役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

14 / 22
二巻目に突入です。


あら、魔王と………最強の魔術師襲来のお知らせ?
第一話 北側へ、二人の精霊は早速生け贄にされるそうよ?


 ―――〝ノーネーム〟本拠。地下三階の書庫。

 昨日遅くまで書籍を漁っていた十六夜とジンは、山積みの本の中で眠りこけていた。そんな十六夜の肩を揺すって万由里が声をかける。

 

「ちょっとあんた、こんなところで寝てると風邪引くわよ?」

 

「………ん……御チビか?悪いな、少し寝ちまったみたい―――だ?」

 

 十六夜は寝ぼけ眼をこすって目の前の人物を見て「は?」となった。

 万由里はムッとした表情で十六夜に言う。

 

「誰が御チビよ。私はそんな身長低くないんだけど?」

 

「………万由里?なんでお前が此処にいんだ?」

 

「ん。それはね、飛鳥達と手分けしてあんたを探してたところだからよ」

 

「へえ?俺に何の用なんだ、あのお嬢様は………」

 

 ふぁ、と大きな欠伸をして十六夜は伸びをして徐に立ち上がる。

 万由里もそれに合わせて立ち上がろうとしたところで、飛鳥達が慌ただしく階段を下りてきた。

 

「十六夜君!何処にいるの!?」

 

「お?噂をすればお嬢様の登場か」

 

 十六夜が飛鳥を発見しそう呟くと、飛鳥も気づいたらしく全力疾走で駆け出す。

 飛鳥は散乱した本を踏み台に、十六夜の側頭部へシャイニングウィザードで強襲。

 

「起きなさい!」

 

 だが、十六夜の側頭部を強襲するはずの飛鳥のシャイニングウィザードは―――

 

「いたっ!?」

 

「え?」

 

 運悪く立ち上がった万由里の後頭部を強襲し、十六夜へと倒れ込む。

 十六夜は驚きながらも万由里を受け止めて、彼女の後頭部を優しく撫でた。

 

「大丈夫か、万由里?」

 

「………ん、ありがと。ちょっと痛いけど平気」

 

「そっか。ならよかったが―――ふむ」

 

「………なに?」

 

 十六夜が何か考え事をしたように黙り込むと、万由里は首を傾げる。

 十六夜はニヤリと笑うと、自分の胸に倒れ込んでいた万由里を抱きしめた。

 

「え?」

 

「ヤハハ。起きて早々こういうハプニングに見舞われるとは幸先いいな」

 

「は?ちょっとあんた離してよ!私はあんたのそういうところは嫌い!」

 

「な………に?」

 

 十六夜はショックを受けてガクリと肩を落とす。十六夜のらしくない表情を見て万由里は少し驚き顔を覗き込む。

 その瞬間。十六夜は万由里の後ろ首に手刀を打ちつける。

 

「………ッ、いざ……よい。なに、を………」

 

 万由里は強い衝撃と共に意識が遠のき、やがて糸が切れたように十六夜の胸に倒れ込んでしまった。

 十六夜は気を失った万由里の頭を優しく撫でながらボソリと呟く。

 

「悪いな万由里。今の発言は正直言って傷ついた。だからしばらくはこうさせてもらうぜ」

 

「……………」

 

 そんな様子を飛鳥が見つめて問う。

 

「十六夜君ってもしかして、万由里さんのこと気に入ってたりするの?」

 

「ああ。割りと気に入ってる。精霊の中では一番、な」

 

「そう。………そんなことより十六夜君!緊急事態よ!寝てる場合じゃないわ!」

 

「いや、もう目は覚めてるぜお嬢様」

 

 万由里を抱きしめた状態でツッコミを入れる十六夜。飛鳥はコホンと咳き込み十六夜に招待状を手渡す。

 

「いいからコレを読みなさい。絶対に喜ぶから」

 

「うん?双女神の封蝋………白夜叉からか?あー何々?北と東の〝階層支配者(フロアマスター)〟による共同祭典―――〝火龍誕生祭〟の招待状?」

 

「そう。よく分からないけど、きっと凄いお祭りだわ。十六夜君もワクワクするでしょう?」

 

「へえ?『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会および批評会に加え、様々な〝主催者〟がギフトゲームを開催。メインは〝階層支配者〟が主催する大祭をよていしております』か。なんだよコレ、面白そうじゃねえか行ってみようかなオイ♪」

 

「ノリノリね」

 

 ノリノリの十六夜に苦笑を零す飛鳥。だが耀の隣にいたリリが血相を変えて呼び止めた。

 

「ま、ままま、待ってください!北側に行くとしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから………ジン君、いつまでも寝てないで起きて!」

 

「………ん、………ん?北………北側!?」

 

 今まで眠っていたジンは「北側に行く」の言葉で飛び起き、話半分の情報で問い詰める。

 

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん!北側に行くって、本気ですか!?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「何処にそんな蓄えがあるというのでしか!?此処から境界壁までどれだけの距離があると思っているんです!?リリも、大祭の事は皆さんには秘密にと―――」

 

「「「秘密?」」」

 

 重なる三人の疑問符。ギクリと硬直するジン。失言に気づいた時にはもう既に手遅れだった。邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ耀・飛鳥・十六夜の三大問題児。

 

「………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

 

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのに、とっても残念だわ。ぐすん」

 

「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」

 

 泣き真似をするその裏側で、ニコォリと物騒に笑う問題児達。隠す気のない悪意を前にして、ダラダラと冷や汗を流すジンとリリ。

 飛鳥達は黒ウサギ宛に手紙を書いてリリに手渡すと、ジンを拉致し、十六夜は気絶中の万由里を背負う。

 

「よし。それじゃあまずは招待状を送りつけてきた白夜叉の下に、〝サウザンドアイズ〟に殴り込みに行くぞコラ!」

 

「行くぞコラ」

 

 ヤハハと笑う十六夜と、乗りで真似する耀。問題児一行はジンと万由里を拉致して〝サウザンドアイズ〟支店を目指すのだった。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 ―――箱庭2105380外門居住区画・〝ノーネーム〟農園跡地。

 ここには黒ウサギ・レティシア・凜祢・凜緒・鞠奈の五名が様子を見に来ていたのだが、

 

「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁん!た、大変ーーーー!」

 

 本拠に続く道の向こうから、割烹着姿の年長組の一人―――狐耳と二尾を持つ、狐娘のリリが泣きそうな顔で走ってきた。

 

「リリ!?どうしたのですか!?」

 

「じ、実は飛鳥様が十六夜様と耀様を連れて………あ、こ、これ、手紙!」

 

 リリはパタパタと忙しなく二本の尾を動かしながら黒ウサギに手紙を渡す。

 

 

『黒ウサギへ。

  北側の4000000外門と東側の3999999外門で開催する祭典に参加してきます。

  貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアと凜祢さんと凜緒さんと鞠奈さんもね。

  私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合

  ()()()()()()()()()()()()退()()()()。死ぬ気で捜してね。応援しているわ。

 P/S ジン君は道案内に、万由里さんは十六夜君が拉致して行きます』

 

 

「……………、」

「……………?」

「―――――!?」

 

 たっぷり黙り込むこと30秒。黒ウサギは手紙を持つ手をワナワナと震わせながら、悲鳴のような声を上げた。

 

「な、―――……何を言っちゃってんですかあの問題児様方ああああ―――――!!!」

 

 黒ウサギの絶叫が一帯に響き渡る。これにはメイドのレティシアも頭を抱えた。

 万由里の名前を見つけた凜祢・凜緒・鞠奈の三人は、顔を見合わせて作戦を立てる。

 

「万由里ちゃんが十六夜に拉致されちゃったみたいだね………どうしよう?」

 

「まゆり、いざよいにへんなこと………されたりしてないかな?」

 

「そうねえ。久遠飛鳥と春日部耀………それにジン=ラッセルがいるから大丈夫なんじゃない?とはいえあの逆廻十六夜(変態)の手中にあるのは安全とは言えないけどね」

 

 鞠奈は溜め息を吐く。凜祢はうーんと首を捻って考え込み、

 

「………鞠奈さんは万由里ちゃんのところに行ける?」

 

「それなら守護する対象を万由里に切り換えれば、一瞬で向かえるけど………行った方がいい?」

 

「うん。お願いできるかな鞠奈さん?」

 

「了解。園神凜祢と凜緒はどうするつもり?」

 

「私と凜緒ちゃんは黒ウサちゃんとレティちゃんと一緒に、まだ近くにいないか捜してみるよ」

 

 うん、と頷き合った三人は早速行動に移すのだった。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 一方、問題児一行は〝サウザンドアイズ〟支店の白夜叉の私室前にいた。十六夜は万由里を背負った状態のまま乱暴に障子を開き、

 

「白夜叉!とっとと北側へ連れてけやゴラァ!」

 

「連れてけやコラ」

 

「おんしら………礼儀というものを知らんのか」

 

 いきなり十六夜と乗りで真似する耀に喧嘩を吹っ掛けられた白夜叉は呆れたような表情で見つめた後、ふうっと息を吐いた。

 

「………まあよい。実は私もおんしらに話があったところだったからの、そこへ座れ」

 

「話?そう。私達は急いでるのだからなるべく手短に終わらせてくれると嬉しいのだけれど」

 

「ん?どういう事情かは知らんが、〝火龍誕生祭〟について伝えておきたい事があるのだよご令嬢」

 

 招待状についての話があると聞いた飛鳥達は、白夜叉に言われた通りに腰を下ろして聞く姿勢を取る。そこへ、

 

「―――逆廻十六夜!万由里は返してもらうわよ!」

 

「は?」と十六夜達が素っ頓狂な声を上げると、虚空より突如現れた鞠奈が十六夜の後ろに降り立つ。

 それを見た十六夜は軽薄な笑えを浮かべて促す。

 

「丁度いいところに来たな或守。今から白夜叉の話を聞こうと思うんだが、一緒にどうだ?」

 

「え?そ、そうね。話くらい聞いて―――ってあたしの話を逸らさないでくれる!?キミが背負ってる万由里を今すぐあたしに渡して!」

 

「え?嫌だね。万由里は今寝てるんだよ。まあ、俺が眠らせたんだがな」

 

「強制的に眠らせたってわけね!流石は変態。やることが汚いわね」

 

 キッと睨みつける鞠奈。肩を竦ませる十六夜。だがふといい案が思い浮かんだのか、十六夜はニヤリと笑って白夜叉に告げた。

 

「よし、白夜叉。俺達はアンタの話を聞いてやる代わりに―――万由里と或守のメイド化を許可するから北側へ連れてきな!」

 

「………は?」

 

 唐突な十六夜の提案に鞠奈は間抜け面をし、白夜叉はというと―――ニコォリと物騒に笑っていた。

 

「うむ、よかろう!精霊達のメイド化はあやつからも許可を得ておる。その条件乗った!」

 

「な、ちょっと待ちなさいよ!あたしはもうメイド服なんか着たくな―――」

 

「問答無用ッ!!」

 

 一瞬で鞠奈の背後に空間跳躍した白夜叉が彼女の肩を掴み、十六夜から万由里を受け取り脇に抱え込む。

 鞠奈が声を発する間もなく白夜叉に拉致され、別室で彼女の悲鳴が聞こえたのだった。

 

 数分後。白夜叉の手によりメイド服を強制的に着せられた万由里と鞠奈が、白夜叉に抱えれて問題児達の前に現れる。

 鞠奈は恨めしそうに、されど涙目で十六夜を睨みつけて文句を言う。

 

「逆廻十六夜!あとで覚えておきなさいよ!」

 

「ヤハハ、だが断る!」

 

 白夜叉から軽いセクハラを受けた鞠奈はジンの隣に深い溜め息を吐きながら座り込み、万由里はいまだに眠っていたため十六夜が受け取り膝の上に座らせた。

 白夜叉はニヤニヤと笑いながら座り込み、フッと真剣な表情になると十六夜達に話し始めた。

 

★★★★★★★★★★★★

 

「―――ちょっと待って。その話、まだ長くなる?」

 

「ん?んん、そうだな。短くともあと一時間程度はかかるかの?」

 

「それまずいかも。………黒ウサギ達に追いつかれる」

 

 ハッ、と十六夜・飛鳥・ジン・鞠奈も気づく。ジンと鞠奈は咄嗟に立ち上がり、

 

「し、白夜叉様!どうかこのまま、」

 

「ジン君、()()()()()!」

 

「白夜叉!黒ウサギ達が来るまで話を続けて!彼らを北側へ行かせちゃ駄目よ!」

 

 飛鳥はジンを黙らせても、精霊の鞠奈には〝威光〟は通じない。だが、白夜叉は首を横に振った。

 

「残念だが鞠奈よ。おんしの言うことは聞けんな。そこの小僧と約束しておるからのう」

 

「………ッ、」

 

「ま、そういうことだ。そして今がその時だぜ白夜叉。………行けるな?」

 

「ふふん。この私を誰だと思っておる。では、行くぞ」

 

 白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打つ。

 

「―――ふむ。これでよし。これでお望み通り、北側に着いたぞ」

 

「「「「―――………は?」」」」

 

 素っ頓狂な声を上げる十六夜・飛鳥・耀・鞠奈。それもそのはず、今の僅かで北側まで移動したというのだ。

 そして、その声がきっかけで眠っていた万由里が目を覚ます。

 

「………ん、………?ここは?」

 

「お?起きたか、万由里」

 

 頭上から聞こえてきた十六夜の声に驚き、万由里は咄嗟に跳び退いた。

 

「な、十六夜!?―――そうだ!あんたさっきは何で私を眠らせたの!?」

 

「ああ、そのことなんだが………まず、お前は自分の格好を見た方がいいぜ?」

 

「え?格好………?―――ッ!!?」

 

 十六夜に促されて万由里は下を見る。すると、レティシアが着ているのと同じフリルがたくさんついたメイド服に変わっていた。

 万由里は絶句して、すぐさま十六夜にどういうことか問い詰めようと顔を上げたが―――そこには十六夜は愚か、飛鳥と耀の姿もなかった。

 

「十六夜………逃げたわね!?」

 

 万由里は逃げた十六夜達を追いかけようとしたところを、鞠奈が引き止めた。

 

「待って、万由里。行くならあたしも一緒に行く」

 

「え?―――鞠奈!?あんたも、メイド服を着せられてしまったのね」

 

「ええ。本当に。逆廻十六夜に見事にやられたわ。………お互いに大変ね」

 

「………うん」

 

 万由里と鞠奈は顔を見合わせて苦笑。溜め息を吐くと、問題児達に文句を言ってやろうと店外へ飛び出したのだった。




早速白夜叉の生け贄にされた万由里と鞠奈。十六夜の精霊弄りは止まらぬようです。

次回からは新たに精霊達を登場させたいですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。