「知り合い?」
機嫌悪そうな顔をして大森さんが話しかけてくる。
「いや、顔覚えないです」
「おいおい、何だそりゃ。もっとあんだろお世話になりまくった先輩だろ」
先輩?……あっ高島か!
あの時は悲惨だったな。
「こいつ根っからのたらしだから気をつけた方がいいよー君たちのことをエロい目でしか見てねーからね」
高島の取り巻きが大森さん達の後ろにまわる。
「まあ、安心しなよ。こいつ俺達には頭あがんねーから」
高島が大森さんの肩に手を置く。
瞬間
俺は立ち上がり机を叩く。
「先輩…今日は勘弁してくれませんか?」
「何だそりゃ。古市諦めろってか」
「はい、代わりにこの人紹介しますんで。ここはお願いします」
俺はケータイに入れてる写真を見せる。
写真には金髪の眼鏡美女が写っていた。
眼鏡があっていて知的で清楚さのオーラがある。
「へえーなかなかいい女じゃん。いいよ、今から電話しろよ」
俺はボタンを押す仕草をしてケータイをかけるフリをする。
『二度目はないということですね』
そういうこと。
ヨゴレ仕事任せてごめんね。
怒ってるライト連れてっていいから。
ていうか行くでしょ。
『はい、この下等生物達に身の程を教えてやります』
「はい、分かりました。先輩会えるそうです。場所はどうするか聞いてますけど」
「場所は駅裏の喫茶店って伝えくれ」
「はい」
じゃあそういうことで。
『『畏まりました』』
そこでもう出てこない人達は帰っていった。
「あんた…あれでよかったの?」
「はい、あの人の近くに先輩方のトラウマがいるので」
「嵌めたってこと」
「ええ、あまりやりたくは無かったですけどあの人今回みたいな事常習犯なんで」
「戦おうとはしないの?」
大森さんが聞いてくる。
質問ばっかで飽きてしまう。
最後の質問は俺の強さを知らない谷村さんはそれは酷だろうという顔をしていた。
「俺は痛いの嫌いですからね。あと男鹿には絶対勝てないしな」
男鹿には俺の能力を総動員しても勝てないと思ってるからな。
漫画の主人公とか魔王の親とかじゃなくてあいつには勝てないからな。
「それよりもあの時の話谷村さんに話してないのですか?」
「そういえば千秋、あの時気を失っていたから話してなかったわね」
凄く無理やりな話題転換だったが話題は変わってくれた。
「あの時ってなんですか?寧々さん」
「MK5に襲われた時に助けて貰ったんだよ。一応助けられたからね。信用はしてるわ」
「じゃあ俺はかき氷買ってくるんで話といて下さい」
こういう所の値段って軽く引くくらい高いよな。
女の子と食べれるなら安いとみるか。
「買ってきましたよ。苺とメロンとブルーハワイ買ってきましたんでお好きな味をどうぞ」
「…MK5の件、ありがとうございます」
話はついたようだ。
谷村さんにお礼を言われる。
「いいって、俺もやり過ぎた所あるから。あ!あとその事は他の人には言わないでね」
「?何でですか」
「いや、ね。俺は余り痛いのとか嫌いだから喧嘩は弱いって事にしてるんだよ」
「じゃあなんで男鹿の隣にいるんですか」
だいぶ直球だな。
まあ、話の流れ的に気になるところだろうけど。
「男鹿の親友だから…かな?」
自分で言ってなんだけどくっさいセリフだな。
「………」
無言やめて!辛い!
『主様、終わりました』
あ、お疲れ様。
どうなった?
『過程は話すと長くなるので省略致しますが、今彼らは町のゴミ拾いに勤しんでおります』
大丈夫?それ。
精神おかしくなってない?
『少しラピスの魔法で視野を広げただけです。生命活動においては問題ありません』
………うん、分かった。
そういう事にしておく。
「大森さんに谷村さん」
「名前呼びでいいよ。千秋もいいね」
「……寧々さん千秋さん。今日はすみませんでした。意図してなかったとはいえあんな奴らを近づけてしまって」
「気にしてないよ。そもそもあんたがいなくても来そうだったわよ」
「いいえ、そちらが気にしてなくもこっちが気になりますから。ですので今度こちらがお金持ちますので何処か行きませんか」
「あんたもナンパのつもり」
「いえいえ、別に。俺以外にも男誘ってもいいですし。そうですね時間がある時…そうですね、男鹿が東条倒した後なんてどうですか?」
「!?……あんた勝てると思ってるの?」
「男鹿は強いですからね。勝ちますよ絶対」
「………………はぁ」
「どうしました?」
「いいわよ。けど条件として「男鹿が東条を倒した」時だけだからね」
「有難うございます。じゃあ俺は帰ります。元々は男鹿に引っ張られた感じ来たのでそろそろバイトの時間が」
「ふーん、そう。じゃあね。古市」
「では、さようなら。寧々さん千秋さん」
俺はプールから出ていった。
男鹿?
どうせ話しかけても反応しないだろ。
というわけで置いてく。
空には青空が広がっているがもう俺は1日の終わりのように疲れていた。
はあ、いい事と悪い事が一気に来すぎて頭がパンクしそうだ。
そうだ。
ラピス解析は完了した?
『はい。ですが完全に再現するのは難しいです。少し転移魔法というのを侮ってました』
で、できるのかな。
『霊体は実体があればついていくという形で可能です。実体は現時点で1人なら可能です』
なら、いいか。
後々飛べる人数を増やせばいいし。
で、今から飛べる。
『はい、座標指定は完了しています』
じゃあ、開いて。
俺の前に黒い歪みが現れる。
歪みは広がっていき遂には人1人通れる程になった。
俺は足を進めその歪みに入っていく。
「さようなら、日本。そして……さっきぶり、南の島」
俺は南の島に来れた。
いや、ね。
少しばかりは賭けだったけど成功して良かった。
「じゃあ、ホテルに帰るか」
俺はオッサンを見つけたプールにいた。
「あー!お兄ちゃんいた!どこいってたの」
後ろから声をかけられる。
振り返ると妹がいた。
「ほのか!よかった帰ってこれたのか…」
「帰ってこれた…って何処までいってたの?」
「いや、少しばかりこの辺を探索してたら思ったより遠くに行ってたみたいでな。やっとここまで帰ってこれたんだよ」
「お兄ちゃん…はぁ。残念だろうけど夕食は無いからね」
俺は空を見上げる。
まだ転移魔法は完成していない。
場所は飛べるみたいだが通る瞬間に時間も大分飛んでいるようだ。
いくら時差があろうとも行っていたのは1時間位だ。
それがもう真っ暗闇。
………当然か。
ちゃんと場所に飛べただけでも良しとするか。
「じゃあそこら辺のスーパーで食材買って厨房借りて料理するか」
「私も食べる」
「あれ?ほのかは夕食食べたんじゃ無いのか」
「食べたけど食べるの。お兄ちゃん心配してお腹減ったの」
「はいはい、作りますよ。でも初めての食材だから上手く作れるか分からないよ」
その後…厨房は無事借りる事ができた。
しかし、他の客が俺の料理を食べたいと言いだして、何故か料理するハメになった。
バイト代としていくらかもらえたからいいけど。
俺の睡眠時間は減る事になった。