役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ? 作:問題児愛
「な、なんで〝フォレス・ガロ〟とギフトゲームをすることになったのです!?」
「「「ムシャクシャしたからやりました。反省どころか後悔もしない!」」」
「反省してくださいお馬鹿様方!!!」
まったく反省の色を見せない飛鳥、耀、ジンに激怒する黒ウサギ。
それを半眼で見ている万由里とは対照的に十六夜はニヤニヤと笑って止めに入る。
「別に無差別ってわけじゃないんだし許してやれって」
「たしかにそうですが………はぁ。まあいいデス。〝フォレス・ガロ〟なら十六夜さんがいれば楽勝ですしね!」
「あん?俺は出ねえよ?勿論万由里も出ちゃ駄目だ。この喧嘩はお嬢様達のだからな」
「え?」
「あら、分かってるじゃない。万由里さんも手は出さないでね?」
「ん、わかった」
「万由里さんまで!?………はぁ、もう好きにしてください」
万由里が大人しく問題児達の言うことを聞いたことにより、この件は〝もう知らないのです〟状態の黒ウサギだった。
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「それでは皆さん!明日ギフトゲームを行うのでしたらギフト鑑定をお願いしに〝サウザンドアイズ〟へ向かいましょう!」
「そっか。じゃあ僕は先にコミュニティに戻ってるね」
「はい。お疲れ様ですジン坊っちゃん」
黒ウサギ達はジンの背を見送ると、十六夜達は早速彼女に質問した。
「んで、その〝サウザンドアイズ〟ってのはなんだ?それもコミュニティの名前か?」
「YES!〝サウザンドアイズ〟は特殊な〝瞳〟のギフトを持つ者達の群体コミュニティで、箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです」
「では、ギフトの鑑定というのは何かしら?」
「はい。勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握した方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出どころは気になりますよね?」
黒ウサギの同意を求める言葉に、十六夜達三人は複雑な表情をする。
一方、万由里だけは同意した。
「それもそうね。私はこの箱庭では
「え?」
万由里の意味深な発言に四人は彼女を見た。その反応に万由里は首を傾げた。
「………なに?」
「「「「なんでもない」」」」
疑問の声を発しておいて「なんでもない」と言う黒ウサギ達を不思議に思った万由里だが、「そ」と返して聞き返すのをやめた。
結局、万由里の同意以外は何もなく1対0で鑑定を行うことが決定して五人と一匹は〝サウザンドアイズ〟に向かった。
★★★★★★★★★★★★
「桜の木………といわけではないわよね?花びらの形が別物だし、真夏になっても咲いているのはおかしいもの」
「いや、まだ夏になったばかりだぞ。気合いのある桜なら残ってるんじゃねえか?」
「………花に気合いどうこうは関係ないと思うんだけど。私のところは秋に入ったばかりだったかな」
「………え?私のところも秋だったはずだけど」
「ん?」と噛み合わない台詞に四人は顔を見合わせて首を傾げた。道中に桜の花びらを見て、箱庭の季節と自分達の季節が異なっていたからだろう。
それについて、黒ウサギは笑って説明した。
「ふふ、それはですね。皆さんは別々の世界から召喚されていて、元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずです」
「へえ?パラレルワールドってのか?」
「近いですね。正しくは立体交差並行世界論というものですが、一日で説明しきるのは無理ですのでまたの機会にお話します」
黒ウサギは話を打ち切り振り返る。店についたようだ。だが割烹着姿の女性店員が店を閉めようとしたのを見て黒ウサギはすぐさま駆け出してストップをかけ―――
「待っ」
「待ったなしですよお客様。残念ながら時間外の営業はやってません」
―――られなかった。黒ウサギが悔しそうに女性店員を睨みつけると、飛鳥が同意したように呟く。
「なんて商売っ気のない店かしら」
「全くです!まだ閉店五分前だというのに店の中に入っちゃいけないなんて!」
「文句があるのでしたらどうぞ他所へ行ってください。あなた方は今後一切この店に来ないでください。来ても入れさせません。出禁です」
「で、出禁ですって!?これだけでその対応はおかしいのですよ!?異議を唱えます!」
キャーキャー喚く黒ウサギ。女性店員は態度を変えずに冷めた眼と侮蔑を込めて対応した。
「なるほど、〝箱庭の貴族〟であるウサギのお客様を無下にするのは失礼でしたね。では入店許可を伺いにいきますのでコミュニティの名前を教えてください」
「………う、それは」
ここで黒ウサギの勢いは急速に衰えた。そんな彼女の代わりに十六夜が躊躇なく名乗る。
「俺達は〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」
「ほほう。ではどこのコミュニティの〝ノーネーム〟ですか?よろしければ旗印を見せて戴けませんか?」
「………ッ、」
これには十六夜も黙り込む。〝名〟も〝旗印〟もないのだから見せようがないからだ。
追い込まれた黒ウサギ達。そこへ、
「―――駄目だよ。そんな意地悪な事言っちゃ」
その声に全員が店内へ視線も向けた。すると暖簾を潜って中から薄い桃色の髪の少女が姿を現す。
女性店員はその少女の名前を呼ぶ。
「
「駄目なものは駄目。知っててそんなことを聞くのは失礼だよ?」
「う………はい。申し訳ありませんでした」
緩いウェーヴのかかったセミロングの薄い桃色の髪が特徴で、フリルがたくさんついたメイド服を着た少女―――園神凜祢に怒られて、女性店員は頭を下げて謝る。
凜祢は苦笑して黒ウサギ達の方に女性店員を誘導した。
「謝る相手は私じゃないんだけどなぁ………お客様に、ね?」
「はい。―――この度は失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした」
改めて黒ウサギ達に頭を下げて謝る女性店員。黒ウサギは慌てて両手を振って返した。
「い、いえ!こちらこそ〝サウザンドアイズ〟の商店は〝ノーネーム〟お断りだということを忘れてしまっていてすみませんでした!」
「………え?このお店は〝ノーネーム〟お断りなの?」
耀が聞き直すと、黒ウサギはウサ耳を萎れさせて俯いた。
「はい………〝サウザンドアイズ〟のお店は私達のような『名』も『旗印』もない、信用性の欠けるお客は取り持ってくれないのですよ」
「そ、そう」
黒ウサギ達は沈黙してしまった。―――が、
「ふふん。その心配はいらん!」
軽快な声が沈黙を打ち破る。そして暖簾を潜って中から白髪の幼い少女が現れた。そんな彼女の姿を見た黒ウサギは驚愕する。
「え?白夜叉様!?どうしてこんな下層に貴女が―――」
「それは黒ウサギに会うためだいやっほおぉぉぉぉぉ!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」
白髪の頭に黒い二本の角がある黒と青をベースにした着物風の服を着た少女―――白夜叉は、黒ウサギを見つけるや否や嬉々として彼女にフライングボディーアタックを決め込んだ。
襲撃された黒ウサギは白夜叉と共に空中四回転ひねりして、ボチャンと水路に落下した。
その光景に万由里達四人は瞳を丸くし、女性店員は「またですか」と痛そうな頭を抱えていた。その隣で凜祢は苦笑いを浮かべていた。
十六夜は女性店員に目を向けて笑う。
「………おい店員。この店には美少女抱きつきコーナーでもあんのか?なら俺も別バージョンで是非」
「そんなものはありません」
「なんなら金払うぜ?」
「それでもやりません」
真剣な表情の十六夜の提案を、真剣な表情の女性店員はキッパリと断る。
十六夜はチッ、と舌打ちすると万由里を見つめた。
「………なに?」
「万由里。ちょっと悪いが俺の胸に飛び込んできてくれないか?」
「却下。なんで私がわざわざ変態なあんたの胸に飛び込まなきゃならないのよ」
「チッ、乗り悪いなお前」
「乗り悪くて結構。何て言われてもやらないから」
十六夜の誘いを断る万由里は徐々に彼から後ずさる。それを十六夜はつまらなそうな表情で見ていると、凜祢がクスッと笑った。
「………どなたか知りませんが、私でよければやってあげても―――いいよ?」
「え?」
「お?そいつはありがたいな。いいぜ………有料か?」
「ううん。お金なんかいらないよ。それよりも………本当に私なんかでいいの?」
「俺は問題ない」
「そっか。じゃあ―――行くね?」
「ヤハハ、来い!」
十六夜が両手を広げると凜祢は駆け出して飛び込―――
「ちょっと待って!」
「あん?」
「え?」
―――めなかった。万由里が慌てて十六夜と凜祢の間に割り込むことでそれを阻止した。
それに十六夜は不機嫌そうな表情で万由里の背を見ていると、彼女は凜祢の肩を叩いて言う。
「いい、あんた。あの人は変態だから容易に近づいては駄目。きっとセクハラされるわよ」
「え?そうなの?あまり悪い人には見えないんだけどなぁ………」
「見た目はでしょ?中身は変態だからあんたも気をつけ―――」
「ヤハハ。その変態で危険人物な俺に―――呑気に背を向けていいのか万由里?」
「―――――ッ!!」
十六夜のやや怒り気味の声にハッとした万由里は真横に跳躍して逃げようとした―――が、
「ハッ、逃がさねえよ!」
「ッ!?」
それよりも早く十六夜の手が伸びてきて万由里の手首を掴み、勢いよく自分の胸に引き寄せた。
「きゃ!」
「ヤハハ、捕まえたぜ万由里。さてと―――何をしよっかな♪」
ニコリと笑う十六夜の顔を見た万由里は背筋がゾクリとした。十六夜の腕の中から抜け出そうと試みるがビクともしない。
必死に抵抗する万由里を見て、十六夜はケラケラと笑った。
「無駄だぜ万由里。俺の力は梃子でも動かねえよ。諦めるんだな」
「………ッ、」
その言葉に万由里は次第に瞳に悔し涙を浮かべていくと、十六夜はニヤニヤと笑って彼女を抱きしめた。
「なんて冗談だよ。そんな泣きそうな顔するなって万由里」
「だってあんたが、変なこと言うから………悪いのよ!」
「そうかそうか。なら―――もう俺の邪魔すんなよ?………いいな?」
「………ん、わかった。わかったから離してくれない?」
「嫌だね。俺の楽しみの邪魔をしたんだ。しばらくは万由里の体の感触を楽しませろよ」
「やっぱりそれが目当てだったのね!最低、この変態っ」
「ヤハハ、何とでもいいな。今の俺はこれでも怒ってんだからな?気が済むまでお前を離さねえよ」
「………っ!」
ヤハハと笑う十六夜をキッと睨みつける万由里。その様子を「仲がいいなぁ」と凜祢は眺めて苦笑していた。
一方、黒ウサギは別の変態に―――もとい白夜叉に変態行為を受けていた。
白夜叉が黒ウサギの胸に顔を埋めてスリスリと擦りつけていたのである。
「フホホ!やはりウサギの触り心地は格別だのう!ほれほれ、ここか!ここが良いか!?」
「いつまでやってんですか白夜叉様!いい加減に離れてください!」
黒ウサギは白夜叉を強引に引き剥がすと、頭を鷲掴みにして店へ投げつける。
縦回転した白夜叉を十六夜は万由里を抱きしめた状態のまま器用に足で受け止めた。
「てい」
「ゴバァ!お、おんし!飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとはどういう了見だ!」
「んなこと言われてもな。俺の楽しみの邪魔をした罰だ。自業自得だぜ和装ロリ」
「いや、私ではなく黒ウサギに文句を―――ふむ。これは羨ましいな小僧」
万由里を抱きしめている十六夜を見た白夜叉は羨望の眼差しを彼に向けた。
一方、一連の騒動に呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に言う。
「貴女はここの店の人?」
「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしの中々育っておる胸をワンタッチに加え生揉みさせてくれれば引き受けんでもないぞ?」
「オーナー。それでは売り上げが一向に伸びませんしボスが怒ります」
「そうだよ白夜叉ちゃん。そういう行為は控えないと友達減っちゃうよ?」
白夜叉の変態発言に釘を刺す女性店員と凜祢。黒ウサギは濡れた服を絞りながら水路から上がっていた。
「どうして黒ウサギまで濡れるはめに………」
「因果応報かな」
耀が呟くと、黒ウサギは悲しげに服を絞る。対照的に濡れても気にしない白夜叉は、店先で十六夜達を見回してニヤリと笑う。
「なるほど。おんし達が黒ウサギの新しい同士だな?異世界の人間が私の下に来た、それはつまり―――とうとう黒ウサギが私のペットに」
「なりませんよこのお馬鹿様!!というよりなんでそう行きつくんですか!」
うがー!とウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。白夜叉はケラケラと笑って店に招く。
「まあいい。話があるなら私の部屋で聞こうかの。凜祢よ」
「うん。じゃあ私は
「うむ。ではおんしらは私について来なさい」
先に暖簾を潜って店内へ戻った凜祢のあとに、白夜叉と黒ウサギ達五人と一匹も暖簾を潜って店内に入っていった。
万由里が十六夜の手から解放されたのは、それからすぐのことだった。
まず一人目は凜祢でした。次回は本編で名前を出した凜緒ですね。
鞠亜はどうしましょう………出したらデアラの原作に誤差が生じますし、出すのは後回しかな。