コードギアス―抵抗のセイラン―   作:竜華零

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新しい環境に死にそうです、竜華零です。
これが、世界か。
とか何とか言いつつ、最新話です。

枢木家とゲンブ首相について、オリジナル要素が入ります、ご注意ください。
では、どうぞ。


STAGE16:「クルルギ の 地」

 ナナリーは、一日の最後にはラジオを聞くことを日課にしている。

 ナナリー・ランペルージ、あるいはナナリー・ヴィ・ブリタニア、世界の3分の1を支配する超大国の皇女だった少女の趣味としては、聊か慎ましやかな趣味であると言える。

 音声だけのラジオなのは、当然、彼女が盲目であるためだ。

 

 

『――♪ ――――♪』

 

 

 広い寝室に流れるのは、柔らかな少女の雰囲気にはやや合わない軽快な音楽である。

 兄の生徒会のメンバーに教えて貰った音楽番組なので、ナナリーが普段聞くような物とは毛色が違う。

 しかしナナリーは眉を顰めたりはせず、むしろ瞼の閉じた顔は楽しそうだ。

 ポップカルチャーと言うのは良くわからないが、親しい人の好きな物を知れて嬉しいのだろう。

 

 

 車椅子の上に座る少女は、すでに淡い色合いのパジャマに着替えている。

 ちょっとしたドレスにもネグリジェにも見えるそれはゆったりとしていて、ナナリーの華奢な身体を柔らかく包んでいた。

 車椅子で過ごす彼女に配慮してか、寝室には割れ物や調度品が極端に少ない。

 その分、ベッドやカーテンにフリルやレースを多くして彩を加えているようだった。

 

 

『本日、ブリタニア政庁は第一級指名手配者のリストを半年ぶりに更新しました。リストのトップに乗るのはゼロ、クロヴィス前総督殺害容疑などが主な理由であり……』

 

 

 音楽番組の次は、ニュース。

 今日一日、どこで何があったのかを知るのも大切なこと。

 ただ最近は、件のテロリスト「ゼロ」を巡る報道が多いような気がする。

 

 

 そして個人的には、ナナリーはゼロに好意的にはなれなかった。

 何故ならば、殺人はもちろん忌避すべきことであるし、腹違いとは言えクロヴィスは彼女の兄だったのである。

 ナナリーがブリタニアにいた頃は、意地悪をされたこともあるが、優しい兄だったと思う。

 ……ルルーシュが絡まない時は、特に。

 

 

『また先日のチョウフ基地炎上事件以降、再び逃走を続けていると見られる藤堂ら日本解放戦線メンバーも継続してリストに掲載され、また事件に関与していると見られている……』

 

 

 藤堂、と言う名前にも覚えがある。

 まぁ、こちらはそこまで知人と言うわけでもない。

 ブリタニアから日本に来た幼い頃、何度か目にしたことがある……程度だ。

 しかしナナリーにとって問題はこの後だった、何故なら。

 

 

『枢木青鸞』

 

 

 何故ならそれは、7年前、一緒に遊んだ少女の名前だったから。

 7年前、ブリタニアから人質に出されてきた自分や兄と仲良くしてくれた女の子の名前。

 同年代の友人がいなかったナナリーにとっては、初めて出来た貴重な友人だった。

 戦争で離れ離れになってからは、どこにいるのかもわからなくなっていたが、まさか

 

 

 その少女が、ブリタニアにテロリストとして指名手配。

 まず心に来るのは、嘘、と言う言葉。

 かつてオレンジ事件の際、スザクがニュースに出た時も同じ感情を抱いた。

 

 

『今回初めてリストに乗りながら、レベルは藤堂らと同じ5。生死問わず(デッドオアアライヴ)指定の指名手配を受けたのは、かつての日本最後の首相の遺児。今回、その生存が確認され……』

 

 

 キャスターの説明が続けば続くほど、それは事実としてナナリーの胸に小さな刻まれた。

 自分の兄は、そしてあの娘の兄は知っているのだろうか。

 知っているのだとすれば、傷ついていないだろうか。

 自分と、同じように。

 

 

「……青鸞さん……」

 

 

 心配そうなその声は、誰にも届かないままに消えていく。

 それでもせめて、気持ちだけでも。

 そう思って、ナナリーは静かに顔を伏せた。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 ――――トーキョー租界から南に約170キロ、伊豆諸島と呼ばれる島々の一つに彼らはいた。

 その島の名は地外島、12k㎡前後の広さの小さな無人島だ。

 標高300m程の小さな山とそれを覆う森、島外縁の白い砂浜と深い青の海しか無い。

 

 

「打ち込み――ぃ、はじめっ!!」

「「「「せいっ! せいっ! せいっ!」」」」

 

 

 その砂浜に、袴姿の少年少女が並んでいる。

 ただの少年少女と言うには妙に精悍な顔立ちをしているが、竹刀を振るう彼らの表情は真剣そのものだった。

 そんな彼らの前で腕を組んで立つのは野村と言う男だ、ナリタ戦で草壁と共に殿を務めていた。

 現在は、ほとんど唯一のベテランとして少年達の訓練に付き合っている。

 

 

 集団から離れた位置、森の入り口でパラボラアンテナのような物を弄っている古川がいる。

 聴覚調整用のヘッドホンを何やら気にしているようだが、どうやらレーダーで島周囲の様子を窺っているらしい。

 航空機のルートから外れているとは言え、船やブリタニア軍の偵察機が来ないとも限らないからだ。

 

 

「ぬぅん……!」

 

 

 そして砂浜の横、海水で濡れたゴツゴツした岩場の上には大和がいる。

 何やら自分の身長の倍はありそうな長い釣竿を振るって、海に向かって餌付きの釣り針を放っていた。

 裸の上半身の筋肉が盛り上がり、汗を散らす。

 この場に妹がいれば、さぞや黄色い歓声が上がっただろう。

 

 

「いや~、皆この暑いのに頑張るねぇ」

「隊長も何かしてください! 不謹慎でしょう!?」

「見張り番~」

「たいちょ……飛鳥!?」

 

 

 森の入り口にいる古川の後ろ、太い木の枝の上に寝転んでいる山本に対して補佐役の上原が激怒している。

 例によって働きも訓練もしない山本を引っ張りにきたのだが、悔しいことに木に登れないらしい。

 軍人としてそれってどうなんだろう、賢明にも古川はその感想を口にはしなかった。

 

 

「にしても、軍人36人にその他16人、まー随分と物好きがいたもんだよな」

「隊長がそれを言うんですか……」

 

 

 護衛小隊を中心とする解放戦線メンバー、藤堂道場の門下生、そして僅かな民間人。

 合計で52名、キョウトに辿り着いた人間の僅か半分。

 しかし逆に言えば、50人超もの人間が1人の少女と共に在ることを選んだのである。

 枢木青鸞、若干15歳でエリア11中に指名手配された少女に。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 一方で現状52人の日本人の生命に責任を有し、エリア11内部において正式手配された少女はどうしているかと言えば、エプロン姿で掃除などしていた。

 彼女は今、ある建物の書庫の清掃と整理に従事していた。

 その建物は元々8000㎡程の広さを持つ洋館で、島唯一の山の側面を削って築かれた建造物だ。

 

 

 実はこの地外島、無人島になったのは十数年ほど前のことである。

 無人島と言うよりは放棄島と言った方が正しい、そして放棄される前は私有地の別荘だったのだ。

 所有者の名は、枢木ゲンブ。

 青鸞の父にして日本最後の首相、彼が亡くなってからは土地の権利だけ桐原の家に移り、後は放置されていた。

 

 

「はぁ……んっ」

 

 

 埃の積もった、紙が黄ばんだ古い分厚い本を一度に10冊運んで、青鸞は大きく背伸びをした。

 残暑厳しい8月末の伊豆諸島、避暑を目的に作られた別荘でも書庫の中にこもっていればやはり暑い。

 おかっぱの髪を覆う白の三角巾を勢い良く外せば、窓から漏れる陽光に散った汗が煌いた。

 

 

 白い猫の肉きゅうがプリントされた黒のエプロンの下は、珍しいことに和服では無かった。

 膝丈の白ワンピース、襟無しの前ボタン式で袖とスカートの縁に花模様が描かれている。

 機会はそれ程多くは無いが、青鸞とて洋服を着ることもある。

 と言うか、そうそう毎日きっちりと着物など着ていられない。

 

 

「はぁ――……全っ然、片付かないや」

「15年放置していただけあって、凄いことになっていますから」

 

 

 書庫の中から青鸞について出てきたのは、雅である。

 珍しく彼女も和服では無い、こちらもエプロンの下に青鸞と同じ白いワンピースを着ている。

 異なる点は、ワンピースの布地に意匠化された花の種類である。

 青鸞は桜、雅は花菖蒲だ。

 

 

「うーん……もうこれ、掃除してるのか散らかしてるのかわからないよね」

「まぁ……まず外に出さないと、どうにも出来ませんし」

 

 

 そんな彼女達の前には、十数年間に渡る放置の末に荒れ放題になっている廊下が広がっている。

 書庫の外の廊下に中から積み出した本が積み上げられていて、その隙間からムカデなどが這い出てくると青鸞と雅は嫌な顔をする。

 まぁ、書庫に限らず……長年放置された洋館は、なかなかに凄かった。

 

 

 透明だっただろう窓ガラスは風雨で泥だらけで濁っているし、天井の隅などには蜘蛛の巣が張り、どこから入り込んだのか床には草の葉や砂が散らばっている。

 道場の少年達の手を借りてベッドルームや食堂などは並み程度に掃除したのだが、流石に書庫のような場所はまだ手がついていない。

 歩けば埃や砂が舞い上がり、壁に指を滑らせれば黒ずむ、そんな状態だった。

 

 

「なるべく急ぎたいけど、焦ってもしょうがないか」

「はい」

 

 

 この元枢木の別荘には、枢木家に纏わる古い資料などが保管されている。

 保管と言うより放置だが、父が若い頃に持ち込んだ物も数多くあると言う。

 だからこそ、青鸞は枢木家の、父ゲンブの、そして自分のルーツを探る場所としてここを選んだ。

 

 

「ここは、ボクが産まれた頃には誰も来なくなってたらしいし……」

 

 

 自分は、驚くほど枢木の家について知らない。

 10歳になる前に桐原公の庇護下に入り、10歳に入ってからはナリタにいたので無理も無い。

 ルーツ探し――まだ掃除しかしていないが――その一歩として、枢木のことを知りたい。

 家のこと、父のこと、自分で知って、そして何事かを決めたいのだ。

 

 

「……あら」

 

 

 傍らで雅が首を傾げると、青鸞は柔らかく微笑んだ。

 荒れた洋館に、その静けさに似合わない音が響く。

 自己の存在を主張するかのようなその声は、洋館中に響き渡る――泣き声だ。

 それは、幸運を運んでくれる声。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 書庫整理の手を一旦止めて、青鸞と雅は食堂へと向かった。

 両開きの大きな扉を開くと、彼女達の足元に小さな影がいくつもぶつかってきた。

 

 

「せいらんさまー!」

「せいらんさま、赤ちゃんないたよ?」

「ないたー!」

「うん、聞こえてたよ」

 

 

 しゃがまずに手を伸ばして、抱きついてきた子供達の頭を叩くように撫でる。

 その数人の子供達は、ナリタから連れ出してきた子供達だ。

 キョウトに預けて別れるはずだったのだが、知らない施設に入れられるのが嫌だったらしい。

 どうしてもついてくると言って、引き離せなかったのだ。

 青鸞の状況を思えば、力尽くでも引き離すべきだったろうが……。

 

 

「青鸞さま、榛名さん、お疲れ様です」

 

 

 そしてそんな子供達の面倒を見ているのは、愛沢なのである。

 言うまでもなく民間人だが、彼女は自身の位置でついてくることを表明した。

 かなり希少な部類に入るが、子供達の面倒を見る保母的存在になっていた。

 そして今、そんな彼女の腕には小さな赤ちゃんが抱かれている。

 

 

 生後3ヶ月、だいぶ首がすわって来た赤ちゃんだ。

 髪もすっかり生え揃って手指も良く動くようになった、実際今も目の前に差し出された哺乳瓶を必死で掴むようにしてミルクを飲んでいる。

 どうやら先程の泣き声は、ミルクを催促する泣き声だったらしい。

 

 

「桜~、ご飯でちゅか~?」

 

 

 そして愛沢の傍に寄った青鸞は、何故か赤ちゃん言葉で話しかけた。

 愛沢も雅も苦笑を浮かべているが、青鸞は自分が名前をつけた赤ちゃんに話しかける時はどうしてもそうなってしまうのだった。

 桜、ナリタで産まれたたった一つの命。

 この桜と言う赤ちゃんもまた、本来であれば別れるべき存在であっただろう。

 

 

 ただ、産まれた時に傍にいたためなのかどうなのか……青鸞と雅、あるいは愛沢以外に抱かれると猛烈に泣くのである。

 いつだったか上原が抱っこして壮絶に泣かれてショックを受けていた、山本が爆笑していたのを覚えている。

 まぁ、要するに……情である。

 

 

(近い内に、何とか良い行き場を作ってあげないとね……)

 

 

 もちろん、一番良いのは日本を独立させることだが。

 

 

「青鸞さま、良ければ桜ちゃんにげっぷをさせてあげて頂けますか? 義手では少し難しいので」

「え? あ、うん!」

 

 

 愛沢の気遣いを遠慮なく受けて、青鸞は哺乳瓶をあっという間に空にした赤ちゃんを受け取った。

 縦抱きにして胸をやや逸らし、そこに乗せるようにして桜を抱っこする。

 そしてゆるゆるとあやしながら背中を撫でれば、桜は気持ち良さそうに「う~」と唸った。

 胸の奥がポカポカと温かくなって、少女の面立ちを色濃く残す青鸞の表情に母性の色が浮かぶ。

 

 

 何だかんだ言って、要するに、離れたくなかったのだ。

 ナリタで産まれた命、託された、守らなければならない小さな命。

 桜の存在は、青鸞にそれを教えてくれる。

 

 

「青鸞さま、こちらでしたか」

「……客間、終わった。今日から使えます……」

「あ、有難う、佐々木さんに茅野さん」

 

 

 そこへやや埃で顔を汚した女性兵がやってきて、青鸞は桜を抱っこしながら振り向いた。

 気のせいでなければ、表情の少ない彼女らも桜を見れば僅かながら笑みを見せてくれる気がする。

 その意味では、桜は徐々に中心的な存在になりつつあると言えた。

 

 

 ナリタ戦から2ヵ月半が過ぎて、しかしそれでも青鸞は穏やかな時間の中にいた。

 客観的に見て幸福と呼べる状況なのかはわからないが、優しい気持ちになれる場所だった。

 家や島を探索し、ブリタニア軍の目を逃れて、各地の日本解放戦線の残存拠点と連絡を取りながら己のルーツを探る。

 それは、そんな時間だった。

 

 

 ――――けふ、と、桜の小さな口から可愛らしい音が出た。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 枢木スザクと言う少年は、己の矛盾を自覚している所がある。

 いや、彼はそれを矛盾としてでは無く業として見ている節があった。

 例えば彼は、いわゆるテロリストと呼ばれる人々に「正しいルールに則った贖罪」を求める。

 

 

 しかし翻って、自分はどうだろうかと自問するのだ。

 大きな罪を犯しながら罰せられることもなく、のうのうと生きている。

 それでも名誉ブリタニア人として迫害されている内は、まだ良かった。

 それがナイトメアの操縦者となり、学校にまで行かせて貰って、友人に囲まれて。

 ――――許されるのだろうか、そんなことが。

 

 

「スザク君、ちょっと良いかな?」

「あ、うん、何かな、シャーリー」

「生徒会のことなんだけど……」

 

 

 放課後、教室で鞄に教科書を詰めていた――最初こそ一日で全部捨てられたりと言う嫌がらせを受けていたが、今ではそれも無い――スザクに、シャーリーが声をかけた。

 彼女は明るい笑顔でスザクに話しかけている、だが、僅かながら陰があることにスザクは気付いた。

 それはブリタニア人である彼女が名誉ブリタニア人である彼に話しかけているから……などと言う理由では当然、無い。

 

 

 誰もが知っている、彼女が父を亡くしたばかりだと言うことは。

 ナリタ戦では軍人だけでなく、麓の町にいた民間人も少しだが犠牲になった。

 どうして避難勧告に従わなかったのか、そもそもテロリストの勢力圏の町にどうしてブリタニア人であるシャーリーの父がいたのかはわからない。

 だが結果だけを言えば、シャーリーは父を失ったのだ。

 

 

(ゼロ……そして、青鸞)

 

 

 チョウフで、あの2人は行動を共にしていたように見えた。

 最初から手を組んでいたかはわからない、青鸞の表情などを見ていた限りは彼女にとってもゼロの登場は予想外の様子だった。

 だが、あの2人はナリタにもいた。

 日本解放戦線か黒の騎士団、あるいはその両方の作戦がシャーリーから父親を奪った、永遠に。

 

 

(……僕に、それを責める資格は無い)

 

 

 そう、スザクには誰かを責めたり否定したり、まして断罪する資格など無い。

 少なくとも、スザク自身はそう思っている。

 だから彼はルールに従うのだ、そうすることだけが抜け殻の自分の行動の指針足り得ると信じて。

 

 

(だけど、きっとそれは……間違っている)

 

 

 日本独立、あるいはブリタニア打倒。

 その最終的な目的を達成できれば、いかなる犠牲をも受け入れる。

 そんな考え方ではきっと何も得られない、何故なら。

 彼の目の前に、そう言う考え方で何かを失った人がいるのに――――……。

 

 

「ねぇ、スザク君。ひょっとしてルルと喧嘩でもした?」

「え?」

「だって、今まで生徒会の連絡って、ルルがいる時はルルがスザク君に伝えてたじゃない。それが今日に限って、私に頼むーなんてさ」

「別に、喧嘩なんてしてないよ」

 

 

 そうは言いつつ、スザク自身も今日のルルーシュの様子がおかしいことには気付いていた。

 彼は数日振りに学校に来れたのだが、いつもなら一番に話しかけてくるリヴァル……の横にいるルルーシュが、いなかった。

 授業中に目が合ってもすぐに逸らされるし、スザクが話しかけてもそっけない。

 そして、どこか怒ったような目で自分を見るのだ。

 

 

 正直、ルルーシュがどうして自分をそんな目で見るのかはスザクにはわからない。

 わからないが、彼なりに結論付けていることがある。

 それは……。

 

 

「でも、きっと僕が何かしちゃったんだと思うんだ」

「そんなこと無いよ、きっとルルがわがままなんだよ」

「それは……どうかな」

 

 

 どうやらルルーシュのことが良くわかっているらしいシャーリー、前にそんなことを言ったら真っ赤になって怒っていたので、同じ轍は踏まないが。

 ただ、彼女から見たルルーシュとスザクから見たルルーシュは違う。

 そんな当たり前のことが、今は少しだけ嬉しかった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 スザクが旧友の怒りに戸惑っている頃、同じように戸惑っている少女がいた。

 ただしこちらは、心配と言う感情に晒されていたわけだが。

 心配してくれるのは嬉しいが、それが過ぎると流石に困る、と言う風な。

 

 

「…………」

 

 

 今の気持ちを言葉にしたいが、出来ない。

 現時点のユーフェミアの状態は、まさにそれだった。

 顔には笑顔が浮かんでいるのだが、それは逆に言えば他に何も出来ないと言うことだった。

 

 

「あの、将軍」

「は、何でしょうか、ユーフェミア殿下」

「えーと……これは、どう言うことでしょうか」

 

 

 そう言う彼女は華やかなドレス姿だ、彼女が公務に向かう際に好んで着用するデザインの物。

 ユーフェミアはこれから公務に向かい、ある式典に総督の名代として出席する、それは良い、いつものことだ。

 ただ彼女を取り巻く環境は、いつものことでは無い。

 

 

 ユーフェミアが乗っている黒塗りの高級車、これもまぁいつも通りだ。

 しかしその周囲を取り囲むのはSPが詰める護衛車では無く、装甲車とナイトメアなのである。

 あまりにも無骨で厳重な警備、これまでのユーフェミアであれば拒否しただろう陣容だ。

 少なくとも、エリア11の民衆と分かり合いたいと言う姿勢には絶対に見えないだろうからだ。

 だがユーフェミアにはこれを拒否できない、何故ならこれは総督たるコーネリアの意向だからである。

 

 

「総督も、先日の事件でユーフェミア殿下の身辺警護のレベルを引き上げるべきだと判断したのです。多少窮屈でしょうが、少しの間我慢してください」

 

 

 重厚な声を多少緩めてそう言うのは、ダールトンである。

 ユーフェミアと同じ車内にいる彼は本来はコーネリアの傍にいるべき人間だ、それが今こうしてユーフェミアの傍にいるのは、ひとえに妹の身を案ずるコーネリアの意思による。

 対外的にはユーフェミアの拉致事件は「無かったこと」になっている、である以上ユーフェミアに公務を休ませるわけにはいかない、警備のレベル引き上げは「治安上の理由」で通せる……。

 

 

 そしてダールトン自身も、今はユーフェミアの身辺に気を遣うべきだと判断した。

 ユーフェミアが自前の騎士や親衛隊を持っているのならばともかく、そうでないのであれば、皇宮の警護騎士として幼い頃からこの姉妹を守ってきた自分の役目と自負している。

 故に、ダールトンはここにいるのだ。

 

 

(心配してくれるのは、嬉しいのだけれど……)

 

 

 やりすぎではないか、と思う、素直に。

 そこまでして守ってもらう価値が自分にあるのかもわからないし、何より周囲に威圧を与えるような状態は好みでは無い。

 同時に、自分の好き嫌いで周囲に迷惑をかけるわけにもいかないと思う。

 

 

 ほぅ、とダールトンに気付かれないように息を吐く。

 心配せずとも、少なくともあの少女が今再び自分を攫いに来るとは思えない。

 数時間話しただけだが、皇宮で育ったユーフェミアだ、人を見ることには慣れている。

 その上での判断だ、あのセイランと言う少女はただ自分の仲間を助けたかっただけだと。

 

 

(……悪い人では、なさそうだけど)

 

 

 同年代と言うことを抜いても、そう思う。

 もちろんブリタニア的正義からすれば「悪」だ、テロリストなのだから。

 だが、ユーフェミアは皇族としては奇跡的なことに「ブリタニア的正義」と言うものに絶対性を認めていなかった。

 そもそもエリア11の人々を傷つけたのは、ブリタニアの側では無いか……と言う意識がある。

 

 

 もちろん、だからと言って反体制派を擁護するつもりも無い。

 彼らとて無関係な、罪の無い人間を巻き添えにして自分達の目的を果たそうとしている。

 それを認めることは出来ないし、殺されたから殺すと言う悪循環では何も成せないと信じていた。

 そんなことを繰り返しているから、あんな哀しいことも起こるのだと。

 

 

(スザク……)

 

 

 コーネリアがスザクに踏ませようとした踏み絵は、あまりにも惨い。

 兄に、妹を討たせようなどと。

 そんなもので証明される忠誠など、最初から汚れたものであるに決まっているのに。

 だから、その点に関してはユーフェミアは姉のやり方にはっきりと拒否感を持っている。

 

 

(……騎士、か)

 

 

 しかし、拒否するのであれば代案を提示するべきだった。

 そのための材料を持たない、持たないと信じ込んでいるユーフェミアにとって。

 それは、酷く難しいことのように思えた。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 地外島に来てすでに3日だが、夕食の時間はいつも大賑わいだった。

 人数が食堂の椅子よりも多いため、テーブルをどかして床に小卓を並べる宴会形式になっていること原因の一つだろう。

 食材は基本的に大和たち軍人が獲ってきた山菜や魚介類である、今日で言えばカンパチだった。

 

 

「はーい、浅蜊の釜飯が出来ましたよー!」

「「「おかわりお願いしゃーっス!!」」」

 

 

 特に一日中訓練を積んでいた道場の少年達が元気だった、育ち盛りだけにおかわりのペースが早い。

 貝とお米の詰まった釜の前で、次々と突き出されるお茶碗にエプロン姿の雅がアワアワとしている。

 なお、少年達へのおかわりは兄たる大和のきっちり半分の量であったりする。

 

 

 他にも山本や野村などの軍人男性陣が内地から持ち込んでいた日本酒をカンパチの刺身を肴に飲んでいたり、愛沢が子供達にカンパチの照り焼きを取り分けて食べさせてあげていたり、道場の少女達が雅の手伝いとしてパタパタと食堂と厨房を行ったり来たりしていたり、あるいは「さて、雅も1人じゃ大変そうだし、あボクも腕を振るっちゃおうかな」と言った青鸞を軍人女性陣が羽交い絞めにしたりしていた。

 

 

「ボクだってお料理くらい出来るのに……」

 

 

 食堂の隅でいじけだした少女がこの集団のトップなわけだが、誰も慰めてはくれなかった。

 この問題に対しては、この集団は一致した行動を取るらしかった。

 あとは、朝に男性陣は青鸞の寝室に近付いてはいけないと言う禁止事項があったりする。

 同じ理由で、青鸞を交えての男女混合雑魚寝は不可能であったりする。

 

 

 どちらにしても、賑やかな夕食の風景だった。

 見張りなどの都合で全員が集合することは無いが、それでも大多数の人間がまさに「同じ釜の飯を食べて」いた。

 それは、集団の結束力を高める上で非常に役立つだろう。

 ただ当人達は、そんな思惑など無関係に付き合っているのだろうが。

 

 

「おーしっ、一番山本、歌いまーす!!」

「ら、らいりょ、らふふぇふぃあうぇ~!」

「オイ誰だ上原少尉に酒飲ませた奴! 何言ってるか全くわからんぞ!」

「とにかく山本中尉を注意しようと言う意思は感じられるけどな!」

「ところで、何で魚がカンパチ一択なんだ?」

「……カンパチだけ大量に釣れた」

 

 

 そんな騒ぎが毎夜続く、酷く賑やかな毎日。

 皆で島で取れた美味しいものを食べて、(未成年以外は)お酒を飲んだり、また皆で日本の歌を歌ったりした。

 それは酷く、そう、酷く楽しい時間だった。

 

 

 青鸞にとって、とても居心地の良い時間。

 でも楽しいからこそ、きっと皆がわかっていたこと。

 それは、あくまで今が次に向けた溜めの時間であると言うこと――――。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 夕食の後は、青鸞は決まって昼間に整理した書庫へとこもる。

 ここへ来た理由がそこにあるような物なのだから、当たり前と言えば当たり前である。

 淡く薄暗いオレンジの照明を頼りに、古ぼけた資料を掻き分けては手に取ることを繰り返す。

 たまに本や資料に書き込まれているメモは、父の物だろうか?

 

 

 本の大多数は20年以上前に書かれた古い物だし、資料もまた同程度は昔の日本のデータや事情が記された物だ。

 黄ばんだ髪に書き込まれた文字の筆跡は同じ物なので、もしこれが父の物であるとすれば、非常に勉強熱心な人だったのだなと思う。

 自然、胸の奥が温かくなった。

 

 

「今では、あまり意味の無い書き込みだけど……」

 

 

 何しろ状況がまるで違う、十数年以上前の経済大国の日本はもうどこにも存在しないのだから。

 それでも様々な課題に対する問題点や数字、対処法や国会の議論の状況、官庁の見解への感想と批判、つらつらと書かれたそれらを見ていると、父がどれほどこの国を想っていたのかはわかる。

 心の底から、何とかしたいと思っていたのだろう。

 

 

 キョウト六家や業界団体の都合で作られた規制を改革し、政財界に横行している汚職と腐敗の構図を一掃することで閉塞感に包まれる経済を活性化させ、貧困層の生活水準を底上げしようとした。

 サクラダイト依存型の経済を脱し、それを武器に外交環境を整え、武装中立の国是を守る。

 そんな意思が、書き込みの一つ一つから感じるのである。

 その父が、どうして桐原公の言っていたような暴挙に及んだのか……。

 

 

「あ」

 

 

 その時、青鸞のいる位置から少し離れた位置の本の山が崩れた。

 書庫にはたくさんの本棚やチェストがあるのだが、埃と蜘蛛の糸に包まれた一部が落ちたのである。

 やれやれと頭を掻きつつ、青鸞はそちらへと近付いた。

 ザラザラした床に膝をついて、崩れた本や資料を直して行く。

 

 

「……うん?」

 

 

 その時、気になる物を見つけた。

 崩れた本の中に、本や資料とは違う手帳のような物があった。

 数冊あるらしいそれは、戦争で失われたブランドの革製の黒手帳だ。

 手の甲でパンパンと叩いてはたいてみれば、厚く重なった埃の下に父の名前があった。

 父の手帳だ、それに気付いた青鸞は少しだけ息を止めた。

 

 

「…………」

『今日、国会でわしは首相に選出される、党の長老達の支持も固い、いよいよこの国が生まれ変わる時が来たのだ』

 

 

 手帳ではなく、手記だった。

 先程まで本や書類の上で見た筆跡が、時間の経過でインクが掠れてはいたけれど、確かにそこあったのだ。

 日付は14年ほど前、どうやら父ゲンブが第一次枢木政権を発足させた日のことが書かれているらしい。

 父は60年前の戦争後稀に見る長期政権の首相で、在職7年弱だったと聞いている。

 

 

『政権発足から一ヶ月、我が政権の経済政策が功を奏し、通貨安と株高を演出することが出来た。後はこれが持続させることで失業率と賃金水準の回復に繋げることが出来れば……』

『今日は政財界の重鎮達と政治資金パーティーだった、相変わらず反吐が出そうな空気だったが、今は仕方が無い。だが数年の内に来なくて良いようにしてやる……』

『最近、地方の県連で公共事業関連の利権が……』

 

 

 その頃の事が書かれた手記のページをめくっていくと、その当時の父の状況が目に浮かぶようだった。

 清廉で誇り高い、そんな父の姿が瞼の裏に浮かぶ。

 それに仕事の話ばかりかと思えばそうでも無かった、中には家族のことも書かれている。

 

 

『……息子が3つになった、碌に家に帰れず、寂しい思いをさせている』

『娘がまた夜泣きで従業員に辞表を書かせた、将来凄まじい癇癪持ちに育たないか心配だ』

冬実(ふゆみ)が亡くなってから、わしも寂しい。だが子供達の為にも……』

 

 

 などと、自分や兄、そして母のことを色々と書いてくれている。

 自分に関する部分を見つけると赤面物だが、当時の父が家族を愛してくれていたことはわかる。

 ただ、そう言う部分で何度か目にする名前があるのが気になった。

 政治関連の部分であるならば特に気にしていなかったが、家族関連の所でちょくちょく登場するので気になってしまった、例えば。

 

 

『今日は三木の奴が来た、最近は厳島で悠々とデスクワークに勤しんでいるらしい。羨ましいことだ、わしも出来れば中央の妖怪共から離れて遠方に行きたいものだ』

 

 

 だとか。

 

 

『三木に産まれたばかりの娘の写真を見せてやった、とんだ親ばかだと笑いおった。左遷させてやるからなと言ったら平然としていた、まったく、気に食わん奴だ』

 

 

 とか、である。

 三木、と言う名前は父の手記の割と私的な部分に良く入り込んでくる。

 より古い方へページををペラペラめくって確認してみれば、三木と言うのはフルネームを「三木光洋」と言うらしい。

 軍人らしいのだが、手記だけあって流石に細かい部分までは書かれていない。

 

 

 青鸞自身は三木と言う名前は聞いたことも無いが、手記によると産まれたばかりの頃には会ったことがある……ような、気もする、はっきりしないが。

 ただ兄、スザクの方は会ったことがあるようだった。

 まぁ、そちらも幼い頃の話でスザク自身が覚えているかは定かでは無いが。

 

 

『……最近、疲れが抜けない夜が続いている。政権発足から2年が経ってもこの国は何も変わらない、首相と言う政治のトップに就いても制約が多く、何も出来ない』

『首相に就く前、思えばわしは幸福であった。そして無知であった、何故、歴代の総理が目の前の課題に取り組むこともせず短命に終わっていったのかを知らずにいたのだから』

 

 

 だが12年前の日付になってくると、そうした温かなものはどんどん数を減じていった。

 三木や何人かいた親しい人間の名前は消えて、母の名が書かれることもなく、そして青鸞やスザクの名前ですら見えなくなっていく。

 代わって登場するのは、強力な権力を手に入れたにも関わらず何も変わらないという現実だった。

 

 

 政治の頂点に立っても、その基盤を支えるのは財力を持つ財界の人間達だ。

 財界や業界団体の援助が無ければ政治家はその地位を維持するすることも出来ず、彼らの気を引くために彼らにとって都合の良いように政権と権力を使用させられることになる。

 それはつまり、父が当初求めていた改革とはまったく逆の状況が生み出されていたことを意味する。

 

 

「……父様……」

 

 

 手記が終わりに近付くにつれて、青鸞は胸が締め付けられるような心地になっていった。

 何故なら、そこには人間として擦り切れていく父の姿があったからだ。

 変わらない世界に、国に絶望して、何かを変えようとして手に入れた権力に固執するだけの存在に成り下がっていく父の姿があったからだ。

 

 

 青鸞の記憶の向こうにある父は、あくまで優しい父だった。

 強く、大きく、自負心の強い人間だった。

 だが、青鸞が物心ついた頃にはすでに父は……。

 

 

『民主主義、平等主義とは名ばかりのもの。この国は60年前の戦争でそれを得たが、それは違う、違うように最初から作られているのだから、中から変えられずともむしろ当然だろう』

『明治の時代から、この国は何も変わらない。一部の妖怪じみた妄執者共が権力を独占し、表に立つことなく好きに動かしてきた。今もだ、わしとて同じ運命、奴らに飼われた犬に過ぎん』

『どうせ飼い犬になることを強いられるのであれば、せめて飼い主を噛み殺す犬であろう、それでこそ、わしの人生にも彩があると言うものだろうから……』

 

 

 父は財界の支配者達に、すなわち――――キョウト六家に、自らの家でもあるキョウトの家々を、憎悪していた。

 憎んでいた、自分の家を。

 否、家では無く、キョウトの実質的な支配者である1人の老人。

 

 

「……桐原の爺様……」

 

 

 桐原泰三、ブリタニア戦争以前から日本の財界を支配していた老人。

 父ゲンブ亡き後は青鸞を庇護し、枢木家を継がせてくれ、ナリタで活動するための支援をし、ナイトメアやチョウフでの作戦での援助も行ってくれた桐原公。

 しかしその桐原公は、かつて父の政敵とも言える立場にいた。

 いや、桐原は表に出てこなかったのだから政敵と言えるのかどうか……。

 

 

 桐原公の支配されていたかつての日本、それに絶望した父ゲンブ。

 そして父ゲンブの売国行為に近いブリタニアとの戦争と、それにより自らの権勢を大幅に失うことになった桐原公。

 枢木ゲンブと、桐原泰三の暗闘。

 ほんの僅かだが、7年前の状況が見えてきたような気がする。

 

 

「……だけど、兄様の位置はわからない……」

 

 

 父ゲンブを殺された憎悪は、消えない。

 消しようが無い、それだけ父のことを愛していたから。

 だから、兄スザクのことは今でも憎い。

 名誉ブリタニア人となり、ブリタニア兵となり、日本人を取り締まる側にいる男のことなど。

 

 

 だが、だからこそ思う。

 彼は何故、父を殺したのか。

 7年前の状況が少しずつ見えてくるにつれて、余計にそこだけがぽっかりと空いてしまうのだった。

 ぽっかりと、空洞のように。

 

 

「……わぷっ」

 

 

 本棚に背中を預けて、淡い照明に手記をかざした時、手記の最後の方から何かがポトリと落ちた。

 何かと思えば、これまた古ぼけた紙だった。

 下手をすると手記より古いかもしれない、端々が切れている紙。

 開いてみれば、それは古い地図のようだった。

 

 

 古い地図とは言っても、測量などは現代的な技法に則ったものらしい。

 と言うよりも、より古い地図を現代的な技法で書き直したような痕跡がある。

 そこに描かれているのは海と、島、島の名前は今の伊豆諸島の島々の旧名がいくつか読めた。

 

 

「……? 何、このマーク……」

 

 

 地図の中央付近、地外島や式根島からそう離れていない島の上に奇妙なマークがあった。

 少し掠れているが、少なくとも地図記号では無い。

 そのマークは、言うなれば鳥のような形をしているように見えた。

 ――――羽ばたく鳥のような、マークだった。

 




採用衣装:
ATSWさま(小説家になろう)提供:青鸞と雅の白ワンピース。
ありがとうございます。

 最後までお読み頂きありがとうございます、竜華零です。
 今回は青鸞の父、枢木ゲンブについて掘り下げてみました。
 そしてゲンブ首相のことを考える上で外せないキャラクターの名前も出しました、つまりいつか青鸞と対峙するのでしょう。
 では、次回予告です。


『父様の手記に導かれるように、ボクはその島に来た。

 人のいない世界、静かな場所、穏やかな時間が流れる。

 けれど、それはまやかし。

 穏やかさの裏には、言葉に出来ない「何か」があって。

 ……怖いよ』


 ――――STAGE17:「カミ の いた シマ」

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