役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ? 作:問題児愛
「まず、黒ウサギの言った証言は全てデタラメだ。レティシアは暴れたりしていない」
「ふうん。じゃあソコのウサギが僕を嵌めようとしたってことか?」
「ああ。お前の狙いを聞き出すために
「あ?わざとだと!?」
ルイオスは黒ウサギを鋭く睨みつけようとするが、万由里が黒ウサギを庇うように右手で制した。
「言っとくけど黒ウサギだけが悪いわけじゃないわよ?私達があんたを嵌めるために彼女には演技を買ってもらっただけだから」
「何?」
「そうだ。俺達は全員共犯者。あとお前さっき面白い事を言ってたな」
「あ?」
「お前はこう言った。出荷するまで石化は解けない。だが残念。お前が派遣した部下共なら俺と万由里で鎮圧したし、レティシアなら俺らが保護してるぜ?」
「なっ、そんな証拠が何処に、」
「あるぜ?―――もう入ってきていいぞ、
十六夜がレティシアの名を呼ぶと、障子が開きレティシアが室内に入ってきた。それを見たルイオスがチッ、と舌打ちして悪態をつく。
「無能共が。帰ったら粛清しないといけないな」
「え?あんた何言ってるの?」
「え?」
「あんたの部下達なら私と十六夜で倒して捕縛してあるんだけど?」
「何!?」
ルイオスはギョッとした顔をした後、盛大に舌打ちして呟いた。
「あの無能共、何処まで僕の足を引っ張れば気が済むんだよ………!」
「………今の発言はお前の部下共が俺達〝ノーネーム〟を襲撃したってことを自白してるって解釈でいいか?」
「………ああいいよ。ただ認めるのは僕がソコの吸血鬼を取り返すために無能共を送り込んだことには、だけどね」
ルイオスはやや苛立たしげに言うと、今度は十六夜を睨んだ。
「だけどお前らが僕の目的を邪魔したんだし、無能共に力ずくで来られても文句は言えないよね?」
「ああ、そうだな。だが不法侵入ってのはどうやって言い訳すんだ?」
「何を言い出すかと思えば………ハッ、ならソコの吸血鬼だってお前らに訪問の有無を伝えないで入ったんなら同罪だろ?それとも元お仲間だからソイツだけは許しちゃうの?うわ、コレって依怙贔屓って奴じゃね?」
「言うなお前。だがレティシアが不法侵入したって証拠はあんのか?実は俺や黒ウサギが陰で接触して約束してたかもしれないぜ?」
「なっ、」
絶句するルイオス。証言者はレティシアがいるから聞くことは出来るが、口裏を合わせているのは見え透いている。
即ち、ルイオスの部下達が〝ノーネーム〟を襲撃したことを認めてしまった時点で反論の余地はないのだ。
ルイオスは盛大に舌打ちして十六夜を射殺さん瞳で睨みつけた。
「ハッ………いいさ。そこまで僕と決闘がしたいなら受けてやるよ!ただし、僕に喧嘩を売ったことを後悔するほどに………二度と逆らう気がなくなるぐらい徹底的に―――
「ハッ、その言葉、そっくりそのままお前に返すぜ。〝名無し〟風情に楯突くとどうなるか―――
鋭い視線で睨み合う十六夜とルイオス。ルイオスはイラつきながらも問う。
「で、〝名無し〟共は僕に決闘をして何を取り返す―――って聞かなくてもその吸血鬼か?」
「ああ。俺達が勝ったらレティシアは返してもらうぜ」
「いいよいいよ、そんな無愛想でガキみたいな体の女なんか僕の趣味じゃないからね。ただし、僕が勝ったらそのウサギはもらうけど」
「え?」
「あ、そうだ。僕は旗印もかけるから僕が勝ったら―――〝名無し〟に所属してるっていう
「な、何を言って―――!」
黒ウサギが言い返そうとするが、ルイオスはイヤらしく笑って言う。
「なんだよ。コッチは旗印まで賭けるってのにウサギだけで満足しろって言う気なの?五桁の旗印だぜ?最下層の〝名無し〟が手に入れたら凄い戦果じゃね?―――まあ、もっとも、〝名無し〟風情に負ける気は更々ないけど」
「………いいわ。それで手を打ってあげる」
ルイオスの挑発に乗る万由里。これには飛鳥が抗議の声を上げた。
「ちょっと待ちなさいよ万由里さん!貴女、負けたらその男のモノにされるのよ!?それでもいいって言うの!?」
「うん。だって黒ウサギだけそんな扱いされるのは嫌。凜祢達だってきっとわかってくれると思うから―――大丈夫」
「万由里さん………」
万由里の優しさに黒ウサギが感動していると、ルイオスは「へえ」と驚嘆の声を発した。
「君、精霊だったんだ!見た目が人間にソックリだったから気づかなかった!」
「………なに?」
「ふうん。無愛想だけどソコの吸血鬼と違って胸はある方だね。顔も中々可愛いし―――うん、気に入った!君はウサギと一緒に僕のモノにしてやるよ」
万由里の全身を見つめてはしゃぐと、万由里は絶対零度に等しい眼差しでルイオスを睨み胸を隠すような仕草をする。
十六夜はそんな万由里を庇うように立ち上がり前に出た。
「おいおい色男。生憎だが黒ウサギも万由里も既に俺のものだぜ?」
「まだやるのですかそのくだり!?」
「というより、あんたのものになった覚えはないんだけど」
黒ウサギがツッコミを入れて半眼で見つめる万由里。飛鳥がムッとなって立ち上がると言った。
「あら、十六夜君、抜け駆けは駄目よ?黒ウサギと万由里さんは私達のものだもの」
「だから違うのですよ!?」
「なぬ!?では私の
「そんなこと一言も言ってないし本当にあんたは黙っててよ白夜叉」
お馬鹿発言をかます白夜叉を半眼で呆れたように返して黙らせる万由里。
レティシアがこの漫才みたいな空間にキョトンとしていると、ルイオスはケラケラと笑った。
「あっはははは!………それで決闘は何時にすんの?一週間までなら取引期限ギリギリって感じだし」
「おっと、そうだったな。黒ウサギと万由里を弄ってたら危うく忘れるところだった」
「肝心な事を疎かにしないでくださいこのお馬鹿様!!!」
スパァアン!と黒ウサギのハリセンが十六夜の頭に奔る。万由里が溜め息を吐くと十六夜はケラケラと笑って続けた。
「俺達は人員の約一名が負傷中だからな。三日後でどうだ?」
「オッケーオッケー。三日後だね。交渉成立、あー………三日後が楽しみだ!」
ルイオスは機嫌を良くしたまま立ち上がると、そのまま胸を躍らせながら立ち去った。
十六夜は万由里達に振り返り促す。
「さて、俺達も帰るか」
「そうね。それにしても十六夜君。レティシアさんはジン君に預けてきたはずじゃなかったのかしら?」
「ああ、それな。こっそり耳打ちしてレティシアも俺達にバレないように来いって伝えといたんだよ。証拠がなけりゃ決闘にはこぎつけられなかっただろうしな」
「そうでございましたか!ですが、なぜ黒ウサギ達にまで内緒にしたのです?」
「ん?そりゃ―――ちょっとした遊び心だ」
ヤハハ、と笑う十六夜。ガクリと肩を落とす黒ウサギ。白夜叉は呵々と笑った。
「しかし見事だったの小僧。あのまま黒ウサギが奴の口車に乗せられてしまうのではないかとヒヤヒヤしとったが………まさか巧みな交渉術で決闘を受け入れさせてしまうとはの。いやはや天晴れだ」
「おう。何せ黒ウサギも万由里も俺の大事な―――愛玩動物と愛玩精霊だからな。野郎に渡してたまるかって話だ」
「………本当に後半のはいらないと思うんだけど」
「ええ、ええ、余計な一言を付け加えなければ十六夜さんは十分カッコいいのですよ………」
格好ついた発言を台無しにする十六夜に、溜め息を吐く万由里と黒ウサギ。
十六夜はピクッと耳を動かして万由里達に視線を戻すと聞いた。
「なんか言ったか?」
「なんでもない」
「なんでもないのですよ?」
「いや、なんでもなくねえだろ。黒ウサギは余計な一言さえなければカッコいいとかなんとか言ってたような気がしたんだが?」
「聞いてたのですか!?―――ハッ!?」
黒ウサギは思わず声に出してしまい、それに気づき顔と耳を真っ赤にした。
十六夜はニヤニヤと笑ってからかった。
「へえ?黒ウサギが俺の事をそう思っていてくれたとはな。嬉しい限りだ」
「く、黒ウサギは別にそんなつもりで言ったわけじゃないのですよ!?ええ、本当でございますよ!?」
「黒ウサギ。必死に弁解してるようだけれど―――顔を真っ赤にしてでは否定しきれてないわよ?」
「あ、飛鳥さんまでからかわないでくださいますか!?」
「だが断る!」
ニヤニヤと笑う飛鳥に黒ウサギは顔を真っ赤にした状態で恨めしそうに睨んだ。
万由里は「何やってんだか」と呆れながら見ていると、白夜叉がニヤニヤと笑って聞いてきた。
「む?万由里よ。さてはおんし嫉妬しておるな?ふふ、若いのう」
「は?そんなわけないでしょ。私が好きなのは―――生まれた時から士道一人だけだから」
「ほう、士道とな?あの小僧の事を好きになるのはありえんと?」
「ん。十六夜の事は変態だけど嫌いじゃない。でも愛してるのは士道だけだから、十六夜を恋人として意識するのは無理よ」
万由里は「ありえない」と口にすると、黒ウサギをからかっていた十六夜は胸を痛めた。
「(………なんで俺は万由里に恋人としての可能性を拒絶されて少し胸が苦しいんだ?まさか、万由里のことを知らないうちに意識してるのか………?)」
十六夜はふと万由里を見つめたが、いやまさかなと自分の抱いてる感情を勘違いだと思い込んで苦笑を零した。
それを見ていた黒ウサギも、十六夜の気持ちを汲み取ったのか、胸を痛めていた。
「(………十六夜さんは黒ウサギではなく万由里さんを見るのですね………少し悔しいのですよ)」
ズキッと胸を痛めている黒ウサギは、胸の前に手を置き悲しげな表情を見せた。
その様子を見ていた飛鳥は、黒ウサギの気持ちを理解したように笑う。
「(………そう。黒ウサギが十六夜君のことを、ねえ。ふふ、これは少し面白くなってきたかもしれないわ!―――春日部さんに相談して黒ウサギと十六夜君を上手くくっつけられるように二人でサポートしようかしら)」
密かに企んだ飛鳥は、視線を万由里に向けて首を傾げた。
「(それはそうと、お風呂に入っていた時にも万由里さんから聞いた名前だけれど―――士道とは誰の事かしら?)」
飛鳥がそんなことを考えていると、白夜叉は万由里・黒ウサギ・十六夜を見回してニヤリと笑う。
「(これは面白い事になってきたのう。小僧が万由里に好意を向けているものの万由里はそれに応える気はない。黒ウサギは小僧に好意を向けているが小僧が好きなのは万由里、か。複雑な三角関係といったところかの。はてさて、小僧はどっちに転ぶか見物だのう!)」
クックッと喉を鳴らした白夜叉は、レティシアに視線を向けて言う。
「さて、レティシアのことならこの私が引き続き面倒を見ることにしよう。〝ペルセウス〟に返せば酷い扱いを受けるだろうしな」
「白夜叉………すまない。恩にきる。黒ウサギ達も私のために本当にすまない」
「へ?あ、いえいえ!黒ウサギ達〝ノーネーム〟の望みはレティシア様を取り戻す事ですのでお気になさらず!」
「………ありがとう。万由里も私を引き留めてくれてありがとう」
「ん。お礼なら全てが終わった後にたっぷり聞くから。それに、鞠奈の犠牲を無駄にするわけにはいかないわ。だから絶対にこの決闘は負けるわけにはいかない」
万由里は石化を恐れずにレティシアを身を挺して守った鞠奈の事を思い出して拳を握りしめる。
それを聞いた白夜叉は苦い顔をして呟く。
「………そうか。鞠奈のお陰でレティシアは石化せずに無事だったわけなのだな。決闘が終わり次第、石化を解いて何か恩恵の一つでも与えてやらんとな」
「ああ、そうだな。私も何か恩返しできたらいいかな………」
白夜叉に便乗するように呟くレティシア。それを聞いた十六夜と飛鳥がニヤリと笑っていたのは、この時は誰も知るよしはなかった。
その後、万由里・十六夜・飛鳥・黒ウサギの四人は、レティシアを白夜叉に預けて〝サウザンドアイズ〟を後にしたのだった。
次回はペルセウス戦開幕です。
鞠奈は石化&まだ〝サウザンドアイズ〟のメイドなので〝ノーネーム〟行きは決闘終了後になります。
凜祢と凜緒の〝支配者〟の力はどうしようか………〝無へと帰す者〟は無限の楽園地獄、即ちパラドックスゲームのようなモノだからよしとして、〝凶禍楽園〟もゲーム盤や一地域を支配し死者はリセット時に復活としましょう。
………ん?でも〝無へと帰す者〟は確か士道が自力で抜け出したはずだから―――パラドックスゲームにはならないか?
問題は〝支配者〟だが………凜祢及び凜緒と眼があったモノを幸福な世界に引き摺り込み、一定の間眠らせることができる―――にしようかな。