悪魔とか中二乙ww……ゑ? 俺が悪魔、だと?   作:台座の上の菱餅

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 何か違う


※4月10日 ジュエルシードの個数に関する文章を消しました。
 ユーノ君が初めて人間になったのがアースラの中でということで、少し改変。


第2話

 

 

 少女……なのはは、自身の目を疑った。

 

 燃え盛る業火を従え、狼の姿を模した小さい化け物を肩に乗せて、悠々と龍を見据える目の前の青年。

 先程まで黒目黒髪だったにも関わらず、それらには少し紅みが掛かっている。

 その姿は神々しく、尚且つ禍々しく、龍と同じような強い風格を晒け出していた。

 

 「綺麗……」

 

 急に詠唱を始めたと思ったら、見たこともない程の量の魔力が溢れ出し。

 そしてあの姿に。

 

 感じられる魔力は目の前のジュエルシードの暴走体を上回り、はっきりと伝わってくる強い意思はこの場を全て丸呑みにしている。

 見たこともない、圧倒的であり理不尽な力の差に、なのはは口を開き唖然とすることしか出来なかった。

 

 チラッ、と見てみると、ユーノは腰を抜かして、小刻みに震えながら、今にも泣き出しそうな顔で青年を見詰めていた。

 

 「さて、と。行きますかぁ」

 

 そう言うとあの人は、鼻で笑うように龍を一瞥すると軽く手を翳す。

 それと同時に痺れを切らした龍が、口から炎球を吐き出した。

 

 しかし、その炎球が彼へ届く寸前、その炎の威力を嘲笑うかのように、彼はゆっくりと口を開く。

 

 「『Flammenkugel(炎球)』」

 

 なのはの知っている魔法ではなかった。

 しかし、その魔法が如何に基礎的なものか程度は理解できる。

 けども、威力は"基礎的"で済まされるような物ではなかった。

 

 その存在すら残さず、龍の炎球は消え去る。

 いや、あの人の炎球に掻き消された、押し潰された、そう言った方が正しいのだろう。

 

 圧倒的な彼の魔法は、龍の炎球を意図も簡単に相殺し、それどころか勢いを殺さず、そのまま龍にその途方もない業火を叩き付けた。

 

 『──────!!』

 

 凛々しく生えていた鱗は全て剥げ落ち、痛々しく焦げ茶色に染まる。

 激しい痛みにに声にならない叫び声を上げた龍は、怒りに顔を染めて彼に襲い掛かった。

 

 「あー……『Flammenwand(炎の壁)』」

 

 薙ぐように腕を振ると、それに応えるかのように、文字通り炎の壁が出現する。

 少しでも触れたら炭化してしまいそうなそれは、龍すらも臆させる。

 獣の本能が反応したのか、龍は一旦逃げようと彼に背中を向けた。

 

 「に、逃げちゃう!」

 「まぁ、そう焦りなさんな」

 

 いつの間にかに近寄ったのか、追いかけようとするなのはの事を止めて、彼はトドメだと言わんばかりに手を掲げる。

 今までよりも気迫のこもった一連の動作になのはとユーノは息を飲んだ。

 

 

 「『Flammensäule(炎柱)』」

 

 

 天まで燃やすのではないか、と言うほどの迫力と、肌で感じるピリピリとした魔力の強い残留。

 きっと、これも基礎的な魔法なのだろう。

 しかし、最早この威力は先程同様、基礎的を完全に越えていて、圧巻の二文字しか思い浮かばなかった。

 

 彼の周りに蠢く業火と、肩に乗っていた狼が消える頃、なのははジュエルシードを封印した。

 

 ***

 

 いやー、久し振りの魔法、そして召喚。

 ぶっちゃけすんげー簡単な魔法しか使っていないけど。

 召喚を除いて。

 

 結界があるから大丈夫だろうが、見渡す限り酷い惨状だ。

 これが、結界が無かったらと思うと、背中に戦慄が走る。主に家の近くのスーパーが無くなる件について。

 

 視線を写すと、そこにはこんがり焼けました~、なんて陽気なフレーズが飛び出してきそうな感じに丸焦げになった龍が居た。

 威厳は悉く消え去り、か弱い叫び声を絞るように上げる。

 アレを受けてまだ生きているのか。

 驚くべき生命力に若干の称賛を送るよ。

 

 松岡修造にも負けないアモンの炎を消し切ると、唖然として此方を見詰める少女の元へ歩み寄る。

 ツインテールにした髪型が特徴的で、栗色の髪は光を綺麗に反射している。

 まだ幼い顔付きはそれなりに整っており、将来とても美人になりそうだ。

 

 ……ロリコンじゃないよ?

 いやマジでマジで。

 

 「うっす、どーも」

 「ど、どーも?」

 

 語尾に疑問符を浮かべつつ、戸惑いながら彼女は此方を見詰める。

 う、ドキドキする……、なんて事はなく、先入観を良くするため笑顔を浮かべ口を開いた。

 

 「まぁ、先ずは自己紹介からで……俺の名前はイロハ、ヨロシ栗松」

 「よ、よろしくお願いします」

 

 なん……だと?

 思いの外警戒されているようで、握手を求め手を出しても握ってくれることは無い。

 別に、戦いの場に置いてこの彼女の行動は正しいのだが、若干傷ついた。

 それはもう、冬場凍った校庭の地面に膝を擦れさせた程に。

 アレ地味に痛いんだよね。

 

 「あ、あの……私は高町なのは、って言います。よ、よろしくお願いします」

 

 警戒心は残るもの、少女──なのはちゃんは俺の手を取る。

 このままだと『ロリコンガイルゾ!!』と指を指されかねない為、俺の方から手を離す。

 

 色々と聞きたいことはあるが、それはなのはちゃんも同じだろう。

 が、やはり年上として譲る心を見せなくてはならない為、彼女が口を開くのを待つ。

 

 しかし、それより前に先程までガクガクと震えていた喋るフェレットが、此方へ駆け寄って来ることにより中断された。

 

 「な、なのは、大丈夫だった?」

 「う、うん。ユーノくんこそ平気? 今にも泣いちゃいそうだったの」

 

 もう、今にも失禁しそうだったもんね。

 

 「んでさー、色々と聞きたいことがあるんだけども、良いかね」

 「は、はい」

 「んと、君達が戦ってたアレ、何?」

 「あ、それについては僕が話します」

 

 コートのポケットに手を突っ込みつつ、ユーノくんとやらの話を聞くことにした。

 

 と言っても殆ど聞いてなかったので話の要点だけを述べると、

 

『一つで事足りるドラゴンボール発見。

          ↓

   ミスって地球にシュート!!

          ↓

 僕と契約して魔法少女になってよ!!』

 

 らしい。

 馬鹿ですね、ドラゴンボール発見して落とすとか。ナメック星人に失礼だろ。

 

 加えて、ドラゴンボール……ではなくジュエルシードには一つ一つ膨大な力が宿っているらしく、使い方を間違えれば地球一つオサラバするレベルの魔力災害か起きるとのこと。

 え、ヤバくね? と、狼狽える俺だったが、どうやらなのはちゃんとユーノくんが既に回収作業を行っているので、問題はないと。

 

 「何処が問題が無い、だよ」

 「え?」

 

 反応から見るに分かっていないようだ。

 

 そもそも、こんな規模の事態を、ついこの前まで戦いのたの字すら知らなかった女の子に任せるなんて言語道断。

 せめて力を付けてからにしないと、先程みたいに危ない事になるかもしれない。

 

 現に、俺が居なかったら先程の龍を止めることは出来なかっただろう。

 

 それに、ペースは余りにも遅く、利用されるのは時間の問題だ。

 そうなっては取り返しの付かない事になる可能性もあり、人手も実力も足りない。

 

 問題点が多すぎる。

 俺の戸籍並みにありまくりだわ。

 

 その事を彼女達に告げると、 何故そんな簡単なことに気付けなかったのか、と気を落とす。

 

 「アホかお前ら」

 「……」

 

 なのはちゃんからの応答はない。

 自身の不甲斐なさを悔やんでいるのか、そらとも怖気付いたのか。

 恐らく前者だろう。そうあってほしい。

 

 この世界は俺達守る側に優しくない。

 なのはちゃんが関わっている件も、彼女の魔力的な才能が無ければ此処までスムーズに進まなかっただろうし。

 何時でも不条理であり理不尽である。

 

 ついさっき会ったばかりだが、彼女はとても正義感が強いのだと思う。

 そうでなければこんな事に首なんて突っ込まないだろう。

 だからこそ、此処で俺が何を言っても、彼女が引くことは無いと思う。

 

 だから──

 

 「マジで大変なときは、念話でも使って俺を呼べばいい。てきとーに力貸すからさ」

 

 俺は悪魔失格だ。

 

 

 ***

 

 イロハさんに告げられた数々の問題点は、実の所ユーノくんも薄々気付いていたらしい。

 当然だ。こんな事気づいて当然、気づかない私が駄目なのだ。

 

 あの後、結界を解いて家に帰り、本当はお店の手伝いをしなくちゃいけなかったのに、お母さん達に断りを入れて休ませて貰った。

 肉体的にも、精神的にも、相当疲れていたのだと思う。

 

 ベッドに倒れ、目を瞑ると沸くのは、焦燥感にも似た自身に対する激しい怒り。

 不甲斐なさや自身の弱さがどれだけ大きな物だったのか。

 イロハさんに言われなければ、気付かぬまま死んでいたかもしれない。

 死ななくとも、それこそ大怪我を負っていたかも。

 

 『マジで大変なときは、念話でも使って俺を呼びな。てきとーに力貸すぜ』

 

 気を使ってくれたのか、それだけ告げると彼はバイクに乗って去っていった。

 まだ十四~十六歳ぐらいの見た目だったが、大丈夫なのだろうか?

 

 彼の魔法の一つ一つは、まるで大掛かりな魔方陣を使った大魔法。

 しかし、イロハさんは詠唱すら使わずにそれら全てを発動し見事龍を打ち倒したのだ。

 それは実に凄いことである。正に理不尽だ。

 

 が、あの時感じた"違和感"は拭いきれない。

 彼の魔法を使う前、変身した時に溢れ出た魔力……確実に彼の物では無かった。

 いや、言い方に語弊があるだろうか。

 "彼の魔力"に"別の誰かの魔力"が混じっていたのだ。

 恐らく、あの時詠唱によって召喚されたあの赤毛の狼の物と推測できる。

 

 と、どんなに思考を練ろうと、結局は私の今居る力量とは天と地の差があるのは一目瞭然。

 あれが本当の理不尽である。

 

 「わかんないよ……」

 

 ふと漏れた言葉は、情けなくもそれだった。

 分からない、どうすれば強くなるの?貴方に教えてもらえば強くなるの? 

 

 分からない……。

 

 

 分からない、分からない、分からない、分からない分からない分からない分からない分からない!!

 

 

 

 気付いたら、私は泣いていた。

 

 

 




 魔法の名前、一応ドイツ語なんですけども、間違ってたら教えてくださると嬉しいです。
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