役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

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前書きは………特に書くことはないです。


第九話 ネズミの群れ強襲と決勝進出だそうよ?

「………きゃ……!?」

 

 ヒュゥ、と。大空洞に一陣の風が吹く。

 その風は数多の灯火を一吹きで消し去ってしまう。飛鳥は堪らず小さな悲鳴を上げ、鞠亜と鞠奈はこの奇妙な現象に警戒する。

 

「どうした!?急に灯りが消えたぞ!」

 

「気をつけろ、悪鬼の類かもしれない!」

 

「身近にある灯りを点けるんだ!」

 

 他の客人達も声を上げて場が慌ただしくなる。

 灯火が消えた大空洞は闇に閉ざされ、内部の人間の叫び声だけが不気味に反響した。

 飛鳥は咄嗟に傍にあった燭台を握り、備えられていたマッチで火を点ける。

 大空洞の最奥に不気味な光が宿ったのは、その瞬間だった。

 

『ミツケタ………ヨウヤクミツケタ………!』

 

 怨嗟と妄執を交えた怪異的な声が大空洞で反響する。

 鞠亜と鞠奈はすぐさま周囲を見渡して声の主を捜す。

 だが声が反響して居場所が分からず、飛鳥は〝威光〟のギフトを込めた声で叫んだ。

 

「この卑怯者!姿()()()()()()()()()()()()!」

 

 しかし犯人からの反応はない。

 代わりに五感を刺激する笛の音色と、怪異的な声が響き渡った。

 

 

『―――嗚呼、見ツケタ………!〝ラッテンフェンガー〟ノ名ヲ騙ル不埒者ッ!!』

 

 

 その大一喝は大空洞を震撼させ、一瞬の静寂を呼ぶ。誰もが顔を見合わせる中―――ザワザワと洞穴の細部から何千何万匹という紅い瞳の、大量の群れが襲いかかってきた。

 

「ね、ねず………ネズミだ!?一面全てが、ネズミの群れだ!!」

 

 地面を覆い尽くして波打つネズミの大行進。これには流石の飛鳥も背筋に悪寒が走った。

 

「で………出てきなさいとは言ったけど、いくらなんでも出すぎでしょう!?」

 

 ひゃー、と悲鳴を上げるとんがり帽子の精霊。

 飛鳥ととんがり帽子の精霊は何万匹というネズミの波に背を向け、一目散に逃げ出そうとすると、その背を守るように鞠亜と鞠奈が前に出た。

 

「え?鞠亜さん、鞠奈さん!?貴女達も早く逃げないと」

 

「いいえ、此処であのネズミの群れを何とかしなければ大惨事になります」

 

「そういうこと。キミは下がって。あたしたちが追い払うから―――ね!」

 

 二人がそう言ったのと同時に、二人は光を纏うとそれぞれの霊装を展開した。

 

 鞠亜は十字が象られた白を基調とした修道服を纏い。

 鞠奈は逆十字が象られた黒を基調としたバグを起こしてるような修道服を纏った。

 

「………やっぱり疑似霊装(アッチ)は纏えなかったか」

 

「仕方がないですよ。アレを纏うには膨大な霊力が必要なんですから」

 

「それもそうね。―――はい、コレ。鞠亜の武具」

 

「………え?コレは………弓、ですか?」

 

 黄金の弓を渡されて首を傾げる鞠亜。

 鞠奈は頷いて答えた。

 

「ええ。それは白夜叉からもらった武具―――シェキナーの弓っていうレプリカだそうよ。ネズミ程度なら問題ないでしょ?」

 

「は、はい。ありがとうございます。………あ、でもコレは鞠奈の武具では」

 

「ううん。その心配はないよ。あたしのはコレがあるから平気よ」

 

 黒鉄色のギフトカードから燃え盛る炎の剣を取り出して見せる鞠奈。

 鞠亜は驚いたような表情でその剣を見つめた。

 

「それは………なんですか?」

 

「コレは〝煌炎の剣〟っていう強力な武具よ。まぁ、コレもレプリカだけどね」

 

 軽く二、三回振って言う鞠奈。鞠亜が様になっているその姿を微笑して見つめていると、

 

「―――貴女達!呑気に話してる場合ではないわよ!くっ………()()()()()()()()()()()!」

 

 飛鳥の〝威光〟を言葉に宿して大一喝。しかしネズミの群れは止まる気配を見せず突進する。

 それを遮るように鞠奈が立ち塞がり、剣を振り下ろす。

 だが剣から発生したのは炎ではなく―――稲妻だった。

 

「へっ!?」

 

 鞠奈は予想外の出来事に素っ頓狂な声を上げる。

 そして剣から発生した稲妻がネズミの群れに命中し―――ボウッ!と燃え上がった。

 そう。この〝煌炎の剣〟は雷を発生させ、触れると摩擦で発火し燃え上がる仕組みになっていたのだ。

 ネズミはなす術なく次々と燃えて灰に変わっていく。

 しかし雷を掻い潜ったネズミの群れは止まることを知らず襲いかかってきた。

 

「………!鞠亜!」

 

「はい!」

 

 鞠奈の声に応えた鞠亜は、シェキナーの弓に矢をかけて引く。

 瞬間、太陽に等しい輝きを放ち矢が黄金色に光る。

 目一杯に引いたシェキナーの弓をネズミの群れに照準を合わせると―――極光の矢を解き放つ。

 放たれた極光の矢は一直線にネズミの群れに向かい、黄金の軌跡を残しながらその直線上にいたネズミと、さらにその周りにいたネズミを悉く消し飛ばした。

 凄まじい威力に飛鳥達は逃げることを止めて見入っていた。

 

「………凄いわ。あれだけいたネズミの大群が一瞬で―――!」

 

「すごーい!」

 

 歓喜する飛鳥ととんがり帽子の精霊。

 ―――だから気づけなかった。飛鳥達の頭上の天井に潜んでいたネズミの群れに。

 ネズミの群れは一斉に飛鳥達に飛びかかり、強襲した。

 

「………っ!?しまっ―――」

 

 飛鳥達が気がついて上を向くがもう遅い。回避しようにも間に合わない―――!

 

 

「―――鼠風情が、我が同胞に牙を突き立てるとは何事だ!?分際を痴れこの畜生共ッ!!」

 

 

 第三者の激昂と共に影が這い寄り、無尽の刃が迸る。

 奔った影は、さながら刃を持つ竜巻だった。細い洞穴をミキサーのように駆け巡り、鋭利な刃を思わせる先端は、ネズミの群れの悉くを肉の塵と化して呑み込んでいく。

 瞬きの間もないこの一撃は、飛鳥達に襲いかかっていたネズミを一匹残らず粉微塵にしたのだ。

 

「か、影が………その声はレティシア!?」

 

 振り向く飛鳥。

 そこには、愛らしい少女の顔ではなく、妖艶な香りを纏う女性へと激変し、美麗な金髪は愛用のリボンを解いて煌々とした輝きを放つ。

 メイド服は深紅のレザージャケットに変わり、拘束具を彷彿させる奇形のスカートを穿いている。普段の温厚なレティシアと思えない劇的な変化を遂げていた。

 レティシアは美麗な顔を怒りで歪ませ、吸血鬼の証である牙を獰猛に剥いて叫ぶ。

 

「術者は何処にいるッ!?姿を見せろッ!!このような往来の場で強襲した以上、相応の覚悟あってのものだろう!?ならば我らが御旗の威光、私の牙と爪で刻んでやる!コミュニティの名を晒し、姿を見せて口上を述べよ!!!」

 

 激昂したレティシアの一喝が響く。しかし返事もなければ気配もない。というよりも、鞠亜と鞠奈の一撃でほとんどのネズミは死滅していたりするのだが。

 一方、飛鳥は息を呑み、言葉を失いながらも、激変したレティシアの背に話しかける。

 

「貴女………レティシアなの?」

 

「ああ。それより飛鳥。何があったんだ?多少数がいたとはいえ、鼠如きに後れを取るとはらしくないぞ」

 

 普段の口調で振り返るレティシア。先程の力を目の当たりにした飛鳥は衝撃を受けたような顔で呟く。

 

「………貴女、こんなに凄かったのね」

 

「は?」

 

 首を傾げるレティシア。それが賛辞だと理解すると、やや不機嫌な声を返した。

 

「あ、あのな主殿。褒められるのは嬉しいが、その反応は流石に失礼だぞっ。私はコレでも元・魔王にして吸血鬼の純血!誇り高き〝箱庭の騎士〟!神格を失ったとはいえ、畜生を散らすのは造作もない事。あの程度なら幾千万相手しても問題ないっ」

 

 拗ねるように口を尖らせるレティシア。そんな彼女の下へ鞠奈と鞠亜が歩み寄った。

 

「それがキミの真の姿かな?まるで別人かと思ったよ」

 

「先程の攻撃、とても凄かったです。撃ち漏らしの撃退ありがとうございました」

 

「ん?鞠奈と………君は?」

 

「わたしは或守鞠亜と申します。よろしくお願いします」

 

「鞠亜?………ふむ。君が鞠奈の言っていた子だな。私はレティシアだ。こちらこそよろしく」

 

 挨拶を交わす鞠亜とレティシア。その様子を鞠奈が見つめていると、飛鳥が鞠奈と鞠亜を見比べて首を傾げた。

 

「………その格好は何かしら?」

 

「ん?コレはあたしたちの霊装。天使クラスじゃなきゃダメージは愚か、傷一つつけられないよ」

 

「疑似霊装もあるんですが、そちらの方は霊力不足で顕現が出来ませんでした」

 

「天使クラスだと!?その霊装とやらはかなり頑丈なのだな。神格なしの私でも傷つけられないのか」

 

 冷や汗を流すレティシア。天使クラスということは魔王か、最低でも五桁の実力者でなければ通用しないということだ。

 もしくは、霊装を容易に切り裂ける特異武具を用いなければならない。

 改めて凄い仲間を得たものだと、レティシアは思った。鞠亜はまだ仲間になっていないが。

 飛鳥は三人の凄さを羨み、自分は助けられてばかりだと内心で嘆いた。

 そんな飛鳥を肩の上にいたとんがり帽子の精霊が心配そうに声をかけた。

 

「………あすか?だいじょーぶ?」

 

「え?ええ、平気よ。鞠奈さん達が撃退してくれたからね」

 

 飛鳥はとんがり帽子の精霊を指でつつくと、彼女はその指にひしっと抱きつく。

 レティシアはその様子を呆れながら見ていた。

 

「やれやれ。すっかり懐かれたな。日も暮れて危ないし、今日のところは連れて帰ろう」

 

「そ、そうね」

 

 レティシアの提案に飛鳥は頷くのだった。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 ―――一方、耀は白夜叉の持っていたチラシのギフトゲームに参加しており、その開催されたゲームの舞台上で決勝枠をかけて争っていた。

 

『お嬢おおおおお!!そこや!今や!後ろに回って蹴飛ばしたれええええ!!』

 

 レティシア達についてきた三毛猫がセコンドで叫ぶ。現在、耀は〝ロックイーター〟というコミュニティに属する、自動人形(オートマター)である石垣の巨人と戦っていた。

 

「これで、終わり………!」

 

 グリフォンのギフトで旋風を操り飛翔した耀は、石垣の巨人の背後に移動すると、その後頭部を蹴り崩す。

 加えて耀は瞬時に自分の体重を〝象〟へと変幻させ、落下の力と共に巨人を押し倒す。

 石垣の巨人が倒れると同時に、割れるような観衆の声が起こった。

 

『お嬢おおおおおおお!うおおおおおお!お嬢おおおおおおおお!』

 

 三毛猫は耀の雄姿に雄叫びを上げていた。それに気づいた耀は、目配せと片手を向け微笑を見せる。

 宮殿の上から見ていた白夜叉が柏手を打つと、観衆の声がピタリと止む。

 白夜叉はバルコニーから朗らかに笑いかけ、耀と一般参加者に声をかけた。

 

「最後の勝者は〝ノーネーム〟出身の春日部耀に決定した。これにて最後の決勝枠が用意されたかの。決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。明日以降のゲームルールは………ふむ。ルールはもう一人の〝主催者(ホスト)〟にして、今回の祭典の主賓から説明願おう」

 

 白夜叉が振り返り、宮殿のバルコニーの中心を譲る。そこに現れたのは、深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも纏った幼い少女。

 

 龍の純血種―――星海龍王の龍角を継承した、新たな〝階層支配者(フロアマスター)〟。

 炎の龍紋を掲げる〝サラマンドラ〟の幼き頭首・サンドラが玉座から立ち上がる。

 

 華美装飾を身に纏い、緊張した面持ちの彼女に、白夜叉は促すように優しく笑いかける。

 

「ふふ。華のお披露目だからの。緊張するのは分かるが、皆の前では笑顔を見せねばならぬぞ。我々のフロアマスターは下層のコミュニティの心の拠り所なのだからな。私の送った衣装も、その様な硬い表情では色褪せてしまうというもの。此処は凜然とした態度での」

 

「は、はい」

 

 サンドラは大きく深呼吸し、鈴の音の様な凜とした声音で挨拶した。

 

「ご紹介に与りました、北のマスター・サンドラ=ドルトレイクです。東と北の共同祭典・火龍誕生祭の日程も、今日で中日を迎える事が出来ました。然したる事故もなく、進行に協力くださった東のコミュニティと北のコミュニティの皆様にはこの場を借りてお礼の言葉を申し上げます。以降のゲームにつきましてはお手持ちの招待状をご覧ください」

 

 

『ギフトゲーム名〝造物主達の決闘〟

 

 ・決勝参加コミュニティ

  ・ゲームマスター・〝サラマンドラ〟

  ・プレイヤー・〝ウィル・オ・ウィスプ〟

  ・プレイヤー・〝ラッテンフェンガー〟

  ・プレイヤー・〝ノーネーム〟

 

 ・決勝ゲームルール

  ・お互いのコミュニティが創造したギフトを比べ合う。

  ・ギフトを十全に扱うため、一人まで補佐が許される。

  ・ゲームのクリアは登録されたギフト保持者の手で行う事。

  ・総当たり戦を行い勝ち星が多いコミュニティが優勝。

  ・優勝者はゲームマスターと対峙。

 

 ・授与される恩恵に関して

  ・〝階層支配者〟の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームに参加します。

          〝サウザンドアイズ〟印

            〝サラマンドラ〟印』

 

 

 ゲームを終えた耀は三毛猫を抱きかかえて、お腹が空いたので軽く腹ごしらえへと屋台に赴く。

 耀は屋台で焼きそばを買うと、近くにあったベンチに腰かけ、三毛猫を膝上に乗せて買った焼きそばを食べる。

 紅生姜が程よく乗ったソースがよく絡んで口に運べば美味間違いなしの、焼き立ての麺を口に運び笑みを零す耀。

 ちなみに三毛猫にもネコマンマを買ってあげて、美味しそうにペロペロと食べていた。

 そこへ、

 

「―――あ、耀ちゃん!」

 

 セミロングの薄い桃色の髪の少女―――凜祢が耀を見つけて声をかけた。

 

「………ん?あ、凜祢。それと凜緒も―――………あとの二人は、誰?」

 

 耀も凜祢と凜緒に気づくと手を振って返す。後ろの見知らぬ少女二人に耀は小首を傾げて問う。

 

「え?あ、紹介するね。こちらの黒髪の子は夜刀神十香ちゃんで、十香ちゃんの隣にいる白髪の子は鳶一折紙さんだよ」

 

「夜刀神十香だ!凜祢と凜祢ではない娘と面識があるようだな。よろしくなのだ!」

 

「凜祢に紹介された鳶一折紙。呼び方は折紙で構わない。以後よろしく」

 

「………春日部耀。以下同文」

 

 挨拶を交わす十香・折紙・耀の三人。その様子をニコニコと見つめていた凜祢は耀に尋ねた。

 

「耀ちゃん。隣に座ってもいい?」

 

「私は構わない。三毛猫もいいよね?」

 

『お嬢がええんなら、ワシもええで』

 

「うん。じゃあ夜刀神さんと折紙も良かったらどうぞ」

 

「うむ!では遠慮なく座らせてもらう。それと私の事も十香でよいのだぞ耀」

 

「うん。わかった。次からはそうする」

 

 頷く耀。凜祢は右隣にさらにその隣に折紙、左隣に十香が座ると、

 

「凜緒ちゃんはママの膝の上に座ろっか!」

 

「うん!」

 

 凜緒はママ―――もとい凜祢の膝上にちょこんと座り、凜祢は凜緒の頭を優しく撫でる。

 凜緒が目を細めて気持ちよさそうにしている中、折紙は耀に問いかけた。

 

「そう言えば耀。あなたは猫と会話していたように見えたけど………言葉が分かるの?」

 

「うん。私が元いた世界ではたくさんの動物達とお話して友達になった。この箱庭でもグリフォンとお話して友達になった」

 

「おお!そうなのか!グリフォンとやらは知らぬがと凄いな耀!」

 

「それは凄いギフト。………羨ましい()()

 

 士道が近くにいないせいか、一瞬口調が変化する折紙。恐らく、乙女・折紙が『動物と会話できるとかいいなぁ』などと思ったからだろう。

 幸い、誰にもバレてはいなかったが。

 耀は照れくさそうに頬を掻く。その様子を園神親娘は微笑ましそうに見つめ、少女達の歓談は続いたのだった。




鞠亜と鞠奈の疑似霊装はその内出す予定です。今は霊力不足で使用不可の設定ですが。

疑似霊装の情報はWikiや戦闘シーンだけプレイ動画閲覧して収拾します。

次回の更新は少し間を開けます。前回の後書きで書いた『堕天使』の方を更新するのや、もうじき発売のデアラ新巻を見なければですので。
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