役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

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第五話 腕試しとギフト鑑定だそうですよ?

『ギフトゲーム名〝星霊と精霊の腕試し〟

 

 ・プレイヤー一覧

 万由里

 

 ・クリア条件

 ホストマスターに一撃与える。

 

 ・敗北条件

 降参か、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

       〝サウザンドアイズ〟印』

 

 

契約書類(ギアスロール)〟に目を通した万由里は、白夜叉を見つめて一言、

 

「………降参していい?」

 

「は?まだ始まってすらないのだがの………」

 

「だってこれ、〝一撃与える〟ってあんた星霊なんでしょ?絶対に無理」

 

「ああ、そのことなんだが―――決闘ではないからの。無論、腕試しなのだし手加減はするぞ?」

 

 白夜叉の〝手加減はする〟の言葉に万由里は彼女に疑わしそうな目を向けた。

 

「………それ、本当なの?」

 

「うむ。本当だとも」

 

「………どれくらい手加減してくれるの?」

 

「それは内緒だ」

 

「……………」

 

 暫く静寂が続き、やがて「そ」と万由里は諦めたように返した。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 万由里と白夜叉は数mの合間を取り向かい合っていた。十六夜達が見守るなか、万由里の全身は光に包まれて―――

 

「は?」

 

 光が消えると共に十六夜達は素っ頓狂な声を上げた。それは万由里の服装が、姿が変化していたからである。

 胸とへそ回りの開いた黒のミニスカートのワンピース、膝元に金の獅子と踵に金の輪っかがついたブーツ。

 頭と背中に純白の翼、紅い目のような球体が無数についた角のようなものとオーロラ色の翼が展開されていた。

 白夜叉はポカーンと精霊・万由里を見つめた。

 

「………それがおんしの〝霊装〟という鎧かの?」

 

「ん、そうよ。これが私の霊装」

 

 クルリとその場で回ってみせる万由里。

 霊装とは、霊力で編まれた鎧であり、堅牢な防御力を誇る。物理攻撃は愚か顕現装置(リアライザ)による攻撃さえほとんどダメージを与えることは出来ない。

 万由里はスゥ、と手を掲げて叫ぶ。

 

「来て―――<滅殺皇(シェキナー)>!」

 

 万由里の声に答えるように光と共に一本の大剣が顕現した。

 黄金の装飾と紅・蒼・紫の宝玉がはめ込まれている大剣が。

 白夜叉はそれを見て「ほう」と感嘆の声を上げた。

 

「それがおんしの〝天使〟という武具か?」

 

「ん。本命はこっちじゃないけど………()()()はあんた以外の人も巻き込みかねないからこっちを使用するだけ」

 

 万由里は苦笑して答えた。

 天使とは、〝形を持った奇跡〟とも呼ばれ、身を護る絶対の盾・霊装に対を成す最強の矛である。

 万由里の意味深な言葉に、白夜叉は聞き返した。

 

「あの子とは、もう一つの天使と捉えてよいか?」

 

「ん。………それでもう始めてもいい?」

 

「いや、その前に一つだけいいかの?」

 

「え?あ、うん。他に何かあるの?」

 

 万由里が不思議そうに尋ねると、白夜叉はカッ!と瞳を光らせて言った。

 

「おんし、万由里といったか?私が言いたいことはただ一つ―――その格好………随分とエロいな!」

 

「……………は?」

 

 白夜叉の発言に万由里は間の抜けた声を発した。白夜叉は気にせず続ける。

 

「胸元が大胆に開かれているのも扇情的だが………何より!ワンピースの丈が短すぎるという点が実にエロい!見えそうで見えないそのエロさは格別だッ!!いやはやもっと近くでじっくりと見たいのう!」

 

「…………………………」

 

 白夜叉のセクハラ発言に、万由里は絶対零度並みの冷めた瞳で白夜叉を見つめた。

 万由里は右手に携えていた<滅殺皇(シェキナー)>を振り上げて、

 

「―――忘れてた。ここに変態がもう一人いたんだった。………始末しないといけないわ―――ね!」

 

 白夜叉めがけて紫色の光の斬撃を飛ばした。

 

「は?―――うおっ!?」

 

 白夜叉はその不意打ちを真横に跳躍することで回避した。

 

「うおおい!まだゲームは始まっておらんぞ!というより〝始末〟って酷くないか!?」

 

「あんたが変なこというから悪い!………前者についてはごめん」

 

「………まあよいか。それでは始めるとするかの」

 

 白夜叉は苦笑と共に開戦の合図を取った。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 先に動いたのは万由里だった。背にある翼を羽ばたかせて白夜叉に接近し、彼女めがけて<滅殺皇(シェキナー)>を振り下ろす。

 白夜叉は先の斬撃を警戒してか、扇子を取り出して<滅殺皇(シェキナー)>を弾き軌道をずらす。

 互いの攻防は飛鳥達には目で追いきれないほどの速度だった。唯一、十六夜だけは人間とは思えない動体視力でそれを眺めて笑う。

 

 暫くして、これではキリがない事を悟った万由里は上空に飛翔し、白夜叉を見下ろすと―――<滅殺皇(シェキナー)>の刀身を紫色に光り輝かせて、

 

「ハァッ!」

 

 怒号と共に紫光の斬撃を白夜叉に向けて放つ。白夜叉は俊敏な動きで万由里が放ってくる無数の紫光の斬撃を避けていく。

 標的を失った紫光の斬撃は雪原の地を悉く切り裂き傷跡が醜く残った。それを見た白夜叉は思う。

 

「(なるほど、天使と言われるだけのことはある。破壊力は凄まじいな。扇子(コレ)で凌ぐのはちと無理かのう………)」

 

 かといって、このまま避け続けるのは面白味の欠片もない。そう思った白夜叉は斬撃を回避した瞬間、扇を広げて一振りする。

 すると鎌鼬(かまいたち)のような風の刃を発生させて、それらは一斉に万由里に牙を剥く。

 万由里は慌てることなく<滅殺皇(シェキナー)>で鎌鼬を打ち落として、カウンター気味に紫光の斬撃を白夜叉に放つ。

 白夜叉は慌てず回避して次の一手を考える。

 

 白夜叉は万由里と同じ高さまで飛翔すると、無数の小さな火球を生み出して彼女めがけて一斉に放った。

 万由里はそれらの火球を<滅殺皇(シェキナー)>で真っ二つに切り裂いていくと、白夜叉が不意に指をパチンと鳴らして彼女の周りにあった火球は一斉に爆発した。

 目潰しを狙ったそれは一瞬万由里を爆炎の中に巻き込む事で成功し、彼女が<滅殺皇(シェキナー)>を振るって爆炎を吹き飛ばした時には既に白夜叉を見失っていた。

 

「………え?いない!?一体どこへ行っ」

 

「―――ここだよ、小娘!」

 

 万由里は背後に白夜叉の気配と声を感じ取ったが、振り返る事は叶わず彼女の掌底を背中に受けて吹き飛び、雪原の地へと叩きつけられた。

 白夜叉はそれを確認するや否やで巨大な火球を生み出し、万由里が起き上がって来る前にそこへ火球を落とした。

 万由里はその火球にハッとして気がつくが、回避する間もなく呑み込まれて大爆発した。これには十六夜達も顔面を蒼白させる。

 白夜叉は頭をポリポリと掻いて反省した。

 

「………ううむ。ちとやりすぎたかの」

 

 そう呟いたその時、白夜叉に向かって雷のような光線が爆炎に紛れて放たれた。

 

「―――ッ!」

 

 白夜叉はそれを間一髪で避けて下方を睨む。するとそこから爆炎に紛れて無数の青白い小さな球体が現れて白夜叉を襲う。

 白夜叉はそれらを扇子で打ち落とす事で凌ぐが、爆炎の中から出現した巨大な()()を見て驚愕した。

 

滅殺皇(シェキナー)>を携えた万由里を二対の翼がついた鳥籠のようなもので保護したソレは―――巨大な天使だった。

 漆黒の球体を中心に人工的な二対の翼と鎖のような尾、周りに浮遊する四つの車輪があった巨大な天使が。

 万由里は優しい声音で天使の名を呼ぶ。

 

「ん。助けてくれてありがと―――<雷霆聖堂(ケルビエル)>」

 

 万由里の言葉に<雷霆聖堂(ケルビエル)>は役目を果たしたのか、光の粒子となって消えていった。

 万由里は<滅殺皇(シェキナー)>を構え直して白夜叉を見据えた。白夜叉は「ほう」と驚嘆の声を発した。

 

「今のがおんしの本命の天使か?」

 

「ん。<雷霆聖堂(ケルビエル)>が私の本命の天使。だけどあの子は広範囲に攻撃しちゃうから他の人も巻き込みかねないんだ。だからすぐに戻ってもらったの」

 

「そうか。だが引っ込めてよかったのか?あの天使に隙を作ってもらえばこのゲームの攻略も難しくないと思うのだが」

 

「そうかもしれない。けど私の力でクリア出来なければ意味がないわ。だから―――これで決着をつける」

 

 万由里は白夜叉に<滅殺皇(シェキナー)>の切っ先を向けて宣言する。白夜叉はクックッと笑って構えた。

 

「いいだろう。その心意気、受け取ってやる。―――来い、小娘!」

 

「うん。―――ハァッ!!」

 

 万由里は頷いて<滅殺皇(シェキナー)>にありったけの霊力を籠めて、今までよりも巨大で鋭い紫光の斬撃を放った。

 白夜叉は落胆したようにその一撃を避ける―――が、その瞬間に彼女の背後に現れた万由里が、その背中を<滅殺皇(シェキナー)>で斬りつけた。

 

「―――何!?」

 

「………これで私の勝ち、だよね?」

 

「………ああ、そうなるの。しかし最後の斬撃は―――瞬間移動を隠すための囮だったとはな。してやられたぞ」

 

「うん。でも傷が浅いってことは、ギリギリでかわされてたんだね………星霊って本当に凄いね」

 

「ふふん、当たり前だ!私は最強の主催者(ホスト)なのだからの!」

 

 小さな胸を張ってカッカッと豪快に笑う白夜叉。それを苦笑いで見つめた万由里だった。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 ギフトゲームは万由里の勝利で終わり、ギフト鑑定へともつれ込んだのだが、白夜叉はゲッと気まずそうな表情をした。

 

「―――おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「大体把握」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かる。だがそれでは話が進まんぞ」

 

「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃねえからな」

 

 拒絶する十六夜に同意する飛鳥と耀。万由里だけはジーっと白夜叉を見つめている。

 白夜叉は困ったような表情を見せるが、ふといい案が浮かんだのか笑って告げた。

 

「ふむ。何にせよ〝主催者〟として、星霊の端くれとして、試練をクリアしたおんしらには〝恩恵(ギフト)〟を与えねばな。ちょいと贅沢だがコミュニティ復興の前祝いとしては丁度いいだろう」

 

 パンパンと柏手を打つ白夜叉。すると六人の眼前に光り輝く六枚のカードが現れる。

 カードには各々の名前と、体に宿るギフトを示すネームが記されていた。

 

 

 コバルトブルー

 逆廻十六夜

 ギフトネーム

 〝正体不明(コード・アンノウン)

 

 ワインレッド

 久遠飛鳥

 ギフトネーム

 〝威光(オーソリティ)

 

 パールエメラルド

 春日部耀

 ギフトネーム

 〝生命の目録(ゲノム・ツリー)

 〝ノーフォーマー〟

 

 オーロラ

 万由里

 ギフトネーム

 〝精霊(スピリット)

 〝審判者(ジャッジ)

 〝不可視(インビジブル)

 〝雷霆聖堂(ケルビエル)

 〝滅殺皇(シェキナー)

 〝供給者(サプライヤ)

 〝共鳴(レゾナンス)

 

 ローズピンク

 園神凜祢・園神凜緒

 ギフトネーム

 〝精霊(スピリット)

 〝支配者(ルーラー)

 〝凶禍楽園(エデン)

 〝無へと帰す者(パラダイス・ロスト)

 〝共鳴(レゾナンス)

 

 

 黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で六人のカードを覗き込む。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「お賽銭?」

 

「お守り?」

「おまもり?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?このギフトカードは超高価なカードで顕現しているギフトを収納でき、好きな時に顕現できるのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムって解釈でオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです!超絶素敵アイテムなんです!」

 

 黒ウサギに叱られながら六人はそれぞれのカードを物珍しそうに見つめる。

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは〝ノーネーム〟だからの。少々味気無い絵だが文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

 白夜叉が説明すると、凜祢は首を傾げて問う。

 

「白夜叉ちゃん。私と凜緒ちゃんのコミュニティが〝ノーネーム〟に変わってるけど、コレはどういう意味なのかな?」

 

「ん?ああ。あやつとの約束でな。精霊のおんし達は全員同じコミュニティに集結させておいてくれ、と言われておるから凜祢と凜緒もすまないが〝ノーネーム〟に所属してもらう」

 

「そうなんだ。うん、わかった。万由里ちゃんとももっと仲良くなりたかったところだから私は大丈夫だよ」

 

「そうか。なら万由里、おんしが〝サウザンドアイズ〟に」

 

「変態がいるコミュニティはお断りだから」

 

「そうつれないことを言うなよぅ」

 

 皆まで言わせずキッパリと断った万由里。唇を尖らせて拗ねる白夜叉。苦笑する凜祢とそれに釣られて凜緒も苦笑した。

 一方、黒ウサギ達は驚いて凜祢と凜緒の周りに集まって声を上げた。

 

「え?お二人とも黒ウサギ達のコミュニティに来てくださるのですか!?」

 

「うん。私の娘共々よろしくお願いします!」

 

「みんな、よろしくね!ママをいじめたらゆるさないんだよ?」

 

「はいな。よろしくなのです凜祢さん、凜緒さん!」

 

「おう。よろしくメイド親娘」

 

「ええ。よろしくね、凜祢さん。凜緒さん」

 

「うん、よろしく」

 

 凜祢と凜緒を迎え入れる黒ウサギ達。万由里は二人の下に歩み寄った。

 

「改めてよろしく。凜祢、凜緒」

 

「うん。改めてよろしくね、万由里ちゃん」

 

「うん!まゆりもよろしくね」

 

「ん」

 

 こうして〝ノーネーム〟に新たな仲間が加わったのだった。




次回はギフトネームの内容を交えた会話を書くか、先を進めるか………どっちにしようかな。
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