私は真夜中に出歩くことを決めた。
臆病な私にはこのくらいしか勇気が出なかったのだ。
学校の友達はどんどん大人の蜜を味わっているのに、私はおいていかれたような気分だ。
そんな気持ちを私はいつも、子供として身の程をわきまえているんだと、自分の心を慰めて、友達の蛮勇に対する羨望をごまかしていた。それでも我慢できなくなって、ちょっと頑張ろうと思ったのだ。
親が寝て一時間がたったころ、私はジャージに着替えて、出かける支度をする。時刻は一時を過ぎていた。家を出ていくとき、勝手口を開ける事にひどく神経を注いだ。私にとっての最大の難関。親にばれてはいないかとびくびくしながら、重いドアを丁寧に、丁寧に開ける。
幸い親の寝室に明かりはつかなかったので、私は成功したと思いほっとした。
とりあえず、近所をあてもなく歩き回った。普段は意識しないせいなのか、ただの好奇心なのか、ともかく、自分の知らない世界に来たように思えた。私は自分の体の赴くままに散策することにした。
知らず知らずに公園に着いた。誰もいない閑散とした公園に何気なく入ろうとすると、目の前に弱々しく光を放つ光源が見えた。私は立ち止まって、それを凝視した。
実際は光源などではなかった。むしろそれは禍々しくあるべきものだった。
私は髑髏を見ていたのだ!!電球に思えた物は、光に反射した真っ白い人間の頭蓋骨だった。
輪郭がはっきりした時、私は呆然としてしまった。だって凡庸な人生において、ましてその中のさらにあか抜けてないような中学生の私が見るはずのないものだから。
そして私は凍り付き、怖くなった。けれど魅了されてもいた。
その躯は真夜中の公園にあるベンチに飾られていた。
ぞんざいに捨てられているようでもなく、一種の置物のように鎮座していた、展示されているようだった。
真っ暗闇の中に街灯の光が一条照らされていて、芸術品のようだった。
私は思わず公園に踏み込もうとしていた、罠にかかりそうになっていた。
あれは誘蛾灯だ。真夜中にドラマを求めてさまよう青少年たちを誘惑する餌だ。
あれに近づいてはいけない。私は、何とかして好奇心を押さえつけようとした。だが「あれは私に何かをくれる」とそう思えてならなかった。一方でこれ以上いると気持ち悪くなる、不幸になることも分かっていた。
私は欲望の葛藤を振り払うためにその場から逃げ出した。全力で走った。
寝静まった住宅街を駆け抜けていくうち、公園から離れていくうちに、こわばっていた体がほぐれていった。
体中がぞくぞくする。全身にひんやりした心地よいコロイドがドロッと流れ込むのを感じた。
これだ!!!
この感覚だ!!!
これこそが私が求めていたものであり、一番のご褒美だった。
私はたまらなくなってその場で笑い出した。
ありえない非現実を求める冒険。アウトローになった気でいる高揚感。
その喜びに、その快感に、この興奮に耐えられなかった。
これはもう、夜更かしはやめられそうにない。私は明日のコースをどうするか考えながら家に帰った。