リボーン×ニセコイ!-暗殺教室~卒業編~-   作:高宮 新太

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標的10 Consegna delle lauree (卒業)

「・・・・フウ」

 目の前にいたのはフウ。ただ適当に気の向くままに歩いていたのにどうしてか、エミーリオの目の前にその少女は現れた。

「アンタ、なんで学校来ないのよ。このままじゃ卒業できないわよ」

「はっ。お前がそんなこと言いに来るなんてな。仲良くでもなったつもりかよ」

「は?」

 その言葉にフウの顔は曇る。怒っていると彼は嫌でもわかった。

「・・・・・・別に、アンタが来ないと「ハルが悲しむ、か?」

 フウの言葉に彼はかぶせる。わざと、怒らせているようだった。

「なにアンタ、反抗期かしら?」

「どうとでもいえ、学校には行ってやる。そうディーノにも伝えろ」

 あっさりと、フウの言葉を聞く彼にフウは少し拍子抜けだった。

 彼に、執着はない。行きたくなければいかないし、行けと言われれば行く。そんな人間だった。彼は。

(どうせ、そろそろ来る頃だろうと思ってたけどな)

 フウが来るとは、想定外だったが。

 彼は頭の中でそう付け足し、夜の街へ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぜ、思い出したりしたのだろう。過去のことを。

 もう、過ぎたことなのに。未だに引きずっているとでもいうのか。

 あんな些細な一言、鶫が言った一条楽の幼き日の出来事に感化されたなんて笑えない。

 彼は、目を覚ました。

 久々に家に帰って、学校に行く支度をし、物がない家を出る。

 今日は並中の卒業式だった。

「おっ。来たか」

 教室の扉を開けると、跳ね馬が出迎えた。快活な笑み。いつもの爽やかな笑顔だ。

 見ると教室には自分以外の人間はいない。跳ね馬と二人だけだった。

「アンタだろ。フウをよこしたのは」

「・・・・フウ?」

 なんだ?と、彼は目を細める。てっきり、ディーノが自分のところに彼女を寄越したのだと思っていた。学校に行かせるために。

 だが、ディーノの反応はなんの話題だと心当たりがない。

「まあ、なんにせよ。今日くらい大人しくしてろよ。もう並高いったら俺はいないんだからな」

「別にお前がいようといまいとどうでもいいが、どういうことだと一応聞いてやる」

「そろそろイタリヤに帰んねえと。仕事溜まってんだ」

 ポリポリと頭を掻くディーノに、彼は適当に相槌を打つ。

「————————頑張れよ」

「はあ?」

 一瞬何のことかわからずに、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 が、任務のことを言っているのだと彼は当たりをつけ。

「ああ、はいはい」

 やはり、適当に相槌を打つのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、卒業式は開式した。

 ハルと、フウと、そしてエミーリオ。自殺未遂を起こしたメガネの男も、クラスメートも、跳ね馬も。みんないる。

「続きまして、理事長からの祝辞」 

 理事長、理事長といえば雲雀恭弥だ。

(・・・っはあ!?)

 頭にその名前が浮かんだ瞬間。彼は座っている椅子からずり落ちそうになった。

 あの人が、祝辞とか読むタマか!?

 想像できないような、案外まともにこなしそうな。

 どうなるのか彼は初めてこの卒業式に一抹の興味を抱きつつ、スーツ姿の雲雀恭弥が壇上に上がった。

「————————君たちは、もう今日この日から並中生ではない」

 あれ?始まりは意外とマトモだと、彼が思った瞬間。

「だから、次僕の目の前で群れてたら容赦なく”咬み殺す”からね。気を付けておくように」

 違った。やっぱりマトモじゃなかった。やっぱり雲雀恭弥は雲雀恭弥だった。

 そんなトラブルは起きつつも、和やかに卒業式は終わる。

 

 

 

 

「フハハ。貴様もこれでようやくお嬢の任務から逃れることはできなくなったな。今までサボってた分を取り返してもらうぞ」

 卒業式も無事終わり、さあこれでようやく束縛から解放されるとエミーリオが大きく伸びをした瞬間、目の前に不敵な笑みを浮かべた鶫が現れる。

 ちなみに、校門前である。どんだけ任務やらせたいんだこいつは。

「・・・・・」

「そんな嫌そうな顔してもどうにもならんぞ!ここで会ったが百年目だ」

 勝ち誇ったかのように見下ろす鶫に。

「いやー、悪いなー今から送別会なんだよー、いやほんと、わるいけど一人で行ってくれ」

 そんな鶫に対して彼も不敵な笑みで返す。送別会なんぞに興味はないし行く気もないが、桐崎千棘の任務に駆り出されるより数倍マシだ。 

「おーい!エミー君!」

「悪いな。呼んでるんで、じゃ」

「ぐぬぬ」

 悔しがる鶫の顔にあっひゃっひゃっひゃと高笑いして去っていくエミーリオだった。

  

 

 

 

 

「で?どこに行くんだ」

「すぐそこだよ、お寿司屋さん」

 まあ、送別会などフケてもなんら影響はないが、鶫の手前店に入る姿勢ぐらいは見せておいた方がいいとエミーリオは結論付けて、ハルについていく。

「へえー、寿司か」

 そういえば日本に来てからまだロクに日本食というものを食べていなかった気がする。

 まあ、ちょうどいい機会だと、彼の心は寿司一色になった。

「ほらここだよ!」

「・・・・うん?」

 そこは『竹寿司』と書かれた寿司屋さんだった。

 物凄いデジャブ。

 物凄い嫌な予感。

「へい!らっしゃい!」

 しかし、彼はそんな予感を振り払うように勢いよく扉を開いた。

「しししっ♪おっちゃん、大トロ」「ベル、いい加減にしてくれ。僕の奢りだからって」「だって、マーモン賭けに負けたじゃん♪」「せんぱーい、ミーのマイ醤油とってくださいー」「お前のじゃねえだろ」「大体!キミの分は僕は奢る気はないからね!」「いいじゃないかチビッコー、お金いっぱい持ってんだろー」「ちょ!触るな!グリグリするな!ベル!」「しっしっし♪」「ちょっと!あんたあの時校内でナイフ投げてた不審者でしょ!?」「なーんかうるせえコバエがいるんだけど?フラン」「駄目だよー?不審者じゃなくて先輩は駄王子って言うちゃんとした名前があるんだから」「それ名前じゃねえだろ!」「あいた」「ぎゃあ!またナイフ刺さってる!」「おいおい、なんでヴァリアーと一緒なんだ?」「仕方ねえですぜボス。あちらさんが先に来てたんだから」

「・・・・・・・・」(ピシャリ)

 嫌な予感、見事的中。

「どうしたの?」

 後ろから、閉じた扉を覗き込むハルに頭を抱えるエミーリオ。

「いや、今からでも間に合う。場所を変えよう」

「え?でも、フウとかクラスの子とか呼んじゃったよ?」

「んなの無視でいいだろ」

「駄目だよ!そんなの!いいからいこ!」

「あ!バカ!」 

 彼の忠告も空しく、ハルは扉を開いてしまう。

「へい!らっしゃい!」

「予約してたハルですけど」

「はいはい、こっちだよ」

 ハルとともに座敷に通される。

「あれー?白髪さんじゃないですかー」

「・・・・チッ」

 なんとか見つからないようにと気配を消していたのに、フランに目ざとく見つかってしまう。

「あん?」

「ム?」

 ベルにマーモン、フランがカウンターで寿司をつついている。そしてなんとなくヤバめの雰囲気を感じ取っているのだろう。座敷にいるクラスの連中もお通夜のようにテンションが低い。

「へー、珍しいなお前はサボるんだと思ってた」

「・・・・ディーノ。てめえ、イタリア帰るんじゃなかったのかよ」

「今日とは言ってねえよ」

 ちらりと流し目で彼を見るその瞳はしてやったりといった風。

「へー、キミがあの六道骸の秘蔵っ子?」

「誰がだ!」

 マーモン。黒いローブに藍色のおしゃぶり。元ヴァリアー霧の守護者。元、というのは今はフランだからだ。そして最強の赤ん坊(アルコバレーノ)。 

 元々、アルコバレーノの呪いで赤ん坊にされていたが十年前その呪いが解け、今はエミーリオと同い年くらいに成長している。

 エミーリオが知っているのはそれくらいの情報だ。他に詳細な情報など知らなかったし興味もなかった。

「違うの?」

「・・・・違げえよ」

 秘蔵っ子って、隠して隠して一生明るみに出ないならそれはいないのと同義だろう。

 まったく笑えない。

「まあいいさ。僕は金にならないこと以外興味ないんだ」

「おお、それは奇遇だな。僕もわりかし興味ない」

「ちょっとアンタこっち来なさいよ!」

 ああ、まためんどくさいことになった。

 マーモンと話している姿を目にしたのだろう。フウに呼ばれ、渋々彼は座敷に向かう。

「なに?」

「なに?じゃないわよ!なにあの物騒な人たち!知り合い?」

「全然。赤の他人」

「嘘!さっき親しげに話してたじゃない」

「おい、親しげとかいうんじゃねえ」

「うわー、リアルJCだー」

 彼がフウと話していると、後ろからひょっこりと彼の肩に頭を乗せたフランが顔を出す。

「おい」

 ざわざわと、クラスの連中がさざめき立つ。大方頭の上のカエルが珍しいのだろう。

「ほらー、先輩が無理やり着せてるこのカエル、中学生たちにも不評じゃないですかー」

「しししっ。いい気味♪」

「・・・・チッ」

「なんか言ったかフラン?」

「いえー、言ったんじゃなくて舌打ちしたんですー」

「素直に言うんじゃねえ」

 ストトと、カエル頭に綺麗に刺さるナイフ。

「きゃあああああ!!」

 クラス連中の悲鳴が響く。

「大丈夫だよー、あの先輩ああ見えて自分のこと王子とか言っちゃう中二病だからー」

「その悲鳴はお前に向けられてんだっつの!つーか俺は中二病じゃねえ、本物の王子だ」

 再度、突き刺さるナイフ。

「せんぱーい、ミーにも痛む心とかあるんですよー」

「痛めてるのは心じゃなくて体だけどな」

「っておい!いい加減にしろよ。説明がめんどいんだよお前ら。人前でナイフとか出すんじゃねえ」

 つーか、と彼はベルの隣に視線を向ける。

「アルコバレーノ、お前が指導しろよ」

「イヤだね。そんなお金にならないこと」

 なんだかこいつM・Mに似てる気がする。心のどこかで彼はそう思った。

「ディーノ」

「いやー、まあ危害を加えているわけじゃねえしな」

 疲れんだよ僕が。

 なんて心の声は、きっとディーノは見透かしている。

「おっ♪なんだ、賑やかだな!」

 そこに加わる新たな声。その声に、既視感に襲われる。

 この感覚は知っていた。十年後のあの世界で会っているのだ。

 そして今ここが『竹寿司』だという事実。

 それらを照らし合わせれば、自ずと声の主がわかる。

「山本だ」

「ほ、本物の山本 武(やまもと たけし)だ・・・」 

 山本武。

 高い身長に板前姿。精悍な顔だちに顎に傷をつけたプロ野球選手。ボンゴレ雨の守護者にして裏社会ではスクアーロとともに二大剣帝として恐れられている。

 会うのは初めてだった。

「おう♪ウチに来てくれてあんがとな。卒業式だったんだろ?」

「は、はい!」

 どうやらクラス連中は完全に意識が山本武に向いたらしい、彼はほっと一息つく。

「じゃあ、マーモン♪お勘定♪」

「くっ。ベル、わざと高いものばかり頼んだね」

「はー、王子満腹」

 そういってベルは店を出た。お金を出しているマーモンを置き去りにしながら。

 しかしまあ、これでようやく一息つける。

 と思ったのは間違いで。

「じゃ、ミーもこれで」

「おいおい、お客さん。お代がまだだぜ」

 和気あいあいと、談笑していた山本だったがフランを見る目が鋭く変わる。

「は?」

 これにはフランも目が点になっている。

「いやいや、やだなー野球バカさん。さっき赤ん坊が払っていったじゃないですかー」

「さっき払ったのはマーモンとベルの分だ。フランの分だけは払ってない」

 どうやら、そういうことらしい。

「・・・・・・・」

 黙るフランというのも中々珍しいかもしれない。

「よし、白髪。お前払え」

「はあ!?」

 急に矛先が向けられ、彼は素っ頓狂な声をあげてしまう。しかも、心なしか口調が荒い。

「ざけんな、なんで僕がお前のために金を払わなきゃなんないんだ。ディーノ」

「わりい、今月俺ちょっと厳しいんだ」

「・・・・・ツケ」「は、ウチやってねえんだ」

 はははと笑う山本に、彼のこめかみはヒクヒクと動き出す。

「ていうか、フランてめえ普通に払えんだろうが」

「兄弟子の言うことは聞いとくもんですよー」

「どこの世界に弟弟子に奢ってもらう兄弟子がいんだよ。つーかお前のこと兄弟子なんて思ったことねえよ」

「ひどい、ミーはずっと兄弟のように思ってたのにー」

 おーいおいおいと、誰の目にも明らかなウソ泣きの演技。

「ひどーい!エミーリオ君払ってあげなよー」

「そうだよー、バイトしてるんでしょ?」

「は?バイト?」

 ディーノをチラ見すると、パチパチと察しろという目線。なので察した。きっと、サボりの理由をそんな感じにでっち上げたんだろう。

 いやその前に、なんでフランの味方してんだこいつら。

 不思議に思ったそのとき、疑問は解決した。

「こんな可愛い子に払わせるなんてひどいよ」

「もう中学も卒業するんだから、兄弟の面倒くらい見てあげなよ」

 なるほど、幻術か。

 べーっとこっちに向かって舌を出すフランに、エミーリオは流石にカチンとくる。

「この野郎・・・・・・!」

「まあまて、後で俺が払ってやるから。今は建て替えといてくれ。な?」

 今にもぶん殴りそうだった彼の手を掴むディーノに彼は舌打ちする。

 まあ、そんなこんなでお寿司屋を解散になりようやく今日という日の終わりが見えてくる。

「はあ・・・・・疲れた」

「はは、わりいな建て替えさせて」

「別に、どうせ金の使い道なんてねえし」

 ただ、自分がフランのために何かをするという行為そのものが嫌だった。

 まあ、それを言うと目の前の男は笑いそうなので言わないが。

「なあ、いっちょスパーリングやるか?最近は恭弥に襲われることもなくてなまってんだ」

「ああ?・・・・悪いが今は無理だ。リングとボックスねえし」

「ん?なんだお前無くしたのか?」

「なわけねえだろ。没収されたんだよボスに」

 帰り道を歩きながら、彼は特に変わらずにそう言った。

 変わったのは、跳ね馬だった。

「・・・・・没収された?」

「あ、ああ。日本にはまだリングと匣兵器はないからって」

 その険しく真剣な表情に、思わず彼は言い淀む。

「——————————————、」

「なんだよ」

 歩みを止め、考え込んでいる跳ね馬に彼は訝しむ。

 変なこと言ったかと、彼は自分の言葉を今一度思い出すもいたって不審な点はない。嘘も言っていない。

 なら、なんだというのだろう。

「・・・・・なあ、ツナから来た手紙。あれ白紙だったって言ってたよな」

「ああ、炙っても透かしても水につけても駄目だった」

「それは今も変わんないのか」

「あん?時間経過だって言いたいのか?残念だが相変わらず真っ白なままだな」

「ツナの手紙が届いたのは?」

「日本に来てからベルとフランに渡され・・・って、ほんとになんだこれ」

 質問の意図が全く読めずに彼はついに振り返る。

「・・・・・いや、なんでもねえ。忘れてくれ」

「うわ・・・・めんどくさ」

 ここまで思わせぶりに思案しといて、それはない。

 が、忘れてくれと言われれば忘れるのが彼。エミーリオである。

「ま、ここでしばらくお別れだな。高校でもサボんなよ」

「ああじゃあな」

 もうさっさと一人になりたかった彼は、振り返った体をまた前に戻して歩みを進める。

 ハルもフウもほかの友達とどこかに行った。どこにいくかなんて興味もないし、ついていく気もなかったので彼はこうして帰路についている。

 これでようやく、彼の序章は終わる。

 ここから、本当に彼の物語が始まる。

 この世界線での彼の物語が。

 徐々に、徐々に。

                             To be continued.




 どうも高宮です。
 全然関係のない話ですけど、カクヨムというサイトで小説書いてます。「ようこそ、世界の終焉へ~福谷利太郎の手記~」という作品です。興味がある人はどうぞよろしくお願いします。
 あ、あとエルドライブアニメ化だって!やったね!
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