役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

12 / 22
第十二話 ペルセウス戦決着だそうですよ?

「十六夜さん、耀さん、ジン坊っちゃん………!」

 

「―――ふん。ホントに使えない奴ら。今回の一件でまとめて粛清しないと」

 

 黒ウサギは安堵し、ルイオスは部下達を蔑む。

 だが万由里の姿が見えないことに黒ウサギは不安を募らせた。

 

「え?万由里さんは………?」

 

「え?ここにいるんだけど」

 

「………いえ。姿が見えないのですよ?」

 

「あ、忘れてた」

 

 黒ウサギに指摘されて〝不可視(インビジブル)〟のギフトを解除する万由里。

 虚空から突如現れた万由里に、ルイオスは瞳を瞬かせて驚いた。

 

「え?君って不可視のギフトを持ってるの!?」

 

「え?あ、うん。そうだけど………それがなに?」

 

「いや、ビックリしただけだよ。不可視になれるんだったら最初から僕の下に辿り着けるのは可能だったわけだね。正直、精霊を舐めていたよ」

 

「そ。ならさっさとはじめましょ。あんたの部下達には私の同胞が世話になったからね」

 

 キッとルイオスを睨みつける万由里。肩を竦めておどけるルイオス。

 

「なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。………あれ、この台詞を言うのって初めてかも」

 

「へえ?じゃあ俺達〝名無し〟は侮りがたいんじゃねえか?」

 

「ハッ、そんなわけないよ。名無し風情も止められない無能共が悪いだけさ」

 

 ルイオスは〝ゴーゴンの首〟の紋が入ったギフトカードを取り出し、燃え盛る炎の弓を取り出した。

 そのギフトを見て黒ウサギの顔色が変わった。

 

「………炎の弓?ペルセウスの武器で戦うつもりはない、という事でしょうか?」

 

「当然。空が飛べるのになんで同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ」

 

 ルイオスは小馬鹿にするような態度で返すと、首にかかったチョーカーを外し、付属している装飾を掲げた。

 

「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま〝ペルセウス〟の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろ?」

 

「っ………!!」

 

「早速、お出ましのようだな」

 

「え?」

 

 黒ウサギが焦り始め、十六夜は不敵に笑い、意味が分からず首を傾げる万由里。

 ルイオスは装飾を掲げたまま、獰猛な表情で叫んだ。

 

 

「目覚めろ―――〝アルゴールの魔王〟!!」

 

 

「ra………Ra、GEEEEEEYAAAAAAaaaaaaaa!!!」

 

 ルイオスが叫ぶと、五人の視界を褐色の光が染めていき、白亜の宮殿に甲高い女の声が響き渡る。

 それは最早、人の言語野で理解できる叫びではなく、現れた女は体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻いており、女性とは思えない乱れた灰色の髪を逆立たせて叫び続ける。

 女は両腕を拘束するベルトを引き千切り、半身を反らせて更なる絶叫を上げた。黒ウサギは堪らずウサ耳を、耀も耳を塞ぐ。

 

「ra、GYAAAAAaaaaaaaa!!」

 

「な、なんて絶叫を」

 

「耳が、痛い」

 

「避けろ、黒ウサギ!!春日部!!」

 

「えっ」と硬直する黒ウサギ。十六夜の意図に気づいた耀は黒ウサギとジンを抱きかかえると、疾風を巻き起こして空へ逃げる。

 万由里は黒の霊装を纏い十六夜を抱きかかえると翼を羽ばたかせて空へと逃げる。

 同じく膝までを覆うロングブーツから光り輝く対の翼が生えた靴を装着していたルイオスは上空からそれらを見て舌打ちをした。

 

「チッ、僕達と一緒で空を飛べるのかよ。飛べないと踏んで嘲笑ってやろうと思ったのに。いくら名無し風情でも落下してくる雲くらいは避けられるか」

 

「く、雲ですって………!?」

 

 黒ウサギはハッとして外を見ると、ここだけではなく他の場所でも雲が落下していた。

〝アルゴールの魔王〟と呼ばれた女は、このギフトゲームで用意された世界全てに対して石化の光を放ったのだ。

 黒ウサギはその女の名を、戦慄と共に口にする。

 

「星霊・アルゴール………!白夜叉様と同じく、星霊の悪魔………!!」

 

「今頃は君らのお仲間も部下も全員石になっているだろうさ。ま、無能にはいい体罰かな」

 

「………酷い」

 

 ルイオスが不敵に笑うと、耀は悲しげな表情で石化されてしまったであろう飛鳥達を想う。

 それを聞いた万由里は一度翼を羽ばたかせて十六夜を地面に下ろした。

 

「ヤハハ、助かったぜ万由里」

 

「ん。それよりも十六夜。あの星霊の相手をお願いしてもいい?」

 

「ああ、むしろ俺はあの元・魔王様と戦いたかったところだからいいぜ」

 

「そ。私はあの男に裁きを下してくるから―――耀は引き続き黒ウサギとジンの護衛をお願い」

 

「うん、わかった」

 

 方針を決めた万由里達はそれぞれの目的を果たすために行動に移した。

 十六夜はアルゴールの下へ、万由里は翼を羽ばたかせてルイオスの下へ向かう。耀は地上に降りて黒ウサギとジンを下ろすと、二人を背に守る。

 ルイオスは自分の下に来た万由里を見て、ニヤニヤと笑った。

 

「うわお!万由里っていったかな?君の霊装、随分とエロいな!いいねえ………そういうエロい格好の精霊と戦えるのは嬉しいよ!」

 

「………忘れてた。あんたも白夜叉に負けないくらいの変態だった。―――それよりも、なんであんたが私達精霊や霊装の事を知ってんのよ」

 

「うん?それは君らの世界の精霊に詳しい()()()から話を聞いたからね。そして僕のこの武具じゃ君を傷つけられないこともね?」

 

「………そ。なら今のうちに降参した方がいいんじゃない?仲間を石化されて凄く怒ってるから―――手加減出来ないかもしれないわ」

 

 万由里は鋭い視線でルイオスを睨みつけると、ルイオスはニヒャっと笑って返した。

 

「違うね、むしろ逆だよ。生憎だけど、僕は君の霊装を切り裂ける武具を持っている」

 

「………え?」

 

「〝星霊殺し〟の鎌・ハルパー。星霊ってのは惑星級以上の星に存在する()()()を指すんだけど………主精霊はそのまんまの意味で()()のことだよ。その意味が君には分かるかな?」

 

「―――――ッ!」

 

 万由里は戦慄して身構えると、ルイオスはギフトカードを取り出し炎の弓を仕舞って〝星霊殺し〟の鎌・ハルパーを顕現させた。

 そして、ルイオスは嬉々として笑いハルパーを構えると―――

 

「つまり、僕は君を倒せるってことさ!」

 

「………ッ、<滅殺皇(シェキナー)>!!」

 

 ―――ヘルメスの靴に生えた翼を羽ばたかせて万由里に急接近した。

 万由里は咄嗟にオーロラのギフトカードを取り出して〝形を持った奇跡〟、天使<滅殺皇(シェキナー)>を顕現させハルパーと刃を交わせる。

 ルイオスは不敵に笑って鎌を振るい、それを万由里が<滅殺皇(シェキナー)>で弾く。

 

「へえ、中々やるね君」

 

「あんた………精霊を舐めるんじゃないわよ!」

 

「………ッ!」

 

 万由里は今度はこちらの番というべきか、<滅殺皇(シェキナー)>を振るい連撃をルイオスに斬り込む。

 ルイオスは速すぎる連撃になんとかハルパーで捌いていくが、耐えきれずハルパーを弾き飛ばされてしまった。

 

「あ、やっば!?」

 

「……………」

 

 万由里はそれを確認すると、ルイオスの前から掻き消え―――

 

「え?―――ガッ!?」

 

 ―――背後に瞬間移動してルイオスの後頭部を<滅殺皇(シェキナー)>の峰打ちで強撃して吹き飛ばし、真下の地面に叩きつけた。

 ルイオスは意識が飛びそうな一撃に苦悶の声を漏らしてなんとか立ち上がりハルパーを拾いに―――

 

「させない!」

 

「………ッ!!」

 

 ―――行けなかった。万由里がルイオスの足元に、<滅殺皇(シェキナー)>に霊力を籠めて放った紫色の光の斬撃を撃ち込むことによって。

 ルイオスの足元に醜く残った斬撃の傷跡を見て、思わず尻餅をつく。もし一歩間違えていたら首が飛んでいたかもしれない恐怖に。

 一方、十六夜は獰猛に笑ってアルゴールと対峙していた。

 

「さあ、こっちも始めようぜ元・魔王様」

 

「RaAAaaaGYAAAAAAaaaaaa!!」

 

 雄叫び(?)を上げながら十六夜に向かってベルトを鞭のように振るって叩き潰そうとしたが、十六夜は易々と受け止めてアルゴールに肉薄した。

 

「ヤハハ、まず一発目だ!」

 

「GYAAAAAaaaaaaaa!!」

 

 十六夜はアルゴールの懐に潜り込むと、挨拶代わりの拳を胴体に叩き込む。アルゴールは絶叫を上げながら後ろに吹き飛びかけるが、なんとか持ち堪えた。

 アルゴールは十六夜を睨みつけると、灰色の翼を羽ばたかせて突進し殴りかかる―――が、

 

「ハッ、しゃらくせえ!」

 

「―――――ッ!!?」

 

 アルゴールの拳を掻い潜った十六夜は、今度は容赦なくアルゴールの顔面に拳を叩き込み吹き飛ばした。

 ルイオスはそれを見て絶句した。目の前の精霊ならまだしも、アルゴールが人間に負けるとは思いもしなかったのだろう。

 ルイオスは悔しそうな表情をしたが、次の瞬間―――凶悪な笑顔を浮かべて立ち上がると、

 

「もういい。()()()()()、アルゴール」

 

「ra、RaAAaaa!!LaAAAA!!」

 

 石化のギフトを解放した。褐色の光を見た万由里は急いで十六夜の下へ向かうが、十六夜は万由里を右手で制した。

 そして、迫る褐色の光を真正面から捉えた十六夜は右足を高々と振り上げ―――

 

 

「―――――………カッ。ゲームマスターが、今さら狡い事してんじゃねえ!!!」

 

 

 ―――褐色の光を踵落としで()()()()()

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「………すご」

 

「せ、〝星霊〟のギフトを無効化―――いえ、破壊した!?」

 

「ありえません!あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」

 

 ルイオスが叫び、万由里は目を見開いて驚き、ジンと黒ウサギも驚愕の声を上げる。

 

「さあ、続けようぜゲームマスター。〝星霊〟の力はそんなものじゃないだろ?」

 

「……………ッ」

 

 軽薄に笑ってルイオスを挑発する十六夜。万由里も<滅殺皇(シェキナー)>の刀身をルイオスの首筋に当てて返事を待つ。

 だがルイオスの戦意はほとんど涸れており、黒ウサギが溜め息混じりに割って入る。

 

「残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ?」

 

「何?」

 

「アルゴールが拘束具に繋がれて現れた時点で察するべきでした。………ルイオス様は、星霊を支配するには未熟すぎるのです」

 

「っ!?」

 

 ルイオスは瞳に灼熱の憤怒を籠めて黒ウサギを射殺さんばかりに睨みつけるが、真実なため否定出来なかった。

 十六夜は失望したように言葉を吐き捨てた。

 

「―――ハッ。所詮は七光と元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってことか」

 

「………そ。ならもう戦う必要はないわね」

 

 万由里はルイオスの首筋に当てていた<滅殺皇(シェキナー)>をギフトカードに仕舞い、霊装を解除して来禅高校の制服に戻ると、ルイオスに背を向け十六夜の下へ歩みを進める。

 ルイオスは万由里の無防備な姿に邪悪な笑みを浮かべると、偶然近くに落ちてあったハルパーを手に取り斬りかかった。

 それに気づいた黒ウサギが悲鳴を上げた。

 

「―――ッ!ま、万由里さん!避けてください!!」

 

「え?」

 

 黒ウサギの叫び声に、万由里が背後に振り返ると―――今まさにハルパーを振り翳し万由里を切り刻もうとしたルイオスの姿があった。

 

「負ける前に精霊の一人くらい、討ち取ってやる!」

 

「………ッ!!?」

 

 万由里は咄嗟に霊装を纏おうかと考えたが、ハルパーの前ではその鎧は紙切れに等しい。つまり、今この状態で切り刻まれるのと大差ないのだ。

 ルイオスのハルパーが万由里を切り刻もうとしたその時、十六夜が受け止めて獰猛に笑った。

 

「なんだよ。まだやる気があんじゃねえか」

 

「なっ、」

 

「だがな。正々堂々と勝負しない姑息な野郎は嫌いだ。だから―――ぶっ飛んで反省しやがれッ!!」

 

「―――………ガハッ!?」

 

 十六夜の怒りを籠めた拳がルイオスの顔面にめり込み、ルイオスを吹き飛ばして壁に叩きつけた。

 ルイオスは力尽きて地面に倒れ落ちると、それを確認した十六夜は万由里に向き直る。

 

「万由里も勝負はまだ終わってないんだ。油断するんじゃねえよ」

 

「………ごめん」

 

「ま、お前が無事でよかったぜ」

 

「………ん、助けてくれてありが―――ッ!」

 

 お礼を言おうとした万由里を十六夜が引き寄せて抱きしめた。

 万由里は不機嫌そうな表情で文句を言おうとした。

 

「ッ、あんたどさくさに紛れて何セクハラしようと―――」

 

「本当に無事でよかった」

 

「……………ん。ありがと、十六夜」

 

 十六夜にしては珍しく、優しげな表情で安堵していた。これに万由里は一瞬キョトンとしたが、助けてもらったんだし今日くらいはいいかな………と思い、万由里は十六夜の背に腕を回して抱きしめ返した。

 十六夜は万由里が受け入れてくれたことに驚き、嬉しく思うと、からかわずにこの瞬間を大切にした。

 一方、黒ウサギはそんな光景を羨望の眼差しで見つめていた。

 

「………万由里さん、いいなあ」

 

「そうだね。今日は万由里に十六夜を取られちゃったみたいだけど………チャンスはきっとあるから頑張って」

 

「へ?い、いいい一体何の話か黒ウサギにはさっぱりなのですよ………ッ!?」

 

「こっちの話」

 

 ニヤニヤと黒ウサギを見つめる耀。黒ウサギはウサ耳と顔を真っ赤にすると、そっぽを向いて誤魔化した。

 こうして、ギフトゲームは〝ノーネーム〟の勝利となったのだった。




ちなみに描写にはなかった凜祢と凜緒は〝死亡〟ではなく〝石化〟しただけなので<凶禍楽園(エデン)>は解けることなく継続されていました。

次回はある人の正体と、例のレティシアメイド計画といって、一巻完結と行きたいですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。