悪魔とか中二乙ww……ゑ? 俺が悪魔、だと?   作:台座の上の菱餅

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第1話

 君は『悪魔』というものを聞いたことがあるだろうか。

 

 人を誘惑し、混沌へと陥れる、謂わば人の弱味その物。

 黒い皮膚に尖った角、時折見せる鋭い牙と血に染まった三又槍は悪魔の象徴だ。

 

 天使や神とは正反対の立場に属し、禍々しい風格を持つ者達であり、時に人を助け人を殺しそれを見て笑う。

 この世の悪の根元として語られ、人間達からは畏怖の目で見られる崇高なる存在だ。

 

 

 

 ……そんな悪魔の一人、俺。

 

 ぶっちゃけて言うと、悪魔ってそんなモンじゃない。

 畏怖の目で見られるほどヤバイ奴なんてそう居ないし、言ってしまえば家で寝っ転がってモ〇ハンやってるような輩ばかりだ。

 文字だけ並べればニートである。

 実際のところ、大体好き勝手して生きてる奴が大半だし。

 人間達に紛れて暮らす奴も居れば、色んな所を彷徨く奴も居る。

 人間に取り憑いて悪さする奴も居るし、退治されるのが目的のドM野郎も。

 

 所詮神とは違って、悪魔は案外人間と似ているのだ。

 

 そう言う俺は、人間達の住む世界……神々達の間で言う『下界』の、地球という星にある、日本という国の海鳴市という場所に住んでいたりする。因みに名前はイロハって言うよ。

 

 俺も先程言った風に、人間に紛れて過ごしている。髪の色を除いて姿形は人間だし。

 悪魔特有の身体能力や魔法を活かして力仕事に日夜勤しんでる訳だ。

 

 朝のテンションで、謎にも悪魔の実態を語りつつ、仕事場へ行くためバイクへ股がった。

 

 

 ***

 

 

 「おはよーございまーす」

 「おはようイロハ君」

 

 仕事の上司に挨拶しつつ、バイクを駐車場の方へ引っ張る。

 勿論の事、彼も含め周りの人間に俺が悪魔ということは伝えていない。

 

 というより、言ったとしても絶対信じて貰えないし、最悪『え、君何言ってんの?なんか頭イカれてるからクビね』って感じになりかねない。

 と言うわけで、必然的に人前で魔法を使う訳にもいかず、大変不便な人生……ではなく悪魔生を送っているのだ。

 

 作業着に着替えると、上司に言われた通りに木材やら鋼材などをせっせとトラックに積む。

 世間一般で言う運搬業者である。

 普通なら、二人がかりで運ぶ物が多いのだが、それは人間の話だ。

 50㎏近い鋼材を肩に担ぐと、指定のトラックへと運び込む。

 林檎を指二本で握り潰すのすら容易いのだ。 こんぐらい楽勝である。ででどん。

 

 「相変わらず、すんげぇ馬鹿力だな」

 「まぁね~」

 

 書類を見詰め、木材のチェックをする同僚に呆れるような声を掛けられた為、それにドヤ顔で答える。

 あー、平和だわ~、なんて超どうでも良いことを考えながら仕事をこなしていると、いつの間にか昼を回っていた。

 コンビニへ弁当を買いにでも行こうか、と財布を取りに行こうとすると、社長さんが直々にやって来る。

 

 「おーい、イロハ君。今日はもう上がっていいよ」

 「え、もういいんですか?」

 「うん、君か粗方やってくれたからね。それに、これ以上若いのに頼り切っちゃうのはプライドが許さないのさ」

 

 なるへそなるへそ。

 お言葉に甘えて先に上がるとしよう。

 此処で変に遠慮しても嫌味みたいになるだけだしな。

 作業着から私服に着替えると、同僚や上司に一言告げ、バイクで仕事場を後にした。

 

 

 ***

 

 

 「あ、やべぇ今日ごちうさ再放送の日だわ」

 

 其処で買ったハンバーガーを頬張りつつも、録画を予約していない事に気付く。

 クッ……!! 此処で見逃したらチノちゃんに顔向けできねぇ!!

 ハンバーガーを某戦闘民族並の早さで食い尽くすと、バイクのグリップを捻り、全速力で走り出した。

 盗んだバイクで走り出すぅ~、なんてフレーズが頭に浮かんだが、盗んでねぇし十五才じゃない。

 

 そして、速度制限をちゃんと守る辺り、やはり俺はチキンである。

 

 と、道を走っていると、唐突に魔法による干渉を、俺の肌が感知する。

 ピリピリと肌を刺激するそれは、どうにもこうにも嫌な予感が臭う。

 同じ悪魔のしわざか?

 首を傾げつつも、一応の為に魔力阻害の魔法を全身に巡らせた。

 

 どうやら結界魔法に親いものだったらしく、周りに居た一般ピーポーは姿を消す。

 

 またドM野郎かよぉ~、この前もイタリア付近で問題起こしたばっかりじゃんかよぉ~。

 

 しかし、ドM野郎(加えてオネェ)かと思っていたのは勘違いだったのか、段々とくっきりしていく魔力の性質は、全くの別物だった。

 すまないドM。

 

 となると、新入りさんかな? 

 そうだとしたら、随分とアグレッシブな方だ。

 別に、このまま放っておいても問題はないのだが、何か何時もとは違う(気がする)。

 悪魔の端くれでも、攻撃的な魔法かそうでないかなど判別できる(と思う)。

 この結界魔法は攻撃的な部類だ(と信じたい)。

 

 シリアルは好きだがシリアスは嫌いなので、あまり首を突っ込むのは気が引ける。

 しかし、何を血迷ったのか、俺はバイクのグリップを捻り、魔力の発信源へと走り出した。

 

 

 ***

 

 

 普通、こういった人払いを目的とした結界魔法は、人払いしたい区域を集中して取り囲めば問題ない。

 トンデモなく大きな奴を閉じ込めたいのなら話は別だが、そんな奴を発見し結界を張るまでに多くの者がそれを目にするだろう。

 そして俺は、俺達はそんなもの見ていない。

 なら、答えは一つ。

 

 「俺みたいな奴か」

 

 小さい媒体に大きな破壊力を持った生命体、もしくは魔法使いなどの暴走だろう。 

 今考えられる限りで思い付くのはそれだ。

 

 此処も物騒になったもんだ。

 今までは花粉のグレードアップバージョンを何者かがバラ撒いたり、気温がえげつない程に上がる程度の事だったのだが。

 ここまで攻撃的な雰囲気と、押し留めようという結界魔法は初めて……ではない。

 

 そういえば、最近此処等でこんなのが頻繁に発生していた。

 

 この前、深夜テレビを見ながらカップラーメンを食べていた時が始まりだったか。

 覚えている限りでは五回。

 なんで無視したかって? そりゃ答えは簡単さ。面倒臭いから。

 

 ……なんか、ヤな予感がする。

 

 

 

 

 「やっぱり……」

 

 バイクを止め、フルフェイスのヘルメット越しに見える光景。

 それは、まるで龍を模した化け物と、一人の少女が戦っている異様なものだった。

 

 何者だあの女の子。

 魔力量が尋常ではない。

 俺や他の悪魔程とは言わないが、魔力の量が尋常ではなく、人間にしては規格外。尋常じゃない。

 大事なことなので二回言いました。

 

 少女=子供なため、これから魔力が増える可能性だってある。その増やす方法が真っ当な物かどうかは置いといて。

 そう考えると、彼女が俺の魔力量を越えるのは容易かもしれない。

 

 それに、魔法だって使っている。

 見たことのない杖や魔法を使っているが、感じられるのは確かな魔力。

 歴とした魔法である。

 

 何者だ? あの子は。

 俺が今住んでいるこの地球に、魔法と言う概念は存在しない。

 存在していたとして、それは他の次元や、もしくは俺達みたいに冥界や天界から現界してきた者である。

 故に、あの少女は何者なのだろうか。

 

 まぁいい。 

 取り敢えずあの少女への疑問は置いとくとして、遠目で見る限り結構苦戦しているようだ。

 それもその筈、少女の魔力も尋常じゃない程の量だが、龍の魔力はその更に上を行く。

 俺より少し上ぐらい、かな?

 が、宝の持ち腐れか。使いこなすことが出来ていない。

 

 これは楽勝かな。神代の龍神に比べれば完全な紛い物だ。

 ってことで、

 

 「助太刀しますか」

 

 

 

 ***

 

 

 私、高町なのはは、これ迄に無い程の苦戦を強いられていた。

 

 話すとかなり長くなるため理由や説明云々については省略させて貰うけど、現在私はジュエルシードの暴走体と相対している。

 見た目は宛ら龍のよう。

 

 禍々しくも神々しい矛盾した風格は、異様な雰囲気を産み出している。

 

 ユーノくんと出逢ってから今まで見付けたジュエルシードは五つ。

 全て、少し無理をしながらも集めたのだが、今回ばかりはそうは行かないようだ。

 

 魔力量は私の何倍もあるようで、加えて若干の知性もある。

 手強いとかそういうレベルではなく、倒すことが困難なのだ。

 

 つまり、今目の前に居るジュエルシードの暴走体は、私の手に負える者ではないのである。

 

 うぅ、私がもっと強ければ……。

 

 「なのは!! 集中して!!」

 

 私が落ち込んでいると、ユーノくんが鋭い声付きで一喝する。

 そ、そうだ、集中しないと。

 

 ……け、けど、どうすれば目の前の龍を倒せるのかな?

 

 此方の魔法は余り通じないし……、それに『とっておき』はまだ出したくない。

 あれは最後の切り札であり、退避用に残しておきたいのである。

 

 わ、私が逃げたら駄目なのは知ってるけど、でもこれでやられちゃったら……。

 

 「ユーノくん、どうするの?」

 「分からないよ、僕も。こんなのは初めてだから……」

 

 レイジングハートも、この状況下でどうにかできる案など思い付かないようだ。

 どうする、どうする、どうするどうする!?

 考えろ私、働け頭!!

 

 「うっはぁ~、これまた近くで見ると壮観だねぇ~」

 

 ……え?

 

 「ど、どどどどうして此処に!?」

 

 ダッフルコートに身を包み、人懐っこそうな表情で龍を見詰める男性……というにはまだ若々しい青年が、危険性に正面から喧嘩を売った態度で瓦礫の上で叫んでいる。

 流石に驚いたのか、ユーノくんはあわあわと指を指して慌てていた。

 

 ……って、そんな事言ってる場合じゃないよユーノくん!!

 

 「ユーノくんはその人を守ってて!! 私は何とかアレを倒してくる!!」

 「な、なのは!!」

 

 ユーノくんの制止を無視し、私は全速力で飛び立つ。

 龍の口から襲い掛かる炎球を避け、レイジングハートを構えると、全力で魔砲を放ち、その隙に距離を詰める。

 

 しかし、それは愚策だった。

 距離を詰めれば、龍の炎球や遠距離の攻撃が当たらないと思っていたのである。

 

 『――――――――――!!』

 

 「きゃあ!?」

 

 唐突に暴れ出した龍の尻尾がビルを破壊し、その破片が私の元へ飛んでくる。

 少し身じろぎしたように見えたのだが、これだけの威力を持っているのだとしたら、今の立ち位置は不味い。

 

 が、気付くには遅すぎた。

 

 『―――――!!』

 

 体を捻り、体重と自身の力を乗せた、龍の最大で最強の突進。

 当たれば一溜まりもなく、私なんて軽く弾け飛んでしまうだろう。

 『Protection』を発動しようにも間に合わず、私は諦めて来るであろう衝撃に備えて目を閉じた。

 

 

 しかし、一向に衝撃が来る気配はない。

 うっすらと目を開けると……――

 

 「んー、52点。あそこで近付いたら、そりゃぶっ飛ばされるわ」

 

 ドス黒い魔力光を纏う先程の青年が、龍を両手で抑える姿が目に写った。

 

 ……え?

 

 そんな風に、私が本日二度目の反応を繰り返すのと同時に、彼は徐に口を開いた。

 

 「ソロモン72柱序列第7位……

 

 汝、炎の侯爵と唄われる業火並び、聡明なる多大な知識を我に。我が血肉を媒体とし、この世に君臨せよ──『アモン』」

 

 




 ソロモン七二柱序列第7位『アモン』

 悪魔の君主の中でも最も強靭と言われ、高い戦闘能力を持つとされている。
 口から吐く炎から『炎の侯爵』の異名をとる。召喚者に過去と未来の知識を授ける。
人の問に不和を招き、逆に和解させることもできる。
詩才があり、ソロモン王が召喚した時見事な詩を披露したと言われる。

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