ロードランは今日も平和です   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 ~前書き~


 プレイ中のゲームが終わったのでサクッと書きあげました。

 今作のサブタイは女性の名前で統一しようと思っていましたが、<かぼたん>よりも宵闇よりもハベルがメインの話なので今回は特別ということで。

 それと深淵カップルのキャラ設定はちょっとえげつないことになりましたのでご注意を。


 ◆ ◆ ◆


第十五話:ハベル、クールに去るぜ

 陽気な住人の方たちに笑顔で挨拶をし、足を進めたのは数分前のこと。

 

 時間帯に関係なく常に薄暗い建物へと進み、その場所よりもずっと深い場所――『深淵』。

 

 現在私がいるのはウーラシール王国の中でも飛び抜けて怖いホラースポットっぽい場所です。

 

 

「いらっしゃいませ~♪ 『深淵』は日の光も入らない真っ暗な場所なので虫型ライト付きヘルメット<太陽虫>のレンタルをしておりますがどうします?

 一回500ソウルです♪」

 

 

「あ、私は呪術の炎が使えるので結構です」

 

 

 雰囲気ありげなテーマパーク『深淵』ですが、入口の受付が大きく恐怖感を減らしています。

 

 これではこの暗くて何か怖いものが出そうな雰囲気が消えちゃうでしょうに。

 

 

「奥へ行けば自然と恐怖は取り戻せますから問題ないですよ。

 それに『深淵』の入口受付は自然とテンションあがっちゃうんですよね♪」

 

 

 と、語るのはここで働いている従業員のエリザベスさん。

 

 女王から厚い信頼を受け、『深淵』の受付係をしていると語るキノコ頭の女性です。本当にこの国ってキノコ頭がはやっているんですね。

 

 本人は女王直属の王国大幹部だと言っていますが、国の運営に最も関係なさそうな場所で受付職員をさせられているあたり、(てい)のいい厄介払いにしか思えないんですけど。

 

 

「この大幹部の私が見送らせてもらいます。

 どうぞ『深淵』を楽しんで行ってくださいねー♪」

 

 

 幸せそうな彼女に言う必要はないですね。受付でも一生懸命に働いて女王様に恩義を返そうという心意気はいつかは伝わってきますし。

 

 それにしても、はて? 何か忘れているような……。

 

 

「そ、それは(はぁはぁ)、僕のことじゃないですか!?(ぜぇぜぇ)」

 

 

「あ、前回お世話になったチェスターさん家に置いてきたはずの“岩のような”ハベルさん。

 目を覚ましたんですね」

 

 

「僕を宵闇ちゃんに会わせるのがあなたの役割なのに(ゴホッゴホッ)、何で僕を置いて行っちゃうんですか!(げはげは)

 それにチェスターさんもゴーさんも、冷たい石の床に僕を放置して毛布の一枚もくれなかったから大嫌いだ!(ぜひーぜひー)」

 

 

「とりあえず息を整えて落ち着いてはどうですか?

 はい、飴ちゃんでもどうぞ」

 

 

「……どうも」

 

 

 息も絶え絶えのハベルさんに飴玉をプレゼント。

 

 『病み村』に逗留していた時に料理長のミルドレットさんに習った料理スキルはこんなところでも役に立ちます。

 

 

「おぉ! この飴玉は固い……いや硬い!?

 “岩のような”僕は飴玉は噛み砕くのが好きなのにまったく噛み砕けない!!

 何なんですかこの飴玉は!?」

 

 

「ふふふ、これは『病み村』名物<混沌の娘>ちゃんの産んだ卵のソウルを凝縮して、私のソウルを混ぜ固めた飴玉です。

 舐め溶かすことは出来ますが、ドラゴンであっても噛み砕けないでしょう」

 

 

 歯ごたえはハベルさんの鎧以上。“鉄のような”と表現できるほどの固さです。

 

 それでいて舌の上に立つシャッキリポンとした上品な味。

 

 材料の良さもあるのでしょうが、先生としても優秀な世界レベルの料理人“人喰い”ミルドレットさんの腕こそが美味しさの秘訣!

 

 

「それはさておき、何で付いて来たんですか?

 私がヒュドラさんに頼まれたのは一緒にウーラシール王国へ行くだけですけど」

 

 

「恥ずかしいからに決まってるじゃないですか!

 結婚する前からまともに話しかけられなかった宵闇ちゃんは、すでに人妻なんですよ!?」

 

 

「結婚した時点で普通は諦めるものですけどね。

 度胸があるのか無いのか分からない人ですね」

 

 

「お願いします! 側で見守っていてください!!」

 

 

「ある意味、男らしいですね」

 

 

 鎧の内側に忍ばせているプレゼントの量で答えは予想は出来てましたけどね。

 

 宵闇さんの誕生部やクリスマスに渡そうとして毎年渡せずにいたんでしょう。

 

 

「きっと<かぼたん>さんが側にいれば怯えること無く宵闇さんに告白出来るはず!」

 

 

「これまでに告白しようとしたときに付き添いで誰もいなかったんですか?」

 

 

「……ヒュドラがずっと付いていてくれたけど、いつも言えなかった」

 

 

「じゃあ私が付いて居てもまた言えないのでは?」

 

 

「……」

 

 

 ふぅ、何故人は幸せがすぐ傍にあるということに気づけないのでしょう。

 

 ずっと付添ってくれているヒュドラさんがいるのに、この人ったら全く。

 

 どうなるかは分かりませんが、ここまで来たらハベルさんの覚悟も決まると信じて先に進みましょうか。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 奥へ奥へと進み、私達が見たものとは!

 

 

「あ、ハベルさんですぅ~。お久しぶりですぅ~♪」

 

 

 意外ッ! 出迎えてくれたのは宵闇さん!!

 

 いえ、意外だったのは彼女が出迎えてくれたことじゃないんですけどね。

 

 

「……」

 

 

「あれぇ~? ハベルさんどうしたんですぅ~?

 私とダーリンの新居が整ったから遊びに来てくれたんですよねぇ~?」

 

 

 ハベルさんの視線は一点に釘付け。それすなわち宵闇さんのお腹。

 

 

「ん~? あぁ、このお腹ねぇ~♪

 私ねぇ~、赤ちゃん出来たみたいなのぉ~♪」

 

 

「……」

 

 

 そう。宵闇さんは人妻。だから子どもが出来ていてもおかしくないんでしょうが、万に一つもハベルさんが惚れられる可能性が無くなってしまいました。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ~~~~~~ん!!!」

 

 

 哀れ、あっという間に走り去る“岩のような”ハベルさん。

 

 足を踏み外して深淵にのみ込まれなければいいですけど。まぁ、放っておきましょう。

 

 

「あ~、えっとすいません宵闇さん。

 私はハベルさんの付添いで『深淵』観光に来た<かぼたん>と言います」

 

 

「あらぁ~、どうもご丁寧にぃ~♪

 もしかして<かぼたん>さんはハベルさんの奥さん?

 あの人、ヒュドラさんと結婚するかと思っていたんですけどぉ~」

 

 

「いえ、私とハベルさんは決してそんな関係じゃありません。

 あとヒュドラさんは彼と継続中です」

 

 

「やっぱりぃ~? ハベルさんとヒュドラさんってお似合いですよねぇ~♪」

 

 

 のんびりした口調が『深淵』に似つかわしくはありませんが、この人がここのエリアボスの奥さんでいいんですよね?

 

 

「ところで宵闇さん。マヌスさんはどちらに?

 ハベルさんを連れてくるのはオマケで、私の目的は観光なんで一度会っておきたいんですけど」

 

 

「はいはい、ダーリンなら家にいますよぉ~♪

 いま仕事が忙しくてなかなか出られないんですけどぉ~、良ければ寄って行ってください~♪」

 

 

 観光の目的その1:突撃お宅訪問!

 

 この大きなウーラシール王国と深淵の管理をしているマヌスさんは一体どうんな人なんでしょうか。

 

 早速向かってみようと思います♪

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「みんな~、マヌスの完璧魔術教室はじまるよー!

 先生みたいなソウルを目指して、頑張っていってねー!」

 

 

 入室した私を出迎えたのは『深淵』のエリアボス、マヌスさんの妙にテンションの高いセリフでした。

 

 

「マヌス先生~、この問題が分からないです」

 

「どれどれ。あー、この魔法は光をピカーっと集めるように発動するんだ。

 ウーラシールの魔術の源は光にあり!

 先生くらいになると、魔術『照らす光』で深淵を昼間の屋外みたいに照らせるからね♪」

 

 

「マヌス先生、魔術『見えない武器』を掛けてもそもそも武器が持ちあげられませーん」

 

「自分の筋力に合った武器を選びなさい。

 この魔術は武器を見えなくするだけで、地面に引きずったら普通に音が出るからね。

 先生のお勧めは『大王の大剣』だな。特に金髪シニョンの女の子が使うとときめく!」

 

 

「マヌス先生! 魔術『見えない武器』を改良して『見えない防具』が出来ました! 未完成ですけど」

 

「君は実に勤勉な学生だね。

 先生も若い頃は何度も研究したが、それでも靴と靴下を消すのが精いっぱいだった。

 だが諦めるな少年よ! いつの日か防具を全部消せる日も来るだろう!!」

 

 

 ……これまでも色々なエリアを見て回り、そのエリア独特の名物などがありましたが、魔術教室を開いているエリアボスってのは初めてですね。

 

 それも変態っぽいエリアボスだなんて。

 

 

「おや、愛しのハニー。おかえり♪」

 

 

「ただいま~、ダーリン♪

 あなたにお客さんが来ているわよぉ~♪」

 

 

 ちょっと宵闇さん! この状況で紹介されても、こちらも対応に困っちゃいますけど。

 

 あ、目が合っちゃった。

 

 

「えっと、はじめましてマヌスさん。

 観光で訪れた<かぼたん>と言います」

 

 

「……ふつくしい」

 

 

 へ?

 

 

「おいィ? ハニー。こんな美しい女性をどこで見つけてきたんだい!」

 

 

「ふふぅ~、散歩中にばったりとぉ~♪

 前に住んでいた場所のご近所さんと一緒に来たみたいよぉ~」

 

 

「流石は愛しのハニーだよ。

 散歩中に美女を拾う。稀によくある展開だがこのマヌス、一度たりともそんな経験はないので羨ましい!」

 

 

 最初に宵闇さんに会った時から違和感を感じていましたが、どうにもこの二人の頭の中はとても愉快なんでしょうね。

 

 テンションに付いていけません。

 

 

「それよりぃ~、<かぼたん>さんにハベルさんへの伝言を頼みたいんですぅ~♪」

 

 

「……なんでしょう?」

 

 

 口調を変えずに声色に狂気をにじませている宵闇さん。

 

 これは何やら嫌な予感がしますね。

 

 

「いい加減、あの変態に私の周りうろつくなって言ってもらえるぅ~?

 ちょ~っと優しくしただけでつけあがっちゃってぇ~、マジで死んでほしいって思ってるんですぅ~♪」

 

 

「おやハニー。もしかして例の“岩のような(笑)”が来ていたのかい?

 ハニーと籍を入れてしまえば誰も干渉してこないと思っていたのに未練がましい男だ」

 

 

「その男ってのはハベルさんのことですよね?

 もしかして宵闇さん、彼の好意に気づいていたんですか?」

 

 

 ハベルさんは臆病でバカでスケベで、どうしようもない引き籠りでしたけど、それでも悪い人ではありません。

 

 出来れば私の質問を否定してほしいですが、宵闇さんもマヌスさんも揃ってハベルさんという一人の人間を見下していました。

 

 

「私たちぃ~、ず~~~っと前から愛し合ってたんですぅ~♪

 なのにあの変態が勇気もない癖に追いかけてきて、のらりくらりと避けるのも大変だったんですよぉ~?」

 

 

「それはハベルさんの告白が上手くいかないのは彼の臆病さだけでなく、あなたが告白出来ない状況を作り続けたから、ということでしょうか?」

 

 

「正解ぃ~♪ あの変態、空気を読むのは上手いから、告白が無粋になりそうな空気を作れば引っ込んじゃうんですぅ~♪

 自分の幸せよりも、場の空気を壊さないことを優先するだなんて愚図な男ですよねぇ~♪」

 

 

「HAHAHA♪ ハニーは正直だなぁ~。

 だが安心したまえ。このマヌス、次にあの変態が来ようものなら容赦せん!」

 

 

「……」

 

 

 私には彼らが本気でそう言っているのが分かり、何も言えませんでした。

 

 デーモン洞察力で二人の心を覗いた時、自分たちの幸せ以外、何も考えていなかったのですから。

 

 

「……それでは私は帰ります。

 色々と学ばせていただきありがとうございました」

 

 

「ばいび~♪ ウーラシール王国は深淵のソウルを使ってますます発展していく予定だからまた遊びに来てねぇ~♪」

 

 

「そうとも! 深淵のソウルを取り込んだこのマヌスとハニーには跡取りまでちゃんと生まれる予定!

 未来は明るいバラ色だ!」

 

 

 振り返ることなく来た道を帰ります。本当は何一つ学ぶべきところなんてなかった『深淵』。

 

 

 その帰り道、しゃがみ込んだハベルさんの姿を見つけました。

 

 

「やぁ、<かぼたん>さん」

 

 

「ハベルさん、もしかして私とあの人たちの会話を聞いていたんですか?」

 

 

「うん、聞いていたよ」

 

 

 鎧兜を身に付けているので表情は分かりませんが、とても悲しそうな声でハベルさんは言いました。

 

 

「正直な気持ちね、僕は彼女が幸せならそれでいいんだ。

 最初は、この真っ暗な『深淵』に臆病な僕が訪ねていけば見直してくれると思って来たけど、それすらも迷惑なら僕は帰るよ」

 

 

「それでいいんですか?

 ハベルさん、まだ宵闇さんのこと好きなんですよね?」

 

 

「それでいいんだ。

 なに、好きな人と一緒になれないのには慣れてるよ。

 昔、グウィンと一緒に古竜と戦った時もそうだった」

 

 

 彼は言います。大昔、好きだった女性が古竜に殺されて復讐のために戦っていた時のこと。

 

 伝説の騎士となった“岩のような”ハベルさんに残されたものは何もなかったこと。

 

 どんな時でも人の幸せを自分のことのように喜ぶことで悲しみを忘れようとしたこと。

 

 

 そのどれもが今のハベルさんを構成し、奮い立たせている儚い希望であること。

 

 

「僕はね、<かぼたん>さん。

 宵闇さんの本心が聞けただけでここにきて良かったと思ってる。

 僕の本心は彼女の幸せだけだからね」

 

 

「……」

 

 

 ハベルさんも嘘偽りなく本心からその言葉を口にしていました。私もここまで正直に心をさらけ出されると口を閉じてしまいます。

 

 それから帰りの道中は一言も話さず、重い空気の中私たちは『狭間の森』の湖に帰って来ました。

 

 途中、ゴーさんやチェスターさんにも会いましたが、彼らは空気を読んでくれたのか、黙って見送ってくれました。

 

 

「おかえり、ハベルはん。どうだった?」

 

 

 帰ってきた私たちを出迎えてくれたのは、出掛ける前と同じく笑顔のヒュドラさん。

 

 

「うん、ただいまヒュドラ。駄目だったよ」

 

 

「ほぉか……、元気出しぃや?

 今晩は腕によりを掛けて美味いもん作ったるからな」

 

 

 暖かく出迎えてくれたヒュドラさんと配下のゴーレムさんたちに癒されたハベルさんは笑顔でご飯を食べ、その日は早くに寝ました。

 

 少し、寂しそうに笑いながら。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「<かぼたん>さん! 一晩寝ながら考えましたが僕、今度は魔術師として勉強して恋を鍛え直します!」

 

 

 翌朝、完全復活したハベルさん。

 

 

「あなた“岩のような”って言われているのに、そんな魔法なんて使えるんですか?」

 

 

「勉強すればきっと……いつか……」

 

 

 ぷっ、もじもじしている姿が可愛らしいですね。宵闇さんには分からなかったようですが、ヒュドラさんが彼に惚れこんでいる理由が分かった気がします。

 

 

「それじゃ、しばらく私が魔法を教えてあげますよ。

 ハベルさんは脳筋ですし、『反魔法領域』という奇跡を学べば戦略に幅が広がると思います」

 

 

「それ魔術じゃなくて奇跡じゃね?」

 

 

「そうとも言えますね♪」

 

 

 こうしてロードランに来て二人目の私の弟子となったハベルさんは今日も幸せそうに笑うのでした。

 

 次こそはヒュドラさんと幸せになってくださいね♪

 

 

 




 ~後書き~


 たまにはこんなお話もありかな? いつもとノリを変えて書いてみました。

 結果としてマヌスと宵闇が悪い(?)人になっていますが、こういう解釈もありでしょう。人の数だけフロム脳。

 最初ただのヘタレとして書いていたハベルですが、これで少しは漢度が上がった気がします。

 今後の出番はどうなるか分かりませんが、彼には彼の人生があるということです。下り坂だけの人生なんてないですからね♪

 あと、シフを出すのを完全に忘れたので後付け設定をここで書きますが、シフはアルトリウスが未来へ行く時に一緒に付いていき、大狼の方のシフと融合して可愛さ×大きさ(威厳)=さらに最強になったということで。
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