【ネタ】畜生に堕つ   作:白虎野の息子

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注)サブタイ程、シリアスではありません。

期待して読むと、がっかりします。


それぞれの決意、最後の日常

「ただいまーって、暗っ」

 

 友人と別れ、家に着く頃には日も沈みかけ、周辺を黄昏に染めていた。しかし、家の中は電気も点けられておらず、カーテンも閉め切られ、どんよりとした暗闇に沈んでいた。両親は出掛けている様だが、兄の靴は有るので全くの不在という訳でもないらしい。

 

「おい、兄貴。てめぇの性格が暗いのは、何も言わねぇけどよ、電気ぐらい点けたらどうだ」

 

 居間で何もせずに座る兄に声を掛ける。幾ら暗いとは言え、其処に在るのは紛れもない兄だという確信と、寝てはいないことは直ぐに察せられた。

 

『相も変わらず、騒々しいなお前は』

 

 スイッチに手を伸ばそうとした姿勢のまま、硬直する。何時もと同じような口調、声音であるにも関わらず、ナニかが違う。全身から冷や汗が吹き出し、瞬く間に総毛立つ。

 

「兄貴? ……だよな?」

 

 半ば以上に、確信はある。ただ、尋常ではない気配がソレを、『兄』と呼ぶことを躊躇わせる。

 

『何を言っている? お前は俺の妹だろう』

「だ、だよね。兄貴、何かあったのか? 何時もと雰囲気違うけど」

 

 帰ってきた答に安堵しながら、腰の引けていた自分に苦笑する。緊張が緩んだところで、明かりを点け、兄に疑問を投げ近場のソファに座りこむ。

 

『なにか? 何も無いし、何時もと変わらない。俺は、何時如何なる時も俺で俺だから』

「あ、あぁそう」

 

 さっぱり解らないが、取り敢えず納得しておく。同時に、今の自分の表情は何時もの兄である事に悲喜交々といった様相を呈しているのだろうと思う。

 

こんなんで、普段の学校は如何しているのだろうか?

 

「何も無いなら良いけどよ、母さん達を悲しませる様な事はするなよ」

 

 何時もと変わりないならそれでよしと、立ち上がり、一応の忠告だけは口にしておく。

返事をしたのかどうかさえ、分からないような声量で応答するのを確認してから、着替えの為にも自室へと向かう。

 

「ふぅ」

 

 溜息と呼ぶには軽い、休息の為の一息を吐く。普段以上の疲労感が圧し掛かり、部屋に置かれた寝台からは途轍もない魔力が放たれている。しかし、ここで眠ることは許されない。

 

「勉強、しないと」

 

 幼い頃から、兄はずば抜けていた。勉強や運動も、1を教えられる前に10も100も熟す様な反則的な存在だ。正直言えば、双子ながら一生追いつける様な自信は無い。だが、今まで只管に見えぬ背を追い続けてきた。強迫観念染みていると、自分でも思う。思っているのだが――

 

「一人には出来ないしな」

 

 産まれたその瞬間から、兄は独りだ。誰にも並べず、誰にも追えず、誰も見えない地平の果てに立っている。妹である自分の事すら、きちんと認識しているのか怪しい程に。

 

それは、それは嫌だ。

 

 悔しいし、悲しい。そして、何よりも寂しい。

 

 己が、なのか兄の事であるのかは、現状では判然としない。

 

「取り敢えず、追いつけば分かるだろうし」

 

 両頬を叩き、気合を入れる。

考えても分からないのであれば、考えなければ良いのだ。

 

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 天野夕麻、俺の彼女。そう、彼女。ガールフレンド、恋人etc. etc.

平時、女人の乳房でいっぱいの俺の脳内は、それはもうピンク色に染まっていた。因みに、常時桃色だろうといったツッコミは受け付けない。

 

「ふっ」

 

 思わず、いや、堪らずといった風情に笑みが漏れる。今の自分の顔は、とても見られたモノではないだろう自覚はある。

 

「おい、一誠」

「ん? 何だね、元浜君」

 

 怪訝な顔で話し掛けてきた悪友に、余裕を持って応答する。

 

「キモい」

「な、何が?」

「存在が」

「ついでにウザい」

「松田まで、いきなりなんなんだよ」

 

 唐突に心無い言葉を投げ掛けてきた友人二名に、心底傷ついたという顔をしながら抗議する。勿論、自慢は忘れない。

 

「あぁ、酷い事を言う奴らだ。繊細な俺は心底傷ついたよ。これは、夕麻ちゃんに慰めて貰う他ないな」

 

 よよよ、と崩れ落ちながらチラリ、と二人の反応を窺う。

 

「……」

「……」

「……」

 

 絶対零度もかくや、というような勢いで場が冷え込む。飢えた獣のような、それでいて冷徹な狩人の如き眼差しを以て見詰めてくる二人を相手に、先程までの心理的な優勢が崩れ去る。

 

「な、なんだよ」

「いや、そういえばお前には可愛い彼女が居たんだなって」

「そうそう、清純そうな可愛い恋人が」

 

 随分と白々しい物言いだ、昨日の朝に自慢したのがそんなに気に食わなかったのだろうか?

 

「それが、どうした?」

「いんやぁ、ああいう娘に見られたくないだろう?」

「何を」

「ナニだよ、解ってんだろう?」

 

 まさか、いや、まさかな、桃園の誓いにも劣らぬような固い友情を誓い合った二人が、そんな非情な真似をする筈が――

 

「預かっておいてやるよ」

「譲り受けてやるよ」

 

 現実は非情である。元浜は建前を、松田は本音を、それぞれ有って無いようなオブラートに包んで宣言する。どのような言い方をしようが、この場においては全て同義の言である。

 

「駄目に決まってるだろ!! アレを集めるのにどれだけ苦労したと思ってるんだ」

 

 俺にとっての聖域《サンクチュアリ》、そう呼んで差支えないほどに充実した品揃えを実現させる為に、多くの金銭と尊厳を犠牲にしてきたのだ。

 

「じゃあ、在処を家族と夕麻ちゃんに教える」

 

 眼鏡を押し上げ、不敵に笑う元浜。松田も余裕の笑みを形作りたいのだろうが、先の事を考えているのか凄まじく下卑た笑顔になっている。

 

「お前らが、俺の聖……じゃない。隠し場所を知っている筈がないだろう」

 

 呆れたように、そう言った瞬間。二人は勝利を確信した様に頷き合い、恐るべき文言を吐き出した。

 

 名誉の為に詳細は言わないが、結論から言うと俺は敗北した。聖域は征服者《コンキスタドール》に蹂躙され、宝物は袋綴じ一つ残さず奪われた。

 

「はぁぁぁ」

 

 吐き出される溜息は長く、重い。重力に引かれるまま、寝台に倒れ込み瞼を閉じる。

脳裏に思い描くのは、人生初の恋人。

 

「そうだ! 俺にはまだ彼女が居る。週末はデートだ!!」

 

 落ち込んだ気分を半ば無理矢理に盛り上げ、当日のプランを考えるべく机に向かう。

 

写真のおっぱいより、本物のおっぱいだ。

 

 無論、心根自体は性癖ほど歪んではいないので実に健全なデートコースになったのは言うまでもないが。

 




半分以上が、普通の男子高校生によるバカ話で申し訳ありません。

しばらく、主人公視点は出てきません。
だって、視界に入らな(ry

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