役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ? 作:問題児愛
というわけで問題児組も同時進行です。
―――時は少し遡り、〝サウザンドアイズ〟支店。
そこには黒ウサギに早々捕まってしまった耀がおり、事の経緯を聞いた白夜叉と歓談していた。
「ふふ。なるほどのう。おんし達らしい悪戯だ。しかし〝脱退〟とは穏やかではない。ちょいと悪質だと思わなんだのか?」
「それは………うん。少しだけ私も思った。だ、だけど、黒ウサギだって悪い。お金がないことを説明してくれれば、私達だってこんな強行手段に出たりしないもの」
「普段の行いが裏目に出た、とは考えられんのかの?」
「それは………そ、そうだけど。それも含めて信頼のない証拠。少しは焦ればいい」
珍しく拗ねたように言う耀。クックッと笑う白夜叉。
耀はふと思い出したように白夜叉に問う。
「そういえば、大きなギフトゲームがあるって言っていたけど、ホント?」
「本当だとも。特に、おんしに出場して欲しいゲームがある」
「私に?」
耀は小首を傾げる。白夜叉は着物の袖からチラシを取り出して見せた。
『ギフトゲーム名〝造物主達の決闘〟
・参加資格、及び概要
・参加者は創作系のギフトを所持。
・サポートとして、一名までの同伴を許可。
・決闘内容はその都度変化。
・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。
・授与される恩恵に関して
・〝階層支配者〟の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟印
〝サラマンドラ〟印』
「………?創作系のギフト?」
「うむ。人造・霊造・神造・星造を問わず、製作者が存在するギフトのことだ。北では、過酷な環境に耐え忍ぶために恒久的に使える創作系のギフトが重宝されておってな。その技術や美術を競い合うためのゲームがしばしば行われるのだ。そこでおんしが父から譲り受けたギフト―――〝
「そうかな?」
「うむ。幸いなことにサポーター役としてジンもおる。本件とは別に、祭りを盛り上げるために一役買って欲しいのだ。勝者の恩恵も強力なものを用意する予定だが………どうかの?」
うーん、と余り気乗りしないように小首を左右に折る耀。龍には興味があっても、ゲームそのものには興味がないらしい―――が、ふっと思い立ったように質問する。
「ね、白夜叉」
「なにかな?」
「その恩恵で………黒ウサギと仲直りできるかな?」
小動物のように小首を傾げる耀。それを見てやや驚いた表情の白夜叉。しかし次の瞬間、温かく優しい笑みで頷いた。
「出来るとも。おんしにそのつもりがあるのならの」
「そっか。それなら、出場してみる」
コクリと頷いて立ち上がった耀は、ギフトゲーム〝造物主達の決闘〟に出場することを決意するのだった。
★★★★★★★★★★★★
一方、十六夜は飛鳥をエスコートしながら赤窓の歩廊を歩いていた。
様々な出展品を観賞しながら歩を進め、二足歩行のキャンドルスタンドを見つけた際、それに浮かぶランタンからハロウィンの話に発展。
〝
「―――とはいえ、今はまだ無理だけどな。まずは色々なギフトゲームに勝たないと」
「もちろん。こんなに大きなお祭りなんだもの。凄いギフトが貰えるゲームがあるはずよ」
「YES!祭典では創作系のギフトを競い合う二大ギフトゲームが進行中なのですよ!」
「創作系?何か作るの?」
「はいな。耀さんの持つ〝生命の目録〟のように人造・霊造・神造・星造を問わず、様々な創作系ギフトを持つ者達が参加できるギフトゲームなのでございます♪」
「へえ?よく分からんが、凄いギフトが貰えるのか?」
「それはもう!新たにフロアマスターとなったサンドラ様から直々に恩恵を与えられるとなれば、よっぽどのものでございますよ!」
「そう。なら春日部さんに連絡して出場してもらおうかな。伝言お願いね、黒ウサギ」
「YES!任されたのですよ♪それではそれではお二人様!今から向かうので黒ウサギニオトナシク捕マッテクレマスヨネ?」
壮絶な笑顔で問う黒ウサギ。二人は即答した。
「「だが断る!」」
十六夜は歩廊にクレーターを作る脚力でスタートダッシュ。飛鳥は反対方向に逃げていく―――が、
「きゃ!」
「フフ。観念してもらうぞ飛鳥」
空から舞い降りた金髪メイドの吸血姫―――レティシアに飛びつかれて捕まる。黒い翼を畳み、微笑しながらブラブラと抱きつくレティシア。
仕方なさそうに降参して両手を上げる飛鳥。最後に一声、十六夜に向かって叫んだ。
「十六夜君!貴方が最後の一人よ!簡単に捕まったら許さないわ!」
「了解、任せとけお嬢様!」
ヤハハハハハハ!と叫びながら赤窓の歩廊を走り抜ける。しかし黒ウサギも負けてはいない。〝箱庭の貴族〟と呼び称される彼女の身体能力は並の神仏ですら持て余すほどなのだ。
「逃がさないのですッ!!今日という今日は堪忍袋が爆発しました!捕まえたら黒ウサギの素敵なお説教を長々と聞かせて差し上げるのですよーッ!!」
「ハッ、そりゃ素敵な申し出だ!帝釈天の眷属のご説法、聞かせたいなら捕まえてみろ!」
十六夜が更に加速する。直線に逃げるのをやめ、建造物を蹴り上がるように跳躍して上り、尖塔群の頭部に躍り出る。黒ウサギも負けじと壁を垂直に走って追いつく。
騒ぎを聞きつけたギャラリーの一人が、黒ウサギを指差して叫んだ。
「アレを見ろ!ウサギだ!〝月の兎〟が誰かと戦っているぞ!」
「〝箱庭の貴族〟がこんな最下層に!?」
「まさかサンドラ様の就任式のためにわざわざ上層から祝いに来たのか!?」
観衆の様々な声を無視して黒ウサギも屋根に上った。十六夜と黒ウサギは激しく睨み合って距離を取る。
「………ルールを確認するぜ。黒ウサギは俺を捕まえれば勝ち。俺は今日一日逃げ切れば勝ち。そうだな?」
「YES。黒ウサギは十六夜さんを捕まえてお説教します。十六夜さんが逃げ切れば―――」
「そう、それだ。実は手紙に書いたのは冗談半分の内容だったんだが」
「ほほう?ほほほ~う?コミュニティの脱退を賭けた勝負を冗談で持ちかけたと?それはそれは、随分と笑えない話でございますねえ」
キッと黒ウサギが睨む。十六夜は肩を竦ませて笑う。
「まあ、そうだな。確かに冗談にしては質が悪い。悪戯ってのは、後で笑って誤魔化せるぐらいじゃないと可愛げもない。そこは認める」
「………大人しく降参すると?」
「馬鹿言え。此処まで盛り上げといて何もしないなんて、ギャラリーが許さねえよ」
クイッと親指で眼下を指す。下では騒ぎに群がってきた住人達が二人を見上げて何やら歓声を上げていた。
「そこで提案なんだが。俺と黒ウサギだけで、短時間の別ゲームをしないか?」
「え?」
「そうだな。謝罪代わりに、そっちのチップはなしでいい。こっちのチップは―――ん、何が欲しい?一回分の
「は―――!?」
黒ウサギは息を呑んでびっくらこいた。驚きの余り、思わずウサ耳が跳ねたほどだ。それは願ってもない事だろう―――が、黒ウサギは躊躇いがちに苦い顔で頭を横に振る。
「そ………それは、駄目でございますよ、十六夜さん」
「そうか?なら金品か?まあヘソクリぐらいでいいなら」
「い、いいえ、そうではなくてですね。十六夜さんの謝意は伝わりました。ま、まあ、黒ウサギの頭が少々固かった事も認めます。ですのでギフトゲームをするなら………それはやはり、対等の条件でなければ、と」
今度は十六夜が瞳を丸くして驚いた。つまり黒ウサギも、一回分の首輪を十六夜に賭けるというのだ。
「ギフトゲームは対等の条件でのみ行われるべきです。ペナルティーのあるゲームで得たギフトなんて貰っても、達成感は得られません。なのでやるならば正々堂々!そして真正面から、黒ウサギは十六夜さんにお説教をするのです!」
「………ハッ。黒ウサギの癖に生意気言いやがって」
物騒に笑う十六夜。黒ウサギは「あ、」と声を発して十六夜に問う。
「ところで十六夜さん」
「なんだ?」
「万由里さんと鞠奈さんにメイド服を強引に着せたとは本当ですか!?」
「―――………は?」
十六夜は瞳を点にして一瞬固まった。だがすぐに肩を竦ませて返す。
「ああ、或守の奴が誤解を招くような言い方をしやがったんだな。俺は白夜叉と交渉する際に、あいつらにメイド服を着せてもいいとは言ったが………着替えさせてはねえぞ?」
「いいえ、十六夜さん。メイド服を着たくないと仰ってたお二人にその話を持ちかけた時点でギルティー………有罪なのですよ?」
「………まあ、あいつらを弄るにはメイド服がお似合いだからだけどな」
「い、弄る!?万由里さんと鞠奈さんのな、何をどう弄るというのですか十六夜さん!?」
急に赤面させて慌てる黒ウサギ。十六夜は首を傾げてニヤリと笑う。
「おいおい、俺の事なんだと思ってやがんだ黒ウサギ。………たしかにあいつらの胸や脚は揉んではみたいが」
「思ってるんじゃないですか!?やっぱり十六夜さんはお馬鹿様なのです!!!―――っ!ま、まさか黒ウサギの命令権を獲得したら性的な事をするおつもりじゃ………ッ!」
「そうだな。それも魅力的ではあるが―――つか何でソッチに物事を考えてんだよ。その格好だけでなく脳内までアレなのか?エロウサギ」
「―――ッ、だ、誰がエロウサギですか!!」
顔を真っ赤にさせながらうがー!とウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。しかし反論しなかったのは本当に彼女の思考は桃色に染まってしまっていたからだろう。
そんな黒ウサギがおかしくてケラケラと笑った十六夜は―――フッと真剣な表情になると促した。
「ま、悪ふざけはこのくらいにして………始めようぜ、エロウサギ」
「………YES―――って言ったそばからふざけてるんじゃないのですよこのお馬鹿様ああああああああああああああああああああ!!!」
スパァアアアアアン!!と黒ウサギのハリセンは十六夜の頭に強烈な一撃を叩き込むのだった。
★★★★★★★★★★★★
「園神凜祢と凜緒の事なんだが………その二人の事を悪いが俺は―――知らない」
「……………え?」
万由里は思考を停止させて固まっていた。士道の予想外の反応に。だが驚くべきところはそれだけではない。
「………凜祢と凜緒?一体その者は誰なのだ?」
「園神凜祢と園神凜緒………私の頭の中にもその検索ワードは引っかからない。何者?」
「凜祢に凜緒ですか………?すみません、わたしにもその名前を聞いても誰の事なのか判りかねます」
「―――ッ!!」
士道だけでなく、十香・折紙・鞠亜の三人も、凜祢と凜緒の名前を聞いてもさっぱりといった反応を示していたのだ。
だが万由里自身も、凜祢と凜緒の霊力を保持していながらも彼女達の『知識』は一切なく、それどころか存在すら知らなかったのだ。彼女達と接触するまでは士道達と同じ反応を見せていたのだから。
万由里はすぐさま士道に問いただす。
「………本当に覚えてないの?」
「ああ。俺は本当に凜祢と凜緒に面識があるのか?」
「あるわ。………そっか。覚えてないのね………」
万由里は悲しそうな顔をしたが、ふと思い出して問いかけた。
「………士道。
「は?―――ッ、何で万由里がそれを知ってるんだ!?持ってるけど………これがどうかしたのか?」
士道はズボンのポケットから綺麗な桃色の花―――勿忘草のキーホルダーを取り出して万由里に見せる。万由里は頷いて確認を取った。
「士道は勿忘草の花言葉を知ってる?」
「ん?ああ、知ってるよ。前に琴里が教えてくれたからな。たしか花言葉は『私を忘れないで』と『真実の愛』―――ッ!!?」
瞬間、士道の心臓がとくん、と鳴った。すると、
『きっとまた、会えるから』
顔は思い出せないが、そんな言葉が士道の脳裏をよぎった。聞き覚えのないはずの声だったが士道を、懐かしいような―――切ないような気分にさせた。
「(………俺は、この声を知っている………?)」
知っているはずなのに、思い出せない。喉元まで彼女の顔が、声が出かかっているのに、思い出せない。
万由里が士道に声をかけようとした―――その時。
「―――士道!」
「………っ!?」
自分を呼ぶ声にハッと振り返る士道。するとそこには、緩いウェーヴのかかったセミロングの薄い桃色の髪に茶色の瞳、来禅高校の制服を着た少女―――園神凜祢。
その彼女と手を繋いでいる桃色の長髪に紅玉の瞳、赤と白をベースにしたローブのようなお姫様風の霊装を着た幼い少女―――園神凜緒。
士道は二人の顔を見つめたのち、凜祢の声が、脳裏によぎった声のものと同じだったことに瞳を見開き驚愕した。
「……………っ、おまえは、」
「え?―――そっか。やっぱり覚えてないんだね。………覚悟はしていたけど、悲しいなぁ………」
悲しそうに目を伏せる凜祢。だが凜緒の言葉によって凜祢の表情は変わることになる。なぜなら、
「パパ?
「………え?」
そう。士道はわけもわからず涙を流していたのだ。それに凜祢達は驚くが、一番驚いていたのは他ならぬ士道だった。
「………あれ?なんで俺、泣いてるんだ………?」
自問する士道。だがもう既に答えは出ているのかもしれない。この涙の意味がなんなのかということを。
士道はゆっくりと凜祢の下に歩み寄る。凜祢は向かってくる士道を見つめたまま固まっていた。そして―――士道が凜祢の前に立つと、そのまま抱きしめた。
「―――え?し、士道?」
「………思い、出した。おまえが何者で、どんな奴だったのかを―――」
「………!!士道!」
「今の今まで、おまえの事を忘れてしまって悪かった………凜祢」
「ううん。私は思い出してくれただけで、十分嬉しいよ」
凜祢は嬉しそうに笑って士道の背に腕を回して抱きしめ返す。
しばらくして、二人は離れると見つめ合い―――士道が口を開く。
「………
「うん。
凜祢が残したおまじない『勿忘草のキーホルダー』。
花言葉を思い出した士道は凜祢を思い出しかける。
凜祢の登場で確信へと変わる。
次回は残り二人の精霊を登場させたいですね。