悪魔とか中二乙ww……ゑ? 俺が悪魔、だと? 作:台座の上の菱餅
今回はギャグ少なめ、っつーか無いです。
「そーいえばさぁ~」
仕事が終わり、時計の短針が丁度七時を示す頃。自宅で漫画を読んでいたときだった。
俺より一巻遅れて読んでいたアリシアが、唐突に声を上げる。
疑問符を浮かべて首を傾げる俺とは少し違う疑問を持ったような表情で、彼女は口を開く。
「最近手合わせしてないよねー」
手合わせ、と言うと、俺とアリシアの間では模擬戦の事を指す。
模擬戦と言えど、最早殺し合いの様なもんなのだが。
「なに、したいの?」
「うん。暇だし鈍ってないか確かめたい」
そうかー、と一言告げると、長距離転送の準備をする。
行き先は、知り合い(やっぱりドM)に作って貰った魔法空間。
真っ白で統一された、縦横高さ全て百メートルの淡白な空間で、どれだけ暴れても問題はない仕様だ。
多分、禁忌の魔法でも使わない限り壊れないと思う。
「うわぁ、久し振りだな此処」
「そうか? 一年とか二年程度だろ」
最後にアリシアと手合わせしたのが大体一年か二年ぐらい前。
それ以来は一切してないから……必然的に鈍ってるだろうな。多分。
「よーしやるぞぉ! あ、因みにミーシャは召喚魔法禁止ね、規格外だし」
「んー、まぁいいけど。じゃあ適当な魔法だけで行くか」
召喚魔法と言っても、飲み友(ソロモン七十二柱のイツメン)の皆様の力を借りるだけなのだがね。
因みに、此処に来てやっとのネタバラシだが、なのはとユーノに出会ったときも召喚もとい力を借りてたんだよね。
魔力元々あんまり多くないし。悪魔基準の話でだけど。
アモンの力借りないと一撃で決められるか不安だったのよ。
それに、あんま俺の悪魔としての姿をポンポン見せたくないしね。
閑話休題。
さて、と。
最近の魔法は良く分かんないからアレだけど、デバイスだっけ?
アリシアは槍型のアームドデバイスを展開し、俺が教えた魔力錬成で強化を施す。
で、加えて身体強化。これで身体能力的には俺と同程度である。
適正を無視した俺の魔法は此処までも便利なんだぜ?
因みに俺は身体強化はしない。何か師匠としてのプライドが許さないんだよね。
「んじゃ、俺も得物を用意するか」
と、長年ご無沙汰していた、今は赤いピアス型の相棒に触れる。
魔力を少し流し込むと、返事をするように槍型へ変化した。
名前はラディ。何か神様に貰った、形状変化に特化している魔具である。
外見は真っ赤な槍。そんだけ。装飾とかはあまりないシンプルな仕様。
と、閑話はさておき。
用意は出来たので、軽く構える。
「よし、バッチ来──あぶねぇ!」
余所見していた為気付かなかったが、もう既にアリシアの得物は目の前に迫っていた。
咄嗟にラディの柄で弾くと、そのまま石突で彼女の腹を突く。
まさか不意打ちとは。まぁ、この位あしらうならポテチ食ってても出来るけどね。
「っとと、余所見はいけないよ?」
態勢を立て直し再度デバイスを構えると、地を蹴って突っ込んでくる。
そんなアリシアを一瞥すると、左足を前に出し極力姿勢を低くする。
そのままアリシアがデバイスを突き立てようとするのを見計らって、避けつつ鳩尾に一突き。
まぁ当然避けられる訳で。
と言っても、そんぐらい予想はしてる。
半身になって避けるアリシアを吹き飛ばすように、ラディを地に突き立てそれを支点に回し蹴りを叩き込む。
防御はしたものの、一瞬重心の拠り所を失ったアリシアは若干揺らぐ。
此処だー、と言わんばかりに石突で彼女の顎を打ち上げるとその勢いで穂先を下から振り上げる。
槍バージョンの逆袈裟斬り、ってね。
「んぐっ!」
それをデバイスの柄で防ぎ、何とか距離を取ろうとするアリシアだが……まぁ、そう易々と逃がしはしない。
突き出されたデバイスを適当に流し、出していた左足を軸足に右足で一歩踏み込む。
足裏で蹴り飛ばそうとしてくるが、それは悪手だ。
一本となったアリシアの軸足に足払いを掛けると、穂先を突き立てる。
が、やはり伊達に何年も槍(今はデバイスだけど)を握っている訳じゃないのか。
彼女は体が宙に浮いたままそれを弾き、何とかやり過ごす。
うん、何年も教え込んだ甲斐があったな。
なんか人間とは思えない動きしてたけど。
「鈍ってはねぇな。さすが年増」
「誉めてるの? それとも貶してるの?」
と、そのまま振り被ってくるアリシア。
おぉ、コワイコワイ。でも事実だ。
低姿勢で放たれるデバイスを地を蹴り避けると空中で体を捻り、突き立てる。
が、若干重心をズラすことで簡単に避けられてしまう。
やっるぅ~、流石アリシア。が、別にそこに痺れもしないし憧れない。
踏み潰そうと足を突き出す。
が、普通に弾かれ、その勢いで頭から落ちる形となる。
「よっ、ほっ」
石突で二回地面を突き態勢を整える。
そのまま着地と同時に低姿勢のまま突貫。
フェイントで、右足を踏み込み、左手の親指と人差し指で輪っかを作り、其処に柄を通すと少し突くフリをする。
それを突きだと思ったのか半身になったアリシアを一瞥すると、無防備になった彼女のデバイスに突きを放つ。
「っ!」
一瞬落としそうになるアリシアだが、直ぐに持ち直し迎撃を開始する。
まぁ、無駄。
突かれる前に隣を通り過ぎ、そのまま体を反転。上半身の半分を突き出す感覚で、ラディをアリシアに捩じ込む。
何とか防いだものの、勢いを殺せずに吹き飛ぶアリシアのデバイスを吹き飛ばし、胸倉を掴むと、穂先を彼女の首もとに突きつけた。
「ハイ俺の勝ちー」
「女の子の胸倉を躊躇なく掴むって……」
「女の子……ハッ」
鼻で笑いつつ離すと、プンスカ怒るアリシアを尻目に、もう一度手合わせをする為構え直すのだった。
***
私とミーシャの出会い方は、結構不思議な物だった。
まず、魔力事故に逢ったことかな。怖かったとかよりも困惑した。
二人とも知らない場所に飛ばされたりして。良く分からなくて泣いちゃったし。
で、ミッドチルダに帰るため初対面のミーシャと旅する事にした。
ちょっと迷ったけど、頼れるのはミーシャだけだったから。
面倒臭そうにだけど、同行を許してくれたミーシャは相当のお人好しだと思う。
お母さんと会えないから寂しくて泣いたときも、慰めてくれたし……。
ミーシャとの旅は、本当に変わった毎日だった。
真っ赤な禍々しい湖に行ったり。
虹色に光る大地を見たり。
トカゲの姿をした者が住む集落に行ったり。
魔法ではない、不思議な力を使う人達が住んでいる国に行ったり。
彼が悪魔だと言う事を知ったり。
まぁ、それについてはどうでも良かった。
強いて言うなら、それのお陰で彼と契約を結び肉体的な加齢は無くなった事かな?
それを言ったら、嬉しそうに笑ってたミーシャの顔は今でも忘れないよ。
話を戻そっか。
結局、ミーシャの魔法で、一個人では不可能な次元間移動を繰り返して色んな所を回った。
紛争が起きている次元世界に飛び込んでしまうことも何度かあったし、危ない所へ行ってしまうことも多々あった。
けど、その度にミーシャが守ってくれて。
私の目には、白馬の王子様みたいに見えてたかな? なんてね。
んで、かれこれ数年経って、私も大きくなって。
その時、最早ミッドに帰るという目的なんてお互い忘れてた。
だって、『楽しかった』から。
お母さんと会えないのは寂しかったけど、ミーシャとの旅はそれを忘れさせてくれる程に楽しくて。
時々彼が教えてくれる古風の魔法を学ぶのも楽しかったし、何より色んな物を見れたし。
彼が居なかったら、私は死んでた。
その点ミーシャは命の恩人だし、今考えてみるとミーシャかミッドに帰る理由なんて無かっただろう。だって未練は無いって言ってたし。
多分、私を返す為だけに旅を繰り返してたんだと思う。
ホント、お人好し。
そんなミーシャを私は尊敬している。
強くて、優しくて、お人好しな彼を心の底から尊敬している。
だから──越えたい。
尊敬する彼を越えたい。
魔導師としての彼を、槍を持つ者としての彼を、悪魔としての彼を、越えたい。
ミーシャに教えて貰った魔法を研究して、教えて貰った槍の振り方を練習して。
初めて教えて貰ったのが二十年ぐらい前……確か十一歳の時。
それからずっと、鍛練を怠ることは一切無かった。
今日突然ミーシャに手合わせを挑んだのは、その成果を再度確かめる為だ。
『少しぐらい、縮まってかな?』
なんて思ったりして。
何年も槍を、魔法を磨いてきたし、少しぐらい差が縮まってても可笑しくないかなと思ったんだよね。
──でも、差は縮まってなかった。
余裕を持った表情で、必死になってる私を適当にあしらい。
慢心でなければ、それなりの腕を持っていると自負している。
けど、それでも彼との差は大きいんだな、って……。
やっぱり凄いや、ミーシャは。
彼は私の恩人で、旅仲間で、師で……まるで兄の様であり、父の様であり──想い人もである。
越えるまで逃がさないからね、ミーシャ。
基本、主人公以外はシリアス目です
逆に言うと、主人公がかなりKY
次はギャグ盛り込むぞ(使命感)