役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

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精霊と問題児の談笑会です。


第六話 談笑会と黒き謎の監視者だそうよ?

「………あんたたち、こんなところで何してるの?」

 

「何ってそりゃ窃盗犯を捕まえてたところだぜ」

 

「YES。さあ、観念するのですよ!」

 

「いででで!折れる!腕の骨折れるから離してくれッ!」

 

「フフフ、答えはNOでございます♪」

 

「ぎゃああああああああああ!?」

 

 悲鳴を上げる窃盗男。まあ十六夜とのデートを楽しんでいたところに邪魔が入ったのだ。今の黒ウサギは不機嫌なのである。

 窃盗犯に憐れみの視線を向ける万由里と士道。

 十六夜は窃盗男の元まで歩み寄り呟いた。

 

「んで、捕まえたはいいがコイツはどうする?白夜叉あたりに突き出すか?」

 

「………ッ!!?」

 

〝白夜叉〟と聞いて窃盗男は滝汗を流す。東側最強の主催者(ホスト)に突き出されれば、完全に詰んでしまうからだろう。

 それを察した十六夜は、邪悪な笑みで言う。

 

「ああ、そうだ。それがいい。黒ウサギ、さっさとソイツを縛って白夜叉に突き出しに行くぞ」

 

「はいな」

 

「………ッ!待っ」

 

「―――待て」

 

 十六夜達が行動に移そうとした時、ある男が待ったをかけた。振り返るとそこには、蜥蜴の鱗を肌に持った男が二人いた。

 十六夜はスッと瞳を細めて男達を見つめて問う。

 

「あん?誰だオマエら」

 

「我々は〝サラマンドラ〟のコミュニティの者だ。その男は我々が連行し適切な裁きを下す」

 

「ふうん。ソイツとグルってわけじゃねえんだな?」

 

「ああ。安心しろ。我々は犯罪者を野放しにするつもりはない」

 

「………そうかい。ならコイツの事任せた。黒ウサギもそれでいいな?」

 

「はい。ではよろしくお願いします」

 

 黒ウサギは捕らえていた窃盗男を〝サラマンドラ〟の者に委ねる。その男達は会釈して黒ウサギから窃盗男を受け取る。

 立ち去る前に〝サラマンドラ〟の男達は振り返って尋ねた。

 

「最後に、お前達のコミュニティの名を聞いてもいいか?」

 

「ん?俺達のコミュニティは〝ノーネーム〟だ」

 

「〝ノーネーム〟だと!?」

 

〝ノーネーム〟と聞いて〝サラマンドラ〟の男達の目付きが変わる。十六夜は怪訝な表情で返す。

 

「あん?なんだよオマエら」

 

「貴様ら名無しの言うことは信じられん。本当にこの者は盗みを働いたのか?」

 

「な、それなら証拠を見れば分かるのですよ!」

 

〝ノーネーム〟の言うことだから信じられないという男達に、ムッとした黒ウサギは窃盗男の持つ袋を指差して言う。

〝サラマンドラ〟の男達は疑わしい目で黒ウサギを見たあと、窃盗男の持つ袋を確認して―――驚いた。

 

「………な、なんだコレは!飴がたくさん入っているぞ!?」

 

「「「「え?」」」」

 

 それを聞いた十六夜・黒ウサギ・万由里・士道は思わず目が点になる。だが一番驚いたのは、窃盗男だった。

 

「はあ?売上金じゃなくて飴なのかよ!?」

 

「「あっ、」」

 

「………あ、しまった!?」

 

 窃盗男は慌てて口を押さえたが、時既に遅し………〝サラマンドラ〟の男達は頷いて黒ウサギ達に振り向き頭を下げた。

 

「先程は疑ってすまなかった。不届き者を捕らえていただき誠に感謝痛み入る」

 

「え?あ、はい!」

 

「では我々はこれで失礼する。ほら、きびきび歩け!」

 

「ち、畜生………」

 

〝サラマンドラ〟の男達は窃盗男を連行していった。士道は呆れたような表情で呟く。

 

「売上金とチュッパチャプスの重みをどうやったら間違えるんだよ」

 

「ええ。まったくね」

 

 士道の呟きに同意する万由里。すると、タタタッと士道達の下へ琴里と四糸乃が駆け寄ってきた。

 

「士道!私達の店の前で騒ぎがあったって聞いて急いで戻って来たんだけど………何があったの!?」

 

「大丈夫、ですか!?」

 

「あ、おまえら!店を放ったらかしにしてどこ行ってたんだよ!おかげで大変な目にあったんだぞ!?」

 

 士道は無責任な琴里達を叱る。それに四糸乃がおずおずと返した。

 

「わ、悪いのは、勝手に飛び出した私です!琴里さんは責めないで、ください………!」

 

『そーだよ士道くん。悪いのはよしのんたちだから琴里ちゃんは責めないであげて?』

 

『よしのん』も同調して返す。だが琴里は首を横に振って言う。

 

「いいえ。私も店を飛び出したんだから同罪よ。ごめんなさい士道。………だけど安心してちょうだい。売上金は盗られないように私がちゃんと管理してるから」

 

「そっか。それならいいんだ。今度からは気をつけろよ?」

 

「ええ、肝に銘じておくわ」

 

「本当に、すみません………でした」

 

 反省する琴里と四糸乃の頭を軽くポンと叩いて士道は笑って許した。その様子を万由里が見守っていると、

 

「へえ?オマエが噂の士道か?」

 

「え?ああ、そうだけど………おまえは誰なんだ?」

 

「俺は逆廻十六夜だ。んでこっちは俺のペットの黒ウサギだ」

 

「YES!黒ウサギは―――って誰がペットですか!?たしかに今の黒ウサギは十六夜さんのモノですが………ゴニョゴニョ」

 

「ならペットでいいじゃねえか」

 

「ペット扱いは嫌です!」

 

 断固拒否といった感じに十六夜の言葉を一蹴する黒ウサギ。

 怒る黒ウサギの下に士道・琴里・四糸乃が集まって興味津々に彼女のウサ耳を見つめる。

 

「………あなたのこのウサ耳は本物?」

 

「………触りたい、です」

 

『モフモフしたら気持ち良さそうだねー』

 

「いや、コスプレじゃないか?」

 

「このウサ耳は本物です!決してバニーガールの何某ではないのでございますよ!」

 

 琴里達三人+人形一体の呟きに答える黒ウサギ。十六夜はヤハハと笑って黒ウサギの背後に立つと、ウサ耳を根っこから鷲掴み、

 

「ちなみにコレの扱い方は―――こうだ!」

 

 ぐいっ。

 

「フギャアアアアアアアアアア!!?って何間違った扱い方を教えてんですか十六夜さん!?」

 

 キッと十六夜を睨みつける黒ウサギ。すると琴里が黒ウサギの右隣に立ってウサ耳に手を伸ばし―――ぐいっ。

 

「フギャ!」

 

「あら、本当に本物みたいね」

 

「そういう確認の仕方は黒ウサギは感心しないのですよ!」

 

「え?だって引っ張っていいってあなたの所有者が」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 琴里の言葉を遮って速攻で黙らせる黒ウサギ。十六夜はケラケラと笑い、万由里は苦笑いを浮かべる。

 士道ははぁ、と溜め息を吐くと黒ウサギのウサ耳に手を伸ばし―――優しく撫でて言う。

 

「駄目だろ琴里。黒ウサギさんが痛がってるって。すみません俺の妹が失礼な事をして」

 

「え?あ、いえ!黒ウサギは大丈夫でございますよ―――って妹さんですか!?」

 

 士道の妹発言に驚く黒ウサギ。十六夜は興味深そうに問いかけた。

 

「………へえ?兄妹にしては似てねえな。義兄妹ってところか?」

 

「ええ。ちなみに私には鞠亜っていう実妹がいるわ。士道の義妹にあたるけど」

 

「ああ。それで俺にも真那っていう実妹がいるよ」

 

「へ?士道さんは妹を三人もお持ちなのですか!?」

 

「ヤハハ、妹ハーレムじゃねえかよオマエ」

 

「妹ハーレムってなんだよそれ!?」

 

 十六夜の意味深な発言に叫ぶ士道。

 苦笑する黒ウサギのウサ耳を今度は四糸乃が触った。

 

「フカフカしてて、気持ちいい………です」

 

「ふふ、でしょ?私も黒ウサギのウサ耳をモフモフしよ♪」

 

 万由里も四糸乃が気持ちよさそうに触っているのを見て自分もとモフモフする。

 黒ウサギはくすぐったそうに、されど嬉しそうに笑う。

 

「ふきゃあ♪今の黒ウサギは幸せ絶頂の真っ只中なのですよ♪」

 

「へえ。じゃあ今ならウサ耳を引っ張っても」

 

「いいわけないのですよこのお馬鹿様!!!」

 

 スパァアン!と黒ウサギのハリセンが十六夜の頭に奔る。ヤハハと笑う十六夜。

 そんなやり取りを士道達が見ていると―――きゅるる。と万由里のお腹は本日二度目の可愛らしい音を鳴らした。

 士道達は一斉に万由里を見る。万由里は恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせて俯く。

 士道は思い出したように言う。

 

「あー………そういえば俺達はきなこパンを買いに来たんだったな」

 

「きなこパン?なんだよ美味しそうじゃねえか。黒ウサギも食べたいだろ?」

 

「YES。よろしければ黒ウサギ達にも作っていただけないでしょうか?」

 

「んー?そうね。あなたたちと士道と万由里の四人分を作ればいいのね。わかったわ。今から作るからちょっと待ってて。四糸乃は私の手伝いをしてちょうだい」

 

「は、はい。頑張り………ます!」

 

 注文を受けた琴里はエプロンを着て店内へと消える。その後を四糸乃がエプロンを手に取りパタパタと走っていく。

 

 ―――数分後。琴里から受け取ったきなこパンの入った袋を四糸乃が持ってきて士道達に配る。

 

「ど、どうぞ!とても美味しい、です」

 

『十香ちゃんのお気に入りだよー。絶対に美味しいから食べて食べてー』

 

 四糸乃と『よしのん』が勧めると、士道達は包装を解き、出来立ての温かいパンをはむっと齧った。

 香ばしく揚げられたパン生地と、仄かに甘いきなこという、一見ミスマッチな和と洋の味が、口の中で見事に調和する。なんとも不思議な味わいに、万由里は思わず目を丸くした。

 

「わ………、美味し」

 

「だろ?万由里も気に入ってくれたら十香も喜ぶよ」

 

「ん。これは本当に美味しい。こんなに美味しいんだったらもっと早く食べておくべきだったな………」

 

 万由里は苦笑を零し、再度はむっとパンを齧る。美味しそうに食べる万由里を見て士道は口元を緩ませた。

 同様に十六夜と黒ウサギもきなこパンの甘味に舌鼓を打っていた。

 

「こいつは中々美味いな。きなこパンってのは食べたことはあるが、此処のが断然美味い」

 

「はい♪思わず頬が落ちてしまいそうなのですよ♪」

 

 それは褒めすぎじゃねえか?と十六夜は思ったが、美味しそうに食べる黒ウサギの表情に免じて黙っておくことにした。

 そんな士道達を微笑ましそうに見つめる四糸乃と、どうよ!と自信満々に小さい胸を張る琴里。

 ―――と、不意に四糸乃の純白ワンピースをくいっと何者かが引っ張った。

 

「………はい?」

 

 四糸乃は振り返る。そこには、闇より深い黒い長髪に漆黒の瞳、黒い上着と黒いミニスカート、黒いタイツ、黒い靴………と全身黒尽くめの幼い少女がいた。

 身長は四糸乃より低く、どちらかというと凜緒と同じくらいの少女だった。

 四糸乃は小首を傾げながら尋ねた。

 

「えーと………ご用件は、なんですか?」

 

「……………」

 

 黒い少女は徐にフリップとペンを取り出してサラサラと何かを書き始めた。

 数秒後、書き終えたのかペンを仕舞いフリップに書いた文字を四糸乃に見せる。

 

『きなこパンを二つ頂戴』

 

 フリップにはそう書かれていたのだ。四糸乃は了解したように頷き、琴里にオーダーの内容を提示した。

 

「こ、琴里さん!追加で、きなこパン二つ………お願い、します!」

 

「え?ええ、分かったわ」

 

 琴里は頷いてきなこパンを作りに取りかかる。

 一方、黒い少女に気づいた士道・万由里・十六夜・黒ウサギは口々に呟いた。

 

「あんな小さな子が一人で買い物か?」

 

「きなこパンを無表情で見つめてるみたいだけど………自分が食べるわけじゃないのかな?」

 

「つうかアイツ何時からあそこにいたんだ?まるで気配を感じられなかったのだが」

 

「それは黒ウサギ達がきなこパンに夢中になっていたからでは?」

 

 それはオマエだけだろ、とツッコミを入れようとも考えたが苦笑で止まる十六夜。

 そして数分後、きなこパンが焼き揚がり二つ共包装に包むと黒い少女に手渡す。

 黒い少女はそれを受け取ると、お金を琴里に渡し一礼して去っていった。

 黒い少女が去っていった方角を見つめて士道が呟く。

 

「………何て言うか、不思議な子だったな」

 

「うん。表情の変化はまるでなかった」

 

「………俺的にはアイツは感情そのものが抜け落ちて………いや―――()()()()()なんじゃねえのか?」

 

「黒ウサギも彼女は普通じゃないと思えました」

 

 普通じゃない。それは士道も万由里も感じ取っていた。

 先程の黒い少女から微弱の霊波をキャッチしていたのだ。もしかしたら彼女も士道達がまだ巡り逢っていない精霊の一人なのではないか?と思ったが、

 

「………まさかな」

 

 きっと気のせいだと、士道は黒い少女の事について深く考えるのを止めたのだった。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 ―――場所は時計塔の頭頂部。そこにはノイズで姿を隠していた少女―――<ファントム>が街を見下ろしていた。

 ただ見下ろしているだけではない。士道達の様子を遠目から見守っていたのだ。

 彼らをこの箱庭に連れてくるように召喚者に頼んだのは他でもない彼女なのだから、彼らの身を案じるのは当然の義務である。

 そんな彼女の下に、先程士道達が出会った黒い少女が姿を現した。

 その少女に気づいた<ファントム>は言う。

 

()()()()()()

 

「……………」

 

 レミと呼ばれた黒い少女はフリップとペンを取り出して書き記し、それを<ファントム>に見せる。

 

()()()()

 

 レミはそう書いて<ファントム>に見せる。

<ファントム>はレミの腕にかかっていた袋を見てノイズ越しに首を傾げた。

 

【………それは何?】

 

「……………」

 

 レミは再びフリップにペンを奔らせて、

 

『きなこパンを買ってきた』

 

 と記し<ファントム>に見せる。

<ファントム>はノイズ越しに瞳を丸くした。

 

【彼らの様子を見て来てとは言ったけれど………まさか彼らの店で買い物してくるとは思わなかったよ】

 

「……………」

 

 レミはフリップに『お腹が空いてると思ったから』と書き<ファントム>に見せる。

<ファントム>はノイズ越しにキョトンとして、苦笑いを浮かべた。

 

【………やれやれ。でもありがとう。折角買ってきてくれたのだから戴くよ】

 

<ファントム>はノイズを解いて髪の長い少女の姿を露にすると、レミからきなこパンを受け取り口に運ぶ。

 

「―――ふむ。これは中々美味しいね」

 

 レミもコクリときなこパンを口に咥えたまま頷く。その頬は微かだが赤みを帯びているような気がした。

 二人はきなこパンを食べ終えると、<ファントム>は再びノイズを纏って姿を隠す。

 

【さて、私はしばらく身を隠すとするよ。君には引き続き彼らの監視を頼んだよ】

 

<ファントム>の言葉にコクリと頷くレミ。<ファントム>はそれだけを残して姿を消したのだった。

 




万由里達を監視する黒き少女はデアラに登場しないオリジナルの精霊です。

片仮名表記はわざとです。漢字にするとバレると思うので(苦笑)

無口で言葉を書いて見せるアレは某アニメの元ネタを真似していたりしますが。
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