達に保護された私はここ"フェンリル極東支部"——またの名を"アナグラ"——へとやってきました。……まさかこの場所に来るのにヘリで移動することになるとは思いもよりませんでしたね。あのまま接触していなかったら後を追って情報収集するどころの話ではなかったかもしれません。見つかっていてよかったですね私。……逃げたことについては触れないでください。若気の至りってやつです。
極東支部につきロビーにやってきた私達。そこでリンドウさんは私にその場で待つよう声を掛けてから横のエレベーターへと入っていきました。どうやらこの支部をまとめている支部長さんのところに向かったとのこと。
その間、私は一緒にいたソーマさんとサクヤさんの傍で大人しくしていました。何せ私は部外者ですからね。一時的に保護されて着いてきただけであって、本来ここは彼等"ゴッドイーター"の活動拠点……無暗に歩き回るのも邪魔になるでしょう。ジッとすることが出来ないほど、私は子供ではないのです!
ですが、ただ待つだけなのも時間が勿体ないですし、せっかくの機会ですので二人と交友を深めようかと思った次第です。
「……今後、死にたくなければ俺には関わらないことだ」
「え? なんでです? 別にソーマさんが何かする訳じゃないんですよね?」
「……いいから関わるな。二度は言わん」
「そうなんですか……残念です。せっかく友達になれたと思いましたのに……」
「……おい、いつ俺とお前がそんな関係になった。まだ初対面だろうが」
「あっ、その……ダメ、でしたか?」
「……………………もういい、勝手にしろ」
「——っ! はいっ、それなら勝手にしますね♪」
あれやこれやと話し込むうちに、そう時間もかからず私達は意気投合していきました。……何故かその時、ソーマさんが心底疲れたような顔をしていましたが何故でしょう? サクヤさんはふふふっと穏やかに微笑むだけでどうしてだか教えてくれませんでしたし……まぁ、いっか。
二人と話すこと数分、エレベーターへと消えていったリンドウさんが戻ってきました。……隣にリンドウさんと何処か似た印象を抱かせる女性と共に。
その方こそ、今机を挟んで私の目の前にいるお姉さん——雨宮ツバキさんです。
その場で簡単に自己紹介を済ませた後、ツバキさんは私の事情を聞くために一旦落ち着ける場所へと誘導してくれました。その場所と言うのがこの部屋という訳ですね。
尚、その時の状況や補足をするためにツバキさんの後ろにはリンドウさんが控えています。……ですが、出来れば煙草を吸うのはやめてほしいなぁ、なんて。正直に言いますとその匂い……私はあまり好きじゃないです。
「……リンドウ、煙草を吸うなら外で吸え」
「おっと、すまないな姉上。ちょいとニコチンが足りなくなってきてな」
「ここはほぼ密室だ。煙も籠る。もう少し子供への配慮をしろ。……後、ここでは上官と呼べと言っているだろう馬鹿者」
「ふぅ……了解」
あ、ツバキさんが止めてくれました。どうやら私が煙草の煙に参っていることを察してくれたらしい。ありがとうございます。
□□□□□
さて、では話を戻しましょう。
そもそも私にはある程度の予備知識がありました。……ですがそれは、本当に日常で使うような知識ばかりだったのです。
本は読むためのもの、ペンは書くためのもの、寝室は寝るところなど、そう言った日常生活に支障が出ない程度のことしかわかりませんでした。
ですからアラガミという存在を私は知りませんでしたし、現代の情勢も知りません。私達人類が今、どのような状況に立たされているのかさえも……
「では確認するぞ。今は西暦2069年、昨今も変わらずアラガミによって人類は滅亡の危機に瀕している。アラガミには既存の兵器は通用せず、当時対抗手段を持たなかった人類は一方的にアラガミに蹂躙されていった……ここまではいいか?」
「……はいです」
「続けるぞ。そんなアラガミに対抗するため生まれた組織がこのフェンリルであり、アラガミを打倒するために生まれた人間達のことをゴッドイーター、または神機使いと呼ぶ。お前にわかりやすい例えを挙げるのなら、アラガミはお前が見た異形の怪物達、ゴッドイーターはリンドウ達のことだ」
「だから、リンドウさん達はあんな動きが出来るんですね……」
「そうだ。そして、今の現状は残された人々が"対アラガミ装甲壁"という防壁の内に集まり、アラガミの脅威から逃れている状況が続いている。……しかしそれでもアラガミとは常に進化する生物だ。対アラガミ装甲壁に使われている"偏食因子"をも喰らうアラガミが現れてしまえば防壁も意味をなさず、それ故アラガミが侵入することも少なくはない。その対処として、対アラガミ装甲壁を強化する一方でアラガミから人々を守る為にゴッドイーター達が日夜戦っているのが現状だ。わかったか?」
「………はい」
……正直に言うと、頭が追い付きません。
アラガミ、フェンリル、そしてゴッドイーター……
ツバキさんから告げられた情報は、私の持つ常識を粉々に打ち砕かんばかりのものばかりでした。そんな現状に自然と眩暈がしてきます。
到底信じられない事ばかりでしたが……実際にアラガミに立ち向かうソーマ達の姿を目の辺りにした以上、否が応でも信じるしかありません。私の人生、どうやらハードモードどころの話ではなかったようですね……まぁ私だけがハードモードって訳じゃないんですけど、常識知らずの記憶喪失持ちと言う点を見れば他よりも圧倒的に難易度が上がっているのは確定的に明らかっていう……
「さて、現状の説明は以上だ。本来であればこのまま居住区の方に送られるところだが、お前には現状預かり先がない……そこでだ」
まるで悪夢のような現実に打ちひしがれていると、一旦話を区切ってツバキさんが提案してくる。なんだろう?
「丁度、今は使われていない部屋がある。身寄りのないお前には特例としてそこに住まう許可が下りた。しばらくはこのフェンリルで保護する形になるだろう」
「え……いいん、ですか?」
驚いた。まさかここに住まわせてもらえるだなんて……
話を聞くに、ゴッドイーターは軍人のようなものだ。階級とか部隊とかある辺り正に軍隊と言えよう。だからこそ、何の関係もない一般人(?)を態々引き留める必要があるのだろうか?
そんな私の疑問を目敏く感じ取ったのか、ツバキさんは諭すように語り掛けてくる。
「まぁいろいろと想うところはあるだろう。見たところ、お前は無知であっても無能ではなさそうだからな。……しかし、だからこそ今はゆっくりと休め。いいな?」
「はい……お気遣い、ありがとうございます」
私の心情を察してか、少し穏やかな表情を浮かべながら気を遣ってくれるツバキさん。正直なところ、とてもありがたい話だったりする。
本音を言いますと、未だに私は現状を受け止め切れていないのだと思います。……でも、記憶がないからと今の現状を受け止めないのは、現実逃避した愚か者のすることです。現実を目の当たりにした以上、記憶喪失なんて何の言い訳にもなりません。
ですが……
(これから、どうすればいいのかな……)
それでも、この現実は……過酷すぎるのではないでしょうか?
いつ死ぬかもわからない恐怖。先が見えないほど暗い未来……それらが私の不安を駆り立てます。
私の気持ちは……まだ、まとまらない。
ウサギさんは無能ではありません。ただ、難しいことは苦手です。