はい、すいません。
申し訳ありません。
1年超とか、亀なんてレベルじゃないですね。
今回は、リハビリみたいなものです。
感想返しについては、溜めてた自分が悪いのですが無理そうです。
ごめんなさい。
――
脳裏に、誰とも知れぬ声が響く。
――主は、命乞いなど、救済の陳情など聴きはしない。
嗚呼、この声は知っている。誰であったろうか?
――祈りとは、祈りとは戦いである。
信仰は、異端と、悪魔と、化け物共の血でこそ贖われる。
顔も曖昧な、男の口癖だ。
――呆れ返るほどの、血と灰を、塵の山を積み上げてこそ……
「神は、降りて来る……か」
鼻を鳴らし、嘲笑する。
それは、盲目的に異端を殲滅する恩師への嘲りであり、その軛から放たれて尚、追従する己への揶揄を含むものであった。
廃棄された教会の一室、信仰は地に堕ち、神からも見放されたこの場所で、信仰の何たるかを思い出すなど、平時の彼らしくもない。皮肉な脳髄を罵倒する。
「……」
囁くような声が聞こえた。今度は、愚図々々に腐った過去からの幻聴ではなく、現実に空気を震わせて伝わる音声だ。鬱陶しく、視界にぶら下がる白髪を掻き上げ、旧礼拝堂へと向かう。
礼拝堂――等と呼ばれたのは、今は昔のことだ。
そこには、聖女が居た。これも皮肉だ。
「お祈りですか? アーシアくーん」
「フリードさん……」
己の名を呼びながら、彼女が振り向く。慈悲と、憂いと、信仰しか映さぬ表情は、多くには美しいのかもしれない。しかし、酷く不愉快だった。
「やめておきなさい。そんなことをしても神は聞き入れません」
「何故、そのようなことを言われるのでしょうか?」
単純な疑問を述べた心算なのであろう。明らかな困惑と、無意識的な憤りを混ぜた問いに愉悦を見出す己は、誰憚る事無く下種だ。
「神は、
「そんな事はありません。信仰とは心の在り方、祈りとは心の所作です。たとえ打ち捨てられた教会であろうと、異教の地であろうとも、必ず届きます。艱難辛苦の果てであろうとも、必ず救済は齎されます」
小柄な体に、細い腕に、可憐な容姿に見合わぬ強さを瞳に輝かせて、此方を見詰める。睨むのではなく、幼子に諭すような視線に苛立ちは増し、微細な悪意が牙を剥く。
「しかし、老いも若きも救い、果てに悪魔ですら救って見せた貴女の下に、神は降りて来なかった。救いは齎されなかった。剰え、魔女の汚名まで被せられ、審問と弾圧に晒されても、まだ、主を信じると? 」
「無論です」
「憎くはないのですか?」
「敵を愛し、憎む者に親切にせよ。呪う者を祝福し、辱める者のために祈れ。あなたの頬を打つ者には他の頬をも向けてやり、あなたの上着を奪い取る者には下着をも拒むな。あなたに求める者には与えてやり、あなたの持ち物を奪う者からは取り戻そうとするな。人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ」
混ぜ込まれた悪意に、気が付きもせず。躊躇なく答える彼女に、笑みが零れる。
声を上げて笑う自分に、一瞬、目を丸くすると、直ぐに不満げな顔を向けて来る。
「じょーだん、じょーだん。ごめんね~、アーシアちゃん。いやぁ、まともに喋った事なかったからさぁ、からかっちゃった。許してくれさい」
矢鱈と重くなった空気を、根本から打ち壊すように、茶々を入れて背を向ける。
ひらひらと手を振り、軽快な足取りを心掛けて外へと歩き出す。
「貴方は、貴方にとっての信仰とは何ですか?」
その問いを投げる顔は、いつもの慈愛と憂いに満ちているのだろう。足取りはそのままに、顧みることもなく、答える。
「戦いこそが、祈り。裂けて砕けて割れて散る、永遠の門を最後に潜るのは我ら自身だ」
「……っ」
「ま、受け売りだけどねぇ」
廃教会を出ると、静かな街並みと、絵の具で塗り潰した様な不細工な青空が広がっている。胸に蟠る、不快感や苛立ちは消えていた。ただ、纏わり憑く惨めさだけを友に歩き出す。
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彼女が欲しい。
別に、モテない男の独白とかではない。
「アーシア・アルジェント、か」
先日、道案内をした少女を思い出す。
淡く輝く、高貴な魂。信仰と、純潔と、その他諸々の清純そうな要素が混じり合わさった彼女は、悪魔からしてみれば、垂涎物だろう。者だろうか?
思考を彼方此方へと飛ばしつつ、一人の少女の事柄を考え続けるなど、今までに無い経験かもしれない。
――否、二度目だ。
「ふむーん」
浮いたり落ちたりと忙しい気分を余所目に、時間は過ぎていく。
「痛っ」
「余所見しないで下さい。怪我させますよ」
「痛いっ、ちょっ、ストップ! 怪我しないように止めてください」
「お断りします」
容赦の無い、拳撃、蹴撃、肘に掌底と、コンボが繰り出される。一撃一撃が、命を狙っているんじゃないかと疑いたくなる位には重い。
「失礼ですね、これでも手加減しているんです」
「嘘だっぐほぉ」
「変な息漏らさないで下さい。気持ちが悪い」
攻撃も、口撃も容赦が無い。無慈悲と言い換えても良い。
「悪魔め」
「正解。ですが、お互い様です」
あ、そうだった。と呆けた俺に、リバーブロー!!
何時になったら、宮田君と決着つけるのだろうか?
暗転。
「あ、起きましたか? 続けましょう」
「勘弁してください」
自分より年下で、自分より小柄で、可憐な容姿を持つ少女に、恥も外聞もなく土下座する。
「冗談です」
「ほっ」
「ですが、先輩の武器となるのは神器による倍加、一撃必殺です」
避けるなり、耐えるなりの体が出来上がるまでは毎日続けるという、有難いお言葉を頂き、帰路に就く。
「ただいま~」
疲労困憊も甚だしく、帰宅とともにソファに沈み込む。着替える気力すら湧き上がらない。
「お帰りなさい、一誠」
随分と疲れてるわね、と労う母さんが、どこか余所余所しい。
「ん? どうかした母さん」
「ねぇ、一誠、貴方悪い友達と付き合ったりしてないわよね? 最近、随分と帰りも遅いし、夜中も外に出ているようだけど……」
「そんな事、ある訳ないよ。大丈夫」
「本当に? ねぇ、本当は何かあるんじゃないの?」
悪魔になりました、なんて言える筈もなく。真剣な眼差しの母に、気圧される。
「本当に、大丈夫だって」
「本当に、お母さんの目を見て言って」
不安に揺れる目の光に、浮かび上がる言葉は無く、重い沈黙だけが居間に犇めく。
「ただいまー、って重っ!! 何、この空気」
「お帰りなさい、貴方」
母が帰ってきた父に対応するが、その声音は硬い。
「一誠、ついに世間様に顔向けできないような事ヤッタのか?」
「ちげーよ!」
両手を繋がれたように持ち上げる父に突っ込む、信用が無い事を嘆くべきか、この場で冗談――そう信じたい――を言える父に呆れるべきか葛藤する。
「そこは、尊敬すべきだろう」
「貴方は黙ってて」
「はい」
母も痺れを切らしたのか、強権を発動し、父を抑え込むと此方へと視線を戻す。
「一誠、私達に言えない事もあると思う。でも、貴方が心配なの、本当に何もない?」
「無いって、言ってるだろっ!」
言えない事があると理解していながら、何故聞くのか?
無いと言っているのに、何故、信用しないのか?
気が付けば、声を荒げていた。言った瞬間、後悔や、罪悪感が押し寄せて来るが、詰まらない意地が、喉元で謝罪の言葉を押し留める。
「ごめんなさい」
先に謝ったのは、母だった。しかし、どこか、決定的な亀裂を生んでしまったようにも感じる。
「……、ごめん。先に寝る」
「一誠、貴方、一誠よね?」
「こらっ、お前なんてこと……」
精神的な疲弊もあるのだろう。しかし、ある意味において本質を突く言葉が突き刺さる。
「大丈夫、大丈夫だよ父さん。母さん、俺は、僕は一誠だよ。兵藤一誠だ」
母が泣き崩れる。父が慰めるように、覆い被さり何事かを話しかけている。
何も言わず、居間を出て、部屋に向かう。
「お前、少し疲れてるんだ、な? 旅行に行こう二人で、新婚旅行と同じところに泊まろう?」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
背後から聞こえる会話が、重く圧し掛かる。彼らの平穏を奪ったのは、間違いなく自分だ。
「俺は、一誠だよな」
呟いても、何も変わらない。自分は選択したのだ、あの時に、自らの意志で、地獄に下ることを是としたのだ。
『さらばだ』
転生時に浮かんだあの言葉の意味が、重みが、悔恨が、罪悪が、初めて理解できたような気がした。
リハビリが重い、と感じた方は申し訳ない。
何故かフリードが某伯爵化したり、兵藤家が○生獣の泉家みたいになってますが
久し振りだから、久し振りだから!!
大事な(ry