役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

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今回で例のあの人が登場します。


第七話 宣戦布告と最悪の再会だそうよ?

「………そういや琴里」

 

「何?」

 

「万由里がいるのに全然驚かないんだな」

 

「ああ、その事?確かに消えたはずの万由里がこの箱庭にいるって聞いた時は驚いたわ。本当よ?」

 

「あん?」

「え?」

 

 琴里の言葉に十六夜と黒ウサギが反応した。

 

「おい。万由里が消えた存在ってのはどういうことだ?」

 

「そうです!一体どういうことなのですか!?」

 

「………え?万由里、あなた話してなかったの?」

 

「うん。聞かれなかったから話してないわ」

 

 さらっと返す万由里。士道は苦笑し、フッと真剣な顔になると話し始めた。

 

「十六夜と黒ウサギ、心して聞いてほしいんだが………万由里、凜祢、凜緒、鞠奈の四人は共通して一度………凜祢と鞠奈の場合は二回か。消えた存在なんだ」

 

「な、」

 

「ふうん。消えた存在ってことは、まんまの意味でオマエが元いた世界から―――ってことか?」

 

「ああ。琴里や四糸乃みたいに精霊になった元・人間じゃなくて、万由里達は霊力のみで生まれた精霊なんだ。鞠奈の場合は人工的に造られた存在だけどな」

 

「うん。私と凜祢は士道とキスしたことによって霊力を封印されて存在が保てなくなって消滅。鞠奈の場合は士道に人工的に造られた赤い結晶石のようなモノを砕かれて消滅した………でいいのよね?」

 

 万由里が確認を取ると、士道は頷いて返す。それに黒ウサギが声を上げて問い詰めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!万由里さん達が消えた原因って、話を聞くからに全部士道さんが悪いんじゃ―――」

 

「ううん。私も凜祢も鞠奈も望んでしてもらったことだから………士道を責めないで黒ウサギ」

 

「………っ、はい」

 

 万由里に諭されてハッとした黒ウサギは士道に頭を下げて謝る。

 

「すみません士道さん!失礼な事を言ってしまって………!」

 

「や、別に俺は気にしてないから謝らなくていいよ黒ウサギ。それにあの時は万由里も凜祢も鞠奈も消滅以外の方法で救えなかったんだからな………」

 

「士道………」

 

「士道さん………」

 

 自分の無力感に力なく笑う士道を悲しそうな表情で見る琴里と四糸乃。

 そんな士道の頬を優しく両手で包んだ万由里は笑う。

 

「そんな顔しないで士道。誰もあんたの事を責めたりはしないわ。むしろ感謝してるんだから………ね?」

 

「万由里………ありが―――」

 

 ありがとう、と言おうとした士道の左頬にチュッと口付けする万由里。

 なっ!と声を上げる黒ウサギ・琴里・四糸乃。十六夜はほう、とニヤニヤ顔で見つめた。

 士道は狼狽しながら口をパクパクさせた。

 

「ま、ままままま万由里!?いきなり何を………!」

 

「ん。これはあの時、私を助けてくれたお礼。あと―――()()()()()()()()()()()()、っていう私からの一方的な誓いのキスよ」

 

「………っ!!」

 

 万由里の言葉に士道はドキリとした。奪ってやる―――つまりそれは士道の恋人になってみせるという誓いの言葉だった。

 悪戯っぽい笑みを見せるがその瞳は真剣そのものの万由里に、士道は誤魔化すようにコホンと咳払いをした。

 

「万由里の気持ちは分かった。けど―――みんな手強いぞ?」

 

「うん。それは承知してる。凜祢とは宣戦布告してるからね」

 

「そっか。俺も、万由里の気持ちに答えられるように頑張るよ」

 

「え?あんたが頑張る必要はないわよ?」

 

「は?」

 

「私があんたを―――()()()()()()()()()()………ね?」

 

「―――――ッ!!」

 

 士道はまたドキリとした。そして悟った。この少女は、万由里は本気なのだと。

 士道は頬を赤らめて万由里から顔を逸らすと、「………おう」と返した。

 そんな光景を見ていた琴里は眉をぴくぴくと動かしながら言う。

 

「私達がいるっていうのに、やってくれるじゃない万由里」

 

「万由里さん………凄い、です」

 

『万由里ちゃんってばダイターン!』

 

「え?………ハッ!?」

 

 琴里・四糸乃・『よしのん』の声に、万由里はハッとして―――顔を真っ赤にさせた。

 先程の万由里は士道にしか気が向いていなかったのだ。完全に琴里達のことを忘れていたのである。

 十六夜はニヤニヤと見つめ、黒ウサギは赤面ウサギ状態だった。

 しかし、ニヤニヤ顔の十六夜だが内心は全く別の気持ちが支配していた。

 

「(………なんで俺は万由里が他の男といるのを見て胸が痛いんだ?アイツは俺にとってはからかって楽しむだけの存在でしかねえのに………)」

 

 胸中で渦巻く不可解な気持ちに頭を悩ます十六夜。だが、

 

「(………!そう、か。いつの間にか俺は―――万由里の事を好きになっていたんだったな………。なら、この胸の痛みは失恋した悲しみってヤツか………)」

 

 自分の本当の気持ちを理解した十六夜。だが告白する前に万由里の本命が現れてしまったのではもう遅い。

 ここで自分がでしゃばって告白したところで、何も変わるわけがないのだから………。

 聡明な十六夜はすぐにそれを悟り気持ちを入れ替えた。

 

「(………よし。俺はアイツらの関係を壊さず見守るとするか!なぜなら俺の本命は―――)」

 

 十六夜はスッと視線を黒ウサギに向けて、内心で呟くのだった。

 

 

「(()()だからな―――()()()())」

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

「それで琴里」

 

「何?」

 

「万由里達の事を聞いたって言ってたが………誰にその話を聞いたんだ?」

 

「………!それ、私も気になる」

 

 士道の問いに万由里も乗っかる。琴里は頷いて答えた。

 

「ああ、それはね。四糸乃を見つけた時に一緒にいた飛鳥とレティシアって人から話を伺ったのよ」

 

「え?飛鳥さんとレティシア様ですか!?」

 

 飛鳥とレティシアの名を聞いた黒ウサギが驚きの声を上げる。

 

「あら?あなたは彼女達と面識があるの?」

 

「YES。お二人は我々〝ノーネーム〟の同士………お仲間でございますから!」

 

 それに今度は琴里と四糸乃が驚いた。確かに飛鳥達が話していた内容からそんな名前が出てきてはいたものの、目の前にいる二人がその張本人だとは思いもしなかったのだろう。

 そもそも、黒ウサギは名前ではないし髪色は黒というより青みがかっている。十六夜だって異世界ゆえに名前が同じ存在がいるかもしれないのだ。

 そう考えると琴里達が驚いた理由は納得がいく。

 琴里は「そう」と相槌を打ち、今度は士道に問いかけた。

 

「私の方からも一つ聞いていいかしら、士道」

 

「なんだ?」

 

「凜祢の事は思い出したからいいけど―――凜緒って誰よ?聞き覚えがないんだけど?」

 

「あー………そういや凜緒を知ってるのは、あの時は俺と凜祢と鞠亜と鞠奈だけだったな」

 

 士道はポリポリと頭を掻いたあと、琴里達に説明した。

 

「凜緒は俺が凜祢の霊力を封印した際に、俺の中に残っていた凜祢の<ルーラー>としての力が分離した存在だよ」

 

「ふうん。つまり、士道を『パパ』。凜祢を『ママ』って呼んでいるのはそれが理由なのね」

 

「ああ。―――ってなんでその事を琴里が知ってるんだ!?」

 

「なんでって、それは飛鳥達にその事も聞いたからよ」

 

 慌てる士道をしたり顔で見る琴里。十六夜・黒ウサギ・万由里は納得したようにポンと手を叩く。

 

「なるほどな。てっきり本当にデキているのかと思ってたぜ」

 

「は?」

 

「ええ。凜祢さんにもそう言われてましたが………今まで半信半疑でした」

 

「ちょ、」

 

「まったくね」

 

「いや、おまえは流石に知ってただろ!?」

 

 万由里が士道から目を逸らすと、すかさず士道が叫んだ。

 万由里はフン、と鼻を鳴らしてボソリと呟いた。

 

「………私だって知らなかった記憶を簡単には信じられないわよ。―――あんたの口から言ってくれなきゃ、ね」

 

「………?何か言ったか万由里?」

 

「………ッ、なんでもない!」

 

 不機嫌になる万由里に士道は首を傾げて頭の上に疑問符を浮かべる。

 情報(記憶)に流される安い女と思われたのが癪で不機嫌になった万由里だが、士道が知るよしもなかった。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 ―――一方、十香と折紙は凜祢から凜緒の事を聞いたのち、屋台巡りを楽しんでいた。

 

「―――うむ!この箱庭という世界の食べ物もどれも美味いな!」

 

 十香は右手にマスタードとケッチャップがかけられている串に刺してある焼き立てのフランクフルト五本、左手には『もも』『かわ』『レバー』『ねぎま』などの焼き鳥を計十本も持っていた。

 その様子に凜祢はバニラ味のアイスクリームを片手に苦笑しながら見つめた。

 

「十香ちゃんは本当によく食べるね」

 

「うむ!凜祢もたくさん食べなければ損だぞ」

 

「でも、とおかはもうすこしひかえたほうがいいかもね。たべすぎはからだにわるいんだよ?」

 

「む、煩いぞ凜祢ではない娘!お前は私の母親か!」

 

 食欲に関して凜緒に注意された十香はムギー!と威嚇する。

 ちなみに凜緒はチョコミント味のアイスクリームを両手に持って食べていた。

 凜祢が慌てて止めると、折紙は頷き凜緒に同意した。

 

「うん。あなたの言う通り、十香はもう少し食べる量を控えるべき。食べてばかりでは何れ太る」

 

「何をー!精霊は歳を取らぬのだ!ならば太ることもない!!だからたくさん食べても問題はないのだぞ折紙!」

 

「そう油断していると何時かは太る。太ったあなたはきっと士道に見捨てられる」

 

「なん………だと!?」

 

 折紙の発言に衝撃を受ける十香。そんな十香をチョコバナナを食べながら見る折紙。

 凜祢はふくよかな十香を想像しながら苦笑いを浮かべた。

 

「………まんまるになった十香ちゃんはちょっと想像出来ないかな」

 

「………ぬぅ」

 

「りおはね、まんまるとおかも、かわいいとおもうよ?」

 

「―――何?それは本当か!?」

 

 落ち込んでいた十香が凜緒の一言で復活する。

 凜緒はニコリと笑って頷いた。

 

「うん!とおかはもとがかわいいからね。まんまるになってもかわいいとおもうよ!」

 

「………!そ、そうか?―――うむ!そうだな!私は可愛い女の子なのだ!太ったところで私の可愛さは欠けぬのだ!」

 

 ふっはははは!と高らかに笑い声を上げる十香。

 十香は凜緒の頭を撫でて嬉しそうにお礼を言った。

 

「ありがとうだ、凜祢ではない娘!お陰で元気が出てきた!」

 

「うん。よかったね、とおか」

 

「うむ!」

 

 すっかり元気を取り戻した十香。しかし、凜緒が笑顔で指摘したことによって、十香は再び落ち込むことになる。

 

「だけどね、とおか。じぶんのことをかわいい、っておもっていても、くちにはださないほうがいいかもね」

 

「う………むぅ」

 

 凜緒の言葉が胸に突き刺さり、ガクリと頭を垂れる十香。

 凜祢は毒舌な凜緒にあはは、と乾いた笑いをした。

 そんな様子を見ながら黙々とチョコバナナを食べ進めていると、ある人物の姿を見つけて驚愕し瞳を見開いた。

 

「………ッ!?」

 

「ん?どうしたのだ、折紙」

 

 それに気づいた十香が聞くと、折紙はゆっくりと空いている手を上げて前方を指差した。

 折紙の視線と指差した方角に十香が目を向け―――驚愕の色に染まった。

 二人の視線の先には、ノルディックブロンドの長髪に紫色の瞳、黒いスーツに身を包んだ女性―――エレン・ミラ・メイザースの姿があった。

 

「な、貴様は………エレンッ!」

 

「ん?―――おや、お久しぶりですね。<プリンセス>に<エンジェル>」

 

 DEM第二執行部部長にして、世界最強の魔術師(ウィザード)、エレンが十香達に気づいて近づいてきた。

<プリンセス>とは精霊・十香の識別名で、<エンジェル>も精霊・折紙の識別名のことだ。

 十香と折紙は警戒して凜祢と凜緒を守るように前に出た。

 

「下がれ凜祢!凜祢ではない娘!この女は―――危険だッ!」

 

「え?」

 

「………?」

 

「エレン・メイザースッ!なぜお前がここに!?」

 

「なぜ、ですか?それは勿論、貴女方精霊を捕らえるためにですよ」

 

「「………ッ!!!」」

 

 エレンの言葉に二人は一層に警戒を強めて臨戦態勢を取る。

 だがエレンはそれに取り合わず、フッと笑った。

 

「そう警戒しなくてもいいですよ。()()()()、貴女方を捕らえるつもりはありませんので」

 

「何?一体どういうつもりだ貴様!」

 

「どうもこうも、この箱庭には修羅神仏が跋扈していますからね。世界最強の魔術師と謳われている私でも、神様相手では部が悪いので」

 

「……………」

 

「時が来れば迎えに来ますよ。それではまた」

 

 エレンはそれだけを残すと、十香達の横を通りすぎて去っていった。

 十香と折紙は冷や汗を流していると、凜祢が首を傾げて問いかけた。

 

「………今の人は何者なの?」

 

「ああ。奴の名はエレンだ」

 

「………えれん?」

 

「彼女は私達精霊を狙う最大の強敵。あの口ぶりだと、また私達の前に姿を現すはずだから―――気を付けて」

 

「う、うん。分かった、気を付けるね」

 

 折紙の忠告に頷く凜祢と凜緒。こうしてエレンとの最悪の再会は幕を下ろした。

 

★★★★★★★★★★★★

 

「―――アイク、聞こえますか?」

 

 十香達と接触を終えたエレンは、自分の耳につけたインカムを通して〝アイク〟という人物に話しかける。

 

『―――ああ、聞こえているよ、エレン。それで、私に何の用かね?』

 

「はい、ご報告があります。<プリンセス>と<エンジェル>に接触しました」

 

『ほう。それは朗報だ。それで、他に何かあるなら言いたまえ』

 

「はい。その二人の精霊が庇った二人の少女なんですが………私の推測では恐らく精霊かもしれません」

 

 二人の精霊が庇った少女。つまり、凜祢と凜緒のことだろう。

 エレンはその二人の正体を知らないが、精霊と共に行動しているのだ。精霊という可能性が高い。

 人間の可能性は、士道という物好きな者くらいしかいないと思うだろうから。

 アイクと呼ばれた男は嬉しそうに笑った。

 

『はは、それは嬉しい誤算だ。是非とも精霊であって欲しいところだね。―――何なら私が魔王の力で調べておこうか?』

 

「いえ。下手に力を行使して潜伏場所をバレては元も子もありません。お控えください」

 

『………やれやれ、過保護が過ぎるよエレン。まあ、君がそういうなら止めておくよ』

 

「ありがとうございます、アイク」

 

 苦笑しながらエレンの言うことを聞くアイク。ホッと息を吐くエレン。

 だが、ふっとエレンは目の前に、黒い少女―――レミがいたことに気付き驚愕した。

 

「なっ、いつの間に………!?」

 

『………ん?どうかしたのかねエレン』

 

「え?あ、はい!今、私の目の前に黒い少女が」

 

『黒い少女?それは<ナイトメア>ではないか?』

 

「いえ。<ナイトメア>にしては幼すぎますし、格好も全身黒尽くめです」

 

 エレンがレミの容姿をアイクに伝える。するとアイクは興味深そうに聞いた。

 

『ほう………それは確かに<ナイトメア>ではないね。だとしたらその少女も我々が知らない新たな精霊か?』

 

「………さあ、どうでしょうね―――ん?」

 

 エレンはレミが徐にフリップとペンを取り出して何かを書き記しているのを見て口を閉じる。

 そしてレミは書き終えると、フリップに書いた文字を見せた。

 

「『()()()()()()』………ですか」

 

『うん?それはどういう意味だ、エレン』

 

「はい。目の前の少女がフリップにそう書いて私に見せてきました」

 

『ほう。彼女は何か知っている気がするね。その少女を捕えてくれるかい?』

 

「問題ありません。私に捕まえられない精霊など存在しませんから」

 

 そう言ってエレンは目の前の少女に視線を戻すが―――そこにはレミの姿はなかった。

 レミからほんの一瞬しか目を離さなかったはずなのに、辺りを見回しても彼女の姿は見当たらない。

 エレンは瞳を丸くし、だがすぐに舌打ちした。

 

「すみません。どうやら逃げられてしまったようです」

 

『何?近くにも居ないのかね?』

 

「………はい。まるで―――()()()()()()()()()()()()かのように()()()姿を消しました」

 

『………ふむ。それは随分と面白い。君に悟られることなく間近に現れては消えることができる存在、か。実に興味深いね。見つけ次第、捕獲を頼んだよ、エレン』

 

「―――はっ!必ずや捕まえてみせます!」

 

 敬礼したエレンは、アイクとのインカム越しでの会話を終えると、彼の潜伏場所へと向かうのだった。




エレンの登場により士道達の空気は一気に張り詰めてきました。
アイクと表記してますが、勿論あの男の事です。

ここから先はレミの登場はめっきり減ります。<ファントム>にはなるべく士道達に見つからないように監視してほしいという設定ですので。
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