ロードランは今日も平和です   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 ~前書き~


 気まぐれ更新と言いつつ、週に二回も三回も更新するのはペースが早過ぎると思い、ちょっとゲームに力を入れておりました。
 小説執筆は趣味でも結構大きな割合かと思っていましたが、案外書かなくても平気なもんですね。

 書かないでいた間、エリザベスが宵闇に謀反を起こして新・女王になったら「エリザベス女王」と名乗るんだろうなぁ~、などと考えましたがそんなことはないのでご安心を。
 ちょっとアレな感じになりましたが今回ものんびり平和なロードランを描いていきます。平和とは、つまりまったくそれでよいのだ。

 今回から出てくるDLCの追加エリアは、全部ひとまとめにして『ウーラシール王国』で統一します。


 ◆ ◆ ◆


第十四話:かぼたん、ストレートティーを飲む

 さてさて、ひょんなことから引き籠り騎士の“岩のような”ハベルさんを連れてウーラシール王国にやってきた私ですが、困ったことになっています。

 

 

「ねぇ<かぼたん>さん。やっぱり帰らないかな?

 僕は基本的に肉体労働には向いていないからキツイのは嫌なんだけど」

 

 

「そんな立派な鎧を着込んでおきながらどの口が言いますか。

 勇気と無謀は別物ですが、ここで行動することは勇気です。シャキっとしなさい!」

 

 

 まったく何なんでしょうね、この人は。

 

 昔『楔の神殿』に居た頃、青ニートさんを最初だけデーモン退治に向かわせた実績があるとはいえ、最初からヘタレの人にやる気を出してもらうのはスーパー火防女の私でも難しいですね。

 

 

「僕は臆病だからこれだけ鎧を着こんでいるのさ。

 重い鎧を着ることができるのだって、装備重量アップ効果の指輪をつけてるだけだし」

 

 

「なら、ソウルを稼いでレベルアップしたらいいじゃないですか。

 篝火だってそこらにありますし、なんなら私の中のソウルに触れてもいいですよ」

 

 

「マ・ジ・で!? ……いやぁ~、僕もそろそろ真面目に働こうかと思っていたんですよ。

 過去の栄光(尾ヒレ付きまくってるけど)に縋るのも男らしくありませんからね。

 決して<かぼたん>さんの胸に手を差し込んでヌプヌプしたいからじゃありませんよ!」

 

 

 やる気満々になる分かり易いハベルさん。

 理由はどうあれ頑張ってくれるのはありがたいですね。先に進まなければ話になりませんし。

 

 ちなみにレベルアップは篝火でしてもらうので問題ありません。こんなヘタレに身を許すほど私は締まりの無い女じゃないですもの。

 

 がっかりするハベルさんの顔が浮かんで思わず笑ってしまいそうになりますが、それは先の楽しみにとっておきましょう。

 

 

「うおおおおおおおおおおおお! 震えるぞソウル! 燃え尽きるほど呪術! 刻むぞ出血の『血が出た!』」

 

 

 ハベルさん独自の気合い入魂の口上。ここロードランでは出血すると空中に「血が出た!」の文字が浮かびます。

 

 ロードラン七不思議の一つ。

 

 

「さぁ、行こう! <かぼたん>さん!

 宵闇ちゃんに大好きと言ってもらえる位の強い男になるために!」

 

 

「強くなったところで、そうなる可能性は皆無でしょうけどね」

 

 

 やっとこさヒュドラさんの湖に出来ているタイムホールをの先、ウーラシール王国への第一歩のスタートです。

 

 時間の壁を超えるというのは初めての経験なので緊張しましたが、ハベルさんには緊張なんて感情はないのでしょうね。一人先走ってしまいます。

 

 それも数多くのデモンズソウルを取り込んだ私でさえ追いつけない速さで。

 

 

「美人のお姉さんに連れられて~♪ や~ってきましたウーラシール王国~♪ ひゃっほー♪」

 

 

「ちょっとハベルさーん。一人で先走ったら殺されちゃいますよー!」

 

 

 さらに加速するハベルさん。重い鎧を着込んでいながら軽快にけるのは、指輪の能力というよりはエロパワーなんでしょうね。

 

 霧を抜け、このまま走り抜けて宵闇さんに会いに行ければよかったのでしょうが、そうはいかないのがお約束。

 

 ハベルさんは何者かに突き飛ばされたらしくこちらに向かって飛んで返って来ました。

 

 

「<かぼたん>さん受け止めてぇぇぇ~~~!」

 

 

「嫌です(ひょい)」

 

 

 勿論避けましたよ。ええ避けましたとも。受け止めてあげたりするはずがないじゃないですか。

 

 どうせ、ハベルさんなら鎧のおかげで大した怪我ではないでしょう。

 

 本当に問題なのは、ハベルさんを吹き飛ばし、今にも尚こちらに飛びかかろうとしている目の前の相手です。

 

 

「ぎゃおー☆」

 

 

 私たちの前に現れたのは何と言いますか、いかにもなデーモンでした。羽のある獅子?

 

 

「ひっ、ひぃぃぃぃぃ~~~!」

 

 

「落ち着いてくださいハベルさん。

 見た目はデーモンちっくですが、案外話せば分かってくれるかも「ぎゃおー★」……くっ!」

 

 

 デーモン? の電撃攻撃。

 

 どうやら話し合いは出来そうにないですね。

 

 私の中のデーモン洞察力で観察してみたところ、このデーモンの名前は<霊廟の聖獣>さん。

 

 以前、樹人さんが言っていた危険極まりないデーモンです。

 

 私一人なら楽な相手ですが、今の私には恐怖におののいたハベルさんがしがみ付いているので防御も取りにくいですし、普通なら絶対絶命のピンチでしょう。

 

 ですが! お伽噺などで可愛らしい女の子がデーモンに襲われるのが宿命なら、勇敢な戦士が助けに来るのもまた宿命。

 

 この場に私でもハベルさんでもない、新たな救世主が現れてくれたのです。

 

 

「おのれ<霊廟の聖獣>め!

 決闘の最中に女性を襲うとはけしからん! 私の約束された勝利の弩(スナイパークロス)で消し飛ぶがいい!」

 

 

 声の主はロングハットを目深に被り、ロングコートを翻しながら颯爽と登場。

 

 それと同時に殺意の気迫がボルトという形でクロスボウから繰り出されます。

 

 

「ぎゃおー★☆」

 

 

 しかし素早い移動速度で全て回避する<霊廟の聖獣>さん。これが獣の本能にデーモンのソウルが混ざった結果なのでしょう。

 

 生まれながらの強さそのものです。

 

 

「避けるとは小癪な。

 これまでに私の攻撃で貴様が傷を負った数およそ2万846箇所。引き分けること6413回。

 これまで繰り返された勝負もこれで終いだぁぁぁー!」

 

 

 目にもとまらぬ足運びで距離を詰め、クロスボウで……殴った?

 

 

「ちぃえええーーーい!!!」

 

 

 あまりの気迫に<霊廟の聖獣>さんは勿論、私までも気押されてしまいます。あ、ハベルさんは失禁しながら失神しました。

 

 

「ちぇちぇちぇちぇちぇちぇちぇちぇちぇちぇちぇ……、素晴らしいチェェェェェェースタァァァァァー!!!!!」

 

 

 最後に特大の気合いと共に放たれた一撃は<霊廟の聖獣>さんの脳天を叩き割り、噴き出した血が大地を赤く染めます。ですが致命傷ではなかったようですね。

 

 元々、生物の常識が当てはまらないのがデーモンです。脳を潰されてもソウルさえあれば幾らでも再生可能だからこそデーモンなのです。

 

 

「ぎゃ、ぎゃおぉ~★」

 

 

 <霊廟の聖獣>さんは自身の不利を悟ったのか、そのまま去っていきました。モフモフしたかったのに残念です。

 

 

「無念だ。ようやく永きに渡る奴との戦いに決着だと思ったのだが実に無念。あ~無念だ」

 

 

 無念と言いつつ顔は笑っているのは人には分からない因縁でもあるのでしょうね。

 

 デーモンと人間の戦いによる絆……、何だか熱い物を感じます。

 

 

「おっと、そう言えばそこの女性。ご無事でしたか?」

 

 

「あ、はい。助けていただきありがとうございます。

 私は観光でやってきた<かぼたん>と言います」

 

 

「クックックッ、近頃の若者にしては実に礼儀正しいお嬢さんだ。

 私は“素晴らしい”チェスター。これでも商人をしている」

 

 

 チェスターさんは帽子同様に深々とお辞儀。私もそれに合わせます。

 

 随分と紳士的な方ですね。

 

 

「さて、とりあえず私の家にでも来るかな?

 君はともかく、後ろの彼はすぐには目覚めそうにないからね」

 

 

「あ~、別にこの人は気にしなくてもいいですよ?

 私は観光のついでにこの人をウーラシール王国に連れて行くように頼まれただけですから」

 

 

「君が良くても私が気にするからね。

 仮にもこの地を管理する者として、どんな人物であれ、気絶した客人を放置するのは礼に失する行いだ」

 

 

 そう言うとチェスターさんは、気絶したハベルさんを軽々と担ぎあげて歩きだします。

 

 フルハベル装備のはベルさんを担げるだなんて、この人も相当なソウルの持ち主ですね。

 

 

「ところで、チェスターさんってここのエリアボスなんですか?」

 

 

「クックックッ、私がエリアボス? それは無いさ<かぼたん>嬢。

 ウーラシール王国は広いから複数のエリアボスが管理しているが、それでも私はどのエリアも管理なんてしていない。

 ただまぁ、私の家がある付近のエリアボスは“黒竜”カラミットというドラゴンだから、書類仕事は私がやっているがね」

 

 

 チェスターさんの案内の元、私たちはお宅訪問の流れとなりました。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「さぁ、ここが私の家だ。何もないところだが入ってくれ。

 とは言っても、少し前までここに住んでいたアルトリウスという男が引っ越したのでそのまま貰い受けただけなのだがね」

 

 

「あ、アルトリウスさんにはここに来る前に会いましたよ。

 シフちゃんをモフモフしながらキアランさんに愛ゆえに殺されかけていました」

 

 

「クックックッ。そうか、奴を知っているのですか。

 アルトリウスの奴が相変わらずのようで何よりだ。

 茶でも入れるからその辺でくつろいでいてくれ」

 

 

 チェスターさん家の闘技場のようなリビングは、椅子もソファーも何もないので床に座り込みます。

 

 ハベルさんを端っこに投げたチェスターさんは台所に向かったのでしょう。それにしてもこの家のリビングって広いですね。

 

 しばらく床に転がっている小石を積み上げながら遊んで待っていましたが、チェスターさんではない気配が入って来ました

 

 

「ほう、訪問者とは珍しいこともあるものだ」

 

 

 声の主は目を樹脂のようなもので潰された兜を被った見上げるほどに大きな巨人。

 

 

「あ、どうも始めまして。

 チェスターさんに誘われてお邪魔しています。観光客の<かぼたん>と言います」

 

 

「ほう、チェスターの奴が人を招き入れるというのも珍しいが、久し振りの観光客が女性というのも珍しい。

 私はかつて騎士をしていたゴーと言う。

 と言っても、とうの昔に隠居しているから今じゃただの道楽ジジイだがな」

 

 

 騎士のゴー、と言いますと四騎士の一人“鷹の目”ゴーが有名ですが、こんなところに居たんですね。

 

 でもアルトリウスさんやキアランさんも少し前までここに住んでいたってことは、この建物は四騎士の共同で住んでいたのでしょうか?

 

 

「ふむふむ、なるほど。

 お嬢ちゃんはアルトリウスやキアランにも会ったことがあるのか」

 

 

「……もしかして読心術ですか? 私、声には出していなかったはずですけど」

 

 

「盲目キャラは読心術スキルがデフォで備わっているものだからな♪

 私も伊達に長生きしている訳ではないということだ。

 まぁ、それはお嬢ちゃんにも言えることだろうが」

 

 

「目で見ずとも私の目が潰されているのを感じ取れるだなんて、ゴーさんは読心術に加えて空気の振動で相手の顔の造形も感じ取れるんですね。

 流石と言いますか、むしろ目が見えないことで感覚が鋭くなる人だなんて自分以外で初めて会いました」

 

 

 自分以外に目が見えないことをプラスに考えている人に出会えるだなんて旅はするものですね。

 

 しばらく盲目あるある系の話でゴーさんと盛り上がったところでチェスターさんが戻って来ました。

 

 

「お、ゴーさんがこっちに来るだなんて珍しいですね。

 ティーカップは余分に持ってきているので良ければお茶飲みますか?」

 

 

「ここに来たのは通りすがりに人の気配を感じてな。

 こんなところに観光に来る物好きがどんなものかと思ったのだ。

 あと、お茶をもらおうか」

 

 

 静かにカップにお茶を注ぎ、さりげなく感謝の言葉と共に受け取るゴーさん。

 

 ゴーさんとチェスターさんの関係って、男同士の友情って感じでカッコいいですねぇ~♪

 

 アルトリウスさんやキアランさんがちょっと道を踏み外した系の人たちだったから、実は四騎士は変態揃いなのでは? なんて考えていましたがあの二人が例外だったのでしょう。とても良さそうな人たちです♪

 

 

「<かぼたん>嬢。お茶はストレートですか? ミルクと砂糖もありますが」

 

 

「お菓子がケーキなど甘いものなら紅茶はストレートでください」

 

 

 さて、それじゃゴーさんが良い人と分かったところで、チェスターさんの観光客向けの武勇伝でも聞きましょうか。

 

 あ、ハベルさんは未だに気絶中です。眼が覚めないようならこのまま放っといて進んでもいいんですけどね。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ~おまけ~ 『チェスターの昔話』

 

 

 むか~しむかし、ある村にチェスターという名の一人の若者がおりました。

 

 チェスターは豊富な知識と持ち前の武の才能を活かし、村の誰からも頼られる存在でした。

 

 ですがそんなある日、一人の旅人がチェスターの暮らす村を訪ね、それがチェスターの運命を大きく変えることになったのです。

 

 

「ちぃえええーーーい!」

 

 

 巨大な岩をバターのように切断する剣術家。

 

 旅人の名は西里 新十郎。遠く東の国から来た侍と名乗った。

 

 その剣術を一目見たに若き日のチェスターは惹かれました。

 

 西里の剣は才能だけじゃない。来る日も来る日も積み重ねてきた修錬による技術。

 

 西里に出会って初めてこれまでの自分が自惚れていたことに気づくチェスター。

 

 また西里は学問にも精通し、たまたま立ち寄っただけの村に多くの知識で発展に貢献した。

 

 学問も武術も到底敵わない、そう思ったことでチェスターは西里に弟子入りすることにしたのです。

 

 

「インストラクション・ワンだチェスター。

 なんかこう、とりあえず頑張れ!」

 

 

「はい、師匠!」

 

 

 西里は才能と努力を極限まで修めた猛者だったが、人に教えるのは苦手だった。

 

 しかしチェスターもまた才能を持つ天才であり、努力の方法は分からずとも、師匠を得たという感覚だけで格段にクロスボウの腕を上げていく。

 

 そうしている内に師匠である西里は村を去り、残されたチェスターは一人で修行を続ることになった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ……どれほどの年月が経ったか。来る日も来る日も立木打ちを続け、愛用のスナイパークロスがとうとう折れてしまった時のことだ。

 

 チェスターは折れたスナイパークロスの中に一枚の手紙が入っていることに気がついた。師匠からのようだ。

 

 

『この手紙を読んでいるということは、ついにお前はクロスボウが折れるまで立木打ちを続け、修行を修めたということだ。

 これより先は人と接し、人を助け、その行いを修行とせよ。私の“素晴らしい弟子”チェスター』

 

 

 その後チェスターは旅を続け、その道中で知り合った“鷹の目”ゴーに、拾った楔石の原板で折れたスナイパークロスを修復をしてもらい、自らを“素晴らしい”チェスターと名乗るようになった。

 

 尊敬する師匠は遥か高みにいる。生涯追いつけないかもしれない。

 

 だがチェスターは努力をやめなかった。

 

 今諦めるくらいなら、もっと前に諦めている。そんなチェスターだったのなら、師である西里は弟子入りを認めなかっただろう

 

 いまだ未熟。それが自身への評価。決して満たされることのない戦いの道でチェスターはこの先何を見ることになるのだろうか。

 

 その答えの一端でも知れればという思いから、今日も<霊廟の聖獣>を追いかけるのであった。

 

 

 




~後書き~

 チェスターの二人称は「貴様」ですけど、紳士的な設定にしたので初対面の女性にこれもどうかなぁ~と思ったので<かぼたん>には丁寧ということで。

 ここのエリアボスは一応アルトリウスですが、居ないのでカラミットがボスです。

 でもアルトリウスややキアランが居ても元々が大したことしていなさそうなので、ここの森のエリアボスはカラミットでも、事務仕事はチェスターということで成り立っています。

 今プレイ中の『神パラ』がついにラスボス戦まで来ているのでもうしばらくゲームを優先します。

 今回の更新は休憩がてら書いたらそのままの勢いで書きあがっちゃったので投稿しただけですので次回も1週間くらいは少なくともゲームにかけます。

 来週には『ディスガイアD2』も出ますからね。備えよう!
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