どうも、メガネ愛好者です。
事情徴収のその後です。
※一話から四話まで加筆修正しております。よければご覧ください。……といっても、一話から三話は旧一話の三分割、四話は旧二話の序盤の話なのですが……
ですので、覚えている方がいるかどうかはわかりませんが、暫くは何処かデジャブを感じる話が続くと思います。……まぁいろいろと修正入って内容が変わってたりもしますけどね。今回みたいに。
それでは。
「リンドウ、部屋に案内してやれ」
「了解しました上官殿。それじゃあ行くぞ? さっさと休んで落ち着くこった」
「はい……」
ある程度の事情説明を終え、私は用意された部屋へと向かうことになりました。どうやら案内してくれるようです。
リンドウさんの呼びかけに私は重い腰を上げるかのように席を立ち、リンドウさんの後をついていきます。……その間も、私は先程の話を繰り返し思い出していました。
……ツバキさんとの対談は、私に決して小さくない衝撃を与えました。
この世界の過酷さに、私は自然と言葉を失ってしまいます。それ程までに、今の惨状は私の理解の範疇を越えるものでした。とても一人で生きていけるような生易しい環境ではないのです。
……なるべく早く、今後のことを考えないといけませんね。部屋を用意してくれたとはいえ、いつまでもそこに住める訳じゃないことはわかっています。……だから、ここを出た後のことを考えなければいけません。
でも……あぁ、ダメですね、これは……上手く頭が回らないです。
考えても考えても上手く考えがまとまらない。数多くの情報が複雑に絡み合って、自分が何を考えているのかさえわからなくなってきます。
どうしたら、いいのでしょう? 私は、どうしたら……どうすれば……
「あー……おい、ウサギ?」
そんな私を見かねてか、部屋に向かう道中でリンドウさんが私に語り掛けてきました。
「心情は察する、なんて気易くは言えねぇが……あれだ、あんまり深く考えすぎんなよ?」
「……え?」
リンドウさんの言葉の意味を何とか理解した私は呆気に取られてしまう。
考えすぎるな? 一体、どういうことでしょう?
リンドウさんの言っていることの意図がわかりません。そう私が疑問に思っていると、顔に出ていたのかリンドウさんが付け加えるように答えます。
「お前さんがどういった理由であんな場所にいたのかはわからないが……見たところ、お前さんはまだ子供だ。自分の力だけで何かを成すにはまだ早い。それなら、
「——っ!」
……目から鱗、とはこの事でしょうか?
何故、私は一人でどうにかしようと考えていたのでしょう? 明らかに私一人の手には負えない事態だというのに、周りに頼ろうともしないでどうにかしようなどと——
……いえ、わかっています。
何故私一人でどうにかしようと考えていたのかなんて、私自身本当はわかっているんです……
ただ私が……彼等に"遠慮"しているだけだってことは。
(めんどくさい人ですね、私は……)
どうにも私は、あまり人に迷惑をかけたくない性格のようです。それに伴い、どうしても一人で目の前の問題を解決したがる傾向にあるようで……だから無意識の内に頼ることを度外視し、例え相手側が良くてもその好意を素直に受け止められないでいる。
そんな、めんどくさい人間みたいです。
「……いいんでしょうか?」
そんな私だから、リンドウさんの好意を素直に受け入れられないでいる。リンドウさんの気遣いを無碍にしようとしている。過ぎたる遠慮は逆に失礼だとわかっていても、それでも私は……拒んでしまう。
しかしそんな遠慮する私から、リンドウさんは一歩も引こうとしなかった。
「当たり前だ。そんな年から下手に遠慮なんてすんなって。頼れるときに頼っとかねぇと後々苦労するぞ? だから今は、思う存分頼っとけ」
「で、ですけど……私などより優先すべきことはたくさんあると思うんです! 記憶喪失だからって、私が優遇されるのは……違うと思うんです……」
「うーん、こりゃ参ったなぁ……」
どうしても受け入れようとしない私に、リンドウさんは困り顔を浮かべてしまう。同時に、癖なのか自然な流れで頭を掻く仕草を取っている。
ごめんなさい、困らせるつもりはないんです……でも、それでもここで頼ってしまえば……そのままズルズルと頼り続けてしまいそうで、怖いんです。
人に頼るばかりで、自分では何も出来ないだなんて……そんな人間には、なりたくないんです……
そんな私の心情を知ってか知らずか、リンドウさんは一旦話をやめて何かを考えこんでしまう。顎に手を添えて考えるリンドウさんに、何を言うつもりなのかと緊張してしまう私。
「……よし、じゃあこうしよう。ウサギ」
「な、なんですか?」
そしてリンドウさんは何か思いついたのか、私の目線に合わせるよう屈み……その大きな手のひらを私の頭に乗せた。
「ウサギ、お前に頼みがある」
「え……? わ、私にですか?」
「あぁ、お前さんにだ」
「頼みがある」……その言葉に、一瞬ドキリと胸が高鳴った。
何故だかはわかりません。ですが……その言葉はまるで、私が待ち望んでいた言葉のように思えてなりませんでした。私は……頼ることよりも、頼りにされることを望んでいるのでしょうか?
そんな自身の奥に潜んでいた奉仕精神を垣間見た私を余所に、リンドウさんは話を続けていく。
「いいか……今から言うことは、決して忘れるなよ」
リンドウさんは私の様子を伺いつつ一旦そこで言葉を区切ると、私の頭に乗せていた手のひらをゆっくりと動かし始め……そっと一言、私の心に刻み込むよう告げるのだった。
「お前が心から信頼出来ると感じた相手——"パートナー"と共に支え合って生きていく姿を俺に見せてくれ」
「パー、トナー……?」
「そうだ。何だっていい。同性でも異性でも、友人でも恋人でも、上司でも部下でもいい。とにかく「コイツだ」って思えるような相手を見つけて、そいつと一緒にこの世界を生き抜いていく姿を俺に見せろ。いいな?」
「一緒に……」
リンドウさんの頼み……それは、本当に頼みなのかと疑問に思うような内容でした。
私が信頼する誰かと共に、生きていく姿を見せること……それは、本当に頼みと言っていいものなのでしょうか? その姿を見せたところで、リンドウさんの得となることなど何一つ無いように思われますが……
「言っておくが、相手に尽くすだけじゃパートナーだなんて言えないからな? 勿論頼りにされることは大事だが、頼ることだって大事なんだ。どちらか一方だけで成り立つ関係を"信頼してる"とは言わねぇ。相手に頼り、頼られる関係になって初めて
どういうことかとリンドウさんが告げた頼み事を理解するために熟考していると、唐突に私の頭に乗せられていたリンドウさんの手が大きく動き始めました。
「その凝り固まった頭をこうして解すことになるからなー」
「あうあうあうあう~!?」
冗談めかしに告げた言葉と共に、リンドウさんが私の頭を鷲掴みにして揺らし始めます。あまりの揺れに思わず情けない声を出してしまいました。
……と言うか、あの、リンドウさん? これ、解してるって言わないですよ? 揺らしてるって言うんですよ?
そんな指摘をする余裕もなく揺さぶられ続ける私。……うぷっ……あ、あまりの揺れに少し酔ってきました……ちょ、ちょっとストップですリンドウさん。このままだと私っ、女として取り返しのつかないことになりそうです~!
「……うん? おっと、少しやりすぎたか」
「や、やりすぎですよぉ……うぅ、気持ちわるいぃ……」
「ははっ、すまんすまん。どうも加減がわからなくてな」
ある程度揺らしたところで私の顔が青くなっていることに気づいたリンドウさんは、そこでようやく腕の動きを止めてくれました。そしてリンドウさんは目を回している私の姿を見て愉快気に笑います。……なんだか少しイラっときました。こっちは気分が悪くなって辛いというのに……
非難気にリンドウさんへと視線を向けると、流石にやりすぎたことを理解してくれたのか申し訳なさそうに頭を掻きながら謝ってきます。なんだか納得いきませんが……まぁ、一応反省はしているようですし、今回は水に流します。次やったら許しません。
「まぁなんだ。お前さんを見てるとどうにも危なっかしく感じてな。……自分のことなんてお構いなしに無理して、余計に周りを心配させるタイプだ」
「うっ……」
「だからこそ、お前さんにはパートナーが必要だ。無茶するお前のハンドルを握る相手がな。そんな相手がいれば、俺も安心できるってもんさ。……だからこその頼みだ。俺に、お前さんの生きる姿を見せてくれ。それまでは一人で生き急ごうとすんじゃねーぞ?」
「……はい」
リンドウさんの頼みに私は頷くことしか出来ませんでした。ここで渋ってしまえば、それこそ迷惑になると思いましたので……
それにしても、パートナー……ですか……
何をどのようにすればパートナーなのか、漠然とし過ぎて想像もつかないですね……頼りにされるだけでは駄目なのでしょうか? リンドウさんはそれでは駄目だと言いますけど……うーん、難しいです。
「……まだ、リンドウさんがいうパートナーと言う関係がどういった関係なのか、私にはわかりません」
「今すぐわかろうとしなくたっていいさ。時間はあるんだ、焦らずゆっくりと自分が納得いくまで考えてみるんだな」
「はい……ありがとうございます」
「いいってことよ。まっ、人生の先輩のタメになる話だと思ってくれればいい。とりあえずは……そうだな、これからどうすればいいかわからないんなら、いっそのこと周囲の流れに身を委ねるのもありかもな」
「身を委ねる、ですか?」
「おう。いくら姉上からいろいろ教えてもらったとはいえ、まだまだ知らないことはたくさんあるだろ? それなら今は、周りの声を聞くのも一つの手だ。流石に聞いたこと全てを鵜呑みにするのは良くないが、これからのことを決めるのに何かしらのヒントを掴めるかもしれないぞ?」
「……そうですね。まずは、知ることからですよね」
何をするにも、今の私には圧倒的に知識が足りませんからね。自分に出来ることもそうですが、まずは周りの事を知っていかなければやりたいこともやれませんし、私の無知が周りに迷惑を掛けるかもしれません。
リンドウさんの言うよう、知ることから始めていきましょう。それがきっと、今の最善なのでしょうから。
ウサギさんは本能的に奉仕することに喜びを見出すタイプ。そのせいで自分のことを蔑ろにするような子です。
つまり、決して悪人に騙されてはいけないタイプの子です。(フラグ)