【ネタ】畜生に堕つ   作:白虎野の息子

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少々、遅れました。
申し訳ありません。

相も変わらず、展開は遅いです。


理の影響

 彼、或いは彼女が異変を察知したのは、その場所の特異さと、その性質によるものが大きかった。

 

【唯、我で在りたい】

 

 極々、自然に刻み込まれた異端の道理。他の存在にしてみれば、自己確立への欲求を強める以上の影響は、そうないと断言できるが、己は違う。

 

 自己の確立とは、即ち幻想の否定に繋がるモノだ。他の何者でもなく、自分自身を拠り所にするというのは、夢幻夢想の存在を許容しない事を意味していた。そして、それこそが己を苦悩へと追いやる。無限であれば、理法を刻み込んだ相手と直接相対せぬ限り大丈夫だろう。根本を突き詰めれば、大差ない存在である我らであるが、内包するモノの違いが、及ぼす影響に差を与えているのだろうと結論付ける。

 

―――。

 

 音にならぬ咆哮を上げ、上下左右の無い空間でのたうつ。誕生から今まで、使用された事の無い生存本能が絶叫し、感じた事の無い恐怖が脳髄を掻き回す。世界から隔絶した場所であるが故に、直接的な理としての影響は無い。しかし、己からして見れば薄皮一枚隔てた場所に特大の爆弾が有る様なものだ。相手に、知覚されれば終わる。そんな程度の平穏が、一体何の慰めになるというのか。憤りすら感じる、極限の状態に陥る。

 

古来より窮鼠猫を噛むと人は言うが、窮状に追い詰められた場合、生物が採る手段というのは非常にシンプルだ。

 

逃走か、闘争か。

 

 より、生き残る可能性の高い選択肢を選ぶのは、原初より根付いている本能に他ならない。そして、絶対の強者として生まれた彼が選んだのは――

 

何たる無様。怯懦に塗れる等、我に非ず。

 

 身に染みる恐怖を振り払うように、吼える。並みの存在であれば、耳にしたと自覚する間も無く消滅するであろう威を以て、上げられた大音声は、元来、色の無い空間を染め上げる。

 

 意味も渇望も、凡そ言葉に出来そうなものなど一切含まない。唯、己のみを以て染め上げられた空間は、真紅に変わる。

 

 程無くすれば、無限も此処に現れるだろう。アレが、此の場を染める事を許容する筈が無い。我らは、そういう風に出来ている。

 

来たる時に思いを馳せ、狭間に君臨する真紅の龍は己が宇宙の深奥で眠る。

 

------------

 

「そう、分かったわ。有難う、お兄様」

 

 冥界からの使い魔を通し、兄に礼を述べて通信を切る。同時に、溜息が漏れ、頭痛を堪える様にコメカミを揉む。最近――ここ二、三日の間だが――、問題の発生が多過ぎる。

 

はぐれ悪魔、堕天使の流入、極め付けがあの二人。言葉に出せば、限りなく陳腐だが、その質が明らかに自分の領分を超えている。

 

「何か、分かったのですか?」

「ええ」

 

 気遣うように、朱乃が問い掛けてくる。今は、その気遣いが染みる。

 

「今回の事件、兵藤君と坂上さんの二人の事だけど、須弥山の連中は関わっていないとの事よ」

「それは……」

「えぇ、坂上さん及び、その周辺との関係も見られなかった」

 

 彼女は間違いなく、唯の一般人よ。と、怪訝な表情を浮かべる彼女に告げる。死の淵どころか、死出の旅へと真っ逆様に転落した人間が、自力で這い上がってくるなど、一般人のイの字も見当たらないが。

 

「じゃあ、あの詠唱は?」

「全くの偶然、って事になるわね」

 

 有り得ない。自分で言っておいて、頭に浮かぶのはその一語なのだから、救い難い。

 

「それと、兵藤君の方なのだけど」

「ま、まだ何か」

「気持ちは、解るわ」

 

 もう、お腹一杯だ。その気持ちは、痛いほど理解できる。出来るが故に、同じ目を見させてやらないと気が済まない。

 

「持ってるらしいの」

「何を?」

「赤龍帝」

「は?」

 

 女三人寄れば姦しいと、よく言われる言葉であるが、この部室に居る三人には当てはまらなかった様である。小猫など、今の今まで一言も喋っていない。

 

「どうするつもりですか?」

「どうとは?」

「赤龍帝」

 

 喋ったと思えば、端的過ぎて会話にならない。言わんとする事は理解できるので構わないが、言うべきか言わざるべきかを迷う。

 

「祐斗が連れてきてから、考えるわ」

「嘘吐き」

 

 結論を先延ばしにするべく、それらしい理由を述べる。が、一瞬で看破される。

 

「眷属にする御積もりですね」

 

 断定的な口調で、朱乃が補足する。当たってはいるが、少し違う。

 

「勿論、為人は見るわよ、私が見て、私が判断する。坂上さんも、同様よ」

 

 見た上で、不適格と判断すれば始末する事も考えている。そう言外に滲ませ、それ以上の追及を断ち切る。眷属を家族と同様に扱うと、心に決めてはいる。しかし、決断するのは自分だ。遠からず、継ぐ事に成る家の事も考えれば、此処で迷いなど見せるべきではない。

 

「仰せのままに、我が王」

 

 二人からの格式張った返答に、揺らぎそうになる精神を抑え、満足気な表情を取り繕う。

 

――彼女等の王は、他の誰でもない私、リアス・グレモリーだ。

 

 それは未来永劫、変わらない。

 

 決意も新たにしたところで、部室のドアを叩く音がする。運命も又、こんなノックをするのだろうか等と少々外れた思考をしていると、祐斗が二人を連れて入室してくる。

 

「すいません、少し遅くなりました」

「良いわ、貴方を行かせればそうなる事は予想していたしね」

 

 予定より遅れた事に謝意を示す祐斗に鷹揚に頷き、想定内である事を告げる。簡潔に述べるならば、彼はモテる。本人の性格も紳士的なので、話し掛けられれば丁寧に対応するのは間違いない。そうなれば、当然遅くなる。結果、ある程度の遅刻ならば折り込み済みだ。

 

――後ろの二人は、随分と疲弊している様だが。

 

 想定外のモテっぷりに苦笑し、改めて自己紹介を行う。

 

「改めまして、リアス・グレモリー、悪魔よ」

 

 次いで、姫島朱乃、塔城小猫、木場祐斗とそれぞれに名乗りを上げる。

 

「歓迎するわ、兵藤一誠君、坂上覇吐さん」

 

最後に微笑みかけると、両者の反応は随分と対照的な物になった。

 

「びょ、兵藤一誠です」

「坂上覇吐です」

 

 ガチガチに緊張した兵藤君と、飄々とした坂上さん。態度は兎も角、二人とも一般的な高校生の範囲を逸脱するモノである様には見えない。無論、見た目が当てにならない事等、人界冥界問わず、よくある事なので気を抜く理由にはならないのだが。

 

「ふふっ、そう緊張しないでそこに掛けて」

 

 表面上は取り繕い、目の前のソファに座るように勧める。朱乃が気を利かせたのか、お茶を準備しており、子猫がそれを手伝っている。祐斗は何時でも対応できるようにと、私と彼らの間に立つ。

 

「それで、何の用です」

「そう、焦らないで」

 

 貴方達の知りたい事には、全て答えると言わんばかりの表情を形作り、会話の主導権を握る。この辺りは、悪魔の面目躍如といったところである。知識不足と馬鹿にする心算は無いが、彼らは一切の事情に通じていない。ならば、如何様にでも言い様はあると、悪魔と堕天使、天使の三竦みと、人間との関わり方、龍、神器の存在等を簡潔且つ、少々の主観を混ぜた限りなく客観的な概要を語って聞かせる。

 

「成程、俺の場合はその、神器ってヤツが原因なんですね?」

「ええ、そうよ」

「あれ、私は?」

「兵藤君に巻き込まれただけ、としか……」

「え」

「ごめん、坂上さん」

 

 何やら落ち込み始めた坂上さんを、兵藤君が慰める。ともすれば恋仲かと、疑うような親密さではあるが不思議とそういった雰囲気は漂っていない。

 

「落ち込んでいるところ悪いけれど、続けさせて貰うわ」

「どうぞ」

「単刀直入に言うわ。貴方達、私の眷属にならない?」

 

 今日一番の決め顔と共に、本題を伝える。短い遣り取りではあったが、彼らは清々しい程に真っ直ぐな心根の持ち主だ。気に入らない訳が無い。

 

「勿論、悪魔に成るって事は、人間を辞めるって事だから、今すぐって訳じゃ――」

「やります!!」

「断ります」

 

「え?」

 

 猶予を与える心算が、何という即断即決。三者三様の思惑、回答に、互いに困惑し場が硬直する。

 

「えっと……、もう一度だけ」

 

 確認の為に、再度点呼を取る。

 

「やらせていただきます」

 

兵藤君の答えは、単純にして明快。内容までは窺い知れぬが、強い決意を秘めた物だった。

 

「謹んで、お断りさせて頂きます」

 

 坂上さんの答えも、単純ではある。簡潔で、解り易い。しかし、その響きはどこか彼女の意思ではないモノのような、彼女らしからぬ空虚な声だ。

 

「理由を、聞かせて貰えるかしら、坂上さん?」

 

 兵藤君程ではないにしろ、彼女も堕天使に目を付けられている。また、レイナーレと名乗った中級堕天使には、個人的な恨みも買っていそうだ。説得できるのであれば、保護できるような立場に置いておきたいのが本音だ。

 

「だって、私の身体は兄のモノですから」

 

 当然であるかの様に、それがこの世の真理だと告げる様に、言い放たれた言葉に場が凍り付く。勿論の事、それは嵐の前の静けさで、怒涛の様な悲鳴が部室内に響く事になるのだが。

 




どうにも、大人数を動かせない。あと、話の構成が甘い。

お目汚しでした、申し訳ない。
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