役目終了と思いきや異世界へ引きずり込まれたそうですよ? 作:問題児愛
「ま、鞠奈さん!?」
黒ウサギが声を上げたのと同時に、上空から男達の声がした。
「いたぞ!吸血鬼は石化………してない!?」
「チッ、邪魔が入ったか!」
「もう一度石化のギフトを使え!今度は外すな!」
翼の生えた空駆ける靴を装着した騎士風の男達は言葉通りもう一度石化のギフトを使用した―――瞬間。
「―――<
オーロラのギフトカードを取り出し、掲げた万由里が〝形を持った奇跡〟―――巨大な天使<
漆黒の球体から人工的な二対の翼、鎖のような尾、その周りに浮遊する四つの車輪。
それを見た騎士風の男達は驚愕の声を上げる。
「な、なんだアレは!?」
「天使だと言うのか………!?」
「馬鹿な!此処は最下層だぞ!何故天使が現れる!?」
「ハッ、どうせ我らのと同じでレプリカだ………!」
男達が口々に声を上げていると、黒い霊装を纏った万由里が翼を羽ばたかせて一人の騎士に接近し、
「―――え?ガッ!?」
いつの間にか顕現させていた万由里の所有するもう一つの天使<
それに騎士達は驚き、万由里を見て怒号した。
「な、貴様!〝名無し〟風情の分際で我らの同士に手をあげるか!」
「それはこっちの台詞よ!よくも私の同胞に手を出してくれたわね!絶対に許さない―――ッ!」
万由里は怒りと共に<
騎士達は万由里から距離をおき、弓矢を構えて放とうとした―――が、万由里は<
騎士達は万由里を背後から強襲しようとしたが、<
騎士達は全く隙がない万由里を前に焦り始めていると―――
「ヤハハ、面白えことしてんじゃねえか万由里。やるなら―――俺も混ぜろやゴラァ!」
「グハッ!?」
十六夜が嬉々として跳躍し騎士の前に躍り出ると、殴り飛ばして後列の騎士達を巻き添えにしながら第三宇宙速度で彼方へと吹き飛ばす。
万由里は驚きながらも十六夜を抱き止めた。
「十六夜、あんたどうして」
「俺もメイド精霊に手を出した連中は見過ごせねえよ。それに………万由里の怒りは俺の怒りみたいなもんだしな」
「………そ。ありがと」
「お礼はいいって。それよりも、奴らに喧嘩売っちまった以上―――最後までやるぞ万由里」
「ん。じゃあ後ろの連中をお願い」
「おう」
万由里は霊力を編み十六夜の足場を作ると、十六夜は「こいつは凄えな!」と笑いながら霊力で出来た光の床を駆けて騎士達に突っ込んでいく。
万由里も翼を羽ばたかせて前方の騎士達に突っ込んでいき<
★★★★★★★★★★★★
数分後。万由里と十六夜は百もの騎士達を全て捩じ伏せて捕縛した後、霊装を解除して来禅高校の制服に戻った万由里は溜め息を吐いて呟く。
「………やっちゃった」
「ああ、やっちまったな」
「何がやっちゃったですかこのお馬鹿様方!!!」
スパパァアン!と黒ウサギは激怒してハリセンを万由里と十六夜の頭に奔らせた。
レティシアもこのまずい状況に頭を抱えていた。
「………彼らは〝サウザンドアイズ〟の幹部〝ペルセウス〟というコミュニティの騎士達だ。彼らに喧嘩を売ってしまったということは―――最悪白夜叉と戦うことになるかもしれない」
「そ、そうでございますね。これはまずいことになってきてしまったのですよ………」
「………やはり私が大人しく〝ペルセウス〟に帰るしかないな」
「それは駄目よ!あんたがその人達の下へ行っちゃ、鞠奈は何のために身を挺して守ってくれたっていうの!?」
「万由里さん………」
万由里はレティシアの手首を掴んで騎士達の下へ行かせない。
レティシアは「だが」と石になってしまった鞠奈を見て申し訳なさそうな表情で何か言おうとしたところを、十六夜がパァンと手を叩いて遮った。
「―――よし。とりあえず詳しい話は白夜叉に尋ねるとするか」
「え?」
「え?じゃねえよ。レティシアが〝ペルセウス〟の連中から逃げてきたのには恐らく白夜叉が関与してるはずだ。あのメイド精霊は白夜叉が派遣したレティシアの護衛みたいだしな」
「あ、なるほど。だったら十六夜の言う通り白夜叉に会って確かめた方がいいね」
うん、と頷く万由里。黒ウサギも十六夜に同意した。
「それもそうでございますね。レティシア様は本拠で待機していてくださいますか?」
「いや、私は〝ペルセウス〟の所有物だ。大人しく帰るべきだよ」
「あんたまだそれ言ってんの!?そんなこと、私がさせないわ!あんたは此処にいて」
「………分かった。分かったから離してくれ」
有無を言わさぬ万由里の気迫に渋々万由里に従うことにしたレティシア。
十六夜はそれを確認すると、黒ウサギに指示を出した。
「そうと決まれば他の連中を呼んで来い黒ウサギ」
「え?で、でも昼間の事がありますし」
「なら御チビとお嬢様と園神親娘だけでもいい。どうもキナ臭い。最悪その場でゲームになることだってあり得る。なら頭数はいた方がいいだろ」
「はいな。呼んでくるので少々お待ちください!」
黒ウサギは急いで飛鳥達を呼びに行った。そして暫くすると黒ウサギは飛鳥、ジン、凜祢、凜緒を引き連れてきた。
ジンはレティシアを見るや否や、驚愕して駆け寄った。
「レ、レティシア!?どうして貴女が僕達のコミュニティに?」
「ジン………すまないが詳しい話は後にしてくれないか。今は一刻を争う事態なんだ」
「あら、十六夜君や万由里さんが何かやらかしたのかしら?」
「ええとですね………十六夜さんと万由里さんは先ほどまで〝ペルセウス〟に喧嘩を売ってしまったのでございますよ」
「そうなの?………十六夜君、万由里さん」
「なに?」
「なんだ?」
飛鳥はちょっとムッとした表情で、やや不機嫌そうに言った。
「面白そうな事をやっていたのだったら私にも声をかけてほしかったわ」
「ああ、そいつは悪かったなお嬢様」
「何が面白そうな事でございますかこのお馬鹿様!!!」
スパァアン!と飛鳥の頭にハリセンを奔らせる黒ウサギ。ジンが頭を抱えると、凜祢と凜緒は石になってしまった鞠奈を発見して声を上げた。
「え?―――ま、鞠奈さん!?なんで石になって………!?」
「ま、りな?どうして、うごかないの?しっかりして!」
凜祢と凜緒は石化している鞠奈を揺するが反応がない。
凜緒は鞠奈の手を握りしめながら涙を流し始めると、凜祢はスッと目を細めて言った。
「ごめんね黒ウサギさん。私と凜緒ちゃんは鞠奈さんが心配だから残るよ」
「え?はい、わかったのです」
「黒ウサギ。僕も耀さんが心配だから残るけどいいかな?」
「へ?あ、はい。わかったのです」
凜祢に続いてジンまで残ると言い出し、結局追加人員は飛鳥のみとなった。
レティシアをジン達に預け、万由里・十六夜・飛鳥・黒ウサギの四人は〝サウザンドアイズ〟に向かった。
★★★★★★★★★★★★
「うわお、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪つきで毎晩可愛がるぜ?」
亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た線の細い男―――ルイオスは黒ウサギの全身を舐め回すように視姦してはしゃぐ。黒ウサギは嫌悪感でサッと脚を両手で隠すと、飛鳥も壁になるよう前に出た。
「これはまた………分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ」
「そうですそうです!黒ウサギの脚は―――って違いますよ飛鳥さん!!」
「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のものだ」
「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃいッ!!!」
「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で」
「売・り・ま・せ・ん!あーもう、真面目なお話をしにきたのですからいい加減にして下さい!黒ウサギも本気で怒りますよ!!」
「馬鹿だな。起こらせてんだよ」
「こんのお馬鹿様!!!」
スパァアン!と黒ウサギはハリセンを一閃させた。万由里は「なに漫才やってんのよ」と半眼で呆れたように呟いた。
ルイオスはポカーンと口を開けたまま見つめ、唐突に笑い出した。
「あっはははははははは!え、何?〝ノーネーム〟っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめて〝ペルセウス〟に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるのが性分だからね。生涯面倒見るよ?勿論、その美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」
「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません」
嫌悪感を吐き捨てるように言うと、隣で十六夜がからかった。
「へえ?俺はてっきり見せるために着てるのかと思ったが?」
「ち、違いますよ!これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しすると言われて嫌々………」
「ふぅん?嫌々そんな服を着せられてたのかよ。………おい白夜叉」
「なんだ小僧」
「超グッジョブ」
「うむ」
十六夜と白夜叉はビシッ!と親指を立てて意思疎通する。一向に話が進まず、ガクリと項垂れる黒ウサギ。
一方、万由里は飛鳥に耳打ちしていた。
「ねえ、飛鳥」
「何かしら、万由里さん?」
「この空間………変態率が高すぎて嫌なんだけど」
「奇遇ね。私もこの空間は嫌になっちゃうわ」
万由里と飛鳥は、十六夜・白夜叉・ルイオスを見て深い溜め息を吐いたのだった。
★★★★★★★★★★★★
「―――いやだ」
「………はい?」
「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」
「それなら彼女の
「駄目だね。アイツは一度逃げ出したんだ。出荷するまで石化は解けない。それに口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ?元お仲間さん?」
嫌味ったらしく笑うルイオス。筋は通っているが黒ウサギの虚言に気づけないルイオスを滑稽に思う十六夜達。だが悟られないように表情には出さない。
ルイオスはそんなことも知らずに続けた。
「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」
「な、何を言い出すのですかッ!そんな証拠が一体どこに」
「事実、あの吸血鬼はあんたのところに居たじゃないか。―――まあ、どうしても決闘に持ち込みたいというならちゃんと調査しないとね。………もっとも、ちゃんと調査されて一番困るのは全く別の人だろうけど」
「そ、それは………!」
白夜叉の名前を出されては、今まで世話になった恩義があるため手が出せない黒ウサギ。
ルイオスは立ち上がって呟いた。
「じゃ、さっさと帰ってあの吸血鬼を外に売り払うか」
「え?箱庭の外ですって!?」
黒ウサギはルイオスの言葉を遮って声を上げた。
「一体どういうことです!彼らヴァンパイアは―――〝箱庭の騎士〟は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!?そのヴァンパイアを箱庭の外に連れ出すなんて………!」
「いや、だって仕方がないだろ?アイツを欲しがる取引相手が箱庭の外に住んでるんだし。それに僕は趣味じゃないけど気の強い女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴なんだし?太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女ってのもエロくない?」
ルイオスは肩を竦ませて語ると思いきや、黒ウサギに挑発半分で取引相手の人物像を口にする。
すると黒ウサギはウサ耳を逆立てて叫んだ。
「あ、貴方という人は………!」
「しっかし可哀想な奴だよねーアイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもの」
「………なんですって?」
レティシアと顔を見合わせたものの、状態まで知らなかった飛鳥が声を上げる。
黒ウサギは声に出さなかったが、表情には動揺が浮かぶ。ルイオスはそれを見逃さなかった。
「報われない奴だよ。〝
「………え、な」
黒ウサギは絶句する。顔は見る見るうちに蒼白に変わっていった。
そんな黒ウサギに、ルイオスはにこやかに笑ってスッと右手を差し出す。
「ねえ、黒ウサギさん。このまま彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同士として義が立たないんじゃないか?」
「………?どういうことです?」
「取引をしよう。吸血鬼を〝ノーネーム〟に戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」
「なっ、」
「一種の一目惚れって奴?それに〝箱庭の貴族〟という箔も惜しいし」
再度絶句する黒ウサギ。飛鳥もこれには堪えきれず長机を叩いて怒鳴り声を上げた。
「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ!もう行きましょう黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理はないわ!」
「ま、待ってください飛鳥さん!」
「そうだぜお嬢様。話はまだ―――
「え?―――あ、そうだったわね。私達の話はまだ終わってなかったわ」
十六夜の言葉に思い出したようにハッとした飛鳥は座り直す。
一方、その意味が分からないルイオスはやや不機嫌そうに聞いた。
「はあ?まだ僕に話があんの?」
「ああ。今までのは
「………は?」
ルイオスが固まると、十六夜はニヤリと笑って告げた。
「さあ―――反撃開始だ!」
長くなるので今回はここまでです。
今回はルイオスが優勢。次回は十六夜達の反撃ですね。決闘にこぎつけるかどうか………