役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

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第四話 太陽の星霊と楽園の御子の娘だそうですよ?

「もう一度自己紹介しようかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている〝サウザンドアイズ〟幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってのう。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっておる器の広い超絶美少女と認識しておいてくれ、おんし達」

 

「はいはい、お世話になっておりますよ本当に」

 

 白夜叉の発言に投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。耀はふと気になって小首を傾げると質問した。

 

「その〝外門〟って何?」

 

「それは箱庭の階層を示す外壁にある門のことですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

 黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図を見た耀達は口を揃えて、

 

「………超巨大タマネギ?」

 

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

 

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

「………本当だ。言われてみればバームクーヘンに見えなくもないかも」

 

「うん」と頷き合う万由里達。身も蓋もない感想に、さらに万由里まで参戦していて黒ウサギはガクリと肩を落とす。

 その感想に白夜叉は哄笑を上げて二、三回頷いた。

 

「うむ、上手いこと例えるの。それなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明すると、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は〝世界の果て〟と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持った者達が棲んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」

 

 白夜叉は黒ウサギの持つ水樹の苗を見つめて薄く笑う。

 

「して、その水樹の苗は一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵を比べ合ったか?それとも勇気を試したのか?」

 

「いえいえ。これは十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

「―――!なんと!?クリアではなく倒したとな!?ならばその童は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格ならば一目で判別つきますし」

 

「ふむ、それもそうか。だが神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはずだ。種族の力でいうならば蛇と人はドングリの背比べだぞ」

 

「え?白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

「ああ。知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だからな。まあ、もう何百年と昔の話だがの」

 

 小さな胸を張りながら、呵々と豪快に笑ってみせる白夜叉。それに十六夜が物騒に瞳を光らせ問いただす。

 

「へえ?じゃあお前はあのヘビより強いのか?」

 

「ふふん、当たり前だ。私は東側の〝階層支配者(フロアマスター)〟だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者は存在しない、最強の主催者(ホスト)だからの」

 

 白夜叉の言葉に、〝最強の主催者〟と聞いて十六夜・飛鳥・耀は一斉に瞳を輝かせて言う。

 

「そう………それはいいことを聞いたわ。つまり貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強という事になるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話じゃねえか。探す手間が省けたぜ」

 

「うん」

 

 十六夜達は剥き出しの闘争心を籠めた視線で白夜叉を見ると、彼女はそれに気づいたのか高らかと笑い声を上げた。

 

「抜け目ない童達だの。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっとお三人様!?」

 

「………あんたたち正気なの?よくわからないけど、その人―――かなり強いと思うわよ?」

 

 慌てる黒ウサギと、冷静に十六夜達を止める万由里。それらを制そうと白夜叉が右手を出したその時、

 

 

「そのしょうぶ―――ちょっとまってほしいんだよ?」

 

 

「え?」

 

 幼い少女の声がストップをかけた。白夜叉達は声のする方に視線を向けると、障子が開き桃色の長髪の幼い少女が入ってきた。

 白夜叉の下へ歩み寄って言う。

 

「しろやしゃ、よわいものいじめをしちゃだめだよ?」

 

「「「は?」」」

 

「う、む。だがの、()()よ。この童達が私と遊びたがっておるのだ、無下にするわけにはいかんだろ?」

 

「………そうなの?」

 

「ああ。だからの、邪魔をしないでくれるかの?」

 

 桃色の長髪に三つ編みと赤い大きなリボンが特徴のフリルがたくさんついたメイド服を着た幼い少女――― 園神凜緒は小首を傾げる。

 凜緒は白夜叉から十六夜達に視線を向けて注意した。

 

「おにいちゃんにおねえちゃんがた、じつりょくもみきわめられないんじゃかんたんにやられちゃうからきをつけてね?」

 

「「「ッ!!」」」

 

 凜緒の言葉に十六夜・飛鳥・耀はカチンと来た。

 

「おいおい、随分と素敵な挑発してくれるじゃねえか、メイドロリ」

 

「ええ、全くね。私達が白夜叉に惨敗するとでも言いたいのかしら?」

 

「流石に私もカチンと来たよ」

 

 十六夜達が青筋を額に浮かべてキレかかっていると、凜緒は「なんで?」と小首を傾げた。そこへ、

 

「―――凜緒ちゃん!いきなり飛び出してビックリしたよ!………え?」

 

 凜緒を追っかけて来た凜祢が部屋に入ると、十六夜達が凜緒を鋭い視線で睨みつけている光景が目に入った。

 凜緒は凜祢の姿を見て「あ」と声を発した。

 

「ママ!」

 

「「「「「え?ママ!?」」」」」

 

 凜緒が凜祢に発した〝ママ〟発言に険悪な空気が弾け飛んだ。凜祢の下へ駆け寄った凜緒は、先程の出来事を話した。

 

「ママ、あのひとたちがしろやしゃにいどもうとしてたから、あぶないよ?ってちゅうこくしたんだけどぎゃくにおこられちゃった………」

 

「そうなんだ。でも怒られちゃったってことは余計な事を言っちゃったんだね………凜緒ちゃんも言葉には気をつけてね?」

 

「うん、わかったよママ」

 

「はい、良くできました!」

 

 凜祢は凜緒の頭を優しく撫でてあげると、凜緒は「えへへ」と嬉しそうに笑った。

 一方、十六夜達は凜祢と凜緒を見比べて声を揃えて、

 

「「「「「たしかに親娘に見える」」」」」

 

「うん」と頷いた十六夜達を「?」と不思議そうに見つめる凜祢と凜緒。白夜叉は呵々と哄笑を上げて見つめた。

 

「―――さて、童達。話が脱線してしまったが、ゲーム前に一つ確認しておく事がある」

 

「………なんだ?」

 

 白夜叉は着物の裾から〝サウザンドアイズ〟の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

 

 

「おんしらが望むのは〝挑戦〟か―――もしくは、〝()()〟か?」

 

 

 刹那、四人の視界に爆発的な変化が起こる。

 脳裏を掠めたのは、黄金色の穂波が揺れる草原。白い地平線を覗く丘。森林の湖畔。

 四人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔―――そして、()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ!?」

 

 余りの異常さに、十六夜達は同時に息を呑む。

 遠く薄明の空にある星は、緩やかに世界を水平に廻る、白い太陽のみ。

 まるで星を一つ、世界を一つ創り出したかのような奇跡の顕現だった。

 唖然と立ち竦む四人に、もう一度、白夜叉は問いかけた。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は〝白き夜の魔王〟―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か?それとも対等な〝決闘〟がよいか?」

 

「―――ッ!!」

 

 白夜叉の少女らしからぬ凄味に、再度息を呑む四人。

 十六夜は背中に心地よい冷や汗を流しながら白夜叉を睨み笑う。

 

「水平に廻る太陽と………そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、お前を表現してるっわけか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす白い太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだよ」

 

「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤なの!?」

 

「如何にも。して、おんしらの返答は?〝挑戦〟であるならば、手慰み程度に遊んでやる。―――だがしかし〝決闘〟であるならば、魔王として、命と誇りのある限り闘おうではないか」

 

「…………っ」

 

 飛鳥と耀、そして自信家の十六夜でさえ白夜叉の問いかけに即答できず返事を躊躇った。

 しばしの静寂の後―――諦めたように笑う十六夜がゆっくりと挙手して返した。

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという解釈でよいのかの?」

 

「ああ。今回は黙って()()()()()()()、魔王様」

 

「ほう?して、他の童達も同じか?」

 

「………ええ。私も、試されてあげてもいいわよ」

 

「右に同じ」

 

 苦虫を噛み潰したような表情で返す飛鳥と耀。満足そうに笑った白夜叉は、最後に万由里を見つめた。

 

「して、おんしはどうする?人間の童達が挑戦するというのに―――()()()()()()()何もせんのか?」

 

「え?」

 

「「え?」」

 

 白夜叉の言葉に、万由里と園神親娘(?)は一瞬固まった。白夜叉は笑って答えた。

 

「〝なんで知ってるの?〟という顔をしているな?ちとおんしの世界の精霊に詳しい()()()から話を聞いたのだよ」

 

「………()()()、って誰なの?」

 

「それについては答えられんな。あやつからはおんしら精霊には内緒にして、と言われたからのう」

 

 白夜叉の回答に「む」と納得いかないような表情を見せる万由里。そんな彼女に凜祢と凜緒が歩み寄ってきた。

 

「え?あなたも精霊なの!?」

 

「え?あ、うん。………〝あなたも〟ってことはあんたたちも精霊?」

 

「うん。私も凜緒ちゃんも精霊だよ!………あ、私の事は〝凜祢〟って呼んでね?」

 

「そうだったんだ。ん、わかった。私は万由里。名前は好きに呼んでくれていいわ」

 

「〝まゆり〟っていうの?うん、わかった!りおのことも〝凜緒〟ってよんでね?」

 

「ん」

 

 白夜叉達をそっちのけで会話を楽しむ精霊三人。白夜叉は「おほん」とわざとらしく咳払いをした。

 

「………して、おんしはどうする?〝挑戦〟か?〝決闘〟か?」

 

「いつの間にか私も強制参加になってるのね………ま、いいわ。勿論〝挑戦〟でお願い」

 

「うむ、〝決闘〟でよいのだな?」

 

「へ?」

 

 万由里の言ったこととは違う言葉が返ってきて固まる。すぐさま万由里は反論した。

 

「ち、違うわよ!〝挑戦〟よ、〝ちょ・う・せ・ん〟!」

 

「カカッ!そうムキになるでない。ちゃんと〝挑戦〟の方で通してやるからの」

 

 白夜叉がケラケラ笑うと万由里は深い溜め息を吐いた。

 一方、一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、「ホッ」と胸を撫で下ろす。

 

「も、もう!お互いにもう少し考えて相手を選んでください!〝階層支配者〟に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う〝階層支配者〟なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も昔の話じゃないですか!!」

 

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

 

「はてさて、どうだったかのう?」

 

 悪戯っぽく笑う白夜叉。ガクリと肩を落とす黒ウサギと問題児達。

 その時、彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。獣とも、野鳥とも思えるその叫び声に、耀が誰よりも早く反応した。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

「ふむ、あやつか。おんしら()()を試すには打ってつけかもしれんの」

 

「ふうん。………え?三人?」

 

 万由里はふと疑問に思い首を傾げていると、白夜叉が何かをチョイチョイと手招きする。すると体長五メートルはあろうかという巨大な獣が翼を広げて空を滑空し、風の如く三人の下に現れた。

 鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣を見て、耀は驚愕と歓喜の籠った声を上げた。

 

「グリフォン………嘘、本物!?」

 

「ふふん、如何にも。あやつこそが鳥の王にして獣の王。〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だよ」

 

 白夜叉は再度手招きすると、グリフォンは彼女の下に降り立ち、深く頭を下げて礼を示す。

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしら三人とこのグリフォンで〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかを比べ合い、背に跨がって湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようかの」

 

 

『ギフトゲーム名〝鷲獅子の手綱〟

 

 ・プレイヤー一覧

 逆廻 十六夜

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 

 ・クリア条件

 グリフォンの背に跨がり、湖畔を舞う。

 ・クリア方法

 〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに認められる。

 ・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

       〝サウザンドアイズ〟印』

 

 

「………え?私の名前がないんだけど」

 

「ああ。おんしは精霊だからの。別の試練を受けてもらう」

 

 白夜叉の返答に万由里は「そ」と返した。

 一方、この試練に耀が元気よく手を挙げた。

 

「私がやる!」

 

「OK、先手は譲ってやる。だが失敗するなよ」

 

「気をつけてね、春日部さん」

 

「ん、頑張って」

 

「うん。頑張る」

 

 万由里達に見送られて耀はグリフォンの下へ駆け寄った。

 結果だけいうと、耀は無事試練をクリアした。耀の首にかかっているペンダントについて白夜叉が一人盛り上がったのはまた別の話である。




というわけで三番目は凜緒でした。服装が二人ともメイド服なのは………言わずともご理解いただけますよね?←

次回は万由里VS白夜叉です。決闘ではないから白夜叉に手加減させますし、万由里が致命的な負傷はないと思われます。
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