体重が減ると体が軽く感じるはずなのに、血が体の外に流れて体重は軽くなったのに体は重く感じるとはこれ如何に。

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続く現実

体重が減って体全体が軽くなった、と誰かが言った。

 

それを俺は当然の事だと思っていた。

 

 けれど、今の俺の体はどうだろうか?血が大量に体の外に流れ出した事により体重自体は軽くなっているはずだ。しかし、どうしてだろう。こんなにも体が重く感じるのは。血が流れる度に段々と体が重くなっていくのが分かる。

これは、理不尽ではないか、と思った。体重が減ったなら体は軽く感じるはず、それが普通だ。

 

息を吸った。

 

痛む傷口を押さえながら足を動かし、前に進もうとする。

 

バランスを崩してこけた。

 

 傷口が痛すぎて、この状態で歩くのは無理だと思った。痛みを我慢して歩くのはいくらなんでもきつい。少し考えてから、歩くのをやめようと思った。歩けば、バランスを崩しこけるし、まさかこのまま死ぬことはないだろう。 

 

 楽観的と言えるだろう。しかし、体が重くなっている今、考える余裕がなかった。だから、安直で魅力的な考えに取りつかれた。

 

目を瞑った。

 

次に目が覚めたときはきっとベッドの上で横になっていることを信じて・・・。

 

 

 

 

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目が覚める。

 

上半身を起こし辺りを見回す。いつもの見飽きた自分の部屋だった。

 

 体全体を触って、安否を確かめる。傷がなくなり、体がいつもどおりに戻っていることに気付く。

 

しばらくして、視線を近くにある目覚まし時計に向けた。

 

8月9日 木曜日 午前9時20分 を示していた。

 

起きたばかりなのにやけに冴えてる目を虚空へと向けながら思う。

 

実は、傷の事などの出来事は全て夢だったのではないか。

 

 正直なところ、そうであって欲しい。なにしろすべてがあまりにも荒唐無稽だ。何故か重傷を負っていた自分と傷がなくなっていたこと。自分が見たことや感じたことは全て夢。物的な証拠はゼロ。とどめに目を瞑ってからの記憶が途切れている。

 

誰かに話したところで、信じて貰えないと思う。

 

もし、誰かにそんな話をされたら、信じないと思う。

 

あれは夢だった、そう考えた方が安心できる。

 

 わけのわからない出来事が自分の身に起こっていたのだ、と思うよりははるかにマシだ。

 

そんな思考の泥沼から抜けた先にあるのは、夏休みということで暇になった現実だった。

 

わけのわからない夢から目が覚めてもやる事はいつもと変わらない。朝ご飯は食べずにTVの前に座り、家庭用ゲーム機であるP〇3を起動し、いつもやっているゲームをやり始める。コントローラーを滑らかに動かし、この世界のどこかにいるであろうプレイヤーと銃を撃ち合う。しばらくすると、自分の操っているキャラクターのレベルが上がり階級も一つ上になった。それに少し気を良くしながら、夢のことを忘れるようにゲームを続けた。

 

随分と時間が経った。

 

目と手に若干の疲労を感じながら時計に目をやる。

 

8月8日 木曜日 午後5時18分。

 

 近くにあったウーロン茶を一気に飲み干し、「さて」と勢いをつけて立ち上がった。テーブルの上に置いてあった財布をポケットの中に入れ、玄関へと歩いていく。

 

ドアを開けて外に出る。

 

階段を下りていく。

 

マンションのエントランスに出た。

 

目を凝らす。

 

人がこちらに向かって歩いている。

 

こちらを見ていた。

 

エントランスから出る。

 

視線がぶつかり合う。

 

危険を感じた。

 

 歩く速度を緩め、こちらへとゆっくり向かって来る人を睨みつけながらゆっくりと自然に弧を描くようにその者を避ける。

 

しかし、その者は足を止め、こちらを見つめてくる。

 

少女の横、といっても距離は5m位あるのだが、そこを通ろうとする。

 

緊張が走る。体が強張る。目を離せない。

 

しかし、あっさりとその者の横を通りすぎる。

 

その者との距離が離れていくごとに心に安心感が募っていく。

 

 ふと気が付くと目的地の方とは別の方へと足が動いていた。それを修正し、目的地への方へと足を向け。逃げるようにして、その者から離れていく。背中に視線を感じながら。

 

一時間ほど時間が経過した。

 

 目的地のスーパーへと赴き、今日の夕飯の食材を買い、自分住居であるマンションの前へと帰ってきていた。右手に食材の重みを感じながら、マンションのエントランスに向けて足を動かす。マンションの中へ入れば自分の部屋はすぐそこだ。エントランスにある階段を上り左へと曲がり歩いて約12歩の208号室。そこが俺の部屋だ。

 

しかし、その足はエントランスに入って少し先で止まる。

 

さっきの人がいた。

 

あまり広くないエントランスの中にいた。

 

先程と同じようにこちらへと視線を向けていた。

 

 何か言っている。こんにちは、そう口元が動いている。言葉は聞こえない。右手に持っている食材の重みも感じない。そのくせ、自分の声は、ゆっくりと初めて口にするような言葉をしゃべっているような声は、はっきりと自分の中へと響いた。

 

「こんにちは」

 

そうじゃないだろう、と心の中で思った。

 

頭の中で今日の夕飯のメニューの調理方法が実演されている。

 

その者は挨拶し、にっこりと微笑を浮かべこちらへと歩いてくる。

 

 そして、エントランスの自動扉の前で身動きもままならない自分を、じっと見つめてくる。

 

考えてみれば当たり前だと思う。

 

あんな傷の痛みを体の重みを夢で済ませられはしない。

 

夢が終わると同時に、現実になるわけではないのだ。

 

現実は、しばらくは続くのである。

 




荒地のモタモです。
他の面子が何故か謎の小説を書き始めたと聞き。止むを得なく自分も書き始めました。何が書きたかったのか、とかどうしたいのか、とか特に考えずに書いたので大目に見てもらえると嬉しいです。

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