悪魔とか中二乙ww……ゑ? 俺が悪魔、だと?   作:台座の上の菱餅

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第3話

 

 

 

 どうも、自分の方からシリアスに突入してしまった、お茶目悪魔ことイロハです。

 あれから1日経過し、待ちに待った休暇であります。

 

 アレだ、今更ながらめっちゃ恥ずかしい。

 一丁前になのはちゃんに説教垂れた事連々と並べてさ。

 死ぬぞ? とかもうね、寝てるとき突然思い出して『ウワァァァァ!!』ってなるわ。

 俺の黒歴史ベスト10にランクインしたとさ。

 

 そして、どうでもいいが先日の魔法連用により、俺は今かなりキツい筋肉痛患っている。

 

 なんで魔法で? という疑問はさて置き、『ちょっと転移魔法でも使ってロンドンに行き大会』は中止。

 代わりに、今日は巷で有名な"翠屋"という喫茶店に行こうと思う。

 

 「インドア派に運動はキツいぜ……」

 

 ダッフルコートに薄茶色のジーンズ、という大学生のような服を着込むと、煙草と財布をポケットに入れて玄関を開けた。

 

 

 ***

 

 

 日曜だからか、町中は必然的に人が多い。

 家族連れや友人と遊びに来ている者、憎たらしくもカップルで来ている者。

 前者は精一杯楽しんでもらいたく、後者は破滅してほしい。盛大に。

 

 各々が其々の時間を過ごし、騒がしくも穏やかな風が通り過ぎる。

 そんな中俺は、翠屋へと続く道を筋肉痛の恐ろしさを噛み締めながら歩いていた。

 

 っべーわ。マジやっべー。

 筋肉痛マジっべーよ。

 

 正直舐めてた。割と舐めてた。

 途中本屋に寄り道する程度には舐めてた。

 

 基礎バイタルが高い悪魔の身体だから、怪我とか負わないし風邪とか引かないんだけど、それ故に激痛とかに慣れてない。

 や、他よりは十分慣れてるんだけどね。

 

 まぁ、どんなに愚痴を溢そうと治る訳では無いので、良い天気だな~、とマジでどうでもい事を考えつつ、翠屋へと入った。

 

 「いらっしゃいませ~」

 

 美人なお姉さんに案内されつつ、俺は窓際のテーブルに座る。

 店内の雰囲気はとても落ち着いていて、漂う良い香りが鼻を擽る。

 

 取り敢えずケーキと珈琲を頼み、先程本屋で買った本を取り出す。

 本というか、知識向上のための小難しい推理小説なんだけどね。

 

 推理小説で思い出したけど、名探偵コ〇ンっていつ完結すんの?

 かれこれ80巻は出てるだろうしさ、もうなんか事件もマンネリ化してるし。

 毒殺の方法がアバウト過ぎるしね。辞書に塗っといた毒で殺すって、誘導すんの難しくね?

 

 と、本の中の探偵が『犯人は……貴方だ』とかほざいて外す場面に入った瞬間、注文した珈琲とケーキがやって来る。

 美人なお姉さんに持ってこられたそれらは、彼女によって一層引き立てれる。

 

 ……いかんいかん! 

 

 煩悩が少し沸いて出たな。

 長生きしてると、そういうのは消えていくと思ってたんだが。

 湯気を立てる珈琲を口に含み、ケーキの端を口に運ぶと、甘さと苦味が入り交じる味が口の中一杯に広がった。

 

 「あ、ああ、あの、もしかしてイロハさんですか?」

 

 うめえ。

 俺の作るケーキと何が違ったら此処まで美味くなるんだろうか。

 控えめだが、それでも隠れない程よい甘さとふわふわのパンが絶妙に噛み合っている。

 

 「ちょ、無視してませんか? 私ですよ、なのはです!!」

 

 それにこの珈琲。

 温度といい苦味といい、全てが美味しく飲める程度に調節されていて、作った人の高い技術が容易に窺える。

 

 「イロハさん? どうして眼鏡掛けてるんですか?」

 

 そしてこの二つが、お互いを引き立て合うことにより、一層味わい深い物へと変わるのだ。

 す、すげぇ。これは人気が出るのも頷ける。 加えてバイト? のお姉さんとお兄さんが美人とイケメンだった。

 看板娘と、看板娘ならぬ看板息子。

 

 「もしかして、人違いなの? で、でも見るからにイロハさん……」

 「なのはちゃん五月蝿い」

 

 これ以上無視するのは可哀想反面、聞くに堪えないなのはの独り言が鬱陶しいので、珈琲の入ったカップを皿に置く。

 急に俺が振り向いたからか、大袈裟に驚く仕草をする彼女は、すぐに表情を変えてプンスカ怒り始める。

 

 「気付いてるじゃないですかぁ!!」

 「だから何かね」

 

 知り合いを見掛けたとして、それに話し掛けなくてはならぬルールなどこの世には存在しない。故に、俺は悪くないのさ。

 

 「何って……ま、まぁいいですけど」

 「で、何で此処に居るの?」

 

 着ている服からして、客では無いだろう。

 エプロンを着けて外に出る少女など、生きてきた中でコスプレ以外見たことがない。

 ……あれ? てことはなのははコスプレイヤーってことに?

 マジかよ。この歳でか。

 

 とまぁ馬鹿なことは置いといて。

 

 「このお店……翠屋は私の両親が経営しているお店なんですよ。それで、私はお手伝いをしてるんです」

 

 なんと。

 巷で有名な喫茶店は、なのはもとい高町家のお店だった。

 何かよく分からないが、人と人の繋がりは凄いな。片方悪魔だけど。

 

 最後のケーキの欠片を口に運び、口直しと言わんばかりに珈琲を飲む。

 

 うめぇ。

 つかこれ、もう缶珈琲飲めない。あとコンビニのケーキが食べれない。

 だってさ、こんな美味いもん食ったら……そりゃあ、ねぇ?

 

 「イロハさんは、どうして?」

 

 全て平らげ一息つくと、トレーを片手になのはが聞いてくる。

 

 「そりゃお前、巷で有名な喫茶店に来ただけだよ。丁度暇だったしな」

 「成る程……あ、それと何で眼鏡を?」

 

 そう、なのはの言う通り、俺は眼鏡を掛けている。

 別に視力云々で掛けている訳ではなく、伊達眼鏡として掛けているのだ。

 因みに、知的な人として見られたい、という理由だったことは誰も知らない。

 

 「伊達眼鏡」

 「あぁ、成る程。似合ってますよ……と、呼ばれてるので行きますねイロハさん」

 

 そう言って、とてとてと去って行くなのはちゃんの背中を一瞥すると、俺は颯爽と会計を済まして店を出ていく。

 あー美味かった。

 

 

 

 

 

 「あれ?イロハさん居ないの……」

 

 

 ***

 

 

 翠屋を出てから、近くのスーパーで消耗品を買い込み、さて帰ろうとしたと同時に、それは起こった。

 

 『……渇いた……』

 

 は?

 吃驚。唐突に頭の中へと届いたその声が、魔法によるものだと容易に理解できた。

 しかし、なのはの声でも、ユーノの声でもない。

 無機物のようなその声は、俺の心臓を握るように重くのし掛かる。

 

 『誰か……来てくれ……』

 

 細々と告げられる言葉は、今にも飢餓で死にそうで──求めている。

 

 荷物を全て家に転移させると、焦るように握り拳を作って走り出す。

 魔力源を探知し、場所を割り出すのは容易だった。

 

 額に浮かぶ汗が焦燥感を駆り立て、走る足をより早くして行く。

 頭に火が灯ったかのように、くらくらと揺らされる感覚が押し寄せ、何処から来たのか分からない嘔吐感が込み上げてくる。

 

 「嘘、だろ?」

 

 路地裏で足を止める。

 そして、見てしまった。

 

 心臓が激しく動き、上手く呼吸ができなくなる。それと同時に、膝に力が入らなくなり、生まれたての小鹿のように足が震えた。

 

 まさか、これは夢だ。

 

 嘘だ……嘘だ!!

 

 

 

 其処には──

 

 

 

 

 

 

 「むっちゃ可愛いー!!」

 

 

 喉が渇いて倒れている、むっちゃ好みの犬が居た。

 

 

 ***

 

 

 「うおー、むっちゃ可愛い。うちの子にならんかね君」

 「クゥン……」

 

 艶ややかな紅い毛が風に揺られ、気持ち良さそうに身動ぎするワンコ。

 器に入れた水を器用に飲む様は、まさしく俺の中では天使……いや神ッ!!

 

 と、正直ウチで飼いたい程、個人的には好みの犬なのだが、こんな毛並みのよい犬が野良犬な訳がない。

 

 そして何より、先程念話で俺と話していた。 理解しているのかどうかは定かでないが、その事を話すと、怪しさ満点の素振りを見せるので確実にそうだろう。

 さっきなんて、それで水をぶち撒けたし。

 

 「おーよしよし。可愛いなお前、マジで好みだわ本当。……ところでさっき念話使ってたよな?」

 「!?」

 

 ドンガラガッシャン!!

 

 ほらね。

 

 「まぁどうでもいいけど」

 

 再度ぶち撒けられた水を尻目に、器へと自販機で買った水を注ごうとする。

 が、このワンコが何度もぶち撒けた所為でペットボトル中には一滴も残っていなかった。

 

 えー、どうすんの? まだ物足りなさそうな目で見てくるし。

 つかお前がぶち撒けた所為だから、九割お前の所為だから。

 因みに残りの一割は俺の悪戯心である。

 

 「しゃーないな。『Wasser- Kugel(水弾)』」

 

 威力を最小限に抑え、ポシャン、と器の中へ発射する。

 指の先から発射された水を飲ませるなどシュールの極みな上、結界の張られていない場所で魔法を使ってしまったが……まぁ問題は無いだろう。

 

 器を再度ワンコの前に置くと、ワンコは飲む前に俺の事を睨んだ。

 

 え? なに? 俺何かした?

 グルルルル……とか言って、めっちゃ警戒されてんだけど。

 おい、恩人に向かってなんて失礼な態度を取りやがるこのワンコ。

 

 「まぁ待てJK。魔法で生成した水は気に入らなかったのか?」

 「グルルルル……」

 「どうどう、今天然水買ってくっから落ち着くんだワンコ」

 「グルルルル……」

 

 えー。

 もう何なんだよ。

 

 こうなったらアレしかないか……。

 

 「必殺、千年撫で殺し」

 「っ!?」

 

 一瞬でワンコの後ろへ回り込み、抱き抱え頭やら腹やらを撫でまくる。

 わしゃわしゃわしゃ、と。

 最初こそ抵抗していたワンコだが、段々と気持ち良さそうに体を此方へと預けて来るようになった。

 

 これぞナデポ。

 見たか全男子諸君。

 

 「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよ……」

 「何時まで撫でてんだオラァ!!」

 「ゴフッ」

 

 何処かの奇妙な冒険に出てきそうなレベルの撫で撫でを繰り出していると、突然頬に衝撃が走る。

 痛いなりー、と特に痛くもない頬を抑えながら、殴った本人の方を見る。

 

 「おーおー、やっぱり只のわんコロじゃ無かったのな」

 「気づいてたのかよ!」

 

 赤毛の巨乳お姉さん。第一印象、コレ。

 顔を羞恥と怒りと赤色に染め、ワンコもといお姉さんは此方を睨む。

 

 確信ではなかったが、念話を使っていたので只の犬ではないことぐらい分かっていた。

 

 にしても女かぁ……。

 

 「おい、さっきの姿に戻れよ。俺は女より犬の方が好きだ」

 「五月蝿いね、何でアンタなんかの命令を聞かなくちゃ……じゃなくて!! 何者だアンタは!!」

 「え? 俺?」

 

 後ろを振り向くが誰も居ない。

 

 「アンタだよ!!」

 「だってよ」

 「だーもう!!」

 

 何だコイツ、面白い。

 

 

 

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