役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ?   作:問題児愛

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第八話 黄金の吸血姫と黒鉄の人工精霊だそうですよ?

 翌日、飛鳥・耀・ジンに黒ウサギ・十六夜・万由里・三毛猫は〝フォレス・ガロ〟のコミュニティとギフトゲームを行うために、彼らのコミュニティの居住区画に訪れていた。

 ちなみに凜祢と凜緒は昨夜の襲撃のこともあり念のため子供達と共にお留守番をしていたりする。

 

 

『ギフトゲーム名〝ハンティング〟

 

 ・プレイヤー一覧

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件

 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法

 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は〝契約(ギアス)〟によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 ・指定武具

 ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

        〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

 結果は〝ノーネーム〟の勝利だったが、耀が負傷したため黒ウサギが耀を抱きかかえて大急ぎで戻ったり、残った万由里達は十六夜とジンを筆頭に〝フォレス・ガロ〟が奪い取り込まれていた様々なコミュニティの誇り―――〝名〟と〝旗印〟の返還を行い、さらに『打倒魔王』宣言までしたりしたそうな。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 その後、万由里・十六夜・飛鳥・ジンは耀の見舞いに行くと、そこには黒ウサギ・凜祢・凜緒がいた。

 

「くろうさぎ。ようはだいじょうぶなの?しんじゃったりしない?」

 

「大丈夫でございますよ凜緒さん!出血が激しかったので増血を施しております。二、三日もあれば完治するのですよ」

 

 黒ウサギの言葉を聞いて一同はホッと胸を撫で下ろす。十六夜は呆れたように呟く。

 

「へえ、流石は神様の箱庭ってことか」

 

「YES♪ですが輸血となると専門のコミュニティに依頼しなければならないですし、お金もかかってしまいます」

 

「そうね。でも春日部さんの傷が治ってくれるのなら私は方法なんて気にしないわ」

 

「そうだね。何よりも耀さんの容体が回復してくれるから………本当によかった」

 

 凜祢と凜緒はお留守番をしていたため、体調が万全だった耀が負傷して黒ウサギに運ばれてきたのを見た時は瞬時に青ざめたそうだ。

 気を失っている耀に何度も声をかけたり手を握ったり、黒ウサギの手伝いも積極的にやったそうだ。

 

「そうだったのね………ありがとう凜祢さん、凜緒さん。黒ウサギもね」

 

「仲間として当然の事をしたまでだよ」

 

「うん。ようはだいじななかまだからね」

 

「いえいえ♪」

 

 凜祢と凜緒はニコリと笑い、黒ウサギは照れくさそうに頬を掻いた。

 

★★★★★★★★★★★★

 

 耀の見舞いの後、談話室には黒ウサギ・十六夜・万由里が集まっていた。十六夜は思い出したように呟く。

 

「そういや黒ウサギ。例のゲームはどうなった?」

 

「え?―――十六夜さん!そのゲームに出てくれるんですか!?」

 

「ああ」

 

 十六夜がギフトゲームに参加してくれることを知った黒ウサギは大歓喜した。

 一方、何の話しかさっぱりな万由里は首を傾げて二人に問う。

 

「………例のゲームって何の話?」

 

「ん?ああ、万由里は知らなかったんだったな。例のゲームってのは元・お仲間にして元・魔王様が景品のギフトゲームが開かれるって話だ」

 

「へえ。それは凄い話ね。元・お仲間でさらに元・魔王なんだ」

 

「はいな!それでは申請に行ってきますのでしばらくお待ちください♪」

 

 黒ウサギはウキウキな気分で申請に向かい―――数分後には帰ってきて一転して泣きそうな顔になっていた。

 

「………ゲームが延期?」

 

「はい………申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるとのことです」

 

 黒ウサギはウサ耳を萎れさせ、落ち込む。十六夜はチッ、と舌打ちして―――

 

「それなら仕方がねえな。こうなりゃ黒ウサギを白夜叉に売って交渉するしか」

 

「何をお馬鹿な事を言ってんですかこの人!?」

 

「何?黒ウサギだけじゃ足りない?―――なら万由里達精霊も白夜叉に売るしかねえか」

 

「は?ちょっと十六夜!?あんた私達を何だと思ってるの!?」

 

「白夜叉への貢ぎ物」

 

「―――――ッ!」

 

 十六夜の情の欠片もない発言に、万由里は鋭い視線で十六夜を睨みつける。

 だが十六夜は肩を竦めて笑った。

 

「―――ってのは冗談だ。俺がお前らを手離すわけねえだろ。何せ黒ウサギと万由里は俺の大事な―――愛玩動物に愛玩精霊だからな!」

 

「前半ドキッとしたのに後半で全てが台無しになったわ………」

 

「ま、全くです!」

 

 ヤハハと笑う十六夜を半眼で見つめる万由里と黒ウサギ。

 

「まあ、次回を期待するか。ところでその仲間ってのはどんな奴だ?」

 

「あ、それ私も気になる」

 

「そうですね………一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りがよくて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです」

 

「へえ?濡れた万由里の髪みたいにか?そいつは見応えありそうじゃねえか」

 

「へ?―――あ、はい。それはもう!加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くにいるのならせめてもう一度お話ししたかったのですけど………」

 

「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」

 

「「「え?」」」

 

 三人はハッとして窓の外を見た。そこには窓のガラスを叩きにこやかに笑う金髪の少女と、周りを警戒する黒鉄の髪の少女が浮いていた。

 黒ウサギは金髪の少女を見て跳び上がって驚くと、急いで窓に駆け寄った。

 

「レ、レティシア様!?」

 

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。〝箱庭の貴族〟ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」

 

 黒ウサギが錠を開けると、レティシアと呼ばれた―――金髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿させるロングスカートを着た少女が苦笑しながら談話室に入り、

 

()()。目的地についたのだ、君も警戒を解いて中に入ってきてくれないか?」

 

「………そうだね。キミがそうして欲しいならあたしはそれに従うまでだよ」

 

 鞠奈と呼ばれた―――黒鉄の髪にカチューシャ、純白と青をベースにしたメイド服、純白のニーハイソックスを着た少女がレティシアに手招きされて談話室の中に入ってきた。

 黒ウサギ達はキョトンとしてレティシアに質問した。

 

「あのぅ………レティシア様?」

 

「なんだ?」

 

「その方はどなたでしょうか?というよりなんでメイドなのです?」

 

「ん?ああ、そうだったな。彼女は或守鞠奈。今は訳あって私の護衛をしてもらっている精霊だ」

 

 レティシアが紹介すると、鞠奈は頷いて自己紹介した。

 

「あたしは或守鞠奈。今はレティシアのガーディアンをやってるものよ。格好がメイドなのは―――」

 

「どうせまたあの白夜叉とかいう変態の趣味に付き合わされてるんでしょ?」

 

「………まあ、そういうことよ。キミが精霊の万由里で合ってる?」

 

「ん、合ってるわ。これからよろしく、鞠奈」

 

「ええ。()()()()()よろしくね、万由里」

 

 万由里と鞠奈は握手を交わした。レティシアはその様子を眺めた後、黒ウサギに視線を戻す。

 

「こんな場所からの入室で済まない。ジンには見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」

 

「そ、そうでしたか。あ、すぐにお茶を淹れるので少々お待ちください!」

 

 黒ウサギは小躍りでもするようなステップで茶室に向かう。

 レティシアと鞠奈は十六夜の奇妙な視線に気がつき首を傾げる。

 

「どうした?私の顔に何かついているか?」

 

「………あたしの顔にも何かついている?」

 

「別に。前評判通りの美人………いや、美少女だと思って目の保養に観賞してた。―――つか万由里。お前んとこの世界の精霊って美少女率高すぎだろ。あのメイド精霊も中々のものだぞ」

 

「そうね。私もそれは思ってるけど………つっこんだら敗けだと思う」

 

 万由里は苦笑いを浮かべる。鞠奈はムッとした表情で返した。

 

「誰がメイド精霊なのよ。あたしには鞠奈って名前があるんだけど」

 

「おっと、そいつは悪かった。―――メイド精霊様?」

 

「はあ?ちょっとキミ、様づけされただけで何も変わってないんだけど!?それともあたしに喧嘩売ってる?」

 

「売ってる」

 

「………そう。いい度胸してるわねキミ。そっちがその気なら」

 

「待て鞠奈。喧嘩をしに訪問しに来たわけではないんだぞ?少し落ち着いてくれ」

 

 レティシアに止められて渋々食い下がる鞠奈。十六夜がチッ、と舌打ちすると丁度黒ウサギが紅茶のティーセットを持ってきた。

 黒ウサギは温められたカップに紅茶を注ぎ、それをテーブルに五人の分を置いた。

 

「………それで、レティシア様達はどのようなご用件で来たのですか?」

 

「ああ、そうだな。せっかく黒ウサギに紅茶を淹れてもらったんだ。それを飲みながら話させてもらう」

 

★★★★★★★★★★★★

 

「―――その不安、払う方法が一つだけあるぜ」

 

「何?」

 

「実に簡単な話だ。アンタは〝ノーネーム〟が魔王を相手に戦えるのかが不安で仕方がない。ならその身で、その力で試せばいい。―――どうだい、元・魔王様?」

 

 スッと十六夜が立ち上がると、レティシアは哄笑を上げて立ち上がった。

 

「ふふ………なるほど。それは思いつかなんだ。実に分かりやすい。下手な策を弄さず、初めからそうしていればよかったなあ」

 

「ちょ、ちょっとお二人様?」

 

「ゲームのルールはどうする?」

 

「どうせ力試しだ。手間暇かける必要もない。双方が共に一撃ずつ撃ち合い、そして受け合う」

 

「地に足をつけて立っていたものの勝ち、か。いいね、シンプルイズベストって奴?」

 

 十六夜が拳を叩いて笑うと、レティシアと笑みを交わし窓から外へ同時に飛び出した。

 窓から十間ほど離れた中庭でレティシアは空に舞い上がり、十六夜はそれを見上げた。

 

「へえ?箱庭の吸血鬼は翼が生えてるのか?」

 

「ああ。翼で飛んでいる訳ではないがな。………制空権を支配されるのは不満か?」

 

「いいや。ルールにはそんなのなかったしな」

 

 飄々と肩を竦める十六夜。レティシアはその態度を評価した。

 

「(なるほど。気構えは十分。後は実力が伴うか否か………!)」

 

 黒い翼を広げて空を浮遊するレティシアは、金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを取り出す。

 そのギフトカードを見た黒ウサギは蒼白して叫んだ。

 

「レ、レティシア様!?そのギフトカードは」

 

「下がれ黒ウサギ。力試しとはいえ、コレが決闘である事は変わりない」

 

「し、しかし!」

 

 なおも食いつこうとする黒ウサギを、万由里と鞠奈が止める。

 

「黒ウサギ、コレは二人の戦いなのよ?あんたが邪魔しちゃ駄目」

 

「そうね。万由里の言う通りよ。ここはキミが出る幕じゃない。それにあたしはレティシアのガーディアン。万が一の場合はあたしに任せて」

 

「………分かりました。そこまで言うのでしたら万が一の場合は鞠奈さん、お願いしますね?」

 

「ええ、わかったわ」

 

 黒ウサギを止めることに成功した万由里と鞠奈。一方、レティシアはギフトカードから長柄の武具を取り出す。

 

「互いにランスを一打投擲する。受け手は止められねば敗北。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

 

「好きにしな」

 

 十六夜の言葉に頷き、レティシアはランスを掲げると、全身を撓らせた反動で投擲した。

 

「ハァア!!!」

 

 怒号と共に放たれた槍は瞬く間に摩擦で熱を帯び、流星の如く大気を揺らしながら降下していく。

 十六夜はその槍の先端を前に、牙を剥いて笑い―――

 

「カッ―――しゃらくせえ!」

 

 

 ―――()()()()()

 

 

「「「―――は………!??」」」

 

「………すご、」

 

 素っ頓狂な声を上げる鞠奈・レティシア・黒ウサギ。万由里も口をポカーンと開けて呆ける。

 まあ十六夜が殴りつけただけで音速以上で投擲された槍を粉砕してしまったのだから無理もない。

 そして粉砕された槍は無数の鉄塊と化し、第三宇宙速度を叩き出してレティシアに迫る。

 

「(こ、これほどか………!)」

 

 レティシアはこれは避けられないと悟り、血みどろになって落ちる覚悟をした―――が、

 

「レティシア!」

 

「………え?」

 

 先ほどまで万由里の隣にいた鞠奈の姿が、まるで瞬間移動をしたかのように一瞬でレティシアの下へ現れた。

 そして鞠奈の服装がメイド服ではなく逆十字が象られ黒をベースにしたバグをおこしているような修道服を纏い、レティシアに向けられた全ての鉄塊を払い落とす。

 驚いたレティシアを抱きかかえて地面に着地すると、黒ウサギと万由里も飛び出して鞠奈達の下へ駆け寄った。

 

「く、黒ウサギ!何を!」

 

 黒ウサギはレティシアのギフトカードを掠め取り、その事にレティシアは抗議の声を上げたが、黒ウサギは無視してレティシアのギフトカードを見つめ震え声で向き直った。

 

「ギフトネーム・〝純潔の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)〟………やっぱり、ギフトネームが変わっている。鬼種は残っているものの、神格が残っていない」

 

「っ………!」

 

 さっと目を背けるレティシア。万由里が「どういうこと?」と首を傾げると、歩み寄った十六夜は白けたような呆れ顔で肩を竦ませた。

 

「なんだよ。もしかして元・魔王様のギフトって、吸血鬼のギフトしか残ってねえの?」

 

「………はい。武具は多少残してありますが、自身に宿る恩恵(ギフト)は………」

 

「ハッ。どうりで歯応えがないわけだ。他人に所有されたらギフトまで奪われるのかよ」

 

「いいえ………魔王がコミュニティから奪ったのは人材であってギフトではありません。武具などの顕現しているギフトと違い、〝恩恵〟とは様々な神仏や精霊から受けた奇跡、云わば魂の一部。隷属させた相手から合意なしにギフトを奪う事は出来ません」

 

 黒ウサギの言葉に、鞠奈はボソリと呟いた。

 

「じゃあもし、そのギフトをレティシアが自ら望んで魔王に渡したとしたら?」

 

「………え?」

 

 黒ウサギはピタリと動きを止め、レティシアは声を上げた。

 

「鞠奈ッ!」

 

「ごめんね、レティシア。キミのおかれた状況を知っておきながら、黙ってることなんて………あたしにはできない。………そうだよ。キミたちも薄々気づいていたかもしれないけど―――レティシアは自ら望んでギフトを差し出した」

 

「………ッ!」

 

 レティシアは苦虫を噛み潰したような顔で目を逸らす。黒ウサギは苦い顔で問う。

 

「で、ではなぜギフトを手離してしまったのですか………?」

 

「………それは」

 

 レティシアは言葉を口にしようとした―――その時、レティシア達に向かって一本の褐色の光が迫って来た。

 

「あの光………ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」

 

 レティシアは光から庇うように四人の前に立ち塞がろうとした―――が、鞠奈がレティシアの前に出ると、レティシアを突き飛ばした。

 

「ま、鞠奈!?何を………ッ!?」

 

「ホント、莫迦なんだから………キミは。レティシアを守るのはあたしの役目でしょ?それに―――」

 

 鞠奈は儚げに笑い告げた。

 

「―――コレはキミの意向に叛いたあたしへの罰。だからコレを受けるべきなのはあたし。それと……………ごめんね」

 

「鞠―――」

 

 レティシアが鞠奈の名を叫ぼうとした時にはもう既に遅く、鞠奈は石となってゴトンとその場に倒れ落ちた。




 ブラックシルバー
 或守鞠奈
 ギフトネーム
人工精霊(アーティフィシャル・スピリット)
守護者(ガーディアン)
不可視迷彩(インビジブル)
仮想世界(バーチャル・ワールド)
共鳴(レゾナンス)

〝守護者〟は鞠奈が凜緒のガーディアンの時に、空間を越えて凜緒の元にいつでも移動できる力をギフト化したものです。

〝仮想世界〟は<ラタトスク>が作り出した天宮市を模した電脳空間―――をゲーム盤としたもの。ただし或守鞠亜が持つ鞠奈と同じ〝仮想世界〟と共に使用せねばゲーム盤は顕現しないものとする。


というわけで一巻で登場する最後の精霊は鞠奈でした。
早急に退場してしまいましたが。
次回は例の襲撃者達とルイルイの登場ですが………少なくとも鞠奈という精霊の仲間を傷つけられて怒り心頭な万由里だが、暴れさせるべきか否か………。
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