東雲秀司と北山達也のお話です。

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陽だまりのキミ・・・ 2

腹が減った。めちゃくちゃ減った。

起き上がるため伸びしようとして右腕の自由が利かないことで、何かの存在を知った。何か居る。

 

・・・へ?

 

重さを確かめるためひねった顔の鼻先に、香りいい柔らかな髪が触れた。さわやかなシャンプーの香りだ。

 

・・・キタの香・り・・だ・・・?へ?え・えーーーーー??

 

半パニックだ。それでも、隣で寝ているものを起こさぬように静かに体を起こす。一人が用やっとの保健室のベッドでできる気遣いなんてたかが知れてる。問題は、なぜ北山が一緒に寝ているのか。・・・皆目見当も付かない。

校舎裏の池での優しい時間の後、保健室に向かった。先生が居ないのでベッドを拝借して、ただただ眠ったはず。泥沼に落ちたはずだった。空間の広がりを感じて北山が寝返る。両腕が寒さを感じて抱え込まれた。俺は制服を身に羽織って、掛け布団を掛けてやる。掛けるというより包む感じだ。

裏池の時間は不思議で暖かかった。鳥に餌をやっていたのは南雲さん。西須さんを待っていたのか・・・

 

ベッドで寝ている北山達也は、幼馴染だ。幼稚園から一緒のご近所さんだ。お調子者といわれる北山だったが、数ある失敗の迷惑を、俺がこうむった記憶はなかった。

形よく細身の眉の下のまつげは、思っていたより長めだ。指先でなぞる唇は柔らかく、薄紅の色っぽさに意識せず唇を重ねていた。

 

 ・・やわらかだ・・・

 

舌で唇をなぞると口が開き、差し込んだ舌を探すように動かすと絡んできた。慌ててはなす。

 

!!何してんだ、俺!キ・・北山に・・・キ・キスーーーーー???

 

飛び降りて立ちすくむ。北山の寝顔から視線を外せず、ベッドの傍らで茫然自失になっていた。

あの二人に当てられすぎだ。やばすぎるだろ俺ぇぇぇぇぇ!!!

気配を感じたのかむすっと、北山が起き上がる。

 

「お!起きてるジャン。ってか、俺が寝てたのかぁ!!わりぃ。・・・腹へった。」

 

「そうだ!なぜキタが寝てるんだ??飯、行こうぜ・・・」

 

「爆睡してたからな、シノ。気持ち良さそうだったから・・・」

 

手串で髪を整えながら、照れくさそうに答えがかえってきた。何気ない振りはできただろうか・・・

昼食にはタイムリーだが、有りつけるかどうかは運しだいという時間ではある。男子校だからな、食欲をなめてはいけない。売店も選択肢はない品類だ。食堂も空きテーブルはない程度にはにぎやかさがあった。学年でずん抜けて身長が高いわけじゃないが、高いほうからのが数えは早い気がしてる俺と、北山はいくらも違わなかった。

 

「梅が3個、おかかが2個と昆布だ。昼買って、シノのところに行きゃよかったんだ。」

 

「いやいや、良く買えました。感謝感謝。飲み物俺が買う。お茶でいいよな?」

 

売店の戦場から、缶飲料とカップ飲料機の3台の自販機前に移る。ホットの缶茶を購入した。人混みは売店ほどじゃなかった。席探しもしてた北山から何気に伸びてきた腕のまま、俺は唇を重ねていた。

 

「バ・・!!!」

 

北山を突っぱねていた。

自販機前から静かになっていく。北山はぶつかって倒した他生徒を助けていた。パニクッタまま放置された俺は食堂内の変化を身にしみて感じていた。気がつかない奴等もいる。すべての生徒がここにいるわけじゃない。それでも、それでも・・・にぎやかさは半分ぐらいに静まり別物に変化していた。やっと俺に向いた北山も声は落した。それだって周りにゃ十分きこえただろう・・・な。

 

「飯代わりにゃなんねえけど・・・俺だってできる。独占欲っていったらどうする・・・」

 

頭に血が上り、顔が赤くなるのがわかった。

なんなんだよ!保健室の意趣返しか。だったら他でもできるだろう・・・こんな所じゃなくても、北山!!

彼はクラブの後輩を見つけて席交渉していた。

 

「シノ。OKだって。来いよ。」

 

何だって言うんだよ!!

 

「よろしく。荷物置くね。キタ、ちょっと!!」

 

「飯は!!・・・ちょーーー!」

 

この瞬間に絡む、いくつもの視線。いやでも意識しちまう。キタの腕を掴んで食堂に一番近いトイレに入る。一番奥の道具置き場に入り込む。

 

「なにやってんだよ!変態扱いされっぞ。噂の立ち放題だ!!わかってんのか、キタ!!」

 

諦めきれず持ってきたおにぎりにぱくついている北山。終わるまで、話をする気もなさそうだ。だが、視線は幾度も俺を見ていた。

 

「うまかった。

 先に手を出したのは、シノだろうが!・・気づいて応えたらすぐ引いて、逃げただろう!大体、今時の男子校  なんてノン気だって半分がそんな感じになっちまうって。南雲さんや西須さんだって噂の中心だろうが!」

 

北山は怒ってる。マジ、真剣に怒ってる。何に怒っているのか・・・俺はわかってない。

 

「わるかった。ごめん。キタ・・」

 

とにかく謝るのがはやい事態の収拾だと思った俺の行動が・・・まずかった。細めの眉に皺寄せて、瞳険しく怒鳴り返す。

 

「変態?上等だ!!噂が怖いんだ?シノ?なにあやまってんだよ!!なに悪さしたってんだよ!!簡単に引くな  よ・・そんなに簡単に・・俺ってそんなんなのか?シノ?!」

 

掴まれた腕が痛い。壁隅に押し付けられ何しようもなかった。北山の見開いた目に、たまるのは涙?

 

「・・・いたいって。なに怒ってるんだよ。腕放せよ、キタ!!謝っただろうが!!」

 

「気づけよ!秀司・・・てめえの気持ちにそろそろ気づけよ!!」

 

言い放って、北山は飛び出した。言われた言葉に呆然として自体がつかめず、タイミングが遅れて腕を掴み損ねて、逃げられた。テニス部ダブルスの選手である北山の足は速い。風の強い今日、体格の割りに寒がりな北山の行きそうな所の見当は付いてる。食堂を経由して後を追う。絶対昼飯は必要だからだ。北山の後輩たちはほぼ食事を済ませていた。荷物を手にして挨拶を済ませて、走り出る。

東駐車場の、まだ東にはプールがある。俺たちが3年になったら改修工事が始まる予定になっている。サイドの下にクラブの部室がいくつか造られていて、東側から2番目の部室前が一番日当たりがいいんだそうだ。膝丈ぐらいの段差があって、座り込んでいれば風は気にするほどでもないはずだ。

足音に、膝を抱えていた北山が頭をあげた。

 

「来るな!!」

 

お構いなしだ。北山の隣に腰を下ろしてしまう。

 

「・・・わるかったよ。

 今日は風、強いのな・・・。飯食ってねえから、寒さが応える。」

 

「もってきた。ほら。ただし、キタは2個な。」

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ。俺、梅とおかかだからな。」

 

遅い昼飯が始まった。北山は、まだ涙流しながら食っていた。どっちかにすればいいと思うが、言えない。高2でおにぎり3個はさびしい昼だろう。そそくさに昼は終わってしまった。膝に腕を重ねて頭を乗せ気味でお茶を飲んでいる北山を横目に話し始める。

 

「今日、南雲さんと西須さんのキスみた。」

 

「へぇ・・・噂は本当か・・。」

 

「今日から、俺たちも噂の人物だ。お前のせいだからな、キタ!

 きれいだったよ南雲さん。でも、西須さんの笑顔が忘れられられない・・かっこいいと思っちまった。」

 

大きなため息を北山がついた。頭を寝かして俺をみる。

 

「今日のキスはその影響か・・・単純すぎるだろう、シノ」

 

振り上げた手を下ろせなかった。その通りだと、俺も思ってるから。

この頃になると、ごまかしが何たるものなのかは何気に気づき始めている。だから反発も、暴走だったり喧嘩だったりの際限のない物が多くなる。北山は自分に素直だ。だからこそ、他人にもまじめだし正面から受け止めてるのだと思っている。反動は大きな羽目外し。お調子者の所以の一旦?

 

「・・・達也。

 俺は今しか考えられない。これからも・・。今がつながった先の選択肢には、隣に達也が居る。どんな選択で  も、俺の隣は達也だ。そう思う。」

 

「でも、逃げただろうが。・・・シノだと疑いもしないから応えた。すぐ離れちまってやばいと思った。間違った と思ったがどうしようもない。示したものは直せないし隠せない。・・・恋とか、好きとか何が基準なのかわか んね。教わりてぇよ、マジに・・・今しかないって思っちまった。だから、あそこで仕掛けたんだ。シノが受け たら、俺はどんなことでもやった。それでも立つ噂だって受けて立つ。俺にできることやってシノを守る覚悟は したんだ。・・・まさか、まだ早すぎたなんて思いもしなかった・・・」

 

一つになった二人が過ぎる。そんな選択は俺たちにも来るんだ。思いつきもしなかった北山と離れる未来。そんな選択があることすら気がついてなかった。

 

「幼馴染が居て当たり前。達也が隣に居ない日々を考えなかったし、そんな発想すらなかった。ごめん。俺、マジ お前に言われるまで気づかなかった。あの二人の未来への一歩に立ち会ったのに・・・それでも、気がつかな  かった、達也に言われるまで・・・本当にごめん。」

 

「秀司・・・

 俺をいじめて楽しい?涙で誤魔化すなよ。はっきり言わないんなら俺は諦める!」

 

え・・?あ・・・どうしてそうなる!どこから来るんだその強気!赤い瞳が面と向かって俺を見つめている。考えなしの馬鹿は俺だった。北山のほうがぜんぜん考えてる。肩掴まれて、いまさら視線外しもできない。

 

「・・・好き・だ。」

 

「知ってた。秀司、好きだよ。」

 

肩に腕を回されて抱きしめられた。北山の肩で俺は、泣くしかできなかった。両手で頭を起こして、唇が重ねられる。舌が遊ぶ初めてのキス。やばい!正体がぶっ飛びそう・・・!女の子との付き合いは北山のほうが多いのは知ってる。付き合い時間が短いのも知ってた。でも、その違いを身に感じたのは初めてだった。

俺の自覚のなさを気がついてたのか?北山・・・

 

「成績考えたら、もう秀司と一緒は無理だから・・。俺、焦ってたのかもだ。」

 

頭が働かない。ただくるくる回ってるだけな気がする。焦るって・・なにが・・??

達也が何気にキスを繰り返すなか、手をとられて運ばれた。なにか、ぽっこりしてる・・・なにって

 

「バカ!・・調子に乗りすぎだろう!!」

 

「しょうがねぇジャン。立っちゃったんだから・・・」

 

顔が熱く、赤くなる。北山と目があわせられなくてうつむいたままの俺。どうしていいのかわからないままだ。ふっと、北山が立ち上がったので、曳かれるように立ち上がる。北山は制服を払い始めた。白い埃が広がる中北山にキスされる。

 

「時間だ。俺、帰るから。カバン届けてくれよ。」

 

「キタ・・。」

 

手をとって歩き始める。階段まで来て俺は繋いでる手を引いた。階段を上がりきって北山が振り向く。

 

「勉強補佐がんばるから、挑戦してみね?やりもしないで諦めるって、キタらしくないだろ。俺、一緒に行きた  い。」

 

「シノ・・・お前やっぱ俺、いじめるの好きだろ?

 キスだけでたっちゃうんだぜ。一緒の部屋なんかに居れるかよ。我慢・・できないかもだぞ。」

 

顔が熱くて、赤くなってる。

 

「それは、そのとき考えればいいだろ。その先にある時間がほしいんだ。一緒でなくてもいいから・・くっそぅ。 今日、俺へんだ。・・なに泣いてるんだよ!おかし過ぎだって」

 

「一緒に帰ろうぜ・・・シノ。なぁ、俺はできる限りがんばる。でも,辛かったら言えよ。絶対にな。」

 

食堂の件に対して、精一杯の事をやる覚悟はついてるらしぃ。校舎も見ずに北上は門に向かう。校舎を見て、そして北上を追った。

いままで形にしてないものを、形に起こしたって言うのは、はっきりと存在があるだけ、いろいろと難しくなるってことかもしれない。ただ、一人じゃなくて、キタが隣に居るはずだ。とりあえず、話し合うことは続けよう。

そして、未来も一緒に考えよう・・・と、キタに伝えたい。

 

 

 

 

 

                             ***おわり***      

 

 

 

 


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