不思議な「蒼」の物語。
その幕間の出来事―――
以前から出したかったが皆さんの意見があまりなかったので自分で出してみました(汗
完全自己満足ですがどうかそこはご勘弁…
原作については迷いましたが取りあえずBBの方を…
質問がありましたら…まぁ。お願いします
人間、一度しか体験できないことと言うのは沢山あるだろう。
だが、その中で本当に一度しか体感することのできない事がある
それは生と死。つまり誕生と死去だ。
たった一度しかないのは、それが自分の人生の始まりの合図であり終わりの時でもあるから。死んでしまえば、二度と生き返ることはない。
それはこの世界のいわば理として成り立っている。
世に言う輪廻転生がこの成り立ちだ。
だが
これはその例外として、第二の生を手に入れた一人の少女の物語―――
連合階層都市イカルガ
階層都市と呼ばれるこの地には人々は大地から少し離れた場所での生活を余儀なくされている。
その世界で遡る事、約百年前。
後に『暗黒大戦』と呼ばれる長きに渡る戦争の傷跡が、大地を覆っていたのだ。
『魔素』と呼ばれる物質が大戦後殆どの大陸へと浸透。ごく少量では人体に影響はないものの、多ければ寿命を縮めたりと有害なものであるのには変わりない。
その為、人々は階層都市を建造。安全な生活圏を求めて寄り集まっていった。
その中でイカルガは連合階層都市と呼ばれるだけあって複数の階層都市から成り、階層都市の中でもも特殊なものと言える。
第六都市ヤビコを中心に、イブキド、カザモツ、ワダツミ、アキツとあり、中央政府をヤビコに置き中央集権体制を敷いている。
警備も極めて厳重で統治している組織のとは違う飛行船などが近づけば問答無用に攻撃を受け、落とされる事も少なくない。
ヤビコの地下、と言ってもココだけに限った話ではないが、管理組織である「世界虚空情報統制機構」が統治する階層都市には必ずといっていいほど地下が存在する。
それもただ掘られたりと言ったものではなく、深く。そして統制機構以外の誰にも知らされてはいけない存在を隠すために。
シェオルの門。知る者たちは「窯」と呼んでおり、その殆どの階層都市の地下にはコレが眠っている。
これを破壊するため各階層都市を回っていた者も居るが、その場に集められた三人はその窯を破壊するのではなく
◇
「―――――で、コレを利用すれば…繋がった。そういう訳だな」
「ああ。まだ実験段階だが、それについては間違いない」
大きな空洞の中にある窯はその名の通り地に掘られ安置されている。
しかし、なぜか窯の蓋は開かれておりその下からは灼熱の炎が揺らめいている、筈だったが開かれた窯の上に何かが乗せられ、揺らめく炎は外界へと吹き出る事が出来ない状態だ。
「精錬を行う窯の上に、その効果のみを受け付ける術式を展開。そして、時間軸や干渉率などを設定しそれを誤差修正範囲内で留めさせる。
これで向こう側に
「…それが」
「………次元転移システム。窯を利用し、同じ役割を持つもの同士を介して対象物を送るという、昔の人間が夢物語として語ったシステムだよ」
桃色の髪と途中から二本に分かれた尻尾を揺らし、その奥には半ば嫌そうな顔をした猫目が見える。
身の丈で言えばその場にいる三人の中で最も低いが、反対に年齢的に言えば最も上。つまり長寿なのだ。本人もその自覚はあるのか定かではないが、だからと言って老人や仙人のようなしゃべり方をするわけでもない。
年相応。見た目に反し大人のように落ち着いた風格を持ち合わせている。
第七機関の科学者ココノエは自分の眼前にある窯とそのシステムを前に不本意というのを顔で表しながら眺めていた。
「…なんか随分と嫌そうだな?」
「五月蠅い。私だって、今回の一件が無ければこんなものを使う気もなかった」
科学を主流とする彼女は根っからというわけではないが魔術というのを嫌い、常に科学による解決を行って来た。
しかしそのどれもは失敗や挫折が殆どで、今回もそんな例の一つとして科学ではなく魔術に頼らざる得なかったのだ。科学者である彼女にとってそれは屈辱であり事実でもある。
それでも受け入れなくてはならない。今回は自分のポリシーだのプライドだのを話している時間がないのだ。
「全く…」
「…随分とご立腹だな」
「結局科学の惨敗だからな。ま、失敗は成功の母って言うだろ?もっと前向きに―――」
「その髪、むしり取るぞ」
「ダメだ
「ああ。俺もさっきの言葉でわかった」
ココノエの脅しにビビったのか、自身の頭の毛を触りあるかどうかを確認する。
黒い髪を持つ男は、裏地の赤い黒の外套を纏い、背には得物である大剣を地に刺している。軽々と使うのはできるが普段から持ち歩くほどの物ではないので非常時以外はこうして刺したりしているのだ。
それだけの得物を軽々と振るえる技量を持つ男。
それが世界虚空情報統制機構、近衛師団団長『黒騎士』の二つ名を持つカグラ=ムツキだ。
一見、飄々とした性格に見える彼も二つ名に違わず高い実力を持つ人物で、曰く「男が開いてなら素手で勝てる」らしい。
その自信が事実かどうかは定かではないが、その実力と人望故に彼は今回のような
それが今、彼の隣に立つ初めての弟子だ。
「取りあえず、装置についてはアイツに任せて…」
迂闊に話せないと分かり、目を弟子である
立ち姿こそ出会った時となんら変わりはないが、今となっては見違えるように強くなったと言える。それも彼仕込みの技術などを盗んだり自分で身に着けたりしたからだ。
タダの石っころだと思っていた物でも、時間をかけて磨けば中にある光り輝く鉱石となる。改めて彼女を見てそう思ったのか気づかずに前を向く愛弟子の姿を見て小さく笑いだす。
「…ぷっ」
「ん?なんだよ、師匠。唐突に笑い出して」
「いや、なに。弟子の顔があまりに子どものように燥いでたからな。その見た目と違って」
「マコトに言いつけっぞ」
「やめてくれ…アイツ、バールで殴ってくるから…」
しかし。それでも意味はあったのだろう。
最初こそ断っていた彼も、いざ今となって見ればいい思い出だ。
ある意味、自分の隣にはその集大成が立っていたのだから。
「お別れってワケでもねぇが…弟子が去るってなると寂しいモンだな」
「………。」
「…なんだよ。急に黙り込んで」
「…いや。明日、イカルガは霰かなって」
「お前…」
素でボケたのか。それとも本心でそう思ったのか。
兎も角、自分がそう言い出すのが意外だったのだろう。
だがいくら何でも霰はねぇだろ、と突っ込むカグラに弟子である彼女はにやけた顔で答える。
「なんだ。ナンパの練習台がしばらく居なくなって困るか?」
「―――そんなんじゃねぇよ。ただ本当に、弟子とのしばらくの別れに興じてただけだ」
「………。」
「―――怖くないか」
「ッ…」
「行くのはお前の居た世界。だけど、向こうじゃお前は死人だ。死んだ人間が現れたらどうなるのか…」
「分かってるよ」
死したる者が、その世界に蘇ればどうなるか。祝福する者だって中にはそんな物好きが居るのかもしれないが、結局大多数は死した者を拒絶する。
死んだ人間だと、もう二度と会えない人間だと割り切り受け入れたからだ。
二度と会えないからこそ。もう二度と顔も声も見れないからこそ、命の尊さを知り前に進める。
なのに、その死んだ人間が生き返ればどうだろうか。
死した人間への冒涜か。それとも今を生きる自分たちにとっての害悪でしかないのか。いずれにせよ、拒絶されるという事には変わりないのだろう。
しかし。それでもだ。
「アタシは死んじまった。けど、それは向こうでの話だ。今の自分はこうして息をして、心臓を動かして生きている。それだけは確かな事だ」
「………。」
「だから。今のアタシはあの世界に居た時の
彼女の決心にカグラは真剣な眼差しで受け止める。
その意思は曲がらないんだな。と訊ねるといつもの見ていた笑顔で、ああ、と短く答えた。
それ以上は付け足す言葉は要らないと彼女がそう判断し、それを知ってくれるだろうと理解していたからできる事で互いに互いの事を分かっていたからこそ、彼女はそう答えたのだ。
「…流石は…だな」
「ん…?」
「……なんでもねぇよ」
「仲良く感傷に浸っているところ悪いが、準備ができたぞ。あまり長い時間開けんから、さっさと入れ」
準備を終えたココノエが間に水を差すように割り込む。二人の会話が不快だったのか、それとも単に嫉妬しているだけか。いずれにせよ彼女が嫌うシステムの用意ができたのは事実だ。
軽口で返答する二人は互いに目を合わせると窯の上に置かれている装置へと近づいていく。
装置で転移するのは二人かと思うが、現状の状態では一人跳ばすので精一杯らしく、ココノエも面倒であるのと調整に多大な時間を要することから好ましく思っていない。
そもそも。この装置は不明な所が多く、判明していることも「窯のエネルギーを利用している」事と「動力源の多くは魔素も補助として使われている」事。そして「これが次元転移を行える」ということの三つ。
具体的な方法や制御などは時間をかけて判明した事だが、まだ未解明な部分も多い。
しかも装置の大きさや起動までの長い手順などから更に時間が浪費される。
そんな確証も根拠もないものを使うなど誰だって進んでする気はないという事で、ココノエはもうやらない、と言い出したのだ。
「そうは言うけど…帰って来た時に開けてくれよ?」
「…気が向いたらな」
彼女の返答にもし失敗などをした場合化けて出ようと決心する。
いくらこの世界で自分の命を救った恩師と言えど、それだけは話は別だ。
「―――なら、戦利品として向こうの高級チョコを買って来い。それで我慢してやる」
「………さりげなくえげつない物を…」
煮えたぎる業火の上に立つ冷たい無機物の円盤の地。
そこに薄青い色の線が引かれ始め、幾つもの線はやがて一つの形を形成する。
俗にいう魔法陣。それもかなりシンプルなもので六芒星の中に細かく読めない文字が刻まれるというものだ。
やがて、陣が完成するとその中だけが別空間であるかのように光る粒子が現れては消え始める。曰く、あれが補助の魔素であそこのみがそれを使用し『術式』を持つ者たちが通りやすくしているのだと言う。
「―――起動完了だ。後は」
「アタシが陣の中に入るだけッ…!」
陣へ飛び込んだ彼女の姿を見て怖い物なしのように思えるが、見ていた二人からすればただの考えなしのような入り方で特にココノエは勢いよくは言って行った彼女に一度は止めようと声を出そうとするが、別にいいか。と見捨てたように見ていた。
なんとなし、生きて帰って来そうだと思っていたからだ。
「で。どうすりゃいいんだ?」
「陣の中心で術式を開け。それで対象の設定は完了。あとはお前が跳ばされるだけだ」
どこか言葉に不安さというより虚実が混ざっていそうに思える顔と話し方に信じきれないが、それが確かであるのは試したら分かる事。
右手を出すと冷たくも暖かいという矛盾した感覚のある装置の上に置く。
そして―――
「……………!」
静かに。されど力を込めてそれを一気に右手に集める。
魔素によって起動した術式は手のひらに乗りそうなサイズになると、装置の中へと溶け込んでいき転移を行う対象を認識する。
術式は人によって様々という事から恐らくセキュリティのような役割を果たしているのだろう。
いずれにせよ、これで彼女が転移可能となり次第にだか意識が薄れ始めているのを感じ、ココノエたちの方へと振り返る。
「あとは向こうに付いたら連絡しろ。こちらで帰りやサポートを行う」
「これ大丈夫なんだろな!?」
「さてな。私も始めてだから失敗するかもれしないし、もしかしたら…」
「な………!?」
「ま。何事もやってみなくては始まらん。もしお前が境界に放り込まれたら、その時はサルベージしてやらんでもない」
「殺す気か!!?」
眼をココノエからカグラへと移し、失敗した時は頼むと目で訴えるが
「がんばってこーい」
当人は見ているだけだったのでかなり軽い言葉しか返ってこなかった。
あまりに軽く無責任な彼に思わず叫んでしまうが、何も本当に考えもなくそう言った訳ではない。
「―――帰って来いよ」
その言葉はどういう意味で言ったのだろうか。
そのままの意味か。それとも何か別の意味があるのか。
いずれにせよ、それはこの場で叶う事はなく彼女の体は殆ど消え、残るは顔と上半身半分となった。
「また会おうぜ。奏」
「………ああ」
カグラの言葉に信用を置いたのか、天羽奏はそのセリフを信じ姿を消していった。
『…おい、ココノエ』
「なんだ、テイガー」
『突然、お前の部屋にある機材が一斉にフリーズとオーバーヒートを起こしたぞ』
「何い!?」
これには隣で聞いていたカグラも思わず笑い吹かしたが、直後その意味に一抹の不安を抱いた、というのは彼の考えすぎなのだろうか。
A.D 20XX/??/??
何時かの時
何時かの時代
何時かの場所
そんな何時かの世界の中で、物語は動き出す。
◇
なんて事のない日常だった。
いつもの様に朝起きて。
いつもの様に学校に行き。
いつもの様に友達と言葉を交わす。
ずっと続くと願っている、そうであると思っている
そんな日常が続くハズだった。
ある日、少女は夢を見た。
自分の大切な人が大きな敵と戦い、そして傷ついていく。
だがいつも逆境で奇跡が起きて来た。
いつも仲間たちのお陰で戦えてきた。
帰る場所を守る自分が居たからこそ出来た。
―――なのに
―――なのに、どうして
夢の中で少女は問う。
夢である筈なのに
現実でもない事なのに
それが起こると、決まったわけでもないのに
なぜかそれが現実と思ってしまう。
絶対に起こるという、誰かからの宣告。絶対に避けられない運命。
大切な人たちが死んでいく様を
世界が滅びゆく光景を
「―――はぁ…はぁ…はぁ…」
息を切らした少女は眼前の敵を睨む。
仮面をした金髪の男が不適な笑みを浮かべて手を顎に添えて考えるようにしている。
小さく、ふむ、と呟く様はまるで実験か何かを見ているように思える。
…いや。実験をしているのだ。彼にとって。戦いとは実験でしかないのだ。
「―――なるほど。これが、か…だが聞いていたよりは存外呆気ないものだ。適合者所以か」
冷淡に語るセリフは今の戦いで彼が分析しはじき出した結果だ。
ただし戦ったのは彼ではく、その隣に佇んでいる一体の人形。薄い紫の色を基調とした腕の長い人型は人の型を取った通り無表情をして少女を見ている。
機械仕掛けに何を言っても無駄なのだろうが、それがどうしても彼女にとってはストレスでしかない。
戦ったのはタダの人形だというのに、その人形にここまで追い込まれてしまった。
「他の適合者も調べたいところだが…まずは
そう言って目を落とす先には薄紫の人形の小脇に抱えられた少女が気を失っていた。
突然の邂逅と、それによって発生した戦闘。ここでの戦いは二度目で、一度は彼女を奪われる形で持ち越し。そして二度目は現在彼女らがいるライブ会場。
どちらも一方的に彼女が敗北するという状態で体力的にも継続は難しい。
体中に傷ができ、呼吸も荒くなって地に足を付けている。
これ以上の戦いは恐らく不可能だ。
だが。
「ッ…まだ…終わって…!」
「………。」
それでも立ち上がる。
大切な者を取り返すために。
何度も奇跡を起こしてきた。けどそれは何度も自分が立ち向かったから、応えられた結果だ。何もしなければ何も応えることなど出来はしない。
だから彼女は立ち上がる。奇跡のためではない。
ただシンプルに取り戻したいから。
「返して…未来を………!!!」
「…なるほど。精神的なファクターか…。だがそれだけでは不十分だ本来の性能を私は見たい」
「性…能……?」
「だが。それでも実に面白い。本来の使い方と違うが…武器がなくとも戦える所以…
それもまた一つの結果か…」
「ッ…」
「ここまでの変化を見せた聖遺物…なるほど。興味がある…」
「ッ…貴方は…一体…!」
「後はもう一つ。天羽々斬があればいいが…あれは今、テストの最中か」
「な…!?」
仕方がないと諦めたのだろうか。しかしそれでも表情が変わる事はなく、男は少女を観察していた。
彼女がこれだけ驚いているというのに彼は笑いもしなければ煽りもしない。ただ淡々と彼女の姿、形、言動、行動を捉え、解析し観察するだけ。
無情の機械のような眼差しは言葉とは裏腹に何も興味を持ってなさそうな感触で、仮面の向こうからだというのに直感で感じ取れた。
「ではもう少しだけ…その性能を見せてもらおう。ガングニールの奏者」
立花響は疑う。
彼の言動、表情そして態度。
冷静なまま、何も思わず、ただその結果にだけ興味を持つ彼はあらゆる意味で彼女の考えを凌駕していた。
まるで『人を人と認識していない』。
自分を研究動物か何かと見ていると途中から考えたが、彼の物言いはそんな生易しいものではない。
自分は研究動物ではなく、ただの研究対象。つまり『物』だ。
彼はただその対象に何の価値も持たず、外見や肉体、精神には見向きもしない。
彼が今まで見ていたのは『物』が発した『音』とその性能だけ。初めから『立花響』という人間に何の興味も
いや。そもそも、彼女を人間として認識していなかったのだ。
それに今更だが気付いた彼女はそうして平然と見る彼の姿に悪寒を覚える。
人間的に破綻している。それが彼に対する全てだった。
「いけ。イグニス」
「ッ―――!」
淡泊に命じられた事を従う人形イグニスは舞う。
脇には彼女の大切な親友である小日向未来が居るというのに、気にも留めず動くその速さは何度見ても慣れるものではない。
ホバー移動で動くこともあってか変則的な移動で錯乱し肉薄する動きは目で追うのがやっとで体がそこまで付いて行くにはもう体力的に限界だった。
「っああああ!!!」
それでも雄たけびのように声を上げる響は体に鞭を打って立ち上がらせ、全身に力を入れる。体は悲鳴を上げているが、そんな事を言っている場合ではないと叱咤し無理やりにでも体を動かすその姿は、もはや気力だけが頼りであると見せていた。
それ故に崩れるのは実に用意で呆気なかった。
次の瞬間、イグニスが空いた方の腕で彼女を薙ぎ払うと、まるで紙が飛ばされるように弾き飛ばされる。
「ッ―――――!!!!」
もう立っているだけの体力もない。
実験と銘打った最初の交戦で響はイグニスに圧倒されてしまったのだ。
それ故、まともに対人戦を行ったことのなかった事と無情な人形と戦ったことのないという二つのハンデから余計に体力は消耗。ココに来るまでに走り抜けたこともあり立つことがもうやっととなってしまった。
「かっ…かはっ…」
『………。』
「構うなイグニス。続けろ」
『………。』
間を置かず言ったレリウスの命令に従い、イグニスは片腕で軽々と響を持ちあげる。
先ほどの一撃で胆を吐いたがそれだけでも息苦しくなった彼女は、もうイグニスに抵抗できる余力は残されていなかった。
「がっ…」
「…奏者が戦意を失わぬ限りは纏われ続ける。なるほど。いい例だ」
しかし。それでも観察に意味はある。
興味深く彼女の姿を観察するレリウスは戦う武器と言える聖遺物「ガングニール」を見て呟く。彼にとって興味があるのは自分の研究対象成り得るものだけ。
つまり、彼女が纏う聖遺物はそれに足り得るものであって、彼女本人はどうでもいいという事だ。
ただ彼女が奏者であった。ただそれだけなのだから。
「み、未来を…」
「………。」
「かえ、せ…」
掠れた声で言う響の言葉に耳を貸すが、レリウスは何も答えもせず感情ももたない。
ただの言葉であってそれ自体になんの意味も興味もないのだから。
「…まだ価値はある。イグニス。殺すな」
『………。』
実験対象としてまだ利用する価値はある。その言葉に一度は助かったと安堵するが、それでも状況が絶望的なのは変わりない。
このまま殺されることはないが、何をされるのか分かった物ではない。
さてこのままどうなるだろう。無意識にそう思ってしまった響は自分事ながら呆れてしまう。
(ああ………私、呪われてるかも…)
久しぶりに思えた事に理由はない。
ただ自分の運命が、どこかそう思えてしまった。
「―――また諦めるのか?」
何処かで聞き覚えのある言葉に響の意識は呼び覚まされた。
次の瞬間。彼女を掴んでいた筈のイグニスは突如彼女を手放しその場から数歩後ろへと下がっていく。
そこに訪れた攻撃。それを掴んでいた腕で防ぎ、牽制するためだ。
「ッ…!」
続けて振り下ろされた攻撃に数回ほど受け流すと、イグニスは隙を見計らって距離を取りレリウスの下へと戻っていく。
突然の奇襲にそれしか対応する事ができなかったようで、その為か片腕にはある程度のダメージを負ってしまう。それにはレリウスも眉を動かし対象を響から『何か』に移す。
一瞬の事。彼の口元はつり上がり、ぽつりと呟く。
「ほう…相変わらず…大したものだ」
「…当然。お前らに引けを取らないように、仕込まれてるからな」
「…だが用はない。興味が尽きた」
「尽きる尽きないは…まだ決めるにゃ早いぜ。レリウス」
断言するレリウスの言葉に一笑する。
奇襲からの連続攻撃を行っても息を切らすどころか呼吸の乱れもなく、高速と呼べるような攻撃を行ったのか得物の槍からは白い摩擦熱が燻らせている。
不適に笑みを浮かべる相手を見て、レリウスは、ほう、と頷く。
確かに奇襲とはいえ、イグニスにダメージを負わせた。今までダメージは負っても直ぐに修復可能なレベルがほとんどでそう呼ぶには及ばない状態だった。
だが、今回の攻撃では片腕から黒煙が出ており、鼻も焦げ臭さを少々におっていた。
「…穿つは心臓。狙うは…テメェの首だ」
その瞬間。響は夕日に目を細めながらもその姿を目に焼き付けた。
羽のような赤い髪。片手で軽々と持つ槍の形状は特殊で、刃の部分は柄の部分よりも大きい。
すらりとした体つきとそれを振るう彼女の声。
全て、記憶の奥底から呼び覚まされる。
「ッ…う、うん…」
「人質取るなんざアンタらしくもねぇ。大抵そういうのって相方頼みじゃなかったか?」
「ハザマはここには居ない。あの男にとって興味がないようだ」
「…そうかよ。別にいいけどな。二人相手にするのめんどくせぇし」
気を失っていた未来も目が覚めると、真っ先に入って来た光景に自分の目を疑う。
これが現実なのか。こんな事があり得るのだろうかと。
彼女たちの目の前に立つのはかつて死んだはずの人間。
その彼女が、今こうして悠然と立っている。
それが本当か嘘かを考える余裕は、今の二人には持ち合わせるどころか暇もない。
ただ。その中で唯一確かな事は
死んだはずの奏が居て、自分たちを助けてくれているという事だ。
◇
二つの世界が交差する。蒼と歌の物語。
生と死
過去と現在
今、二つが交わる。
「どうして…奏さんが…?!」
「まぁ話せば長くなるっつーかなんつーか…」
「死にはしたさ。けど…アタシは蒼によってこの世に引き戻された」
「蒼…? 奏、蒼って一体…!」
『レリウス大佐が捜してるのって、何?』
「さてな。けど、あの仮面が捜すものだ。ぜってーロクなモンじゃねぇ。だから…」
『任せといて。このマコト=ナナヤが突き止めてみせよう!!』
「ああ…うん」
『ちょっ、もしかして信じられてない?!』
そして、物語は深く、交わりを始めていく。
「そういえば、お前も第七機関の一員だったな」
「やれやれ…また面倒な奴が来たモンだなぁ!」
「多分変わりないんじゃないかな。向こうでも誰かのために頑張り続けていたし…というか、彼のため…かな?」
「彼………奏の………彼……氏……???」
「な、なんか翼さんが黒くなってきてる!?」
「お前が暴走した時と似たような感じになってんな…」
「なんかアタシ地雷踏んだ!?」
「あれ。奏さん、ここって…」
「ゲッ、セリカ…」
『遂には次元越えてか…』
「ウチの奏がお世話になったな…」
「ああ。全く、勿体ないヤンチャ娘だよ…」
「…オイ、ヒビキ。アレ止めろ」
「嫌です。アレ面倒ですので」
「秘書官が真っ先に仕事放棄してるわよ…」
「ふむ。天羽々斬か…」
「貴様…その娘は一体…!?」
「実験だ。戦闘を始めろ」
『―――。』
「この世界にある力…それには興味ないですが…見てみたいんですよ。この世界が、あちらの世界と共に崩壊する滅びの様をなぁ…!!」
「テルミ…テメェ…!!」
「極簡単な話だったんだ。この世界に跳べたという事は窯と同じシステムがここにある」
「…それってまさか…」
「あの跡地…ですか…」
「やれやれ。あの女、一体どこまで隠していたんだ…!」
「顔無しの侍…お前が、奏の言っていた…!」
「…見せてみろ。多くを守る防人の力を…
我が名はハクメン。押して参るッ…!!」
「別に世界がどうなろうと知ったこっちゃねぇ」
「…ああ。それはアタシも同感だ」
「…だけどな」
「「テメェだけはぜってーぶっ倒すッ!!!」」
「良いぜ…かかって来いよ、三下ども…二人纏めてあの世に送り返してやんよ…!!」
「
「全ては蒼によって引き起こされた出来事。これは、タカマガハラでさえ干渉できない事象。それは貴方も同じよ、帝」
「だからだ。我はただ傍観する。奴らがどう足掻こうと
滅びゆく二つの世界の様をな…」
オマケ。
「ええっと…ノエル…?」
「なにを…作ろうとしているのかな…?」
「え?お好み焼きっていうのを…」
「生きる事を諦めるな!?」
「まだ死ぬには早いよノエるん!?」
「アレ、私ってそんなに酷い!!!!?」
「一緒に、幸せになろう……………ね―――――」
「………。」
「つ、ツバキ…」
「ええっと…ツバキ、その…」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!?!??!?!??!」←すっごい赤面
「拙者は、愛と正義の咎追い、シシガミ=バングッ!!いざ、尋常に勝負でござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「よし。立花、出番だ」
「お前適任だろ」
「ちょっと、二人とも!?」
「ちなみに彼の汗が染みついた体で近づいたら境界に叩き落すから覚悟しなさい」
「…ええっと。彼、そんなにむさ苦しいの?」
「一年はニオイ取れねぇと覚悟しとけ」
「………。」
「どうしてこーこの世には絶対一人むさ苦しい奴が居るのかね…」
「その人と兄弟弟子だった貴方が言いますか」
その弐。
奏の設定云々…
分かりやすく事の経緯を説明すると…
シンフォギアの世界で死亡(無印第一話にて)
↓
その後、ギアと蒼の影響(らしい)で境界に飛ばされるが後にココノエにサルベージさせる。
(この時点でCT開始前、ハクメンがサルベージされた後)
↓
苦節色々とあったが、後にカグラの弟子に。その為、彼女はイカルガに行き修行を積む。
この時に術式を入手し武器も新造して貰った。
↓
CT及びCS終了。戦いの舞台がイカルガになり、自ら戦いの場に身を投じる(CPスタート)
しかし要所要所では別行動のため本編との関わりはあまりない。
↓
CPとは似て非なる物語となって進行。その間にココノエが転移装置を修復し奏を元の世界に『送り込む』。
尚、その前にレリウスが転移するが方法、目的共に不明。
↓
今に至る。
ちなみに途中で端折っていますが一応の所属は統制機構ではなく第七機関。
これはサルベージされた事と本人が脱走したことによって始まったいざこざからココノエに出された取引によって彼女が第七機関、ひいてはココノエの部下になるという事になったから。
この為、テイガー、マコト。そしてノエルやアズラエル等の第七機関関係者とも面識を持つ。特にアズラエルとは敵対関係を持つ。
ノエル、マコトとは歳の差なのか、さん付けで呼ばれており仲はいい。
外部の人間との関係ではラグナと邂逅し奇妙な関係を持つ(決して恋愛関係ではない)
それに嫉妬してジンには一方的に敵対心を向けられ、更にそこからセリカとも顔見知りの関係。
カグラとは師弟関係で最初ことすれ違いなどがあったが、本編開始までには良好な関係を築いている。その為ヒビキとも軽口で話す仲で共にカグラの事でため息をついていたりする。
専用武器「ボルグ」
奏専用に作られた武器でココノエが考案、製造を行った槍。
流石に事象兵器ではないがデザインが元々彼女が使っていたガングニールの槍を模しており、ドライブを効率的に扱えるようになっている。内部にドライブによって発生したエネルギーを貯蔵。発動時に消費する。
ちなみに殆どがチタンなどの素材で出来ており、かなりの重さになっている。
格ゲーとしての性能(ただしかなり大雑把)
モーション、構え等は全てカグラに似たり寄ったりだが「構え」キャラでないのは確か。
ただしその分火力は下で手数とリーチ攻めが基本。
対空はドライブのみでDDは全て対地。
ドライブ技 「ビートソウル」
通常ゲージの上に専用ゲージがあり、ドライブを打つごとに溜まっていく。
最大10。DD発動にはこれを消費する。なので普通のゲージは完全にAH専用となる。
DDはそれぞれ2、3、5と消費されODは7。AHでは最大まで溜めて尚且つゲージをMAXにする事。
そこ。産廃とか言わない。
威力は増えるごとに上がるがその分繋げにくくなっているので基本は〆担当か。