作者の妄想大戦k      作:kanaumi

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物凄く久しぶりの投稿です。


第8話 擬態獣掃討作戦 ⑤

 

 

 作戦開始から、二時間。

 潮風が冷たいのか、汗が冷えているのか、自分でもよく分からなかった。

 

 何故だか知らないが、少し前から擬態獣の数が急激に少なくなっていた。

 “楽になった”――そう思った瞬間が、一番危ない。隊長がよく言っていた。

 

 だから俺たちは、一度大空魔竜に戻ろう、と話していた。

 

「どうしますか?」

 

「確かに……俺達の機体は限界に近い。だが、擬態獣の数が急激に減った理由も気になるな」

 

「俺達で結構倒したからじゃないですか?」

 

「……そうだといいが」

 

 猿渡さんの声は、軽くない。

 俺は正直、助かったと思っていた。機体が動くからといって、パイロットが無限に戦えるわけじゃない。

 集中力が落ちた瞬間、死ぬ。

 

 さっきの俺みたいに。

 

「猿渡さん。ここは、一旦離れましょう。このままでは――」

 

 前方で擬態獣を押さえていたゴーダンナーに呼びかける。

 

「……そうだな」

 

 ゴーダンナーが一体を殴り倒し、さらに海面へ拳を振り下ろした。

 衝撃波が水柱を上げ、周囲の擬態獣がまとめて吹き飛ぶ。

 

 そして、ゴーダンナーは背を向けた。

 撤退――その判断は、戦いが長いほど重い。

 

 俺も続いて後退する。

 背中が、妙に寒い。背後を“見たくなる”。

 

「ミスト。大空魔竜までどのくらいだ?」

 

「えっと……今は前方の岩が邪魔で見えませんが、そんなにかかりません」

 

「よし。なら少し――……ん?」

 

「どうしました?」

 

 猿渡さんの声が低くなった。

 

「……ミスト。擬態獣の様子が変じゃないか?」

 

「え……?」

 

 俺は速度を落として、擬態獣の群れを見る。

 

 攻撃が――止まっている。

 

 さっきまで“押し寄せる波”みたいだった黒い群れが、

 急に、散り始めた。

 

 ただ逃げている。

 いや、逃げ方が違う。

 

 “敵から目を逸らさない”ような動き。

 何かを恐れている動き。

 

「……確かに。変ですね」

 

「……ああ。まるで何かから逃げているように見える」

 

 俺たちは、擬態獣を見下ろせる位置で機体を降ろした。

 目を凝らす。

 レーダーを回す。

 でも、海は広い。何も映らない。

 

「あっ……大空魔竜が来ましたよ」

 

 巨竜の影が、海上を覆う。

 それだけで少し安心しかけた――その瞬間。

 

 擬態獣の群れが、さらに散った。

 “逃げる方向”が一つに揃う。

 まるで、見えない境界線でもあるみたいに。

 

「この事はキャプテン・ガリス達に伝えてから考えるか」

 

「あ、はい!」

 

 

 大空魔竜に回収され、ブリッジで先ほどの行動を報告した。

 記録班が映像とレーダーのログを引っ張り出し、“逃げていた理由”を洗い直す。

 

 その後、残っている擬態獣を各隊で掃討し、作戦自体は終了した。

 ……終了した、はずだった。

 

 だが俺たちは、先ほどの挙動が引っかかり、一度ダンナーベースへ向かった。

 

 

ダンナーベース

 

「擬態獣が、逃げるような動きをしていた?」

 

「はい。俺達が一度後退しようとしていた時に、擬態獣が急に攻撃を止めて散って行きました」

 

 葵所長が腕を組む。

 

「ふむ……擬態獣にはあまり詳しくないが、擬態獣はそういう行動をするものなのかな?」

 

「私達もそこまで分かっている訳ではないが……そんな行動に出た、というのは初めて聞いたな」

 

 ブリッジや管制の空気が、少し重くなる。

 勝ったのに、勝った気がしない。

 

「葵所長、これを見てください」

 

 周囲を調べるために引き出した映像。

 そこには――黄色い生き物が映っていた。

 

 色が、浮いている。

 自然の黄じゃない。警告色みたいな黄だ。

 

『……あな……たは……そこに……いま……すか?』

 

『グギャルル!』

 

『グルル……!』

 

『あなたは……そこに……いますか?』

 

 擬態獣が、その声を受けた瞬間――消滅した。

 一匹や二匹じゃない。

 五十、六十。まとめて“消えた”。

 

 爆発じゃない。破裂でもない。

 ただ――いなくなる。

 

 会議室が静まり返った。

 

「……なんだ、これは」

 

 葵所長の声が、硬い。

 

「所長は、これを知っていますか?」

 

「……いや。私も初めて見た。だがこれは――」

 

 葵所長は即座に判断する。

 

「オーブや各首脳陣にも、この映像を送っておく。これは危険すぎる」

 

「擬態獣でも手を焼いてるのに……こんなのまでいたら……」

 

「……ひとまず、こいつに出くわしたら“逃げる”事を第一に考えるべきだろう」

 

 “撃退”じゃない。

 “交戦”でもない。

 最優先が“撤退”になる相手。

 

 それだけで、格が違うのが分かった。

 

 

 各員、研究所や所属へ連絡し、今後の動きをすり合わせた。

 

「さて。全てが丸く収まった訳ではないが……作戦は終了だ。これからの事を話そうか」

 

 キャプテン・ガリスが区切る。

 

「甲児君達は、しばらくダンナーベースにいるそうだな」

 

「おう。しばらく世話になるぜ」

 

「ボス~帰らねぇんですか?」

 

「帰りましょうよ、ボス~」

 

「馬鹿やろう!さやか達が残るのに、俺様だけ帰るとか考えられねぇ!」

 

「もう、ボスったら」

 

 そのやりとりで、場に少しだけ空気が戻る。

 怖い話のあとに、軽口がある。

 “生きている側”の音がする。

 

「大空魔竜組は?」

 

「私達もしばらく世話になるよ」

 

「あら、ならベースも賑やかになるわね」

 

「静かよりなんぼかいいですよ」

 

「ミスト達は?」

 

「ん?……僕達は、いや僕はひとまずオーブに戻るよ」

 

「ミストは?」

 

「俺はここに残ります。アスハ代表の命令で――擬態獣も逃げ出す奴が出たのに、オーブにいては素早い対応ができないって。しばらくダンナーベースに補助員として行くようにと言われたんです」

 

「そうか。オーブは色々あるからな」

 

「まあ、ひとまず飯食いに行こうぜ!」

 

「バルトフェルドさんは、今日までいますよね」

 

「ああ。宴会にも参加させてもらうよ」

 

 作戦終了を祝って行われた宴会は、

 各々が集まって飲んだり食べたりして、ひとまずの区切りを笑って誤魔化した。

 

 ……誤魔化さないと、やっていけない夜だった。

 

 

~???~

 

「どうした?」

 

「……_か、これを見てくれ」

 

「………!これは、」

 

「そう。____だ。ついに現れた」

 

「そうか……これが___」

 

 画面の向こうで、黄色が揺らめく。

 

『あなたはそこにいますか?』

 

『グギャルル!』

 

「___、これがもたらすのはなんだ?」

 

 返事の代わりに、音だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたはそこにいますか?』

 

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