悪魔とか中二乙ww……ゑ? 俺が悪魔、だと? 作:台座の上の菱餅
翌朝、睡眠を妨げられたことに舌打ちを一つ残し、妙に騒がしく鳴り響いているケータイを荒々しく手に取る。
今日は午後からの仕事なので、仕事場からの連絡は無い筈だし、ましてや俺に電話を掛けてくる者なんて居ないだろう。
つか、居たら罪状『俺の睡眠妨害の刑』で締め上げる。
で、薄目でメールを開いてみると、
『イロハさん、朝早くに申し訳ありません。アルフです。勝手ながら、メールアドレスを調べさせて貰いました』
俺は無言でケータイの画面を閉じた。
え、誰? いや、ちょ……マジで誰?
俺が知ってるアルフはもっとこう、何というか、言っちゃ悪いけど粗暴なイメージだ。
んで、なにあのメール。
メアドを特定されている恐怖より先に文章に対しての戦慄が走ったわ。
奴が『~です』『~ます』をさも当たり前のように使ってるんだぜ?
まだフェイトとかなのはとかなら「あー、小さいのにちゃんとしてるなー。で、なんでメアド知ってんの?」ってなるけどさ、いやはやアルフ恐るべし。
と、言っても、馬鹿げたこの上ないのでメールは無視することにしよう。
台所にあった食パンを魔法で良い感じに焼くと、翠屋の味を必死に真似ようとして失敗した珈琲を飲む。
ティロリン♪ティロリン♪ティロリン♪
すると、着信アリを思い出しそうなレベルの速度でメールが送られてきた。
え、こ、怖いんだけど。
すっげー怖い。
テーブルの上に置いてあるケータイが途轍もないオーラを発しているんだが……。
何か、手に取った瞬間違う次元世界に連れてかれそう。
あ、でもそれ良いかもしれない。是非とも艦これの世界へウヒヒ。
『フェイトがジュエルシードの件でお世話になったと聞きました。この前の事についてもお礼がしたいので、本日伺ってもよろしいでしょうか?』
残念、艦これの世界へは行けないようだ。
てかさ、内容は一つのメールに纏めて送るよね普通。
で、そこに何故フェイトの名前が出てくるのかね?
知り合い? だとしたらジュエルシードの取り合いはフェイトチームVSなのはチームになるのか。
やべっ、これ俺完全に巻き込まれるわ。
「誰? っと」
正直諄い文章を送っても意味がないと思うので、切実な疑問を送る。
ホント、誰だよこのアルフ擬きは。
すると、島風もびっくりのスピードで返信が返ってくる。
『アルフです、先日助けて頂いた赤い犬ですよ。もう忘れたんですか? 忘れてませんよね? 聡明なイロハさんの事ですから、確りと覚えているかと思います』
なんだコイツ、なんかムカつく。
そしてなんだ、お前は鶴の恩返しの鶴か。
もういいや。
『そっか。なら、仕事終わったら連絡するから、そしたら来てくれ』
我ながら女性に対して失礼な対応を取っていると思う。
しかし、生憎失礼な対応をして俺が損をするわけでもない為、淡白なメールを送らせて貰った。
それに便乗したように、了解、と一言書いた彼女からのメールを確認すると、トーストの端を一齧りした。
あれ、つーか俺の家知ってんのか?
***
何故か今日は仕事が割と早く終わり、期限の良いまま何時ものスーパーへ寄る。
店員さんがこれまた気さくな人で、此処は俺のお気に入りだ。
因みに、此処を壊そうとするならば全力で殺しにかかるから、ソコんとこヨロシクッ!
それはそうと、二人が夕飯を食っていくかもしれないので、今日は鍋にしようと思う。
まだあまり寒くないけど、っつーかまだ少し暑いけど。
ま、いいよね。
白菜、豚肉、豆腐etc……。
ビールはフェイト居るしいいか。
昨日は小麦粉などの調味料や、レトルトなどを買ったので、昨日と今日でバランスの良い買い物ができた気がする。
少なくとも、あと二週間は買い出しに向かわなくて済みそうだ。
会計を済ませ、パンパンに詰めたビニル袋を両手にマンションへと足を運ぼうとしたと同時に、俺は見知った顔を見掛ける。
あの赤毛は……アイツしか居ませんね。
「アルフじゃん、何してんの?」
「ん? おぉ、イロハじゃない。今ちょっと飲み物買いに来てたのさ」
そう言って持ち上げられる右手には、一リットルジュースの入った袋が持たれていた。
つかピ〇クル一リットルておま……。
あんな乳酸菌の集合体的なモン飲んでたら確実に腹壊すぞ。
「丁度いい。フェイト呼んでくるから、このまま家に伺っても良いかい?」
「ん? あぁ良いけど。……あっ、お前ら夕飯食ってくか?」
危ない、聞くの忘れるところだった。
このまま鍋を作ってから『え? お前と夕飯を? 勘違いも程々にしとけ喪男ww』なんて言われたら、俺は神をも殺してたと思う。
今ならまだ間に合う。今言われたらまだ精神的に軽い。
「良いの?」
「んまぁね。今日は鍋だぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
どうやら、そんな事を言われるほど好感度は低くないようだった。
何処か嬉々として去って行くアルフの背中を一瞥すると、準備をするために走る足を急がせた。
「あ、メールの事聞くの忘れてた」
と、一番肝心な所を忘れてましたとさ。
***
てれてってってーてれてってってー、てってってってってててててー。
さぁ始まりました第一回、俺の五分間クッキング!
今日の紹介するお料理はなんと、鍋でございます!
まず、変なオッサンに恋が実ると言われて買ってしまった無駄にデザインの良い鍋を用意して……。
そして、具材諸々を投入して……出来上がりです!!
五分クッキングならぬ一分クッキング、私だからできる至高の技ッ!! なんちって。
……バカみたいだわ、やめよ。
弱火でゆっくりと煮るため、ガス代節約をモットーとしている俺は魔法で火を灯す。
大体弱火程度に出力を調整すると、フェイト達が来るまで雑誌を見ることにした。
お、このTシャツ好きだわ。黒い感じが何とも言えない……。
『ピンポーン』
「あ、来た」
案外早い到着に驚きつつも、玄関のドアを開ける。
違う人だったらどうしよ、と謎の杞憂が脳裏を走るが、フラグとかは止めてほしい。
「こんにちは、イロハさん」
「ちょ、ちょっとなのはぁ~」
「おぉう……最早この世界にプライバシーなど無いのだろうか」
なのは&ユーノ参上。
見事フラグを回収したでござる。
「で、住所云々の驚愕と恐怖は沢山あるけどさ、先に聞いておくわ。何か用?」
「えっとですね、魔法を教えてもらいたいんです」
あー、別にいい……え?
ちょ、一瞬了解しそうになったわ。
聞き間違いでなければ、魔法を教えてくれと言われたと思う。
正直やりたくない。面倒くさい上に俺は誰かに指導した事の経験なんて皆無だ。
「えー、何で」
「強くなりたいからです!」
何その少年漫画のような動機。
孫って名字の戦闘民族を思い出す。
『オラワクワクスッゾ!!』なんて言葉を吐き、自分より強い奴を叩きのめす戦闘狂だ。
なのはもそうなのだとしたら、俺は彼女との関係を断つだろう。
「えー、また今度なら良いけど」
「今日は駄目なんですか!?」
「イ、イロハさんにも予定があるんだよなのはぁ~」
ユーノは常識人なようだ。
いや、それならフェイトもまだ常識人だっていう可能性はあるのだが。
アルフは常識人というより、人間が出来てる奴ってイメージだ。
そんなことはさて置き、この子達は現在の時間を把握しているのだろうか。
今、六時ちょっと。なのはぐらいのチビッ子はお家に帰る時間だ。
もし、此処で家に上がらせてしまえば、俺はロリコンの変態誘拐犯である。
不名誉極まりない。
「ってことで、帰れ」
「嫌です!!」
「何で」
「嫌だからですよ!!」
意味わからん。
思いの外頑固だし、ユーノ頼りねぇし、どうしよう……。
あ、親に頼るか。
「そこまで言うなら親に許可取ってきなよ。そうじゃないと俺が豚箱行きになる」
いや、割と真面目に。
もし、この条件がクリアされた場合、俺はなのはの両親の神経を疑う。
自分で言うのはなんだが、得体の知れない奴の家に愛娘を行かせるなんてさ。
俺なら死んでも上がらせないね。
「わかりました。ほらユーノくん行くの!」
「わわっ。待ってよなのは! イロハさんお騒がせしました!」
そうワーギャー言って去って行く彼女等を一瞥すると、俺は閉め出すように扉を閉じた。
「ちょ、イロハー! 待ってくれー!」
が、丁度良くアルフ達が廊下を走って来た為オープン・ザ・ドア。
何で俺の部屋を知って……あ、フェイトか。
にしてもさ、最近プライバシーの脆さを実感するようになってきたのだが、大丈夫なのかね日本。
いざとなれば、俺の個人情報を握っている奴の鼻の穴を三つにして万事解決なのだが、犯罪者にはなりたくないから極力避けたい。
「ごめんごめん、気付かなかった」
「あぁ、大丈夫さ。それとこれ、差し入れ」
「さんきゅ。ほれ上がれよ、フェイトも」
「お、お邪魔します」
アルフから食材の詰まったスーパーの袋を受け取り、もじもじしているフェイトを急かす。
うーむ、梨に林檎か。これまた鍋に関係無いもん持ってきたなアルフ。
食後に剥いてみるか。
「うそ……」
冷蔵庫にしまいつつ、ご無沙汰していた座布団を取り出しているとそんなアルフの声が俺の耳に入る。
え、なに? ま、まさかゴキブリか!?
「部屋が……綺麗だ」
「てめー馬鹿にしてんのか」
「え? いやイロハの部屋が片付いてるってなんか意外だっただけで」
「成る程、表へ出やがれ」
コイツ俺のことを全力で馬鹿にしに来てる。
部屋が……綺麗だ、って何だよ。もっと可愛い反応しろやゴラァ。
きゃっ、イロハ君の部屋良い匂いがする❤的なさぁ……あ、やっぱ今のは無しで。
キモいわ。
「け、喧嘩は駄目ですよ!!」
いや、喧嘩はしてないけどね?
どちらかと言うと、俺が一方的に怒ってる訳でですね。
ていうかフェイト、なんか可愛いな。
なのはも可愛いけど、それとは違う可愛いさつーかなんつーか……。
あ、やべ、俺ロリコンへの道をゆっくりと辿ってるわ。
取り敢えずフェイトの頭を撫で、アルフを無理矢理座らせると、フェイトをその隣に座らせる。
あつあつの鍋を素手で掴む訳にはいかないので、浮遊魔法でコンロの上に置くと、箸やら皿やらを用意してフェイトの前に座った。
「あ、本当に料理できたんだ」
「え?」
「いや、てっきり鍋ってのは嘘かと」
「お前、やっぱ俺の事舐めてるだろ」