日本一ソフトウェアの主人公になれないことで有名なキャラ――アサギがライブをやるそうですね。
その記念ということで書き始めました。……が、少し長くなったのでまたも分割の上下構成です。
結局アサギは主人公になれませんでしたが、主人公になれない属性のキャラなので、彼女が主人公になる日は来ないのでしょうね。
あと、日本一ソフトウェアのファンの私でさえ、アサギ=対魔忍のイメージがあります。(未成年の方は「対魔忍」での検索はご注意を)
今回はイザリスを混沌一家に進めてもらうので<かぼたん>の出番はお休みです。なので三人称重点!
『混沌の廃都イザリス』と『エレーミアスの絵画世界』は基本的に「イザリス」と「エレーミアス」と表記します。
それと今回の投稿は先に後編を投稿するというミスをしてしまいました。
すぐに直しましたが、投稿直後に後編を先に読んでしまった方にはご迷惑をおかけしました。
◆ ◆ ◆
季節が変われば気温の寒暖や、木や花の姿も移り変わるもの。
それはここ『病み村』でも同じだが、ほんの少ししか離れていない場所に四季とは無縁の場所がある。そこは『混沌の廃都イザリス』。
そちらに関しては後で語るとして、今はまず、『病み村』のいつもの日常風景から語っていくとしよう。
◆ ◆ ◆
「郵便デース♪」
「ご苦労さまでーす♪」
『病み村』のエリアボス、クラーグの住む家の玄関掃除をしていたミスズは郵便配達員から一通の手紙を受け取った。
「あ、差出人は<かぼたん>さんですか。
これは朝から妹様やクラーグ様もお喜びになりますね♪」
軽い性格ながら実は優秀な門番のミスズだが、手紙を主に届けるという最優先事項が出来たことで玄関掃除は途中止め。
クラーグに次ぐ権限を持つ、直属の上司のミルドレットに怒られるかもしれないが、他で挽回すればよいと考えているのでミスズは基本的に失敗を恐れない。
むしろミルドレットになら叱られても良いと考えている。
「クラーグ様~、お手紙ですよ~♪」
ノックもせずに主の部屋に入室。
これでも一応門番なので、来客中であればキチンとするが基本的にはしない。軽い性格だからだ。
「ん、ん~……誰からだい?」
この地の住人皆に慕われる偉大なるボスは言う。
バランスボールに乗ってインナーマッスルの鍛練をしながら。それでこそ混沌を極めし魔女、クラーグ。
この従者にしてこの主あり、と思うかもしれないが、その表情は涼しげでカリスマに溢れている。
まさに王者の風格というのはどんな時でも発揮される例の最たるものだろう。
「手紙の差出人は<かぼたん>さんです。
トレーニング中でしたら私が読みあげましょうか?」
「あぁ、頼む」
ミスズの態度は誰に対しても分け隔てないものなのでクラーグも慣れている。
優秀であればどんな者でも認め、評価し、使う。クラーグが求めているのは敬意と熱意がある信頼できる部下なのだから。
ミスズも主に対する敬意を持ったまま、普段の軽さで手紙を読み上げる。
「はいは~い、では読みますね♪
~~お久しぶりですッ♪ 『病み村』の皆さん、こんにちは、<かぼたん>です。
暑い季節になってきましたが、私はいま、『エレーミアスの絵画世界』というエリアで一面の雪景色を楽しんでおります。
クラーグさんや<混沌の娘>ちゃんにも見せてあげたいと思うので、涼しくなるまで此方で過ごし、次の季節にでもエレーミアス名物をお土産に、再訪させてもらいます。
クラーグさんたち『病み村』の方々も体に気をつけてお過ごしください。
追伸、ここのエリアボスの“半竜”プリシラちゃんは、<混沌の娘>ちゃんと年も近いらしいので、今度行く時は一緒に連れていくと思います。~~
だそうです♪」
<かぼたん>らしい手紙を、面白おかしく抑揚をつけて読み上げるミスズ。とても良い笑顔。
クラーグも彼女の熱演ぶりと、遠く離れた地でも楽しく過ごしているであろう友人の姿に思いを馳せ、自然と笑みがこぼれるのだった。
「<かぼたん>は相変わらず誰とでも仲良くなれるようだねぇ~」
「そうですね。『病み村』に最初に来た時から誰にも物怖じせずに馴染んでいましたし、あの方の人間性はデーモンでありながら誰よりも綺麗ですから」
<かぼたん>の強さは数多く吸収してきたデモンズソウルにあると思われやすいが、実はそうではない。
溢れんばかりの人間性――つまり「愛」が自然と周囲を笑顔にするのだ。周りを魅了し、惹きつけるソウル。
それこそが外界から閉ざされたエレーミアスに住む者たちの心すら開いた<かぼたん>の武器だ。
手紙の最後に付け加えられた一文からも、<かぼたん>がプリシラという少女に好かれたのがよく分かるものだった。
「さて、それじゃバランスボール・トレーニングも終わりにして出掛けようかね」
「お供しますクラーグ様。
今日はどちらへお出かけするんですか?」
「あぁ、ちょっとイザリスにな。姉さんたちに会いに行こうと思ってさ。
ミルドレットにも声を掛けて弁当を作ってもらってくれ」
「イザリスと言うと、<混沌の苗床>様とグラナ様ですね。
暑中見舞いですか? ってか、会いに行っても大丈夫なんですか?」
会いに行って良いのか。ミスズの疑問はもっともで、クラーグは喧嘩別れの形でイザリスを飛び出してきた。
理由はよくある姉妹喧嘩だったが、上の二人の姉とはイザリスを出てから一度もあっていないのだ。
一緒についてきてくれた<混沌の娘>も。
「今回は末の弟のタダが生まれたんだ。
そろそろ姉さんたちにも会いに行く頃合いさ。
あの人たちにも可愛い弟を見てもらいたい」
もう一つ理由をあげるなら、<かぼたん>からの手紙には書かれていなかったが、彼女が王のソウルを集めているのに協力するためだ。
『混沌の廃都イザリス』のエリアボス<混沌の苗床>は王のソウルの持ち主でもある。
次に<かぼたん>が来た時にサプライズプレゼントで驚かせるという作戦だ。
旅支度はミスズに任せ、クラーグは暑中見舞いも兼ねて日持ちしそうな『病み村』名物選びを始めるのだった。
そしてその事を立ち聞きしていた一人の紳士もまた、クラーグの部下である。
「話は聞かせてもらいましたよ。クラーグ様」
金色の輝きに包まれた紳士が一人。名を“東の”シバという。
彼は何処にでも現れ、居なくていい時に居る。そんな男だ。
トレーニング中の乱れるクラーグの息遣いを聞くために、天井裏に張り付いていたのだった。
「……シバか。聞いていたんなら話は早い。
あたしと<混沌の娘>とミルドレットとミスズ、それにタダの『五人』でイザリスに行ってくるから留守番を頼んだよ」
「ふっふっふっ、クラーグ様。何をおっしゃるのですか。
混沌家のお姉さん達と喧嘩別れで飛びだして顔を出しにくいんですよね?
ならばこれまでのように、いつもの『六人』で!」
「『いつもの五人』だ。六人でも七人でもない」
「いいえ、六人です」
「五人」
「六人!」
「五人!!」
しばしの舌戦を繰り広げるものの、目的を持った紳士のシバに勝つのは、さしものクラーグでも難しかった。
結局押し切られ、いつもの六人で地下のイザリスへと向かうこととなった。
◆ ◆ ◆
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。私の格好変じゃない?
苗床お姉ちゃんとグラナお姉ちゃんに笑われないかな?」
「大丈夫だよ<混沌の娘>。
あたしらがイザリスを出て随分になるからね。いい加減許してくれるさ。
そしてお前が可愛くない時なんて一度もないと断言しよう」
普段は全裸のクラーグと<混沌の娘>だが、今日は特におめかししている。
姉たちと同じ混沌の魔女の正装――黒金色のローブを着ているのだ。
フードは外し、スカートは下半身が蜘蛛のため履いていないが珍しく服を着ている。
そう、服を着ているのだ!
「ふっふっふっ、クラーグ様と<混沌の娘>様の着衣によって溢れ出る色気。ふふふ♪」
何だかんだで付いてきた紳士のシバは、普段見れない着衣の主を脳内に焼きつけるので忙しかった。
あまり度が過ぎるようならクラーグの側近のミルドレットが
むしろ自身の気持ちを代弁してくれたシバに「グッジョブ♪」と心の中で叫ぶほどである。
ちなみに同行する従者たち三人も同じ衣装を着ている。
「ミルドレットさんも似合ってますよ~、そのローブ♪」
「ば、バカ言うんじゃないわよ!
それに私なんかよりもミスズの方が……」
「いやいや、いつも丸出しのミルドレットさんのうなじが、ローブとずた袋の隙間からちょろっと覗くのがいいんですよ♪」
「もう!」
着慣れない服に恥ずかしがるミルドレットと、それを褒めちぎるミスズ。いつもの二人である。
そうして一行は混沌家とその従者専用の隠し通路を通り、一直線に混沌家長女<混沌の苗床>の家へと向かう。
「しかし、久し振りだけど大丈夫かねぇ~……」
「クラーグ様、実際に会ってみれば問題は解決するものですよ。
もしもの時は、俺が盾になるので死ぬ時にその胸に挟んでくれるだけでいいです」
「あんたはいつでも変わらないね、シバ。
でもやっぱり、苗床姉さんはさておき、グラナ姉さんは血気盛んであたしとは反りが合わないから心配だよ。
喧嘩の熱も再燃しそうでね」
それに喧嘩もそうだが、クラーグの心配の種は愛しい妹と弟にある。
<混沌の娘>は姉妹の中ではクラーグに一番懐いていたからイザリスを出る時も一緒に来てくれたが、別に彼女自身が<混沌の苗床>やグラナの二人と喧嘩したわけではない。
それなのにクラーグだけでなく<混沌の娘>まで居なくなってしまったので、上の二人の姉たちは妹不足の禁断症状が出ているのでは? というのがクラーグの心配の種。
ようするにその妹に加え、新たに弟まで連れて帰るのだから妹と弟を取り合う喧嘩になるかもしれないということだ。
「はっは~ん、読めてきましたよクラーグ様。
ようするに俺を連れてきたのは、いざという時に苗床様とグラナ様の双丘に挟ませて時間稼ぎをするためですね?
まったくも~、クラーグ様自身も俺をそういう風に使おうとするだなんて、えっちな人ですね~♪」
「いや、違うから。あんたは自分で勝手に付いてきただけだろ?
そもそも姉さんたちはあたしほど胸でかくないし」
「ちっちっちっ、あまり俺を舐めないでほしいですね。
俺は巨乳好きであると同時に、女性という存在そのものを敬愛しているのです!
妹様もそうですが、ありとあらゆるおっぱいを分け隔てなく愛しているのです!」
「……ようするに紳士だと言いたいわけだな?」
「はい♪(最高の笑顔で)」
グーで殴るクラーグ。
まぁ、そもそも巨乳一辺倒な男ならば『アノール・ロンド』へ行っている。
彼――シバがクラーグに仕えているのは、それはひとえに紳士(おっぱい大好き何でも大好き)だからだ。
「あ、ミルドレットさんブラまでしてるんですか?
服だけでなく下着まで新しく用意するだなんて、今夜は寝かせないぞ、ってことですよね? そうですよね? キャー♪♪」
「ちょっ、顔近いわよミスズ!
私は別にそんなつもりじゃないんだからッ!」
女同士でそれなりに楽しくしているミルドレットとミスズ。
この二人は放っておくとこんな会話ばかりなのでクラーグも気にしていない。
はてさて、一行が目指す苗床の家。どんな騒動が待ち受けているのやら。
~後書き~
長くなったので次回に続きます。
二話同時更新ですので引き続きお楽しみください♪
ちなみに上中下に分けるべきだったと思うほど後編は長くなっております。